第890話 分析を反映して


 行動値は全快、魔力値もレモンを使って全快。敵の識別をちゃんとやり、その上で1戦目との比較をして、今回のLv上げでの安定したやり方を見極める!

 一度に出てくる敵の数が変動するのか、固定数なのか、そこも確定していきたい。そして、可能な限り早めに終わらせる。そうじゃないと纏火の効果が切れちゃうからね。


「それじゃ、戦闘開始! アル、まずは敵の誘き出しを任せた!」

「おう、任せとけ! 根が1周分だけ幹に巻きついてるから、今回はさっきと逆回りで行くぞ!」

「ほいよっと!」


 アルの木は根下ろしをしている状態なんだし、その状況で根と繋がってるクジラがグルって回ったらそりゃそうなる。

 完全に一周はしてなかったから、根が俺ら……俺らというよりは俺とサヤの2人か。まぁ俺らに引っかからない手前でアルが止めた上で、木の方にクジラを引き上げてたから気にしてなかったよ。


 そういう事情でさっきの1戦とは敵を誘き出していく方向は変わって、今回は時計回りだな。まぁ反時計回りか、時計回りか、その辺の要素も念の為に気を付けておこうっと。

 別にマグマの近くを回りながらでなくても敵は出てきそうだから、回る方向での違いはないと思うけどね。


「おらよっと! 1体目、出たぞ!」

「わっ!? またワニなのさー!?」

「地味に今が識別のチャンスかな! 『識別』!」

「あ、そういやそうか。サヤ、変な要素が無ければ情報過多になるから、報告は最小限の情報で良いぞ!」

「分かったかな! えっと、火属性だけど多分物理型で、当たり前のようにマグマ適応はあって、残滓かな! Lvは24!」

「ほいよっと!」


 このワニについては特に警戒すべき特性はなしか。火属性とマグマ適応の特性は標準装備っぽい。って、次々と敵が出てきてるな。


「私はイタチを識別するのさー! 『識別』!」

「それじゃ私はそっちの赤いサソリをやるよ! 『識別』!」

「てか、種族に統一性がなさ過ぎじゃね!?」

「ほんと滅茶苦茶だな、おい! 今度はサボテンが出てきたぞ!」

「あー、今のうちっぽいし俺も識別に回るわ!」

「その方が良さそうだな!」


 サヤ達に戦闘中の合間に任せるつもりだったけど、アルが囮になって敵をマグマから誘き出している今の方が絶好のチャンスだもんな。

 なんでさっきの話し合い中に思いつかなかったかって自分を問い詰めたいけど、そんなことよりも識別が優先だ! 今なら負担はほぼ無いしね。


<行動値を4消費して『識別Lv4』を発動します>  行動値 74/78(上限値使用:3)


『耐熱刺吸収サボテン』Lv23

 種族:黒の瘴気強化種(耐熱刺吸収縮種)

 進化階位:未成体・黒の瘴気強化種

 属性:火

 特性:マグマ適応、刺突、魔法吸収


 ちっ、ここでサボテンが魔法吸収を持ってたか! これはやっぱり敵の中に魔法吸収持ちが混ざってるので確定だな。

 あの松の木が絶対に持っていたとは言えないけど、持ってた可能性は一気に跳ね上がったぞ。


「こっちのイタチはLv22の瘴気強化種なのさー! 属性は火で、マグマ適応と突撃と俊敏を持ってるからこれも物理型です!」

「おわっと! 5体目は赤いキツネか!」

「アル、ここは引き受けるかな! 『略:エレクトロウォール』!」

「助かる、サヤ!」

「って、あれ!? てか、みんなに付与してた守勢付与がいつの間にか消えてるな!?」

「……どうも時間経過で消えるっぽいな」

「そうみたいなのさ!? キツネの識別もやっていくよー! 『識別』!」


 囮をしていたアルや近接で時間稼ぎをしていたサヤは普通に消費してたけど、根下ろしをしたアルの木から攻撃していたハーレさんやヨッシさんの守勢付与が消えてるもんな。

 流れ弾は……流石に今回は気付いたはずだし、時間経過で消えるというのが正解っぽいね。よし、とりあえず付与魔法の効果が切れるまでの時間計測は別の機会にちゃんとやるとして、今は戦闘に集中!


「サソリは要注意かも! Lvは21で残滓だけど、私と同じ異常付与を持ってるし、毒と火の2属性! 刺突の特性もあるから、多分異常特化のバランス型! もちろんマグマ適応持ち!」

「そのサソリはそんな感じか。ついでにサボテンも要警戒だ! 魔法吸収持ちだ、このサボテン! マグマ適応はこっちもあった!」

「識別してみたら、雑魚敵の割に意外と厄介な特性持ちが多いのさー!?」

「アル、私がまた引き受けるから、早めに退避して次の準備をしてかな! 『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『並列制御』『爪刃双閃舞』『連閃』!」

「おう、任せたぞ、サヤ!」


 おぉ、今回はサヤのクマは自己強化に切り替わってるけど、風属性を付与する事で移動速度を上げて両手の爪から放たれる銀光を強めながら5体の敵を相手に渡り合っている。


 サヤの攻撃は魔力集中じゃない分だけ1撃ずつの威力は下がってるけど、自己強化による全体的な強化と風属性による速度強化でここまで出来るのか。

 基本的にやってる事は至近距離での回避も混ぜたヒットアンドアウェイだけど、この数を相手にそれが出来るのが凄い。


 そうしている間にアルのクジラが木の方に退避は完了だな。うん、ここまでは良い感じだ。

 てか、今回も5体以上は出てくる様子はないな? これは戦闘中のPTメンバー人数に合わされてる可能性が高そうだ。まぁその分析も後回し!


「ハーレさん、キツネはどうだ!?」

「キツネはLv24の残滓! 火属性で、特性に魔力強化があるから魔法型です! あ、マグマ適応もあったよー!」

「おし、了解! サヤ、サボテンとキツネを重点的に狙えるか!?」

「やってみるかな!」


 そこからかなり銀光が眩くなってきている両手の爪での攻撃を当てるのはサボテンとキツネに集中させていく。よし、やっぱりサヤの近接は頼りになる。

 ただ、やっぱりこの手段はサヤの負担が多過ぎるな。アルのクジラの退避は終わったし、次の一手に移っていこう。


「ヨッシさん、サソリを抑えてくれ! 今のサヤに状態異常はマズいからな!」

「確かにそれはそうだね。『溶解毒生成』『同族統率』! 行け、ハチ1〜3号! 効果があるか分からないけど、これも! 『エレクトロプリズン』!」

「ヨッシ、ありがとうかな!」


 同族統率で生成された統率個体のハチだけど、サソリはそのハチは相手にしようとしない。だけど、それが逆に邪魔をするのに役立ってるっぽい。無視しているサソリにチクチクと針を刺して、地味にサソリの妨害になってる。

 毒が効かない相手だとして無視してる感じだけど、同族統率にはこういう妨害の使い方があったんだな。これぞ、毒を持って毒を制す! ……いや、何か違うか。とにかく次!


「ハーレさんはサヤとヨッシさんのフォローを頼む! 厄介そうなのはここでHPを削っとく!」

「了解なのさー! 『自己強化』『並列制御』『連投敵』『連投擲』!」


 よし、これでさっきと違って明確にダメージを与えながら動きを制限出来ている。ウォーターフォールの中に叩き込むのは俺の岩の操作とアルの水流の操作でどうにかなるからね。さて、仕上げをやっていきますか!


「アル、さっきの1戦と同じのをやるぞ!」

「おうよ! 『アクアクリエイト』!」


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 71/78(上限値使用:3): 魔力値 219/222


 手順自体はさっきと同じだから、迷う事はない。ただ、今回は明確に狙う敵を絞って確実に仕留めていくつもりでいく。

 魔法の効きが悪いキツネと、昇華魔法の威力を下げてくるサボテンは最優先で潰す! イタチとワニについては、威力を下げられなきゃ昇華魔法で倒し切れると思う。


「いくぞ、ケイ! 『並列制御』『水流の操作』『アクアクリエイト』!」

「おうよ!」


 アルが発動したし、俺の方もウォーターフォールの発動準備と岩の操作を使っていきますか!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』は並列発動の待機になります>  行動値 52/78(上限値使用:3)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 50/78(上限値使用:3): 魔力値 216/222

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


<『昇華魔法:ウォーターフォール』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/222


 今回のウォーターフォールの生成位置は、速攻で倒してしまいたいサボテンとキツネ! 

今のサヤなら、ギリギリのタイミングで回避出来るはず。


「サヤ、退避!」

「いや、まだかな!」

「って、それじゃ巻き込まれるぞ!?」

「まだ最大強化を叩き込んでないし、その辺りはどうにかするかな!」

「あー、そういう事なら了解だ! 死ぬなよ、サヤ!」

「味方の昇華魔法で死にはしないかな!」


 他に不測の事態が無いとも言えないんだけど、まぁサヤがそうすると言うのであれば任せよう。

 さて、サボテンとキツネはウォーターフォールで押し潰せている。あ、一緒に呑み込まれたサヤの眩い銀光が消えると同時にサボテンのHPが無くなってポリゴンとなって砕け散っていった。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


 よし、1番厄介そうなサボテンは速攻仕留められた。てか、相変わらず経験値が美味いな!

 それじゃまだウォーターフォールの範囲内に入っていないサソリとワニを放り込むぞ! あ、そういえばイタチは……うわっ、走り回ってる!? 俊敏の特性を持ってたから、攻撃を避けまくってるのか。


「ヨッシさん、サソリは俺がウォーターフォールに叩き込むのから、ハーレさんと連携してイタチを頼む!」

「その方が良さそうだね。魔法弾の連続投擲でやるよ、ハーレ!」

「了解なのさー! 『並列制御』『魔法弾』『魔法弾』!」

「それじゃ神経毒と電気の麻痺でいくよ! 『並列制御』『ポイズンインパクト』『エレクトロインパクト』!」

「いっけー! 『並列制御』『連投擲』『連投擲』!」


 おぉ、状態異常を狙った魔法弾に変換した衝撃魔法での連続攻撃か。イタチの移動速度は早いけど、回避の特性までは持ってないし、全ては躱しきれないはず。


「ケイ、サソリをやるなら急げ!」

「だな! ワニはアルに任せた!」

「おうよ!」


 サソリはサヤの方に向けて移動し始めているし、対処はすぐにでもしないとマズいな。……岩の操作の時間を温存する必要もないし、ここは全力で行くか。


 地面を歩いているサソリに向かって、地面から掬い上げるように岩を操作して、ハサミや尾を岩で固めいく。ふっふっふ、そこからウォーターフォールの上部から大量に水量の中に上から叩きつけるように放り込む!

 これならウォーターフォールの激流で加速しつつ、地面に激突した上で押し潰されるはず! よし、成功! 結構今のでHPは減ったぞ。


「考えたな、ケイ! だったら俺はこうだ!」

「ん!? なんで真横からワニをぶっ飛ばした!?」

「そりゃ、こういう事だ! サヤ!」

「アル、ありがとうかな! 『略:突撃』!」

「あ、サヤが脱出出来るようにしたのか!」


 ふむふむ、ウォーターフォールの中にいたサヤの真上にワニを叩き込むの事で、サヤを押し潰していた水量を一時的に減らしたんだな。ナイス判断だ、アル!


 あ、そのタイミングでキツネのHPが全て無くなってポリゴンとなって砕け散っていった。まぁキツネは残滓って言ってたはずだから、討伐報酬はなしだけど経験値はやっぱり美味いな。


「よし、今! 神経毒の『ポイズンインパクト』!」


 おっと、イタチはハーレさんとヨッシさんの連携攻撃を回避しきれずに撃ち込まれまくって、ちょうど今ヨッシさんに空中へと打ち上げられたね。

 しかも神経毒が見事に決まって身動きが出来ないっぽい。うん、雑魚敵相手だとボスよりも遥かに状態異常は効きやすいし、ヨッシさんの状態異常は強力だ。


「ヨッシ、急ぐのさー! 『魔法弾』!」

「そだね! 『ポイズンボム』!」

「イタチも滝に潰されるのさー! 『狙撃』!」

「おぉ、お見事!」

「これで全部がウォーターフォールの中か。……既に倒したのもいるがな」

「あはは、まぁ既に倒したのは良いんじゃないかな?」


 ふー、なんというかヨッシさんとハーレさんの魔法弾での連携がかなり良いね。ずっと様子を見れてた訳じゃないけど、流れ的にはハーレさんの命中精度と魔法弾による衝撃魔法の分割と、ヨッシさんの状態異常の効果が相乗効果になってより強力になってたような気がする。


 ウォーターフォールはさっきよりもHPを削ってる感じがするから、1戦目では魔法吸収で少なからず威力が削られていたっぽいなー。

 さっきよりも事前に攻撃してHPを減らしているのもあるにはあるけど、それでもウォーターフォールで仕留めるのは1戦目より早いしね。まぁこうして見てみると、本当に水蒸気が多くて蒸発してる感じはあるけども……。


 ともかく残りはワニとサソリとイタチの3体だ。ここまでは順調だから、気を抜かずに仕留め切るぞ!


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