第843話 打ち合わせを終えて
タッグ戦の開催場所はハイルング高原。開催日時は明後日の日曜日の夜10時から。出場メンバーは赤の群集は弥生さん、俺ら灰の群集からはレナさんでのタッグ。対する青の群集は濡れたらスリム……通称スリムさんと、無所属から正式に移籍となったタコのいか焼きさん。
それと少し予定が変わって青の群集の中継も入る代わりに、各群集から1人ずつ……実質的に解説役が3人となった。これは赤の群集はシュウさん、青の群集はジェイさん、そして灰の群集からは俺だね。
さて、何か決め忘れている事はないかな? んー、ハイルング高原だったら未成体の人も多く来るだろうし、周囲の雑魚敵は近付いてこないはず。
それにエリア全面を使う事はないだろうから、騒々しくても狩りが出来ないほど占有する事はないだろう。……エリアを独占する気はないけど、そこが少し気になるね。
「とりあえず決める事はこんなとこー?」
「あ、レナさん、ちょっといい?」
「ケイさん、何か気になる事でもあったー?」
「いやさ、一応俺らがハイルング高原の一部を独占する形にはなるじゃん? その辺は大丈夫かなーって思ってさ」
「なるほど、その件ねー。んー、まぁ苦情を言う人もいるだろうけど、それを気にしてたらプレイヤー主体では何も出来なくなるからねー」
「そこはレナさんに同意ですね。まぁ苦情を言うのは少数派でしょうし、ありとあらゆるエリアを同時に占拠する訳でも、ハイルング高原の全域を使う訳ではありません。楽しみにしている方も多いですし、苦情を言う方に対して苦情が出るかと思いますよ」
「あー、なるほどね」
レナさんもジェイさんも、多少の苦情が出てくるのは想定済みか。その上でどうとでもなるという判断のようだ。
まぁある意味ではその苦情を言う人は、自分の都合が悪いから全てを自分の都合に合わせろって言うようもんだしな。……大勢の人が関わる以上は、そういう事が発生しても仕方ないか。
「まぁ、基本的にみんなのマナーの問題だねー。別に何時間もずっとやり続ける訳じゃないし、一応運営に確認は取ったけど問題はないって回答だったよー!」
「お、運営に確認してたんだ、レナさん」
「いざ開催しようとした時に駄目って言われても困るからねー。運営としては数時間とかの長時間は流石に許容は出来ないけど、1〜2時間程度なら問題にはならないってさー」
「おー! 運営のお墨付きなのです!」
「運営が問題ないと言ってるなら大丈夫そうかな?」
「そうみたいだね」
ふむふむ、いったんもプレイヤー主催のイベントは歓迎と言っていたし、過剰に占有し続ける状況でなければ特に問題はないんだね。うん、運営に確認をしてくれていたレナさん、グッジョブ!
「僕からも1つ、いいかい?」
「シュウさん、どうぞー!」
「これ、無所属の人が観戦に来た場合はどうするんだい? いか焼きを観に来る人もいそうだけども?」
「んー、そこは黒く染まってさえなければ問題はないんじゃない? ジェイさん的にはどう?」
「私としてもレナさんと同意見ですね。流石にPKをしに来たような無所属のプレイヤーは放置は出来ませんが、そうでない限りは今回は所属に関係なく制限の必要ないでしょう」
「……確かにそうだね。それじゃ、所属に関わらず観戦に制限はかけない方向でいこうか」
「うん、それでいいと思うよー!」
「えぇ、それで構いません」
無所属に関しては思いつかなかったけど、とりあえずこれで問題はなさそうだね。えーと、他に決めておくべき事は……特に思いつかない。
「他に何か気になる点がある人ー?」
そうレナさんが聞いているけども、誰も他に気になる点はないようである。まぁ細かく調整していく部分はあるにしても、今この場で決める事はこれくらいだろう。
「うん、特に何もないみたいだねー! それじゃ、今日の打ち合わせはここまでって事で!」
「打ち合わせは終わりですね!? シュウさん、弥生さん、早くスクショの撮影会に行きましょう!」
「ルスト、気持ちは分かるけど、少し落ち着かないかい? 既に始まっているとはいえ、まだ序盤だよ?」
「いえ、だからこそです! いつどのような光景が見れるか分からないのに、見過ごせるはずがないでしょう!」
うん、まぁルストさんはこの後……いや、時間的にはもう始まっている群集を跨いだスクショの撮影会を楽しみにしてるんだから、打ち合わせが終わったらさっさと移動はしたいだろうね。
俺らは俺らで、この後には『烏合の衆の足掻き』の最終確認を予定しているなー。とりあえず打ち合わせの結果を報告したら、そっちの方に意識を移していかないとね。
「……あはは、ルストがこの様子だから、私達は先に失礼するね。レナ、日曜日は楽しみにしてるよ?」
「わたしも楽しみにしてるからね、弥生。そして、今度こそいか焼きを完膚なきまでに倒す! あ、スリムさんもね!」
「それはおいらのセリフだよ、レナさん、弥生さん。さーて、スリムさん、連携の特訓といこうじゃないか」
「ホホウ、そうしましょう。おまけ扱いにしているのを後悔させてあげるので!」
あはは、既にタッグ戦の対戦相手同士で火花が散っているね。スリムさんは決して弱くはないし、いか焼きさんの実力については全然知らない。
弥生さんとレナさんは間違いなく強いけど、そのレナさんが警戒をしている側面もある。……こりゃ日曜日のタッグ戦が楽しみだね。
「それでは今回の打ち合わせはこれにて解散にしましょうか」
「あぁ、それで構わないよ」
「ほいよっと」
そうして必要な事は決め終わり、打ち合わせは終了となった。後は実際に開催する際の運営に関わる微調整はあるだろうけど、その辺はベスタや灰のサファリ同盟とかが協力してくれるだろう。
「それじゃわたし達は森林深部に帰ろっか」
「そだなー。早めに戻りたいし、帰還の実を使って帰るか」
「確かにその方が早いのさー!」
「だな。報告については、戻ってからすればいいしな」
思ったよりもサクサクと打ち合わせは進んだからまだ9時にはなっていないけど、それほど余裕がある訳じゃないしね。
俺らの打ち合わせについての報告は森林深部に戻ってからでも可能だし、『烏合の衆の足掻き』の最終確認の準備の状態も確認しておきたい。
それと、今日のLv上げの予定についてだな。多分、何もトラブルが無ければ『烏合の衆の足掻き』の検証を終えてからでもLv上げに行く時間的な余裕はあるはず。
激戦になるはずだから、その精神的な疲れで戦いに行く余裕がない可能性も否定は出来ないけども……。
「あれ? レナとケイさん達はスクショの撮影会には来ないの?」
「うん、ちょっと他に予定があってねー! スクショの撮影会は明日もやるって話だし、参加は明日にするねー!」
「えっ!? レナさん、弥生さん、明日もあるんですか!?」
「あっ、そっか。まだ明日については企画側以外には殆ど告知してなかったっけ。うん、今日の様子次第だけどそのつもりだよ、ハーレさん」
「そうなんだー!?」
あ、思いっきりハーレさんが俺らの方を見てる。どう見ても参加したいみたいだけど、どうすっかなー。みんなも少し反応に困ってるし……。
土日にLv上げの戦闘ばっかというのもあれだし、少しの間だけでも息抜きで参加するのもありか?
「……どうもケイさん達の反応が妙ですね? 今日のスクショの撮影会には参加しないというのも、明日の参加にも難色を示しているとは……何か他の計画を予定していますか?」
うげっ、今の些細な反応でそういう読み方をしてくるか、ジェイさん! うーん、根本的に来週の月曜からしばらくテスト絡みでログインをしないから、Lv上げに集中したいだけなんだけどね。
かといって、それを他の群集に喋るというのは躊躇いがある。この後の『烏合の衆の足掻き』の検証に関してはそもそも話すのは論外だしな。
「ジェイ、その辺でやめとけ。完全に困らせてんぞ」
「……どうやらそのようですね。言えない理由も言わない理由も色々あるでしょうし、今のは配慮が足りませんでした。申し訳ありません」
「まぁそうしてくれると助かるよ」
ふー、斬雨さんに助けられたー! とりあえず明日のスクショの撮影会については、今この場で話を進めるのは無しだな。
そんな感じの事もありつつも、今回の打ち合わせは完全に終了となり解散となった。
「それじゃ森林深部まで戻りますか!」
「「「「おー!」」」」
「あ、ケイさん、ハーレさん、ちょっと待った! すっかりこれを忘れてたよ」
「ん?」
あ、レナさんからPTの申請がきた。そういやここまで来るのにPTを組むのを忘れていたっけ。PT申請を承諾っと。
<レナ様のPTに加入しました>
<ハーレ様がPTに加入しました>
よし、これでPTは問題無し! ふー、この後で連結PTを組む必要もあるんだから、これは重要だよね。
「よし、改めて森林深部に戻るぞー!」
「「「「「おー!」」」」」
それから各自で森林深部への帰還の実を使用して、転移を開始していく。さて、次は成熟体相手の全滅戦だな! 全滅するのは俺ら側だけど。
<『ニーヴェア雪山・氷結洞』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
そうして戻ってきました、森林深部! 周囲を見渡してみれば、少し混雑はしてるけど極端に普段と様子が違うという事はないな。
流石に『烏合の衆の足掻き』は他の群集に伝えるような情報ではないから、エンの近くで検証メンバーの募集とかはしてないね。……そもそも普段から検証案件ではここじゃ募集はしてないか。
「ちょっと打ち合わせの報告とかをしたいけど、内容的にミズキの森林に行ってからの方がいいか?」
「……だろうな。それに少し話しておきたい事もある」
「アルさん、話しておきたい事って何ー!?」
「あ、あれのことかな」
「あー、中途半端になってたもんね」
「なにかあるみたいだけど、それならやっぱり先に移動だねー!」
「だなー」
アルがあえて内容をぼかして言っているって事は、少なからずこれからの内容に関わるんだろう。それなら大々的に話しても問題ないミズキの森林に移動するのが確実だな。
とりあえず、新しい帰還の実を貰ってからミズキの森林まで転移だね。
<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ミズキの森林』に移動しました>
よし、ミズキの森林までやってきた。ここなら他の群集の人を気にせずに話が出来る。
「とりあえずここまで来たら、元のサイズに戻ってもいいか。小型化解除っと」
「だなー。で、アル? 話しておきたい事ってなんだ?」
「あぁ、先にそれを話しとくか。元々予定してた、今日のLv上げについてだ」
「あー、その件か。俺もそれは話そうと思ってた」
「ま、そうなるよな」
「確かにそこは予定通りにはいかないのさー!?」
本来は今日の夜……ぶっちゃけ今からのタイミングでLv上げの狩りに行く予定だったけど、『烏合の衆の足掻き』の件で予定通りとはいかなくなってるもんな。
あと少しで9時になるし、それまでの間に話しておきたい内容ではある。……それにしても、普通にいつもと同じ感じで人がいるんだよな。
「それならその間にわたしの方でさっきの打ち合わせの報告をしてくるねー!」
「任せていいのかな、レナさん?」
「うん、問題ないよー。みんなのLv上げの計画変更をわたしが聞いても仕方ないとこでもあるしねー」
「あはは、確かにそれはそうだよね」
「レナさん、よろしくなのさー!」
「任せておきなさい! あ、検証の準備状況についても聞いてくるからねー!」
「レナさん、任せた!」
それほど時間に余裕がある訳じゃないから、このタイミングでレナさんが情報収集と報告をしてくれるのはありがたいね。
「さて、それじゃこれからの予定について相談だな。……そういや、もの凄い今更なんだけど、アルとサヤとヨッシさんから『烏合の衆の足掻き』の最終確認への参加自体がどうなのか、聞いてない気がする……」
「はっ!? そういえばそうなのです!?」
「ん? それはレナさんから聞いて、俺らとしてはやる気でいたつもりだが……そういや、ケイとハーレさんに言ってなかった気もするな」
「あ、そこは普通に問題ないんだな。ただお互いに言うタイミングを逃してただけか」
「話せそうなタイミングで、群集クエストの終了演出が出ちゃってたしね」
「……あはは、何とも絶妙なタイミングだったかな」
「……確かに」
色々とお互いにいなかった時の情報交換をするタイミングで演出が入って、更にそれで出発が遅れたんだもんな。うーん、絶妙に俺らにとっては悪いタイミングだったよね。
「まぁ最終確認の検証については、絶好の経験値を稼ぐ機会だから良いと思うぜ。だけど、問題はその後だな」
「……成熟体を相手にした後、Lv上げをする気力があるかどうかって話で良い?」
「あー、ケイもそれを考えてたか」
「まぁなー」
ぶっちゃけどんな成熟体かにもよるんだけど、その後に余力が残るかは怪しいところ。少しは休憩しないと終わった直後には無理な可能性の方が高い。
「あ、ケイさん、ハーレ。一応『封熱の霊峰』にある溶岩の洞窟に行けるように火の進化の軌跡はある程度調達してるからね。あと、+19の瘴気石も確保してきたよ」
「お、ヨッシさん、ナイス! って事は、行って行けない訳ではないんだな」
「まぁレナさんに聞く前に調達しちゃってただけではあるんだけどね」
「レナさんから話を聞いたのは、調達が終わった後かな」
「あー、なるほどね」
まぁレナさんはハイルング高原でログアウトしてたし、サヤ達は桜花さんの所でアイテムの調達をしてからハイルング高原に向かったんだろうから、タイミング的にはそうなるか。
「はい! 今の段階では決めても仕方ないと思います!」
「ハーレ、それってどういう事かな?」
「まだミズキの森林の湖にいる何かが成熟体だと確定してないからなのさー!」
「あ、そういやそうだった」
「……それは初耳なんだが?」
「レナさんは言ってなかったかな?」
「……もし成熟体じゃないなら、色々と話が違ってくるもんね」
あー、俺とハーレさんは計画している段階で聞いていたけど、レナさんは途中から混ざってきてた感じだったし、その辺を見落としてたのかもしれない。
そうなると実際にやってみてからじゃないとどうしようもないか。ベスタ達が下準備はしておくと言ってたし、まずは最終確認の方をやるだけやってみよう。
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