第891話 倒し切れるか
着実にウォーターフォールの中に叩き込んだサソリとワニとイタチのHPはどんどん減っていく。今回は1戦目よりも順調だ。
まぁ決して1戦目の調子が悪かった訳じゃないけど、全部の敵を識別して厄介な敵を優先的に始末したのが良かったんだろうね。全員で戦うなら、俺とアルの昇華魔法の前に可能な限り削ってもらう方向が正解っぽい。
「お、サソリが死んだな」
「おー、中々の経験値。討伐報酬がないし、サソリって残滓だっけ?」
「うん、サソリは残滓かな」
「今度はマグマ適応の特性の実がきたのです!」
「ハーレ、良かったね」
「ふっふっふ、良かったのさー! 後はヨッシが手に入れたら全員入手なのさー!」
「あ、それならさっきのサボテンの時に出てたよ」
「あぅ!? 手に入れたのは私が最後だったのさー!?」
おー、これで全員1個ずつは手に入ったのか。後で実際に使ってみて……って、そういや俺とアルとヨッシさんは同時に纏火をしたから、確認する前に解除になっちゃうのか。
んー、誰かが先にわざと纏火を解除してみるのが良いのかもしれないなー。誰がやるかという問題もあるけど、ここは仮に死んだとしても復活が容易な俺がやるべきか。
このエリアはログアウトしたら入り口に戻される仕様みたいだし、死んだ際に共生進化へ戻すのにも支障があるしね。
さてと後はワニとイタチを仕留め切ればこの1戦は終わりだな。現時点でワニが少しHPが多めに残ってはいるけどそれでも残り1割。
イタチはどうもハーレさんとヨッシさんからかなりダメージを受けてたから、もうすぐ……あ、そんな事を考えてたらHPが無くなってポリゴンになって砕け散っていった。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
「おし、後はワニだけだな」
「……でも、ウォーターフォールの勢いが落ちてきたし、微妙に残りそうだぞ?」
「だなー」
んー、この後でワニがマグマの中に逃げる前に誰かが追撃して倒せば良いけど、出来ればここで仕留めたいね。
今回のワニはちょっとウォーターフォールに放り込むのが遅かったのと、放り込む前にあまりHPが減ってなかったのが原因かな? ま、そういう事もあるけど、どうとでもなる範囲だ。
さて、今ある手段で仕留めるとするなら……よし、この手でいくか。これなら無駄が出ずに済むしね。
「アル、水流の操作はまだ使えるか?」
「使えるが、どうする気だ?」
「俺の岩の操作もまだ使えるから、ウォーターフォールの効果が切れた瞬間に大剣にした岩を水流で加速させて仕留める。折角だから操作時間を使い切ろう」
「よし、乗った!」
「おし、それじゃ準備開始! 上から突き刺す感じでやるぞ!」
「おうよ!」
「……あはは、容赦がないかな?」
「まぁゲームなんだし、いいんじゃない?」
「ここから新たに追撃するよりは、これで決着はつけたいのです!」
さて、アルも乗り気だから、アルの水流の操作の中に岩の操作で大剣の形にした岩を放り込んでウォーターフォールの上部で加速させていく。
ふむふむ、岩の大剣を操作している位置って結構な高さではあるんだけど、スキルにはフェニックスは反応しないのか。いや、反応されたら困るけどさ。
ふー、既に岩の操作はかなり操作時間は減っている。多分かなりギリギリになるけど、そのタイミングは逃さない! よし、ウォーターフォールの効果は消えた!
「今だ、アル! 水流を垂直にして最大加速!」
「おうよ! ケイ、ミスんなよ!」
「ギリギリだけど、問題ねぇよ!」
おし、ワニの背中に加速させた岩の大剣を突き刺す事に成功! それでHPも全て無くなって、ポリゴンとなって砕け散っていった。それと同時に岩の操作も時間切れ。
「よし、2戦目終了!」
うん、今回は全体的にかなり安定して倒せたよな。識別をして厄介そうな敵は適切な対応も出来たし、今回は完勝と言ってもいい!
それにしても、色んな特性を持った種族の混在か。今回のは敵もPTメンバーの人数と同数になってる感じもするし回復と攻撃を交代しながらじゃなく、全員で戦って休んでいく方向が良さそうだよね。
「おー! 2個目の特性の実が出たのです!」
「お、ハーレさん2個目か。他に誰か出たりした?」
「俺は無しだな」
「私も無しかな」
「私も同じくだね」
「ふっふっふ、私だけが2個目ゲットなのさー! って、あー!?」
「ハーレ、どうしたのかな!?」
「発火草茶の効果が切れそうなのです!? お茶、お茶、お茶ー!」
「すぐに出すから、ハーレ、慌てないで!」
あ、このタイミングでハーレさんの適応が切れたのか。まぁハーレさんは1人だけ間違えて先に発火草茶を飲んでたから、その分だけズレが出ている訳だな。
てか、ハーレさん自身もいくつかは発火草茶を持っているんじゃ? あー、でもハーレさんは突発的な自体って慌て過ぎて、少し冷静さを失う時はあるからなー。
「はっ!? このマグマ適応の特性の実を使ってみて良いですか!? というか返事を待ってられないのです! えい!」
あ、発火草茶の効果が切れたのか、急にハーレさんのリスとクラゲのHPが減り出した。そこまで凄まじい勢いではないけど、これはすぐに適応をしないとあっという間にHPが無くなりそうな勢いだったかあ、慌てて食べたな。
てか、発火草茶で適応出来るハーレさんでこれって、種族的に弱い俺のコケやアルの木や氷属性のヨッシさんだとヤバくないですかね!? いや、流石に即死なんて事はないと思うけど。
「あ、ハーレのリスの首周りに赤い模様が出たかな?」
「おぉ、HPの減少が止まったのです! え、赤い模様があるのー!?」
「……ハーレ、効果時間の確認を忘れてたね?」
「あぅ……忘れて、大慌てしてしまったのです……。私もお茶は持ってたのにー!」
「もう、相変わらず急な事態には混乱するんだから。次からはちゃんと時間は確認するように!」
「はーい!」
やっぱりこうしてみると、ヨッシさんがハーレさんの保護者みたいな感じもするもんだね。うん、まぁ仲が良いのは良い事だ。
どうやらマグマに適応している証なのか、ハーレさんの首回りには赤い3本線が絡み合ったような感じの模様が浮かび上がっているね。
この模様、敵にもあったりするのかな? あんまりそこまで確認はしてなかったけど、次の1戦で少し確認してみるか。いや、場合によってはサヤはハーレさんは既に把握してるかも?
「サヤ、ハーレさん、ちょい確認。その赤い模様って、マグマから出てきた敵にもあった?」
「えーと、あれ? サヤ、その辺どうだっけー!?」
「……あはは、全体的に赤い敵ばっかだったから気にしてなかったかな?」
「なるほどね、それは了解っと。まぁそこは全然想定してなかったし、次の1戦で確かめるとして……」
ふむ、場合によっては全身が赤くなく、火属性を持たないマグマ適応だけを持つ敵がいる可能性も考慮した方がいいのか。
うーん、無視出来ない可能性だけど、もし居るとしたらその敵の役割ってのが気になるな。俺の希望としては経験値がたっぷり詰まったレアな敵だと嬉しい。……逆に自然発生のフィールドボスの特徴とかだったら、うん、ちょっと嫌だな。
「あ、ケイさん、アルさん、洞窟への適応効果はばっちりなのですよー!」
「うん、まぁ見たら分かる」
「まぁ見たままだな」
「えっへん!」
ハーレさんが威張るとこではない気もするけど、マグマ適応の特性の実でもしっかりと洞窟への適応は出来ているのは間違いない。
まぁマグマの熱に耐えられる特性なのに、それよりは安全な熱さに耐えられないとか、チグハグな効果にはならないか。そんなチグハグな状態になるとしたら、どんな特性だよ、それ。
「ケイさん、ちょっとマグマの中に飛び込んでみて良いですか!?」
「……アル、すぐにもう1戦は?」
「……流石に魔法なしではキツくないか? 敵が1体だけとかなら良いが、マグマの中だとどうなるかわかんねぇだろ」
「だなー。という事で、ハーレさん、今は却下」
「うー! でも、仕方ないので今は諦めるのです!」
「まぁ次の1戦の時に誘き寄せるのを頼むわ」
「了解です!」
多分、俺とアルの魔法がなくても戦って倒せないという事もないとは思うけど、このエリアでは油断は禁物だ。どれだけ初見殺しの危険な制約があった事か……。
マグマに飛び込んだら敵の数が数倍に増えるとかあっても、正直ここまで色々とあったから驚かないぞ。やるとしたら、一気に殲滅する手段を確保してから!
さて、この感じなら俺やアルやヨッシさんもマグマ適応の特性の実で適応していくのが良さそうだね。
今が11時ちょっと過ぎだから、昼までの適応には充分な程の効果時間のがあるし、とりあえずまずはこれだな。
「さてと、もう一度回復タイムだなー。その間に俺らもマグマ適応の特性の実に切り替えよう。一気にやると危ないから、少しずつタイミングをズラしてやるぞ」
「……4人同時は流石に危ないか。よし、俺が先に――」
「あ、アルは俺とヨッシさんの後で頼む」
「……理由の説明を頼もうか?」
「俺かヨッシさんが思った以上の早さで死にそうになった場合、枝の操作で外からの回復を頼みたい。あと、アルの木が生命線だから植物系の弱り方は俺が先に試しとく」
「なるほど、そういう理由か。それなら了解だ」
いくらなんでも適応する為のアイテムを使用する時間くらいはあるとは思うけど、それがどのくらいの猶予なのかは分からないからね。このエリアでは徹底的に安全策を選んでいくぞ!
「えっと、私はどうしたら良いのかな?」
「あー、サヤは俺らを見てから、マグマ適応か発火草茶のどっちにするかを決めても問題ないぞ? それか先にやる?」
「んー、それならみんなが終わってから1番最後にどうするか決めようかな」
「よし、サヤはそういう感じだな」
サヤの今やってる発火草茶での適応は、元々1番最後にやってたから問題ないしね。まぁ発火草茶の効果時間も30分だから、どっちにするかはもうちょっとしたら決める必要はあるけど。
サヤに関してはどっちにするかはみんなの効果を見てからでも問題はないはず。てか、特性の種や実での適応の効果時間は長いもんだねー。基本的に情報ポイントで交換する類のアイテムなんだし、そりゃそうか。
「それじゃ、私とケイさんはどっちが先にやる?」
「んー、俺とヨッシさんの場合は弱点の理由が別物だしなー。どっちからでも良いけど、不安なら俺が先にやるぞ。まだ完全に弱点でも大丈夫かは分からないしさ」
「……あはは、それならそうさせてもらっていい?」
「ほいよっと。それじゃ俺からやりますか」
ここに関してはさっき俺が1番先に試そうかと考えてたし、俺が大丈夫ならヨッシさんも多分大丈夫なはず。
そうと決まればコケの群体数を増やして生存率を……いや、ロブスターの背中にあるコケが全て駄目になれば意味がないから、地面へ増殖する意味はないか。
んー、遠隔同調が必須なんて事はないはずだろうし、ここは増殖無しで試すべき? ……せめてロブスターに接している部分のコケだけは増やしておくか。群体数は最大にはならないけど、安全策は取っておこう。
<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します> 行動値 46/80(上限値使用:1)
よし、とりあえずこれでロブスターの表面はコケで覆った。ちょっと地面にも増殖したけど、意外と問題ないっぽい。適応さえしていれば大丈夫なんだな。
「さーて、纏火を解除してコケが即座に死亡とかになったら運営に苦情を言いにいくしかないな」
「……あはは、確かにそれはそうかもね」
「流石にそれはないと思いたいかな?」
「コケに不利すぎるエリアになるのさー!?」
「いくらなんでも適応する時間くらいはくれるだろ」
「ま、それはやってみれば分かるって事で!」
えーと、回復系以外のアイテムはインベントリから取り出さなくても使えはするから、インベントリからの使用にしておこう。取り出して使うよりはこっちの方が早くて安全なはず。
いつでもすぐに使用出来る状態にして……いざ、纏火を解除だ!
<纏属進化を解除しました>
<『同調打撃ロブスター・纏火』から『同調打撃ロブスター』へと戻りました>
<『発火Lv2』『火の操作Lv2』『火魔法Lv2』が使用不可になりました>
<『発火Lv2』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 50/78 → 46/80(上限値使用:1)
よし、纏火が解除になっていつものロブスターに戻った。そしてそれと同時にロブスターのHPが減り出した!
ロブスターのHP減少は想定内だけど、コケは……げっ、燃え上がって、少しずつだけど群体数も減ってる!?
「わっ!? 燃え上がったのさー!?」
「そういうパターンなのかな!?」
「ケイさん、早く適応をして!」
ちょ、待って! どういう風に弱っていくのか分からなかったけど燃え上がるとは想定してなかったんだけど!?
あ、地面に増殖してたコケが全部燃え尽きてんじゃん!? ヤバい、ヤバい、ヤバい! 流石に燃え上がるとは思ってなかったから、焦るんだけど!? マグマ適応の特性の実の使用を急げー!
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