第892話 マグマ適応の特性


 コケが弱るのは想定していたけど、流石に燃え上がるとは思っていなかった!? さっさと適応をしてしまわないと!


<ケイが『特性の実:マグマ適応』を使用しました>

<ケイに『マグマ適応』が一時特性として付与されます>


 おぉ、ログインしているコケの方に特性が付与されるのか。それと同時にコケが燃え上がるのが収まった。ふー、なんか妙に焦った。

 ちょっと残ってる群体数を見てみれば、さっきの燃え上がった様子の割には減ってはいない。……見かけ倒しか、さっきのは。


 おっと、ロブスターのHPの減少も止まったからコケの一時的なこの環境への適応がロブスターに共有化されたっぽいね。よし、これなら纏火の代わりに使える!


「あー、それにしても燃え上がったのは焦ったー!」

「無事に適応は成功したっぽいが……ケイ、燃え上がった時にコケの群体数は減ってたのか?」

「……凄い少しずつだけどなー。思ったほど群体数は減ってないし、コケの場合は割合で減少っぽい気がする。ただ、地面に増殖してたコケはあっという間だったけどな!」

「あー、単独進化かそれ以外かで効果が分かれてそうだな。だが、多少のダメージを覚悟した上で、冷静に対処すれば問題なさそうか」

「多分なー。冷静に適応すれば、即死はなさそうだ」


 とりあえず地面に増殖させていたコケは全滅したけど、コケが死ぬ事もなく、無事にこのエリアへの適応は出来た。

 これで弱点であってもこの特性の実でこのエリア自体に適応は可能だという事は分かったね。うんうん、焦る事はあったけど、結果としては順調だ。


 問題は俺とアルは植物という共通の弱点だけども、ヨッシさんは氷属性という別の弱点要素なところか。まぁどっちも纏火で対応出来るんだし、そこは多分大丈夫なはず。


「さてと、次はヨッシさんの番だな」

「……あはは、まぁ冷静にやれば大丈夫だよね」

「ヨッシ、ファイトなのさー!」

「慌てなければ大丈夫かな!」

「ヤバそうなら俺が回復するから安心してやれ、ヨッシさん」

「アルさん、ありがと。それじゃいくね、纏火解除!」


 ヨッシさんが纏火を解除した途端に、ハチとウニのHPが減り出していく。氷属性のハチの方がウニの2倍くらいの勢いでHPが減っている。

 俺のコケはHPじゃないから判別出来なかったけど、この感じだと弱点属性だと減り方が2倍になってるっぽいな。


「これで適応すれば……!」


 あ、HPの減りが止まったと同時にハチの首の部分に赤い模様が出たね。ふむふむ、ハーレさんにも浮かび上がってる赤い模様だし、これがマグマに適応してる証か。

 模様としてはシンプルに3本線が三つ編みみたいに交差しているような感じで、首輪みたいになってるっぽい。いや、物質的に首輪はある訳じゃないけど。


「ふぅ……焦るね、このHPの減り方。でも、適応は大丈夫みたい」

「成功なのさー! ヨッシのハチの首にも赤い模様が出てるよー!」

「え、ほんと?」

「そういえばケイは……あ、コケの一部が赤くなって円形の模様になってるかな!」

「え、マジで? そういう特徴が出るようになってるのか」

「ハーレさんの首回りに出ている模様を平面的にした感じだな」

「あー、そういう感じか」


 ふむふむ、俺のコケの場合は首に該当する部分がないからそういう風になるんだな。どうもログインしている側の種族に模様が浮かび上がるっぽいし、アルの場合がどうなるのか気になるところ。

 もしサヤもマグマ適応でこのエリアに適応させるなら、サヤのクマの様子も気になるね。


 それにしてもこのマグマ適応の特性の実って、効果時間が長い分だけ纏火や発火草茶よりも優秀な気もする。それだけ効果時間が違えば、このエリアから持ち出し禁止にもされるかー。


「よし、それじゃ次はアルの番だな! あ、サヤはどうするか決めたか?」

「特に問題なさそうだし、発火草茶と同時に使えるか試してみてもいいかな?」

「あー、それは確かに気になる。アル、ついでに纏火と同時に使えないかも試してみない?」

「……それは知っておきたいとこではあるな。よし、それじゃサヤ、検証も兼ねて同時にやるか!」

「うん、それは良さそうかな!」

「よし、それじゃその方向で! アル、サヤ、任せた!」


 流石に問題が出るとも思えないけど、重ねがけが出来るのであれば効果時間切れの時に安全だしなー。適応を解除した上で適応出来るかは試せたし、こっちも試しておきたい案件だ。


「サヤ、いくぞ! 『根の操作』!」

「うん、分かったかな!」


 今回はインベントリから時間短縮して使う必要はないから、サヤはクマで、アルは木の根で特性の実を砕くようにして使用していく。

 そっか、木は食べれないからそういう形で使うんだな。てか、潰した際に出た赤い果汁を浴びて効果が出てきているっぽい。


「お、アルの幹に円状の赤い模様が出たな。……発火したままだから分かりにくいけど」

「アルさんのは、ケイさんと同じ感じなのです!」

「サヤは、クマの首にハーレのリスと同じような模様が出てるね」

「へぇ、そういう風に模様が出るのか。ま、とりあえず適応に問題はなさそうだぜ」

「こっちも問題はなさそうかな!」

「それじゃアル、その状態で纏火は解除出来るか?」

「あー、それもやっとくべきか。纏火を解除っと! お、普通に戻ったか」

「特に問題なさそうだな。それに赤い模様も見やすくなったしさ。あ、サヤ、発火草茶との同時使用はどんな感じ?」

「これといって、特に何もなさそうかな?」

「ふむふむ、まぁお互いの効果の邪魔にならないのなら問題ないか」

「うん、それはそうかな」


 纏火を解除して普通の木の状態に戻ったアルだけど、特に異常はなさそうだ。サヤも異常はなさそうだし、これなら初めにこの溶岩に突入する時だけ纏火か発火草茶で適応して、マグマ適応の特性の実を手に入れたら切り替えていくのが良さそうだね。

 ちょっとだけ纏火を切ってから俺のコケのように燃え上がるアルの木の光景が見れなかったのが残念だけど……。まぁアルの木が俺のコケと同じようになるとは限らないけどな!


「さてと、地味にHPが減ったからしばらく休憩!」

「……あはは、確かにそれもそうだね」

「そこまで盛大には減ってないけど、行動値の回復も必要だから休憩なのさー!」

「あー、蜜柑でも食っとくか?」

「はい! 食べたいです!」

「ハーレ、確実に食べたいだけだよね?」

「えっへん!」

「まぁ良いけどね。アルさん、プレイヤー産の蜜柑まではいらないから、私の方で天然産の果物を出しとくよ」

「おー! やったのです!」

「俺の蜜柑が必要なほどのダメージでもないか」

「だろうなー」


 まぁみんなHPが減ってるとはいえ、精々1割とかそんなところである。俺のコケが1番ダメージはあったような気はするけど、そこは問題ないしなー。


「そういえばもうそろそろ命名クエストも終わりかな?」

「あー、そういやそんなもんか」


 サヤに言われてメニューからクエストの一覧を見てみたけど、このエリアの命名クエストが終わるまであと5分ってとこか。非戦闘時で行動値が全快するまでに5分もかからないけど、変に戦闘中に終了メッセージが出るのも厄介だな。


「よし、3戦目の開始は命名クエストが終わってからにするか。それまでは自由に休憩って事で!」

「「「「おー!」」」」

「で、俺はちょっと調べたい事があるから、調べてくる」

「ケイさん、調べたい事ってどういう内容ー!?」


 あー、あの発火草の群生地で獲物察知が上手く機能しなかった件のついて調べたいんだけど、吹っ切れている今のサヤとハーレさんには思い出させたくない話だな。

 うーん、嘘を言うのは好きじゃないけど、ここは誤魔化すか。あ、普通に自力で確認しようと思ってた案件もあるけど、この際だから調べる口実に使っちゃえ。これなら実際に情報はあるだろうし、一緒に調べてみてもいいだろう。


「付与魔法の正確な効果時間についてだなー。自分達で確認してもいいけど、これくらいなら空いてる時間で確認するくらいは問題ないだろ」

「……ま、何もかも自力で確認する必要もないか。ケイ、その辺の確認は任せるぞ」

「ほいよっと。それじゃちょっと調べてくるわ」


 今のアルは俺の意図を察してくれたのか? んー、今のはサヤとハーレさんに気付かれたくなかったから独り言や態度に出ないように細心の注意を払ったつもりではあるけど……。

 まぁそこを突っ込んでくるような事もないだろ。少なくとも付与魔法の効果時間について確認したいのも事実だしね。


「ハーレ、サヤ、アルさん、何が食べたい?」

「肉……は明日リアルで食べるから、今は果物を食べたいです!」

「私も果物が良いかな?」

「俺も今は果物の気分だな」

「うん、分かった。それじゃあちこちで色んな人が採集してきた天然産の回復量が微妙な果物を出していくね」


 うん、なんか俺も普通に次々と出てくる果物が気にはなるし、正直食べたいけど、今は調べるのに集中! サクッと調べて、混ざって一緒に食べれば良いだけだ!


 とりあえず口実にした付与魔法の方から調べるか。こっちの情報はほぼ間違いなくあるから、妙に時間をかけた上で詳細不明だと不自然になるからね。

 付与魔法に関しては、存在が発覚した際にまとめてくれたページがあるからそこを見れば済む。えーと……よし、あった!

 ふむふむ、味方への付与の効果時間って項目があるね。攻勢付与も守勢付与も、使われなければ10分で消失か。あ、1個でも消費したら、そこから10分のカウントなんだ。

 まぁ10分間で守勢付与の自動防御が発動しない状況や、攻勢付与での追撃が必要ないなら、そもそも付与自体が不必要な状況だし、この辺は妥当な部分か。


 さて、口実の方の調べ事はあっという間に終わったし、本命の調べ事をしていこう。擬態に関係する応用スキルがあるんじゃないかと推測してるし、調べるのは擬態絡みの項目だな。そこに無ければ獲物察知の方を調べていこう。


 えーと、擬態、擬態……あ、この辺か。ん? 推測段階だけど、獲物察知を妨害する効果がある擬態系の応用スキルの存在の可能性ってまとめがある!

 でも、肝心の内容は推測だけで、実際にそういうスキルの存在が確認されている訳じゃないんだね。へぇ、獲物察知に反応するはずの擬態してない個体も察知出来ない事例の報告が上がってるのか。その際には周囲の反応全体が消えると。

 うーん、擬態と言えば赤の群集のライさんが思い当たるけど、知ってたりしないかなー? でもライさんは赤の群集だし、教えてくれと言って教えてくれる訳もないか。


 とりあえず今はこれ以上の情報は得られそうにないけど、あのスライムとの騒動の時に何か妨害するスキルが使われていた可能性は高まった。

 BANになったあのスライムが使ったのか、それ以外の誰か……あの状況から考えるなら無所属の誰かがスライムに気付かれない為に使ったという可能性もあるね。スライムが獲物察知を使えるかは知らないけど。


<命名クエスト『命名せよ:名も無き溶岩洞』が完了しました>

<『名も無き溶岩洞』を改め『グラナータ灼熱洞』へと名称が変更になりました>


 お、メッセージが表示されたって事は命名クエストが終わったか! ちょうど俺の調べ事も終わったとこだし、良いタイミング!


「あぅ……ネタ選択肢にはならなかったのです……」

「ま、多数決なんだしそういう事もあるだろうよ。俺のも外れたしな」

「私達は要望通りかな!」

「そだね!」

「だなー!」


 投票した選択肢にならなかったアルとハーレさんには悪いけど、自分が投票した『グラナータ灼熱洞』に決まったのは素直に嬉しいとこだ。うん、エリアに合ってて良い名前だと思うぞ!

 ここのエリアの特殊性を考えるとネタ選択肢になると気が抜けちゃうしね。そういう意味でも良い結果になった気がする。


「あ、調べ物は終わったぞー! 付与魔法は攻勢付与、守勢付与に関わらず、一切効果を発揮してなかったら10分で消滅だとさ。ただ、今の俺の場合だと付与出来るのは3個だけど、1個でも消費したらその後から10分のカウントのし直しだと」

「あー、そういう仕様か。ま、10分も効果がなけりゃ不要な状態ではあるもんな」

「もぐもぐ。実用上では問題なさそうなのさー! もぐもぐ」

「うん、それはそうだね」

「実用上で問題はないなら、大丈夫そうかな!」

「だなー」


 むしろ長時間で効果を発揮し続ける方が問題になりそうだしね。それこそ、どこかの安全圏で可能な限りの付与魔法をかけた上で、付与魔法を使った人が全快するのを待ってから戦闘開始とかも出来るからなー。

 うん、改めてこうやって仕様を確認してみれば、その仕様にはしっかりと意味はちゃんとあるもんだ。


「さーて、調べ物も終わったし、俺も果物を……って、殆どない!?」

「もぐもぐ、あ、美味しかったよー! もぐもぐ」

「リスの頬袋の中に色々詰め込みながら喋るなー! てか、食い尽くしたのはハーレさんか!?」

「「……あはは?」」

「サヤとヨッシさんも結構食ってたぞ? まぁ俺もだが」

「ケイさん、追加を出そうか?」

「……いや、今度でいいや。もう行動値は全快してるし、レモンを齧って魔力値を回復しとく」


 あー、俺が調べ物で少し離れていたのが原因ではあるし、命名クエストが終わって行動値が全快しているのなら変に時間もかけられない。

 まだヨッシさんは色々な果物を持ってるみたいだし、それらを食べるのは次の機会があればって事にしようっと。……あれ、味覚はオフにしてるのに、しょっぱく感じるのは気のせいかな? レモンなら酸っぱい筈だから気のせいだよね……。


「……それじゃ魔力値が全快したら3戦目だ! 全力でぶっ倒す!」

「なんか妙に気合い入ってんな。……まぁ拗ねるなよ?」

「アル、うっせーよ! サヤ、ハーレさん、敵に赤い模様があるかの確認は任せた!」

「分かったかな!」

「了解です!」

「あ、ケイさん、ちょっと良い?」

「どした、ヨッシさん?」

「様子を見ながらでいいんだけど、電気の操作をメインに使ってもいい? 昇華にしたいからさ」

「おう、それは問題ないぞー!」

「ありがと。それじゃそうするね」


 ヨッシさんは電気の操作があとLv1上がれば昇華には到達する。まぁその後にどこかで天然の雷を一度操作して昇華の称号を手に入れる必要はあるけど、そこまで到達すれば色々と使える手札が増えるからね。

 天然の雷を操作する機会は天候に左右されるから、その機会は逃さないようにしておいた方がいいもんな。その機会が訪れた時に電気の操作がLv6になってないと意味ないしね。


「それじゃ3戦目、始めていくぞー!」

「「「「おー!」」」」


 とりあえずレモンを齧って魔力値は全快。このペースなら午前中にLvも上がりそうだし、昼からも同じように出来たら今日はLv2……場合によってはLv3は上げられそうではある。

 あー、でも今はLv24だけど、Lv26辺りを越えれば流石に経験値は下がってきそうだよね。今日と明日でLv28くらいを目指したいけど、うまくいくかな? ま、やるだけやってみるか!

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