第865話 みんなと合流して


 さて、今日の午前中のLv上げはとりあえず封熱の霊峰に行く事に決まった。そこから後はその時の状況次第にもなったね。


 ケイ    : それじゃ転移の実を使って現地に集合?

 アルマース : ハーレさんが望海砂漠にいるなら、合流してからよりはそっちの方がい良いだろうな。


 ハーレ   : 私は現地集合の方がありがたいのさー!

 ヨッシ   : そだね。そういえばサヤって今どこにいるの?

 サヤ    : 私はミヤ・マサの森林かな。

 ケイ    : あー、あっちの方にいるのか。……サヤ、実は近くにツキノワさんと黒曜さんがいたりする?


 サヤ    : うん、2人ともいる……あれ、ツキノワさんが呼んでるから少し待っててかな。

 ケイ    : ほいよっと。


 クマの集まりだし、場所がミヤ・マサの森林ならもしかしてと思ったけど、やっぱりツキノワさんと黒曜さんも来てたんだな。

 休日ともなれば、普段のログインとは違う時間帯の人もいるんだね。というか、それを言えば俺らだって午前中にログインする事は普段はないか。


 アルマース : ツキノワさん、サヤにどういう用件だろうな?

 ヨッシ   : 何か伝え忘れとか?

 ハーレ   : はっ!? 私の方もアリスさんが呼んでるのです!

 ケイ    : ん? ハーレさんの方もか?

 ハーレ   : 同じ内容かもしれないけど、聞いてきます!

 ケイ    : ほいよっと。

 ヨッシ   : うん、分かった。……なんだろね?

 アルマース : 何か俺らに伝えときたい検証案件でもあるのかもな。

 ケイ    : あー、それはあるかもなー。


 ツキノワさんとアリスさんは共同体にはしてないみたいだけど同じ検証PTのメンバーだし、そこら辺から俺らに何か試して欲しい事があってもおかしくはない。

 ま、とりあえずサヤとハーレさんが戻ってきたら分かる内容だし、それを聞いてから考えればいいか。


 サヤ    : みんな、大急ぎで森林深部に戻ってかな!

 アルマース : サヤ、急にどうした?

 ケイ    : なんで森林深部?

 ヨッシ   : サヤ、とりあえず落ち着いて?

 サヤ    : あ、ごめんかな……。

 ハーレ   : 泥濘みの地にある進化記憶の結晶のボーナスが発生したらしいのさー! まだ情報が広まる前だから、大急ぎで行けば順番待ちにはならないかもしれないのです!


 サヤ    : うん、そういう事かな!


 ちょ、泥濘みの地で進化記憶の結晶のボーナスタイムが発生中!? 光る方のは残り続けるって話だったけど、こういう形で大人数が手に入るようになるのか!


 ケイ    : 状況は把握した! みんなで集まってからだとタイムロスがあるから、各自で取りに行こう!

 アルマース : 了解だ!

 ヨッシ   : それが確実だね。

 ハーレ   : 確保してから合流なのさー!

 サヤ    : うん、それで良いと思うかな!


 よし、そうと決まれば即座に移動だ。……流石にミズキの森林の北の端である現在地から泥濘みの地まで行くのは帰還の実を使った方が早そうだな。まぁ帰還の実については他の群集拠点種のもあるから、今ここでエンの分は使っても問題ないだろ。


<『ミズキの森林』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>


 という事で、エンへの帰還の実で即座に森林深部に戻ってきた。ふむ、パッと見ただけでも大慌ててで泥濘みの地の方に飛んでいってる人が数人見えたから、その人達はボーナスタイムが発生している情報を得た人だろうね。

 でもまだ知っているのが大人数という訳ではなさそうだ。……もしかするとシオカラさんかモコモコさん辺りが気付いて、PTメンバーとその近くにいた人達に伝えているくらいの範囲か?


 流石にボーナスタイムとはいえ数には限りはあるだろうし、これは早めに情報を貰えたのがラッキーなのかもね。この手の情報は待ち時間が発生しそうだし、同じ群集でも大々的には広めたくはない。

 よし、同じ方向に大急ぎで移動している人がいる事でボーナスタイムに勘付かれる可能性が上がるし、その前に大急ぎで移動してしまおう。


「お、ケイさんじゃん! お先! ほい、ほい、ほいよ!」

「あ、カインさん!?」

「あー! ケイさんがちょうど良いとこにいたのです! ケイさん、私とアリスさんも乗せてってー!」

「ケイさん、乗せてもらえない?」

「アリスさんは情報料って事で問題なしだな! 飛ばすから2人とも落ちるなよ!」

「「はーい!」」


 森林深部の木々を飛び移って移動していくカインさんを追いかけるような形で、ハーレさんとアリスさんを水のカーペットに乗せて大急ぎで泥濘みの地まで飛んでいく。

 飛行鎧に切り替えても良いけど、既に速度を上げている最中だと変な事になりそうだからやめておく。


「あっ!?」

「カインさん、お先に!」

「くっそ、飛ぶのはやっぱり速いな!?」


 おし、先に進んでいたカインさんはすぐに追い抜いた。ふっふっふ、カインさんは飛行手段を持っていないみたいだね。カインさんは深い森の中での移動としては充分速いけど、その森の上を飛ぶ方が遥かに速い!


「ハーレさん、アリスさん、何かに当たりそうになったら対処よろしく!」

「了解なのさー!」

「あ、これって移動操作制御なんだね。うん、了解です」


 とりあえずこれで不意な衝突防止はハーレさんとアリスさんに任せればいい。水のカーペットも出来るだけ落ちないように、端の方は落下防止用に曲げているから大丈夫だろ。


「あ、ケイ、ハーレ! アリスさんもいるかな!」

「お、サヤか」


 後ろからサヤの声が聞こえてきたから……って、あれ? 俺も結構飛ばしてるんだけど、サヤが後ろから追いついてきた? 竜は飛行種族だから飛ぶのは速いはずだけど、サヤはそういう方向性では強化してなかったような気も……?


「『略:突撃・風』! 追いついたかな!」

「おー!? 大型化したサヤの竜が突撃してきたのです!?」

「あ、サヤさん、こんにちは! ツキノワ達は?」

「えっと、ツキノワさんと黒曜さんは陸から行ってるかな。のんびり行くから先に行っててって伝言を預かってきたよ」

「そっか、了解! 2人は結構数を持ってるから、私達を優先してくれるんだね」


 ふむふむ、ツキノワさんと黒曜さんは大急ぎで取りに行くつもりは特にないようだね。まぁ必ずしも大急ぎで取りに行かないといけない訳じゃないし、アリスさんの呟き的にPT内での所持個数に差があるってのも理由みたいだな。


 とりあえずサヤと並んで飛んでいくけど……今のサヤの竜は、緑色のオーラを纏っているから風属性を付与した突撃で加速してきていたって感じか。


「サヤ、見せたいって言ってたのはその竜の移動特化にした状態か?」

「うん、これも見せたかった1つかな。風属性で移動速度の強化が入った突撃で一気に距離を詰められるようになったよ。威力はあんまりないけどね」

「あー、まぁサヤの竜は魔法型だしな。物理攻撃の威力が低いのは仕方ない」


 でも、移動速度に特化させてクマの移動補佐に使うというのはありだな。……突撃なら並列制御に組み込んでも負担は少なめだろうし、一気に距離を詰めたい時には有効な手段だ。特に足場が悪い場所や、空中戦には役立つはず。


「っと、そろそろ着くか」

「エリアが切り替わったら、速度を落とすかな!」

「それから経験値増加アイテムを拾いに行くのです!」

「待ち時間が少ないと良いけどねー」

「そういやアリスさん、情報源って誰なんだ?」

「んー? シオカラとモコモコだよ。2人はハイルング高原にいたんだけど、なんとなくで覗いてみたら光る蓮が大量にあったんだって」

「あー、一般生物としては蓮なのか」


 泥濘みの地は湿地エリアだし、蓮があるのはそう不自然ではないか。でも昨日見た時はそんなに蓮は多くはなかった気もするけど、ボーナスタイムに増加する感じなのかもね。


「蓮って事は、アイテムとしてはレンコンになるのかな?」

「あー、そういやそうなるのか」

「ふっふっふ、蓮は葉っぱや茎も食べれるのさー!」

「あ、ゲームとしてアイテムはレンコンになるみたいだよ。通常だと生で食べても大丈夫なHP回復をアイテムで、今回のは『経験値のレンコン』だって」

「なるほど、そういう感じか。引き抜けば良い感じ?」

「うん、モコモコはそう言ってたよ」

「ほいよっと」


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『泥濘みの地』に移動しました>


 そうしている間にエリアの切り替えが完了した。チラッと妨害ボスを瞬殺している人達が見えたけど、そういうのを見たら昨日のうちに妨害ボスを倒しておいて正解だったね。

 さて、その時にアルが水流に乗って流れてきている様子も見えたし、おそらくヨッシさんも一緒にいるだろうから、そこまで極端な時間差にはならなかったっぽい。


「んじゃ、アル達も向かってきてたし、俺らは先に行っとくか」

「えっと、シオカラとモコモコは……あ、いた!」

「ケイさん、サヤ! ここから南なのさー!」

「ハイルング高原の方向かな!」

「だな。って、すごいな!?」


 うわー、もう既にそれなりに人が集まってきているけど、湿地に生える大量の光る蓮って不思議な感じだね。……一応スクショを撮っとこ。

 てか、この光景は夜の日ならもっと映えたような気がするけど、そこは少し残念だったかも。まぁこれは運が絡むし、仕方ないか。


「今の段階なら待たずに手に入れられそうだな」

「そだねー。あ、私はシオカラとモコモコのとこに行くけど、乗せてくれてありがとね!」

「俺らとしては情報提供に感謝だし、お互い様って事で!」

「あはは、確かにそだね。それじゃまたねー!」

「アリスさん、またねー!」

「シオカラさんとモコモコさんにありがとうって伝えておいてかな!」

「うん、伝えとく。それじゃみんな、またねー!」


 そうしてアリスさんは俺の水のカーペットから飛び降りて……あ、足が湿地に埋まってる。これは助けに……あぁ、自力でなんとか脱出できたっぽい。

 ここの湿地エリアは青の群集の森林エリアに隣接している涙の溢れた地や、灰の群集の森林エリアの隣接のスターリー湿原と比べると水分量はかなり少なめなんだよな。泥がメインって感じで、ちょいちょい水溜りがあるような感じ。


 整備クエストで作られてる木の足場は……地味に大量の蓮がある場所までは繋がってないっぽいな。そういう意味でも地味に見つけにくい位置か。


「とりあえず混み出す前に確保していくか。サヤ、ハーレさん、地面に降りれるか?」

「一応やってみます!」

「私は完全に足を取られそうだから、竜の上からなんとかするかな」

「ほいよっと」


 俺は……ロブスターの足は先が尖ってるし埋もれる気しかしないから水のカーペットの上からいくか。うん、折角泥が操作出来る事を確かめたんだし、それを活用していきますか。

 さて、それじゃ光ってる蓮があって、人がいない部分に移動してから採集開始! 確か同じ場所のは1個までで、定期メンテで個数リセットだったよな。


「えいや! あ、足が埋まったけど……『アースクリエイト』『土の操作』! これで足場は大丈夫なのです!」

「あ、そういうのもありかな。私はとりあえず上から引っこ抜いて……あ、取れたかな!」

「私は引っこ抜くのは無理だから、泥を掘るのです!」

「……これ、仕留めるのじゃ駄目なのか?」

「はっ!? 種類にもよるけど、それでもいけそうなのさー!」

「だよなー」


 仕留めて手に入れる一般生物のアイテムと、仕留めないで手に入れる一般生物のアイテムはあるけど、これはどっちだろう?

 ちょっと特殊なアイテムだし、レンコンを引き抜くのは種族によっては大変そうだし、どっちでもいけるようにはなってそうな気はする。ま、ちょっと試してみるか。


 という事で、蓮の茎の部分をロブスターの右のハサミで挟み、そのまま閉じてチョキンと切ってみる。流石にスキルまでは必要ないと思ったけど、予想通りに普通に切断出来た。


<『経験値のレンコン』を1個獲得しました>


 よし、取得もこれで問題はないみたいだね。ただ、獲得出来る個数は1人1個限定されてるし、不用意に範囲攻撃で駄目にしない方がいいだろう。

 仮にそれをした際にどういう風になるのか興味がない訳じゃないけど、流石にそれで駄目になった場合はみんなに恨まれそうだからやめとこ。


「私のリスの腕力で茎をへし折れたのさー! ちゃんと取得になるみたいなのでホッとしたのです!」

「ま、ハーレさんのリスは腕力はあるもんな」

「えっへん!」


 おっと、そうしてる間にアルとヨッシさんも到着したみたいだね。2人とも俺らを探してるみたいだけど、サヤは竜が普段と少し様子が違うし、俺とハーレさんは地面に近いし蓮が邪魔して見つけにくい様子だな。

 とりあえず少し高度を上げて見つけやすくしておこうっと。


「アル、ヨッシさん、こっちだ、こっち!」

「あ、アルさん、あっちみたいだよ」

「みたいだな。それにしても、すげぇな、これ」

「あはは、確かにね」


 そうしてアルとヨッシさんもやってきて、合流となった。まだ混雑する前だから、アルとヨッシさんの分もすぐに確保出来るだろう。


「ケイ、ここのはどんな感じだ?」

「レンコンだな。蓮を仕留めるか引き抜けば、経験値増加アイテムとしてインベントリに入ってくるぞ」

「レンコンなんだ? これって調理は出来るの……?」

「それは気になります!?」

「……貴重なアイテムだから中々試すのに勇気がいるね。まぁ一応レンコンは生食いけるから、そのままでも大丈夫だけど」

「ま、今すぐ使うつもりもねぇし、使う予定が出てきた時に考えたらいいんじゃねぇか?」

「あはは、アルさんの言う通りかも。とりあえず普通のレンコンを入手して、そっちで試してみるのが先だよね」

「ヨッシ、期待してるねー!」

「……調味料がほぼないのが悩みだけどね。まぁ今はとりあえず手早く採取しちゃおうよ」

「だな。俺は引っこ抜くか。『根の操作』! よし、確保完了だ」

「それじゃ私は仕留める方でやろうっと。『アイスニードル』! うん、私も問題ないね」


 ちょっと予定外に経験値増加アイテムの入手のチャンスがあったから慌てて取りに来たけど、情報を得るのが早かったおかげで特に待つ必要はなかった。

 これで全員分は確保出来たし、そろそろ話を聞きつけた人も増え出してきたようである。もうこれ以上この場に止まる必要もないか。

 

 

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