第851話 情報整理とリスポーン


 最後はベスタ1人でなんか凄いことをしてた気がするけど、とりあえず『烏合の衆の足掻き』の再取得は成功だ!

 最終確認だったから特に条件は心配してなかったけど、このオオサンショウウオの強さがヤバかった。でも、誰もリスポーンを使う事なく達成は出来たね。


 さて、現状ではみんな精神生命体の状態でリスポーン待機状態になってるけど、死んできたばかりのベスタにも説明はしておかないとね。


「どうやら無事に取得出来たようだな。ケイ、最後に確認してた事は……大体の見当はついているがどういう内容だ?」

「あのオオサンショウウオが土の昇華と砂の操作持ちだったってとこだな。俺とサヤで砂を混ぜてるとこを見たしさ」

「やはりそういう内容か。……そのパターンに移るのは、あの水の塊の移動操作制御を破壊した場合の可能性が高いな」

「あの直後の攻撃は特に早かったもんねー! わたしとしても真っ二つになって即死するとは思わなかったよー! いやー、油断大敵だねー!」


 そういやレナさんにしては割とあっさり殺された気はしてたけど、即死級の攻撃が来るとは想定外だったんだろう。まぁ、オオサンショウウオの行動パターンの変化を見られたのは良かったけどね。


「そういやベスタ、この後ってどうすんの?」

「とりあえず、全員リスポーンだな。オオサンショウウオについては、しばらく放置で問題ないだろう。行動値が明確に減っている状態で他の連結PTが連戦をしても『烏合の衆の足掻き』の取得は不可能だからな」

「あ、そこも条件として判明はしてるんだ」


 まぁ今のオオサンショウウオは弱ってこそいないけど、行動値は尽きている状態である。その状況で戦って『烏合の衆の足掻き』が手に入るなら、2戦目の人は楽勝過ぎるからね。


「リスポーンしてからは、外から見てた連中との情報のすり合わせだな。流石にどんな会話をしていたかは把握できていないが、検証勢も結構来ている。今は情報は精査しているところだろう」


 ベスタの言葉に合わせて周囲を見回してみれば、確かに見知った顔もチラホラと見える。灰のサファリ同盟の人は少ないけど、そこは群集を跨いでのスクショの撮影会に行ってるんだろう。


<全ての群集で群集クエスト《各地の記録と調査》が完了しました>

<これにより、スクリーンショットコンテストの受付は明日、6月24日の24時までとなります。受付をお忘れないようにお願いします>

<スクリーンショットコンテストの投票につきましては後日お知らせを行いますので、情報のご確認をお願いします>


 あ、スクショのコンテストの受付終了の案内が出たね。という事は、青の群集も群集クエストはクリアになったんだな。


「おー! スクショの受付は明日で終了なのさー!」

「……どうやらそのようだが、今はリスポーンが先だ。俺らの状況は他の連中には見えてないからな」

「確かにそりゃそうだ」


 死んで精神生命体のみの状態では、普通のプレイヤーには見えないもんな。……そういやこっちからは普通に周りのプレイヤーの会話は聞こえてるけど、これって他の群集の人を盗み聞きし放題なんじゃ!?


「……ケイ、その心配はいらん。見えるのは同じ群集の奴だけだ。他の群集のは聞くどころか見ることさえ出来ん」

「あ、そうなんだ」


 なんだ、一瞬盗み聞きしてきた他の群集の人を倒した後に、結局盗み聞きされてた可能性に思い至ったけど、それは心配いらなかったんだな。

 うん、思いっきり普通に思ってた事と会話が繋がってたけど、また声に出てたんだろうね。……今は気を張った戦闘後で気が緩んでるし、まぁ仕方ないって事にしておこう。


「んじゃ、とりあえずリスポーンしてこようぜ!」

「そうだね。それから……少し荒らした湖の畔を整備するかい?」

「……必要あんのか?」

「……僕はないと思う」

「これは……必要ないでしょうね」


 あー、何を見て辛子さん達が必要ないと言ってるのか不思議だったけど、湖の方を見てみれば一目瞭然だった。

 うん、オオサンショウウオが濁った湖から土を操作して泥水を普通の水へと戻していた。そして除去した土は畔に積み上げられていっている。


「ねぇ、ベスタさん。敵が環境整備をするのって今まで例があったっけー?」

「……覚えがないな。レナがそう聞くという事は、初めて遭遇するパターンか?」

「うん、そうなるよー。そっかー、周囲の環境に適応するんじゃなくて、環境自体を自分好みに変えるってパターンもあるんだねー」


 ふむふむ、思いっきり湖を濁らせまくったけど、その後始末はオオサンショウウオがやってくれている訳か。なんか、俺らが荒らしたのを敵に整備されるのって複雑な気分!


「えーと、いつまでもこうしてても仕方ないな。とりあえずアル達はログアウトして共生進化に戻してからってとこか?」

「まぁそうなるな。ログアウトして共生進化を戻したらランダムリスポーンにはなるが、ミズキの森林なら問題ないだろ」

「ん? あれ? それってどういう仕様?」


 アルの場合はクジラをランダムリスポーンで復活させてから、木のリスポーン位置で共生進化に戻すのかと思ったけど、どうもそうじゃないっぽいね。

 この精神生命体の状態でログアウトすると、何か違ったりするのか? うーん、もう共生進化とは無縁だから地味に分からない……。


「あ、ケイはそのままどっちもリスポーン位置で復活だからピンとこないのかな?」

「ここでリスポーンする前にログアウトして共生進化に戻した場合は、問答無用でランダムリスポーンなのです!」

「一応、両方リスポーンさせてから共生進化にも出来るけどね。あ、でも今回はそれでも大丈夫じゃない?」

「あー、確かに海と違ってすぐに死ぬ訳じゃないから何とかなるな。位置はこっちに合わせればいいし、そっちでいくか」


 なるほど、両方死んで共生進化に戻す場合にはいくつか方法がある訳か。それで実行しようとしているのは、さっき俺が考えてた手段なんだな。

 アルのクジラも、ハーレさんのクラゲも、ヨッシさんのウニも、陸地だからすぐに死ぬという事はないしね。


「俺は待っとくから、みんなは共生進化に戻してきてくれな!」

「おうよ! まずは木でリスポーンだな」

「私はリスなのさー! その方がログアウトは1回で済むのです!」

「そんなに時間はかからないとは思うかな?」

「うん、移動距離も特にないしね」


 という事で、まずはみんなは陸エリアの方のキャラをリスポーンしていく。お、精神生命体の姿がどんどん消えていくから、紅焔さん達もベスタもレナさんもリスポーンしていってるみたいだね。

 さて、俺も近場に設定したリスポーン位置を指定して復活だ! 



 そうして、近場のコケが盛り上がっていき、その下部からロブスターが生えてくるように復活完了! ……同調だとリスポーン位置が2キャラで共通化してるけど、よく考えなくてもこの復活の仕方が凄いな。

 まぁ木が一気に急成長していくアルの木とかも大概だけどね! サヤやヨッシさんやハーレさんは巣から新しく出てくる分だけ、まだ摩訶不思議さは抑えめではある。


 えーと、全滅したから連結PTは自動で解除になって、普通のPTだけになってるね。まぁここは特に問題はないからこのままでいいや。


「おし、それじゃ2ndの方をリスポーンさせてくるわ」

「行ってきまーす!」

「私も行ってくるかな!」

「それじゃ少し待っててね」

「ほいよっと」


 俺はそのままいつもの状態で復活出来るけど、共生進化の場合はどうしても死ぬと解除になるからこの辺が面倒ではあるよね。

 でもまぁ俺と違って盾にして凌ぐ事も出来る……とはいっても、今回みたいな成熟体相手だとそうもいかないのか。うーん、この辺はケースバイケースだからなんとも言えないとこだな。


「そういやライルはどうすんだ? 今回のでかなりLv差は縮まっただろ?」

「えぇ、結果的にはそうなりますね。ですが、今の一戦で疲れたので今日はこのままにしておきます。紅焔は疲れていませんか?」

「あー、まぁ確かにかなり緊張感はあったから疲弊はしてんな。ソラ達はどうだ?」

「……僕も今日はもう戦闘はいいよ」

「……僕もソラに同意ー」

「俺も同感……」

「およ? みんな、そんなにお疲れ気味ー? わたしはむしろ暴れ足りないくらいなんだけどなー? うん、早くに死に過ぎたしね!」


 あー、紅焔さん達のPTは既に疲弊済みだけど、レナさんは元気いっぱいみたいだね。まぁ今回はレナさんにしては暴れ方が全然足りてないような内容ではあったもんな。


「そういやレナさん、湖に潜ってた時に砂って生成されてた?」

「あー、それ? なんか攻撃される直前に妙な水の流れは感じたんだけど、濁ってたしよく分からなかったんだよねー。普通にケイさんが使ってた水流の操作かと思ってさー」

「……なるほど、俺の水流と濁らせたのが仇になってたんだな。そこは、なんというか……すみませんでした!」

「あはは、まぁそういう事もあるさー! それに濁らせたの自体は手の内の1つを暴くのには役に立ったんだから問題なし!」

「……そう言ってもらえると助かるよ」


 レナさんが異変に気付くのを邪魔した側面はあるものの、オオサンショウウオの攻撃手段を暴くという成果があったのも事実ではある。

 まぁソラさんにも言われたけど、成功しかしないというのもあり得ないし、反省はしても気にし過ぎないようにはしておこう。


「なんだか妙に復活に時間がかかってたが、何かあったのか?」

「……肉食獣か。少し脱線はあったが、最後に収集した情報の確認をしていた。そっちはどうだ?」

「あー、なるほどな。あのオオサンショウウオが昇華になった土の操作も持ってるのはさっきの湖の濁りの除去で確信したとこだな。そこからの推測で、水流の操作と砂の操作を混ぜたウォーターカッター的な攻撃方法だという意見が出ているが、どうだ?」

「肉食獣達の方もその結論が出たか。俺ら……特に一番近くで見たケイとサヤが、砂を使っていたのを目撃している」

「……概ね、推測は当たってそうなとこだな」


 ふむふむ、どうやら肉食獣さん達の方でも分析はしていて、俺らと同じ結論に辿り着いていたようだ。というより、俺らの目撃情報がその推測の裏付けになったって感じだね。


「ただいまなのさー!」

「うぉ!? ちょ、嵌った!?」

「あ、アルさんが木と木の間に嵌ってるね」

「アル、少し他の木に近過ぎるんじゃないかな?」

「こうなってる以上、そうなるよな!」

「……何やってんだ、アル」

「……呆れた風に言うな、ケイ! 俺自身、それは思ってるとこだ。えぇい! 『略:小型化』!」


 あ、木々の間に挟まって身動きが取れなくなっていたアルのクジラが小型化する事で脱出してきた。

 さっきの戦闘でリスポーン位置を使う場合は木だけでリスポーンになる事になってただろうし、戦闘後に共生進化へ戻す事は全然意識してなかったんだろうね。


 まぁアルの変なミスはあったけど、これでみんなが共生進化に戻して帰ってきた。とりあえず目標は達成したし、これからどうするか決めないとなー。

 ぶっちゃけ、俺としては神経を使って疲弊気味なので今日はこれ以上の戦闘はあまりしたくはない。


「ケイ、少しいいか?」

「ん? ベスタ、どうした?」

「俺は次に検証の戦闘をする連結PTに注意点を話してくる。まぁ内容はほぼ把握はしてるだろうから、ここは俺だけで充分だ」

「ほいよっと。あ、そういやオオサンショウウオの前脚が黒くなってた件は、ベスタ的にはどんな見解? やっぱり操作を無効化するスキル?」

「あぁ、あれか。操作を無効化するのは確定だろうが、まだあれだけでは全貌が分からんというのが素直な感想だな」

「あー、効果が操作に限定したものとも限らないのか……」


 操作以外に無効化する可能性がありそうなのは、魔力集中や自己強化とかも対象になる可能性もある。

 それに……これは推測に推測を重ねたものだけど、アンモナイトが使った未知の魔法のキャンセルを無効化した白光するスキルも打ち消せる可能性も……。

 なんというか、いかにも成熟体から使えそうなスキルが色的に白と黒になってるし、対になってるスキルな気もするんだよな。


「まぁその辺りは今の段階でははっきりとはしないから、推測するのは良いが程々にしておけよ。確認する術がないものを考えても泥沼だからな」

「……確かにそりゃそうだ」

「まぁとりあえずだ。俺の方で説明はしてくるが、出来れば次の1戦を開始するまではいてくれ。気になる点の質問が出てくるかもしれんしな」

「あー、それは……みんな、それでいいか?」


 ここは俺が勝手に答える訳にもいかないから、みんなに聞いておかないとね。すぐにでも次のLv上げをしたいという意見が多ければ、早めに切り上げて次の行動に移した方がいいしさ。

 まぁ、それでも俺は少しの休憩は提案させてもらうつもりだけど! いや、大真面目に休憩しないと集中力が続かないしね。


「しばらく休みたいから、それで問題なしなのさー!」

「俺もだ。あの水球から逃げ回るだけで相当神経を使ったぞ」

「同じく、私もかな」

「少しLv上げが続いてたし、今日はもう休憩で良いんじゃない? 明日は休みだし、みんな明日もLv上げをするよね?」

「あー、確かにそりゃそうだ。アル、明日は朝から普通にいける?」

「おう、それは問題ねぇぜ。そうなると、もう準備はしてるし明日は溶岩のある洞窟に行く感じで良いのか?」

「それで良いと思うかな」

「うん、私も同感」

「それじゃ、今日のLv上げはここまでで、明日に備えてまったり過ごすのさー!」

「それが良さそうだな」


 うん、アルもサヤもヨッシさんも頷いているからこの予定で問題はなさそうだね。明日は土曜でいつもより全員揃っての時間が取れるから、今は無茶はしないというのは良い判断かもな。


「話はまとまったみたいだし、今日はしばらく居るって事で問題はないんだな?」

「おう、それで問題なしだ!」

「了解だ。それなら、その辺の切り株に座るなり、自由にしているといい」

「ほいよっと。あ、ベスタ、さっきの俺らの場合は外からの声掛けは控えるようにしてたっぽいけど、その辺は?」

「それは戦う連結PT次第だな。その辺も含めて話してくるから、とりあえず休んでろ」

「了解っと」


 ま、外部からの口出しは人によっては嫌がるだろうから、ベスタの今の対応も間違ってはいないか。

 それに最低人数の12人では厳しいのも分かった筈だろうから、次の1戦は……人数が足りさえすればもっと人数は増やすだろう。


 さて、それじゃここからはのんびりと傍観させてもらおう。他の検証勢の人達の戦闘を見る良い機会だしね。

 

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