第874話 縦穴の調査
情報共有板で確認したい情報があったものの、他の話題で書き込めるタイミングではなかった。でも、少し話題が途切れそうなのでタイミングを見計らって書き込んでいこう。
あのケインとかいう失礼な奴がもし絡んできたら、その時に対処を考えるとしして……とりあえず理不尽な敵意には負けん!
リス : うん、ちゃんと灰の群集の人だったし、ログイン中だったよ! ただ、こういう場所に書き込むのは苦手な人だから、わたしの方で聞いてまとめてくるから少し待っててねー!
イノシシ : おう! 助かるぜ、リスの人!
ハチ : 情報を上げてないだけで、情報自体は持ってる人がいるんだな。
ヘビ : 色んなとこに伝手があるリスの人は凄いもんだよなー。
キツネ : とりあえず情報待ちってとこか。待ってる間に、何か他の話題ある人っていない?
おっ、これは良いチャンス! プロメテウスさんだと思われるキツネの人の書き込みという点が気にはなるけど、プロメテウスさん自身には直接話してみて悪印象はないし、まぁ大丈夫なはず。さっき話した様子では多分止めてくれそうだしね。
コケ : ちょっと今いる場所で見つけた報告したい事と、確認したい事があるんだけどいい?
ヘビ : この初めに確認を取る感じは、いつものコケの人か?
草花 : そうっぽいけど、最近はちょいちょい真似してるのもいるからねー。
キツネ : とりあえず内容を聞こうじゃねぇの。いつものコケの人ならさっき会ったから、場所が分かるなら俺が保証出来るぜ。
サル : ならいいか。コケの人、どういう内容だ?
コケ : ……なんか真似してるのがいるってのが少し気になるけど、今はそこはスルーしとく。えっと、まずは報告から。『封熱の霊峰』の妙に高い岩山にある洞窟での発見だな。隠れてた縦穴を見つけたぞ。
イノシシ : ちょ!? あそこ、何かあるとは思ってたけど、マジで何かあったのか! 縦穴って事は、上下に何かある!?
キツネ : あー、うん、その位置からの情報なら確実にいつものコケの人だ。コケの人、さっきぶり! あいつならここは見てないから安心していいぞ。
コケ : 地味にそこは警戒してたんだけど、見てないのか。
木3 : とりあえず一安心だな、コケの人。
ヘビ : それ、何の話だ?
ネズミ : さぁ?
キツネ : こっちの話だから気にしなくていいぜ。とりあえず話を続けてくれ。
ふー、あの面倒なのは今は見ていないという確証が取れてホッとした。うん、今回はプロメテウスさんが書き込んでいる状況だったのは助かったのかもしれないね。
ハチ : あそこはそれなりに調査はしたんだがな……。コケの人、それはどうやって見つけた?
コケ : 見つけたのは俺じゃなくて共同体のメンバーだけどな。地面と壁の境目の辺りから薄っすらとだけど水蒸気が出てたみたいで、そこの壁を破壊してみたら縦穴があった。
木3 : それからすぐ後に僅かな地面の揺れがあって、その縦穴の下から一気に水蒸気と大量の湯が噴き上がったぜ。
ネズミ : それって間欠泉!?
ヘビ : マジで!? え、なんで今まで見つからなかったんだ!?
木 : ……何か条件があるっぽい気がするな。あぁ、確認したい事ってその条件に関する事か?
イノシシ : あー、なるほど。そういう事で合ってるか、コケの人、木3の人?
木3 : おう、それで合ってるぜ。
ふー、流石はここで普段から情報交換をしている人達だね。すぐに条件がある可能性に思い至ってくれると、話がスムーズに進んで助かるよ。
コケ : あくまで推測だし、縦穴の内部の詳細の確認は他のメンバーがやってくれてる最中だとは言っとく。その上で確認したい。ついさっき、あそこの地下の溶岩のある洞窟でフェニックスと戦ってた人っていないか?
イノシシ : ……ん? それならさっきまでヘビの人が『格上に抗うモノ』の取得をやってたよな。あそこのフェニックスが相手だったんじゃねぇか?
ヘビ : まさしくその通りだけど、あれ? 俺、何かやっちゃってた?
コケ : よし、やっぱり戦闘中の人がいたか! ヘビの人、溶岩の洞窟のどっちの方向に行ってた?
ヘビ : えーと、かなり色んな方向に逃げ回ってたけど、取得が終わってたから焼き殺された場所は……入り口から見て少し東の方?
イノシシ : それって、方角的にあの洞窟がある位置と一致するんじゃ……?
ハチ : いやいや、ちょっと待て! 間欠泉って事は水がいるだろ! あそこって水はあんのか!?
イカ : 地下水くらいあるんじゃねぇか? 深海エリアには海底火山もあるしな。
ふむ、どうも水に関する情報は特に無いようだね。……これはハーレさんとヨッシさんの調査待ちになるかもしれないな。
そういや海底火山があるという情報は聞いた事があるけど、具体的にどういう場所かって全然調べてないな。……深海エリア絡みっぽいし、行くとしてもテストが終わって成熟体に進化してからか。
「あぅ!?」
「ハーレ、大丈夫!?」
「はっ!? ヨッシは来ちゃ駄目! エリアが『名も無き溶岩洞』に変わったのです!」
「えっ!? エリアが変わったの!? あ、氷が一気に溶けちゃった!?」
「わっ!? 『略:傘展開』『略:ウィンドクリエイト』『略:風の操作』! ヨッシ、発火草茶を飲んで私だけで少し探索してみるのです!」
「うん、分かった。それじゃその間に私は上を見てくるね」
「了解なのさー!」
なんというかすごいタイミングでハーレさんとヨッシさんの方に進展があったようである。というか、先に下に行ってたのか。俺はてっきり先に上に行ったのかと思ってた。
ここでハーレさんとヨッシさんが二手に分かれての探索か。まぁヨッシさんに調査の為だけに纏火を使ってもらうのも悪いし、上の調査も必要だから妥当な判断だね。
「ぷはー! 発火草茶での適応終了ー! ケイさん、アルさん、見たものを報告していくのさー!」
「ほいよっと。だけど無茶はするなよ?」
「そうだぞ、ハーレさん」
「それは分かってるのですー! とりあえず落ちた場所は空洞になっていて……あ、水が流れてきてるよー! こっちは……わぁ!」
「ハーレ、何があったのかな?」
「ここ、溶岩の洞窟の天井部分に近いのです! 多分だけど、下からはまともに見えなさそうな感じー!」
「あー、そう来たか」
「あ、ちょっと広い横道があるからそっちも見てくるねー!」
「ほいよっと。アル、とりあえずここまでの報告に行くぞ」
「だな。今のはかなり重要な情報だ」
溶岩の洞窟の内部からでは視認しにくい位置にある水が流れ込む空洞か。そこに……多分だけどフェニックスを筆頭に一気に加熱するようなきっかけがあれば、間欠泉となって水蒸気とお湯……いや、この場合は熱湯だろうね。まぁそれらが噴き上がっていく状況が完成するんだな。
キツネ : おーい、コケの人ー? 木3の人ー?
イノシシ : 急に反応がなくなったな。
ハチ : 他のメンバーが調査してるって言ってたし、進展があったんじゃねぇか?
コケ : ハチの人、大正解! 見つけた縦穴を降りていったら、溶岩の洞窟にエリアが切り替わって、水が流れ込んできてる空洞があったそうだ。位置的には天井付近で、洞窟内からだと死角になるんじゃないかってさ。
木3 : そこで更に横穴を見つけたらしいから、今はそっちの調査をしにいってる。それと縦穴の上側も手分けをして調査を始めたぞ。
ハチ : マジか……!
草花3 : あそこ、敵は弱くないし、フェニックスも彷徨いてるから天井付近のチェックはあんまり出来てなかったよね?
イノシシ : そもそも俺は天井付近をくまなく探せるような構成になってねぇよ……。
ヘビ : 俺は空中を移動してた時にフェニックスの昇華魔法を天井に向けてぶっ放されたな! もしかしなくても、空洞ってあそこかー!
木 : そういう条件じゃ、中々見つからんわ。それ、通常時でも一応間欠泉にはなるけど、コケの人達が遭遇した時より頻度も規模も小さいとかじゃねぇの?
コケ : あ、その可能性はあるのか。
そっか、俺らが見たのは大規模なパターンで、通常時はもっと大人しいという可能性は充分ある。まぁその辺は要検証だろうけどね。
でも、そもそも熱せられて間欠泉になるんなら、溶岩だらけの環境でならない方がおかしいもんな。……そうなると、今回の俺らの発見は本当に運が良かっただけか? ま、運も実力の内って事にしとこう。
「あー!? 発火草の群生地を見つけたのです! そしてまたエリアが『封熱の霊峰』に切り替わったのさー!」
「ハーレさん、本当か!?」
「嘘は言わないよー! 横穴が結構上りになってて、その先にお湯に浸かった発火草が大量に咲いているのさー! こういうのなんていう地形だっけ!?」
「こっちも群生地はあったよ。ここ、棚田みたいになってるみたいだし、下っていけばハーレのいる場所まで通じてるかも? ちょっとそうしてみるね」
「おー!? それなら私はちょっと上の方まで登ってみるのです!」
ふむふむ、発火草の群生地があるというのは予想通りといえば予想通りではある。でも、棚田みたいな地形っていうのは予想外だったね。……イメージは出来るんだけど、どういう名前なのか、地味に知らないような気がする。
「洞窟内で棚田みたいな地形って言うと、石灰華段丘か」
「アル、解説よろしくかな!」
「……解説と言われてもな。『百枚皿』とか言われるリアルの鍾乳洞にあるヤツって程度しか知らないぞ?」
「って事は、ここって鍾乳洞?」
「知らん。そもそも溶岩が普通に流れてる洞窟とかゲームじゃ良くあるが、リアルじゃ根本的に人が入れる環境じゃねぇからな」
「……確かにそりゃそうだ」
確かそもそも溶岩洞ってマグマが固まった部分と流れ出た部分に分かれて、それで出来た空洞が洞窟になってるってものだった気がする。
まぁゲーム的に作られているエリアで、リアルではまずありえない環境っていうのもありだよね。活火山の火口でマグマが見える観光地とかはあるけど、溶岩が流れてて中に入れる洞窟は聞いた事ないわ! いや、探したらあるのか……? まぁそれはリアルの話だし、今はどっちでもいいか。
「ヨッシを発見なのさー! あ、上ってそれなりに広いんだー!?」
「あ、ハーレ、上がってきたんだね。うん、上はアルさんのクジラでも来れそうだよ」
「なるほど、そっちは俺みたいな大型種族でも通れる別経路って訳か。でも、それなら上からは見えるんじゃねぇか?」
「……あはは、露骨に崩れたっぽい大岩がいくつもあるよ。さっきの盛大な間欠泉で崩れて、見えるようになったのかも?」
「あー、そういう感じか」
「偶然に偶然が重なった感じっぽいな」
「確かにそんな感じかな?」
多分だけど、定期的に小規模な間欠泉が発生して、その蒸気が今俺らがいる洞窟内から繋がる縦穴を見つけるヒントになっていて、そこから岩山の上で見えないように隠している岩を撤去というのが正規に発見手順みたいな気がするね。
もしくは岩山の上に登ってから、棚田みたいになっている発火草の群生地を見つけるという手順か。……今回の発見はイレギュラーなのかもしれない。
でもどのくらいの大岩があるのかは分からないけど、その崩れた事に俺らが気付かなかったというのに違和感があるね。
よし、疑問点はあるけど、とりあえず大体の概要は分かった。それじゃ今の内容を情報共有板のみんなに伝えていこうじゃないか。
コケ : ――という感じだ。報告は以上!
イノシシ : 偶然に偶然が重なって見つけたって感じか。持ってんな、コケの人達。
ヘビ : これって実は俺って大手柄!?
ハチ : 偶然だけど、まぁヘビの人も大手柄には違いねぇな。
キツネ : 色々と分かったのはいいが、少し疑問もある。
木3 : キツネの人、岩が崩れた音がしなかった部分か?
木 : あー、それは確かに妙だな。聞いている限りの規模なら、近くにいる奴は音で気付いても良さそうなもんだが……。
ふむ、やっぱりそこに違和感はあるよな。でも獲物察知は使っていたけど……あ、そういえば真上では青の群集がフィールドボスと戦闘をしていた反応があった気がする。
コケ : 今思い出したけど、その時は青の群集が岩山の上でフィールドボスと戦闘してた反応があったぞ。
キツネ : あ、それなら俺も見た。流石に遠くて具体的に何をやってたかは見えなかったけど、盛大に空中戦はやってたな。……そういやいつの間にかいなくなってるな。
草花 : もしかして、今回の発火草の群生地については青の群集は知ってた?
ハチ : その可能性はないとは言えなさそうだ。フィールドボスと空中戦をしてたなら、あの高さも問題はないのは間違いないしな。
ヘビ : ま、そこは良いんじゃね? それより俺はスクショを撮りに行きたいんだが!
リス : 確かにそれは撮りにいかないとねー! あ、ただいまー! 情報は仕入れてきたよー!
イルカ : おかえり、リスの人!
イカ : おっしゃ、良いタイミング!
俺らの方の要件が片付いたタイミングで、同族統率に関する情報を仕入れてきたレナさんが戻ってきたね。まぁタイミングが良過ぎるから、書き込むタイミングを見計らっていた可能性はありそうだけど。
とりあえず俺らは俺らで、洞窟を抜けた後に発火草の群生地とやらを見に行きたいとこだな。今ならそう混雑せずに独占状態に近い状況で見れるはず!
さて、同族統率の情報に関してはヨッシさんが確認して欲しいと言ってたし、しっかりと情報を仕入れておきますか。
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