第852話 激戦の後はまったりと
さて、俺らの1戦目の最終確認の戦闘は終わり、今日はもう俺らはまったりタイムだね。……まぁ次の戦闘をしっかり見るので、完全に気を抜く訳でもないけども。
とりあえず今いる場所は邪魔になりそうなので、切り株が大量にある辺りに移動中。
「そういやレナさんはこれからどうするんだ? 紅焔さん達は俺らと一緒で休憩するみたいだけど」
「んー、空白の称号があればもう1戦くらいするんだけど、流石にもう持ってないからねー。ベスタさんー! 今から新しく空白の称号を取ってきて、また混ざるのはありー?」
「……すぐにとはいかんが、オオサンショウウオがこのまま逃げずに居続けて、メンバーが揃うのであれば構わんぞ」
「あ、そっか。今は湖に戻ってるけど、ずっとそのままな訳ないもんねー。うーん、でも空白の称号は持っておきたいし……うん、決めた。スクショの撮影会に行ってこよう!」
「何がどうしてそうなった!?」
え、スクショのコンテストの賞品に空白の称号ってあったっけ!? あれの報酬はスキル強化の種がメインだった気がするけど……。
「ふっふっふ、空白の称号は頑張ればいつでも取れる可能性はあるけど、スクショのコンテストの報酬は数に限りがあるし、終了期限も決まったからねー! オオサンショウウオはずっとは居ないし、優先順位の変更だよー!」
「あー、なるほどね」
「それは特に問題ないよね、ベスタさん?」
「……まぁ全員に居てもらわなければならない訳ではないから、ケイ達と紅焔達が構わないのであれば問題ないぞ」
「という事だけど、わたしは行っても大丈夫ー?」
ふむ、ここでレナさんについては離脱って事か。まぁ分かってる範囲の内容は共有出来てるし、レナさんが不在でも特に問題はないだろう。
他のみんなも頷いているから、特に反対意見もなさそうだ。それに色んなとこに行くのがレナさんでもあるしね。どうしても必要な用事がない限りは無理に引き止める理由もないな。
「問題なさそうだぞ、レナさん」
「そうみたいだねー! それじゃわたしは、スクショの方に行くよー! さーて、どこの会場に行こうかなー?」
そうしてレナさんは腕を組んだ状態でぶつぶつとどこに行くかの独り言を呟きながら、森林深部の方に歩いていった。
俺らももうちょい余裕があればスクショの方に行きたい気もするけど、明日はがっつりとLv上げをするつもりだしなー。
さて、俺らは俺らで観戦用のスペースにやってきたものの……地味に人が多いね。っていうか、いつの間にか人が増えてません?
カンガルーとかクジラとかサボテンとか、森林深部がメインでなさそうな人達が結構来ているような……。
ふむ、ザッと見た感じではあるけど前にフィールドボスの誕生の検証をした際に見た名前の人が結構いるから、灰の群集で検証をやってる人達が集まって来てるっぽい。
逆に灰のサファリ同盟の人とかはそんなにいない……って、同時に全群集が混ざったスクショの撮影会をしてる最中だからそうなるか。まぁそれは良いんだけど……。
「全然スペースが空いてないな……」
「みたいだなー。ケイさん、一緒に話しながらって思ったけど、共同体ごとにしとくしかなさそうだぜ?」
「……あー、そうするか」
出来れば紅焔さん達と一緒にと考えてたけど、アルとライルさんがどうしてもそれなりの広さの場所が必要だもんな。
空中という手段もあるにはあるけど、次の戦闘は普通に地上の高さから見てみたい。オオサンショウウオとの戦闘を外から見たら、どういう風に見えるのか、今後の参考の為にも確認したいんだよね。
「はい! 樹洞の中に入るのはどうですか!?」
「あー、その案は悪いけど却下」
「俺も同じくだぜ!」
「えー!? ケイさん、紅焔さん、なんでー!?」
「……投影越しじゃなくて直接見ときたいんだよ、次の戦闘」
「おう、俺もだな!」
「あ、確かにそれはそうかもなのさー!?」
ソラさん達も俺と紅焔さんの意見に同意するように頷いているのを見て、ハーレさんとしても納得したらしい。
普通の対戦とかなら樹洞越しの投影でも良いんだけど、今回は視点がアルに依存する状況というのは避けたい。自分が気になった部分に自分の意思で即座に見れるようにしたいからね。
「おっ、2ヶ所スペースが空いたな。ライルさん、どっちがいい?」
「……先に選ばせて頂いてよろしいのですか、アルマースさん?」
「ま、どっちも端だし大差ないだろ」
「……確かにそうですね。では、私達は西側の方で」
「おし、なら俺らは東側の方だな。サヤ、流石に狭いから俺のクジラの上に乗っとけ」
「あ、うん、分かったかな」
「それじゃ移動なのさー!」
丁度いいタイミングでアルとライルさんが居れそうな場所が空いたので、そこに向かって移動していく。まぁ紅焔さん達とは距離はあるけど、混雑してるから仕方ないね。
俺らが向かっている場所には杉の木の人を中心にサソリの人やトカゲの人が見えたけど、次の1戦に加わるPTなのかもしれないな。うん、どんな活躍をするかに期待しとこ。
「到着なのさー!」
「……あはは、真っ直ぐ進む事も出来なかったね」
「飛ぶ羽目になるとは思わなかったかな」
「いや、ちょっと検証勢が集まり過ぎじゃねぇ? 知ってる奴、かなり多いぞ」
「あー、アルから見てもそうなのか」
「……まぁな。検証勢じゃなくても、Lvが高い連中も来てるようだが……」
「Lv上げの為かな?」
「それはありそうなのです!」
「ベスタさんみたいに頭打ちになってる人もいそうだもんね」
「あー、そういう人にとってはこの内容の確定は重要になるのか」
俺らとしてもLv上げの一環としてやってるけど、確かにLv上げが頭打ちになってる人にとってはかなり有効な経験値の獲得手段にはなる。
そりゃ気になって見にくるし、検証が終わればLv上げをしようという目論見もあるのかもね。
あ、そんな事を話してたら桜花さんのメジロが飛んできた。うん、ずっと桜花さんは飛び回って忙しそうにはしてるのは見えていたもんな。
これだけの人数がいれば飲み物やつまみの需要は高いだろうし、商人プレイをしている桜花さんとしては絶好の活動機会だよね。
「ケイさん達、お疲れさん。ほれ、俺からの差し入れだぜ」
「お、サンキュー、桜花さん」
「桜花さん、ありがとうー!」
「ありがとかな!」
「あんがとよ、桜花さん」
「桜花さん、ありがとね」
「いやいや、良いって事よ! 良い戦闘を見せてもらったしな!」
あはは、まぁ負けるのが前提の戦闘だったけど、そういう風に言ってもらえるのは嬉しいね。
でも、在庫処分って言ってた割には桜花さんの出している食べられるアイテムの種類が充実してるけど……まぁ差し入れとして持って来てくれたんだし、ここは桜花さんの厚意に甘えさせてもらおうっと。
それから各自、好きな飲み物と果物や焼いた魚や肉などをもらっていった。うん、アイテムとしての質はそんなに良くないけど、味としては特に問題はないね。
「あ、桜花さん、ギャラリーの方はどういう様子だった?」
「ん? 全然攻撃の余波は飛んできてなかったから、のんびりしてたもんだぜ。ま、機会が回ってくれば戦おうって連中は凄い気合だったけどな」
「あー、まぁそうなるか」
巻き込む事がなかったんだし、ただ見物してただけの人はのんびりしてたんだろう。オオサンショウウオの攻撃はひたすら俺らを追いかけてたし、巻き込まれる可能性を承知してくれていたとはいえ、そうならなかったのは良かったね。
そして成熟体と戦闘をしようという人にとっては分析の対象であり、重要な情報の塊だもんな。そりゃ真剣にもなるか。
「あ、次の1戦はツキノワさん達みたいかな」
「確かにツキノワとベスタと話してるな」
「アリスさんもいるのさー!」
「というか、ツキノワさん達は勢揃いしてるっぽいな」
「うん、どうもそうみたいだね」
ふむふむ、森林エリアでの検証勢であるクマのツキノワさん達も今回の検証に参加してきているんだね。
ツキノワさんのPTメンバーであるクマの黒曜さん、ハーレさんと同じ投擲のリスであるアリスさん、羊のモコモコさん、トンボのシオカラさんも揃っている。
まぁログインをしてるなら、検証勢であるあの人達が来てない訳がないか。
「ツキノワ達がこの時間帯に揃ってるのは珍しいな」
「そうなのか、アル?」
「アリスさんはそうでもないが、いつも色々片付けてからログインは10時過ぎが多いとは聞いているが……まぁ明日は土曜ってのもあるんだろうな」
「あー、なるほどね」
俺が小さな頃の話だから詳しくは知らないけど、働き方改革というのがあったらしいからね。その頃にブラック企業と呼ばれていた悪質な企業への罰則が強化されたとかなんとか? 週休2日は絶対になってるんだよな。
業種によって時間帯の例外はあっても、サービス残業とかいう謎の慣習は消え去ったというのは近代史で習った。そのきっかけになったのは一度盛大に流行った伝染病だったらしいけど……まぁ今は特に関係ないか。
「ツキノワさん達が次の戦闘をするのは分かったけど、他の人はどうなんだろ?」
「……ふむ、名前は知らない奴ばかりだな」
「あ、アルでもそうなんだ」
ツキノワさん達の後ろに控えている人達が……えーと、9人くらいか。ふむ、さっきの空いたスペースに元々いた人達で間違いはなさそうだ。
えーと、具体的には杉の木、カエル、サソリ、角の生えたイノシシ、青いトカゲ、空飛ぶサメ、空飛ぶエイ、空飛ぶマグロ……って、空飛ぶ海の種族が地味に多いな!?
いや、俺らのPTも人の事は言えないから、深く突っ込まないでおこう。とりあえず検証勢と言っても、基本的に名前は半匿名だから知らない人も多いし、時間帯の都合で話した事がない人もいるからなー。
「おし、それじゃベスタは外から全体把握を頼むぜ。基本的に俺の方で指揮は取るけど、分断された時は頼んだ」
「あぁ、任せておけ、ツキノワ。だが、口は出すが手は出さないからな」
「そりゃ当然だ。俺らだって、そう弱い訳じゃねぇ」
「うんうん、そうだよね、ツキノワ。ところで今回は湖は濁らせるの?」
「いや、それは無しでいくぞ、アリス。あの水の移動操作制御の破壊もなしだ」
「パターンを変えていくんだね。それは了解!」
ほうほう、次の1戦では俺らがしなかった攻め方に変える訳か。まぁ俺らは攻撃が激化する条件を踏んでしまった気もするし、他の攻め方を試した方がいいだろうね。
「……ところで、オオサンショウウオはどのタイミングで再戦が出来るようになるのかな?」
「そこは地味にかなり重要な条件なのです!?」
「あはは、確かにそれはそうかも……」
「それについては一応の目安はあるにはある。……必ずしも同じとは限らないが、固定位置にいる成熟体では10分ほど待てば問題はなかった」
「……ベスタ、それが違っていると無駄足になる可能性もあるんじゃねぇか?」
「あぁ、それはアルマースの言う通りだ。だが、これは一度試してみるしかないからな……」
「……そりゃそうだな。ツキノワさん達はそれは承知の上か?」
「ま、一応な。もしそこでダメだったなら、もう1戦やるまでだ。その場合はフル連結PTにはするけどな」
確かにこれについては実際に試してみるしか確認する術はない。まぁ次に戦うツキノワさん達は、失敗する可能性も考慮に入れた上でやるつもりみたいだし、俺らが余計な心配をする必要もないか。
てか、それなりに距離があったのに、普通にベスタやツキノワさんが反応してくれたね。まぁ俺らに居ろって言ってたんだし、その辺は注意を払っていたのかな。
「肉食獣、そろそろ前の戦闘が終わってから10分が立つ頃か?」
「あー、あと2分くらいだぜ、リーダー」
「そうか。なら時間が過ぎたら合図を頼む」
「おう、了解だ!」
なんというか、戦闘中はかなり時間が長く感じたけど、戦闘が終わってからこうやって話しているだけでもう8分は経ってるのか。体感時間って分からないもんだねー。
「あ、そうだ。明日の予定を今のうちに決めとかない?」
「確かに決めておいた方が良いとは思うけど、話し合うには時間が短いんじゃないかな?」
「そこはサヤの言う通りだから、今は1部だけな。明日でスクショのコンテストの受け付けが終わるけど、群集を跨いだスクショの撮影会はどうする? 俺としては、他の群集の団体部門にダメ元でも参加しときたいんだけど」
「はい! 私はものすごく行きたいです!」
「流石に1日中Lv上げってのもあれだし、少しくらいならそれも良いんじゃねぇか?」
「うん、私もアルさんの意見と同じだね」
「私もかな。でも、明日の日程はまだ分からないよね?」
「それについては後でレナさんやラックさんに聞いてみたらいけるだろ」
「はい! 私が責任を持って聞いておきます!」
「んじゃ、そこはハーレさんに任せた。みんなも参加するって事で良いか?」
「うん、大丈夫かな」
「まぁ、ちょっとした息抜きだね」
「俺もそれで良いぜ」
「んじゃ、それで決定って事で!」
まだ具体的な日程はわからないけど、まぁそこら辺は確認をしてから詳細を詰めていけばいいだろう。Lv上げについては、スクショの撮影会の予定時間が確定してから考えればいい。
明日はアルも一緒に動けるだろうし、本来今日の夜に予定していた『封熱の霊峰』にある溶岩の洞窟も、カイヨウ渓谷も、両方に行ってLv上げをする事も出来るかもね。
「そういや、夕方にトレードした分は使ってねぇんだな?」
「……あはは、トレードした後にこの検証の件を聞いたからこうなったかな」
「ま、俺もあの時は聞いてなかったからな。流石にさっきの戦闘の後からじゃ、Lv上げに行くのはしんどいか」
「まぁなー。そういや桜花さんは、今回は在庫処分なんだな?」
「おう、そうだぜ。生産してるとどうしても失敗作が出てくるし、初心者の練習用で意外と多いんだよ。そういうのはこういう機会で消費してるからな。普通に回復に使えるやつだと勿体ねぇだろ?」
「確かになー」
お茶系はわざと薄めてただ飲むために使う事もあるけども、初心者の練習用で失敗作も出てくるんだな。ふむ、わざと失敗の例を上げる為に作ってるという可能性もありそうだ。
まぁこうしてそれの使い道があるんだから、決して悪い話でもないよね。焼き過ぎた魚とか肉は見た目や効果は酷いけど、味は悪くはないもんな。ただの観戦でつまむのには丁度いい。
「ベスタ、時間は過ぎたぞ」
「了解だ、肉食獣。ツキノワ、始めてくれ」
「おう! さっきの1戦に負けないようにいくぞ!」
そのツキノワさんの掛け声と共に、オオサンショウウオとの2戦目の戦闘が始まっていく。さて、お手並み拝見といきますか。
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