第858話 スキルの連携


 さて、エンの上空へと辿り着いた。ミズキの森林に転移する為に来たけど、それなりに混雑はしているね。

 すぐに転移していっても良いけど、ちょっとここの様子が気になるし、少しだけ眺めていくか。


「ヒノノコ戦のPT、2PTで募集中! 枠は後2人! 瘴気石+15を使うから、未成体Lv15前後の人に限定だぞ!」

「お、ちょうど適正だ。そのPT良いか?」

「お、水属性のリスの人か。おう、問題ないぞ!」

「んじゃよろしく!」

「おうよ! ヒノノコPT、後1枠だー!」

「あー、ちょっと適正Lvに届かないか……」

「そこのイノシシの人、その次に+10でやるけど、もし適正ならどう?」

「お、そりゃありがたい!」

「軌跡集めのPT募集中ー! 集めるのは水属性だから、水の昇華持ちの人で興味ある人はどうぞー!」

「……軌跡集めのPT?」

「それって何やんの?」

「えっと、敵の纏属進化を誘発させて進化の軌跡を確定で落とさせる感じね。欠片じゃなくて小結晶の方を直接狙うんだよ」

「あー、そういやそんな情報をまとめで見たな」

「……魔法産の環境に一定時間、閉じ込めるのが条件だったっけ?」

「そうそれ! 未成体の低レベルでやるから経験値はあんまりないけど、自分で使う用や、トレード用にどうだい?」

「……行ってみる?」

「ちょっと試しに行ってみるか」


 ふむふむ、色々な野良でのPTの募集が行われているね。ヒノノコ戦が順番待ちで複数PTになっているのか。なるほどなー。

 そういや食わせる瘴気石の強化具合でフィールドボスみたいなLvの変動があるんだったっけ。強化具合が+19までの瘴気石は作れるようになってるし、こういう形でヒノノコ戦をやってたりするんだね。

 まぁ俺らは今の可能な範囲での適正は超えてしまっているから、ここでのLv上げは厳しそうだ。……そもそも順番待ちになってるしPT毎にLv帯が変わるのなら、こればっかりではどうにもならないか。


 それにしても沼ガメの周回PTがいないと思ったら、敵の纏属進化を誘発して進化の軌跡を集めるというPTが出てきているんだな。うん、これは予想的中!

 まぁ妨害ボスの周回PTだと手に入るのは成長体用の進化の軌跡の欠片だしね。不動種の人か、群集拠点種で上位変換をしてもらえるとはいえ、直接手に入るならそっちの方が楽ではある。


 さてと、他にもトーナメント戦の募集とかもしてるけど、これから試したい事があるからそこはパスだな。今から参加だとみんなと合流も時間的に怪しくなる。

 もしトーナメント戦に参加するなら、テストが終わってからになるかもね。……どこかのタイミングで空白の称号を調達しておきたいもんな。


 まぁ、パッと見た感じでは普段から交流がある人は特にいなさそうだし、とりあえず今はミズキの森林に転移しますか。北部にある湖、空いてればいいけども……。


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ミズキの森林』に移動しました>


 よし、エンから転移してミズキの森林に到着! あー、こっちはこっちで結構人がいるね。流石は休日の土曜日、平日よりもログインしている人が多い。

 お、平べったい岩の上に乗って飛んでるネズミの人がいるね。他にも移動操作制御っぽいので飛んでる人もいるようだ。ま、それはいいか。


 えーと、モンスターズ・サバイバルの本拠地になっている方の湖には多分ヨッシさんがいるだろうけど、今はそれぞれの自由行動の時間だから特に用が無ければ顔を出す必要もないな。



 という事で、上空を飛んでサクッと北の方に移動開始! 虫や鳥が飛び出てきて水のカーペットが解除にならないように気をつけて……あ、折角だし威嚇を使いながら行くか。

 あんまりあれを鍛える機会も無いし、今のミズキの森林は特訓がメインで敵を狩るのをメインにしてる人はそういないもんな。よし、邪魔にはならなさそうだし、その方向でやっていこう。


<行動値を2消費して『威嚇Lv2』を発動します>  行動値 77/79(上限値使用:2)


 水のカーペットの上でロブスターの両方のハサミを広げて……うん、なんというか効果を実感しにくいんですけど!? 使うなら獲物察知と併用して、動きが分かるようにしないと駄目か?

 うーん、そもそも使ってから考えても仕方ないんだけど、昨日のオオサンショウウオみたいな成熟体を除けば格下しかいないミズキの森林で使って何の意味が……? 普通にしてたらここの敵は近寄ってこないはず。


「うぉ!?」


 ん? 何か後ろの方から慌てたような声が聞こえたけど……って、さっきのネズミの人が地面に落下していってる!? え、なんで!?


 あれ? さっきネズミの人が飛んでた辺りに大慌てで逃げていくような様子の一般生物の小鳥が……って、あー!? 今のってもしかして、俺のロブスターの威嚇のせいか。

 という事は昨日俺の移動操作制御に虫が衝突して墜落したのは、誰かが威嚇を使ってた……? くっ、まさかそんな所に落とし穴があるとは……。


「って、ネズミの人!」


 あ、墜落していたネズミの人は空中で岩の操作を通常発動したみたいで、普通に飛行態勢に戻っていた。というか、その次の瞬間にはミズキから転移していったっぽい。

 うーん、今のは完全に謝りそびれた……。次からは戦闘中はともかく、ただの移動中での威嚇の使用については気をつけないと駄目だな。


 よし、反省はした! 謝りそびれたのは悪い気もするけど、転移したのを追いかけてまではなー。

 そもそも名前をしっかり見てなかったから、他の人が沢山いる中で割といるネズミの人の判別が出来る気はしない。うん、今回のは仕方なかったって事で、移動を再開しよう! ……ただし、威嚇の効果が切れるのを待ってから。




 そんな事がありつつも移動を再開して、ミズキの森林の北部にある浅い湖へとやってきた。流石にエリアの端の方だから、ここで特訓している人は今はいないようである。まぁただ単に今空いてただけかもしれないけどね。

 この浅い湖ってミズキが半覚醒の黒の暴走種だった時に植わってた場所だけど、今はただの浅い湖になってるんだな。ま、そこは特に重要じゃないから別に良いや。


 肝心なのは切断に使う為に使いたい岩だけど……前より数が減ってるような気がする。前は大きな岩が結構転がってた気がするんだけど、何かに使う為に持ち出された?

 でも、ここの岩をどう使う……って、そういや十六夜さんが桜花さんの所に加工した岩を持ち込んだとかあったっけ。そういう材料に使われて、まだ復活してないタイミングなのかもしれないね。


「ま、いっか。とりあえず的としては充分な数はあるしな」


 それほど大量の岩が必要な訳じゃないし、今あるだけで充分だろう。えっと、水のカーペットからは降りなくてもいいか。特に乗ったままでも問題ないしね。

 という事で、早速やっていきますか。今の俺の状態で、水流の操作と砂の操作の連携によるウォーターカッターの威力がどうなるのかを!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 78/79(上限値使用:2): 魔力値 219/222

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 76/79(上限値使用:2): 魔力値 216/222

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 間違っても昇華魔法にならないように距離を離して水と砂を生成していく。後で追加生成は出来るから、今は砂は控えめに、水はそれなりに多めに生成っと。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を19消費して『水流の操作Lv4』は並列発動の待機になります>  行動値 57/79(上限値使用:2)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を38消費して『砂の操作Lv3』は並列発動の待機になります>  行動値 19/79(上限値使用:2)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 まずは水流と砂は個別に操作して、水流は頭上で渦を巻くように流れを操作していく。砂はまだ水流には混ぜずに個別に置いておいて……さて、ここから微調整だな。

 ただ単純に混ぜて一緒に動かしただけでも威力は上がるんだろうけど、多分砂が多過ぎても少な過ぎても効果が薄れる気がする。……詳しい物理的な知識は持ってないから、この辺は感覚でやるしかないか。


「……それにしても、消費が激しいな」


 流石に応用スキルの操作系スキルを並列制御で使おうとすると、行動値の消費が半端ない。水のカーペットの発動分だけ上限値は減ってるけど、それでも結構行動値は増えたんだけどなー。

 ま、この辺りはLv上げや進化で地道に増やしていくしかないから仕方ないか。消費が激しい分だけの効果はあるだろうしね。


 さて、それじゃ渦を巻いている水流の中に砂を混ぜ込んで、砂を水流の流れに乗せつつ加速をしていく。ふむふむ、水流の影響で砂が加速して、砂も操作で加速する事で水流の流れも加速されて……あ、思った以上にこれって制御が難しい!?

 前に使った時は砂の操作が全然育ってなかったから水流の操作で強引に動かしたけど、育った状態で両方を合わせてやると一気に操作時間が削られてるがな!


 もうちょい砂を全体に行き渡らせてからと思ったけど、こりゃキツい。よし、とりあえずこの段階で岩にぶつけてみるか。えーと、水流の先を絞って、砂と一緒に一気に加速!


「……あー、こうなるのか」


 くっそ、ある程度は水流を絞ったけど、あのオオサンショウウオがやってた程には収束が出来なかった。……水流を絞って、そこに砂を流し込みつつ加速させるのが地味に制御の難易度が高いっぽい。


 うーん、これだと砂の操作はほぼ流れに任せるだけにして、水流の操作のみで強引に押し切った方が楽かも? 今ので操作時間は全部使い切ったし、今のだと無駄な動きが多いのかもしれないな。

 まぁこれでも岩に直径20センチくらいの結構深めの窪みが出来るくらいの威力はあったけど、オオサンショウウオがやってたみたいに綺麗に切断とはいかないね。


「少し砂の操作の制御を緩めてみるか……」


 いや、その前に水流の操作のみで現状でどこまで絞れるか試してみた方がいいかもしれない。オオサンショウウオの水流の操作のLvは分からないし、今の俺ではあそこまで細く絞る事が出来るかどうか、そこが分からない。

 てか、どっちにしてももう1発同じ事をしようと思っても、行動値が足りないしね! ……とりあえず水流の操作だけで試してみてから、適当に成長体を探して行動値の回復速度を上げる為に養分吸収でも使っとくか。

 

 という事で、今度は水流の操作のみでどこまで出来るのかを確認して……って、よく考えたらこれでも生成と操作の両方をするには微妙に行動値が足りない!?

 くっ、足りないのは行動値1とはいえ、1足りなければ発動出来ないんだからどうしようもない。……仕方ない、先に養分吸収をする敵を探して回復速度を上げてしまうか。


「……やっぱり獲物察知を使った方が良いよなー」


 ミズキの森林は基本的に成長体ばかりなので、普通にやったら近寄ってこないからな。まぁ威嚇という追い払うスキルを近場で使われた場合はそうではないのを、さっき実感したばかりだけど。

 今回は獲物察知を使って、奇襲していきますか。出来れば唯一未成体でこのエリアにいる水砲ザリガニを見つけれたら良いんだけどね。


<行動値を4消費して『獲物察知Lv4』を発動します>  行動値 15/79(上限値使用:2)


 さて、水のカーペットで高度を上げて獲物察知の反応を確認して……ほほう? 近場に黒い矢印がいくつかあるね。少し動いてみると、俺の動きに反応して逃げるように動いているけど、逃げるのが他のより速いのが1体いるね。

 これはひょっとするとひょっとする? 今はこの近くにいる逃げ足の速い敵を狙っていくか。よし、その敵に向けて移動開始!


<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 11/79(上限値使用:2)


 養分吸収を使う為にも左右のハサミの表面にコケを増殖しておいて……って、行動値の節約をしといた方が良かったか? うーん、まぁ今更遅いし、養分吸収を発動するくらいの行動値はあるからいいや。


 お、逃げるのが速い黒い矢印の先には、いたら良いなーって思ってた水砲ザリガニがいた。ふっふっふ、妙なところで運がいい!

 とりあえず水のカーペットを加速させて、水砲ザリガニに追いついて真上に到着。そんじゃ、俺の行動値の回復速度の贄となってもらおうか! ……避けられても面倒だな。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値5を消費して『はさむLv5』は並列発動の待機になります>  行動値 6/79(上限値使用:2)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値6を消費して『養分吸収Lv3』は並列発動の待機になります>  行動値 0/79(上限値使用:2)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、無駄に行動値を全部使い切ってしまったけど、水砲ザリガニの真上から右のハサミで首……ザリガニって首で良いのか? まぁ首っぽい部分を挟み込んで動きを封じて、左側のハサミのコケに核を移動させてから養分吸収を発動!

 おー、Lv差がかなりある筈だから今のでもHPが3分の1くらいは減ったね。ただ何の強化もしてないし、威力の低いスキルだったから死にはしなかったか。


 ん? むしろこれは死ななくて好都合では? 極端に離れた場所に逃げられたら流石に無理だけど、近場なら再び養分吸収が出来るかもしれない。

 よし、とりあえず水砲ザリガニは解放してしまうか。また回復速度を上げたくなったら、今みたいに奇襲しようっと。


 さて、それじゃしばらく行動値の回復を待ってから、水流の操作と砂の操作の連携の微調整をやっていきますか。今の俺の段階で実用範囲を見つけないとね。

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