第801話 やりやすさを比較して
さて、無事に俺らにはダメージはなく瘴気強化種のカモメ2体の討伐は完了だね。……それにしても、何か瘴気強化種の数が多めなのは気のせいか?
ま、とりあえずアルのクジラの上に戻ってっと。ヨッシさんも少しアルのクジラから離れていたみたいだけど、戻ってきたね。サヤとハーレさんはクジラの背中の上にずっといたので問題なし。
「とりあえずみんな、またカモメが集まってきたら面倒だし海中に戻るぞー! 」
「……確かにそりゃそうだ」
「はーい!」
「うん、了解」
「分かったかな! あ、そういえばハーレはさっき何をやったのかな?」
「えっとねー!」
「それは俺も気になるけど、海中に戻るのが先な!」
「はーい!」
「……確かにそれはそうかな」
サヤがそれを聞きたい気持ちは分かるんだけど、ここで新たなカモメの群れがやってきたら面倒でしかない。……群れのボスが1体だけならどうにかなるけど、2体になると行動値を思った以上に使ってしまったもんな。
一般生物である群れのカモメも1体ずつは弱いけど、数が多いと非常に邪魔だった。正直、雑魚でも大量に始末するにはそれなりに行動値や魔力値が必要になってくるから相手にしたくない……。
<『遠隔同調』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 10/57 → 10/72(上限値使用:7)
あ、遠隔同調の時間切れで解除になった。うん、今回は結構役に立ったね、遠隔同調。……割とスクショの撮影用に使う事の方が多かったりするけど、今回の使い方はかなり有用性がある事は分かったよ。
えーと、魔法砲撃も発動したままだけど、こっちは消耗は激しくないしそのままでいいか。
そんな事を考えてる間に、再び海中へと戻ってきた。ふー、これでとりあえずカモメの群れに襲われる心配はなくなったか。
「さてと、みんなの意見を聞きたい。ぶっちゃけ海上でカモメの群れの相手はどうだった?」
「あー、まず一般生物のカモメが思いっきり邪魔だな。一掃しようと思えばそれなりに消耗するし、かといって放置すればスキルによっては邪魔にしかならん」
「私もアルの意見に同意かな。……あえて言うならボス1体だけなら許容範囲?」
「やっぱりそんな印象か。俺もアルとサヤの意見には賛成だけど、ヨッシさんとハーレさんはどう?」
「飛んでる敵に当てるのが地味に面倒です!」
「そだね。直接魔法を当てようと思ったけど、照準が定めにくかったよ。……ケイさんもアルさんも、よく魔法を当てられたね?」
あ、そういえば俺の付与魔法もアルの海水の生成魔法も回避はされてなかったな。それ以前にそもそも回避しようともしていなかった気がする。まぁその分だけ思いっきり攻撃的な感じ……というか、俺の小石に付けていたコケは食われたしな!
「それは多分、行動パターンの変化だろ。サヤとヨッシさんが1撃入れてから明確に行動パターンが違ったしな」
「アルに同意。多分、一度攻撃を受けたら群れのボスのカモメは回避優先のパターンになる感じか」
「……まぁあの感じだとそうだよね。そう考えると、やっぱり面倒って事になるね」
「でもヨッシの電気魔法での麻痺は有効だったかな」
「それって、海中の敵でも同じじゃない? アルさんの海水魔法と組み合わせれば、変に範囲が拡大するのも抑えられるしさ」
「ま、確かにそうなるか。……海中の方が群れのカモメがいない分だけ楽かもしれんしな」
「それなら海上じゃなくて、海中をメインにLv上げをする感じですか!?」
みんなの意見を総合して考えればそういう結論にはなりそうだよね。海中の魚とかでも群れの特性を持ってるのもいるだろうけど、それはそれでやりようがある。
「よし、それじゃこれからどうするか多数決を取るぞ! まず、海上でカモメの群れを相手にしたい人!」
……うん、見事に誰も反応してこない。まぁさっきまでの意見を聞いていれば、聞かずとも分かった内容ではあるよなー。
「それじゃ……聞くまでもない気はするけど、海中で1体ずつ狙って倒していく方が良い人!」
「はい!」
「……あはは、まぁ聞く必要性はなかったかな? 私もこっちが良いかな」
「思った以上に消耗したし、こっちの方が交代で回復しながらで安定しそうだしね」
「俺はあんまり消耗してないが、見てた感じではこっちの方が良いだろうな」
「それじゃ満場一致って事で、次は海中で1体ずつ狙っていくので決定!」
「「「「おー!」」」」
よし、これでこれから決勝トーナメントの開始までの間のLv上げの方針は決定っと。折角PTで戦っているんだから、みんな消耗しきって揃って回復をするより、交代で回復しつつ無駄なく討伐を続けていく方がいいだろう。
「……まぁそれはともかくとして、またしばらく回復だなー。行動値がほぼ残ってないや」
「私は魔力値が心許ないかな」
「私はまだ余裕はあるのです!」
「……あはは、私は微妙なラインだね」
「あー、余裕があんのは俺とハーレさんだけか。ま、それなら回復した方がいいな」
「だなー」
という事で、海中の浅めの部分でアルのクジラの上に乗って回復の為の寛ぎタイムである。まぁ今回はほぼ遠距離から仕留めているから、全然ダメージは受けてないんだけどね。
なんだかんだで飛行鎧の機動力とハサミによる打撃のコンボも割とありだった。ぶっちゃけ、チャージよりも使いやすい印象だな。まぁチャージはチャージで使い道はちゃんとあるけど、早めに連鎖増強Ⅰが欲しくなったよ。
ふー、とりあえず回復するまではまた休憩だー。ま、その辺の状況を確認したいからカモメ相手に突っ込んだからなー。
あ、もしかして他のみんなもカモメ相手は割に合わないから、カモメの瘴気強化種が多かったり……? いや、自分で考えといてあれだけど、海中の敵にも多かったからそれはないか。
「みんな、ちょっと気になったんだけ、ちょっと瘴気強化種が多くないかな?」
「あ、それは俺も思ってたとこだ!」
「ケイも気になってたのかな!?」
「そういえば多い気がするのです!?」
「……確かにそういえばそうだね」
「あー、それについては確定ではないが推測なら聞いた事はあるぞ?」
「お、マジか! アル、どんな内容だ?」
「まぁ確定ではないからそこは気を付けてくれよ。定期メンテの際に運営が少し瘴気強化種を増やしているんじゃないかって推測だ」
「あ、それはありえそうかな?」
「……確かに今日は定期メンテナンス明けだもんね」
「でも確認する術がないのです!?」
「だから確定じゃないんだよ」
「……まぁそりゃそうだよな」
定期メンテナンスの際に、倒されて残滓になって瘴気強化種の数が減っているのを補充するというのはあり得そうな話だ。でも、この情報に関しては運営が開示してくれなければ確定も出来ない内容ではある。
まぁその可能性があるってだけでもありがたい情報だし、今日のこの時間にLv上げをする事を選んだのも案外良かったのかもね。
「あ、そういえばハーレ、さっきの戦闘で狙撃並列制御で使ってたみたいだけど、具体的に何をやったのかな?」
「えっと、あれは片方は魔法弾にして、もう片方は小石を投げたのです!」
「あえてカモメの目の前に小石を投げて回避に動いた所に、魔法弾にした電気の爆発魔法を当てたんだよね」
「あー、そういう感じか。なるほど、牽制しつつ本命を当てにいったんだな」
「そうなのです、アルさん! 麻痺も入って大成功なのでした!」
「なるほど、確かにそういう手段もありだよな」
「そっか。それはハーレ、ナイスかな!」
「えっへん! そしてその後に氷の剣を6本生成して、串刺しにして中から切り裂いてトドメを刺したのはヨッシなのです!」
「……ヨッシさんもエゲツない事をやるな!」
「……あはは」
うん、思っていた以上にヨッシさんもエゲツない攻撃をしていたらしい。まぁ確かに空中で麻痺が入ったカモメに対して、落とす事なく大ダメージを与えるには有効な手段だよね。
麻痺しているなら氷の剣を刺すまでは程々の加速で良いだろうし、そこから切り裂く際に最大加速をすればかなりの大ダメージにはなるだろう。理には叶った手段ではある……けど、今回のスキルの上げには適さないか。
「それじゃとりあえず回復しつつ、サヤとハーレさんが見失ったっていうタコを探すか。俺もある程度回復したら獲物察知を使うけど、しばらくはアルとハーレさんに任せていい?」
「あー、まぁ時間的にはその方が良いか。ハーレさん、それでどうだ?」
「問題なしなのさー! 魔力値にあんまり余裕がないけど……はっ!? 堂々とドライフルーツを食べるチャンスなのさ!?」
「はいはい、そんなに期待した目で見てこなくても大丈夫だよ。ハーレにはそれなりに数は渡したしね」
「やったー! それじゃ魔力値を回復させて、魔法弾をどんどん投げるのさー!」
そう言いながらハーレさんはドライフルーツ……パッと見、干したレモンっぽいね。それを思いっきり美味そうに齧りついている。……地味に干したレモンって食べたことないけど、あれって甘いのか?
うーん、あえて食べてみる気もしないから別にいいや。魔力値の回復手段ならアルのレモンや干し肉や干し魚とか他にもあるしね。
「折角だし、色々と探索しながら行くか。行きたい方向とかある?」
「あー、とりあえず流れの強い海流は無しじゃね? Lv上げどころじゃなくなりそうだし……」
「……確かにそれはケイの言う通りか」
「もぐもぐ……はい! 海流に流されない程度に、可能な範囲で深めの所に行きたいです! 海底がどうなってるのか見たいのさー!」
「私もここの海底は気になるね」
「ねぇ、ケイ、さっき沈んだ時はどうだったのかな?」
あー、そういや昨日は海流の中でイカに発光針を刺す以外ではそれほど深いところには行ってないもんな。少し前に俺がミスって昇華魔法で沈んだのが一番深かったかもしれないから、そこを確認したいという気持ちは分かる。
「うーん、周りが暗くなってたからそれなりに深くまで沈んだとは思うけど……」
ぶっちゃけ底までは辿り着いていなかったし、周囲にも岩場が全然なかったのでだだっ広い暗い海のド真ん中って感じだったしなー。それほど目新しいようなものは……あ、そうでもないか。
「そういやアンコウがいたっぽいな。俺が追いかけられて、ジェイさんと斬雨さんが1撃でぶっ殺したやつ」
「おー、アンコウなのさー! ……そういえばアンコウは食べた事がないのです!」
「あ、それの詳細を聞こうと思ってたんだが、ケイ、ジェイさんと斬雨さんは何をやったんだ? ここの敵は応用スキルでも1撃は厳しめだろ」
「だろうけど、みんなのとこに戻るのに集中して見てないんだよ……。その少し前に獲物察知をしてた時には近くに居なかった筈なんだけど……」
「え、それじゃ一気に長距離を移動して、瞬殺って事?」
「まぁ状況的にはそんな感じ。……そういやまだ命中精度が微妙だから、特訓が必要って言ってたっけ」
「なるほど、まだ未完成なのか……。よし、少し移動しながらその辺の分析をしてみるか」
「確かにそれはやっといた方が良いかもね」
「それもそだなー」
多分あのジェイさんが考案している手段だとは思うから、後々の事を考えるならどれだけ警戒しておいても警戒のし過ぎではない。ゴリラの人の大型砲撃を使って斬雨さんを投げて、上空から奇襲を仕掛けてきた前例があるしね。
そうなると……流石に全員で考えて警戒を怠る訳にはいかないから役割分担をしておくべきか。とりあえずハーレさんには索敵と迎撃を担当してもらって、隠れたタコを探すならサヤもそっちに回ってもらった方がいいか。
「サヤ、ハーレさん、敵を探すのを任せていい? 見つけた段階で考察は打ち切って俺らも参戦する感じで」
「ふっふっふ、それはお任せなのさー! サヤ、どっちがあのタコを見つけるのか勝負なのです!」
「そういう事なら望むところかな、ハーレ! あ、電気魔法は使わない方がいいかな?」
「あー、電気魔法の使用はアルが参戦してからって事で……アル、それで良いか?」
「おう、問題ないぜ。……それにしてもちょっと前までは海水魔法は水魔法の下位互換で使えないって話だったが、電気魔法と組み合わせてみれば強力なもんだな」
「それは確かに……。そういやそのコンボって誰が見つけたんだ?」
「確か草原エリアのプレイヤーだったはずだが……悪い、情報共有板にいるプレイヤーなのは間違いないが名前は分からん」
「なるほど、半匿名だもんなー」
「まぁそういう事だ」
情報共有板は種族名しか出ないし、情報提供に関してもプレイヤー名の公表は任意だからね。PTや共同体の代表の人がまとめて報告している事もあるし、その辺の検証情報の提供者がはっきりしない事も多いからなー。
「ま、その辺はいいや。とりあえず少し潜りながら、ジェイさんと斬雨さんの手段を考えてみるか」
「おうよ! それじゃ海流に気をつけながら適当な方向に潜っていくぜ」
「タコは私が見つけるのさー!」
「負けないかな!」
「あはは、サヤもハーレもやる気だね」
「みたいだな。とりあえずアル、出発よろしく!」
「おう! ま、行動値が回復してくるまではゆっくり行くぞ」
そうしてアルが潜る速度は控えめに、ちょっとずつ深い所を目指して潜っていく。さーて、とりあえずその間に考察をしていきますか。
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