第800話 海上での戦い


 さて、カモメの群れに向かって突っ込む準備として遠隔同調を使っていきますか。あー、ちょっと無駄になる分の行動値を使ってしまいたい気もするけど、今何を使うにしても微妙……? あ、獲物察知で方向性を把握しておくのはありか。


<行動値を5消費して『獲物察知Lv5』を発動します>  行動値 67/73(上限値使用:6)


 えーと、灰の矢印も赤の矢印も青の矢印もあるけどこれらは近くはないから問題ない。遠くの黒い矢印は今は無視でいいし、真上の海面に向けて伸びているのは2本だから群れが2組いそうだな。


「アル、群れのボスは2体いるっぽいからその辺は注意しといてくれ! どっちにも目印はつけるつもりだけど、浮上して両方が無理そうなら片方を優先! その場合はどっちにするかは任せる!」

「それについては両方やるつもりでいくぞ」

「そりゃ頼もしいな。あ、ハーレさん、アルの巣の中に移動……既にしてたか」

「移動済みなのさー!」

「まぁそりゃそうだよな」


 それでこそハーレさんって感じだしね。俺としても少し遠隔同調でコケの操作に集中したいから、アルのクジラの背中の上に降りておこうっと。

 よし、ハーレさんの貫通狙撃のチャージも進んでいるから、チャージが終わるまでには俺も準備を終わらさないとね。


<行動値上限を15使用して『遠隔同調Lv1』を発動します>  行動値 67/73 → 58/58(上限値使用:21):効果時間 5分


 うーん、どうしても全く無駄なく行動値を使い切る事は出来ないのは仕方ない……って、ちょっと待った!? 効果中の獲物察知に黒い王冠マークのある黒い矢印が下の方に表示されて……あ、すぐ近くに灰色の矢印が集まっているからこれは問題ないか。

 ふー、フィールドボスを示す表示にちょっと焦ったよ。まぁ灰の群集の人が誕生させたフィールドボスっぽいし、これは気にせずに準備をしていこう。


<行動値を1消費して『群体内移動Lv1』を発動します>  行動値 57/58(上限値使用:21)


<『遠隔同調』の効果により、視界を分割表示します>


 群体内移動をする先はすぐ近くの小石にあるコケなので、発動Lvは1で十分だね。そしてコケとロブスターの2つの視界が表示されたから、今回はコケの視点をメインにしていこう。

 うん、思いっきりリスの手に握られている状況が至近距離から大迫力で見れる。……これはこれで地味に貴重なアングルじゃないか? よし、ちょっとこれから後の展開も含めてスクショを撮っておこうっと。さー、次、次!


<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します>  行動値 57/58 → 57/57(上限値使用:22)


 よし、ここまでで下準備は完了っと! おっと、どうやらハーレさんのチャージもちょうど良いタイミングで終わったっぽいね。


「ケイ、魔法砲撃を使うのかな?」

「……あ、ケイさんがしようとしてる事、何となく予想が出来たかも?」

「え、ヨッシ、分かったのかな?」

「何となくだし、当たりとは限らないけどね。見てのお楽しみって言ってたから、今は言わないよ?」

「あぅ、地味に気になるけど、もう少し待てば良いだけなのさー! そしてチャージは完了なのです!」

「よし、それじゃハーレさんは合図をしたら投げてくれ。アル、海面まで浮上開始!」

「おうよ!」


 そうして少しずつ海面へと近付いていく。まだタイミングは早い……よし、カモメが潜ってくる限界の位置まで来たからこのタイミングだ!


「ハーレさん!」

「了解です! えいや!」


 そのハーレさんの掛け声と共に、銀光を放ちながら俺のコケが付いた小石が海面を突き破っていく。よし、ここから次の一手だ! ちょうどいい感じに目の前に一般生物の群れのカモメもいるしね!


<行動値5と魔力値15消費して『土魔法Lv5:アースウォール』を発動します> 行動値 52/57(上限値使用:22): 魔力値 203/218


 魔法砲撃にした防壁魔法をコケの核を起点にして、目の前のカモメにぶつけて展開していく。そしてこの場合は防壁魔法と魔法の起点が相対位置で固定されているので、ハーレさんの貫通狙撃の勢いのまま上空へと向けて防壁魔法で体当たりをしていく感じになった。

 ふっふっふ、これぞ投擲と遠隔同調と魔法砲撃にした防壁魔法の連携技だ! おー、一般生物のカモメは当たれば即座にHPが無くなってポリゴンとなって砕け散っていくね。よし、次!


<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 45/57(上限値使用:22): 魔力値 182/218

<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』を発動します> 行動値 38/57(上限値使用:22): 魔力値 161/218


 獲物察知で群れのボスの位置は分かっているので、そこに向けて水の付与魔法をかけて周囲に水球を漂わせる事に成功した。

 ふむ、ハーレさんが確認していた通り、見た目は普通のカモメと2対の羽があるカモメの2体か。……2対の羽って何か意味があるんだろうか? まぁ攻撃部位が増えるから、その分だけ警戒度を上げる必要があるってとこ?


 まぁそれはよく分からないから警戒するとして……今は目印だな。見た目的には土での付与魔法の方が分かりやすいとは思うけど、この後に電気魔法を叩き込むんだから属性的には水属性の方がいい。

 それにしても目印に使うにはちょっと消費が激し過ぎるな……。まぁみんなよりも俺がなんか進化先がよく出てるから今日はフォローに徹するのでもいいか。……ぶっちゃけこの状況で近接はやりにくい!


「ハーレさん、魔法弾で連投擲! ヨッシさん、アイスインパクトをハーレさんに!」

「了解! ハーレ!」

「了解です! 『魔法弾』」

「『アイスインパクト』!」

「いっくよー! 『連投擲』!」


 よし、ロブスターの視点で軽く見てみれば、氷の塊を複数回に分けて海中に飛び込んで来ているカモメに叩き込まれていく。これで邪魔な海面のカモメの数がそれなりに減った。


「アル、海上へ浮上! サヤ、ここだけは電気魔法以外でフォローを頼む!」

「おうよ!」

「任せてかな! 『爪連撃』『双爪撃』『爪刃乱舞』!」


 そしてサヤがアルに向かって襲いかかってくるカモメを次々と斬り伏せていき、それらのカモメはポリゴンとなって砕け散っていった。これで全部いなくなった訳じゃないけど、海中へ突っ込んでいくカモメはかなり減ったはず。


 よし、水飛沫を上げながらアルが海面まで浮上した! って、あっ!?


<群体の核が撃破されたため、核を他の群体へと強制移動します>

<『遠隔同調』の効果による視界を分割表示を終了します>


 うん、水の付与魔法をかけた見た目は普通のカモメの方にコケ付きの石が食べられた。まぁ一番の目的の役割は既に終わって、海へと落下中だったから問題ないか。


「あれ? もしかしてケイのコケ、食べられたかな?」

「あっ!? コケ付きの小石が見当たらないのです!」

「ちょうどさっき食われたとこだな。とりあえずアル、海水の操作を任せた!」

「おう……って言いたいとこだが、そういや天然産と魔法産のどっちだ?」

「魔法産で! ぶっちゃけ纏海になっても大して影響ないから問題なし!」

「そういう事なら了解だ! 『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」


 よし、アルの生成した2つの海水の球で2体のカモメが閉じ込められて……あ、カモメに付与している水球が2個消滅したって事は、海水の生成魔法と海水の操作がそれぞれにカウントされたのか。

 うーん、まだ海水の昇華になってないから水量も割とぎりぎりだな。まぁ水より海水の方が元々の生成量が多いからなんとかなってる感じだね。


「……どうも閉じ込める大きさで生成して覆ってから操作するのは良くないみたいだな。付与魔法の効果がある時は、生成場所はズラして操作してから閉じ込めるべきか」

「あー、さっきのアルのはそういう順番でやったんだな」

「ま、そういう事だが……海水は魔法産の水と違って弾性は作れないし、そもそも昇華じゃないから早めに頼む!」

「そだね。私は羽が2対ある方を狙うから、サヤは普通のをお願い。『エレクトロボム』!」

「うん、分かったかな。『略:エレクトロボム』!」

「サヤ、ヨッシ、いっけー!」


 アルの生成した海水の球に包まれてその中から逃げ出そうとする2体のカモメに、サヤとヨッシさんがそれぞれに電気の爆発魔法を炸裂させた。

 使い方を間違えれば効果範囲が広がり過ぎて危険だけど、正しく使えばほんと海水と電気の相性は抜群だな。ついでに水属性も付与しておいたから、属性的にも結構な威力になったっぽい。今の1撃で4割も削れたら充分だろう。

 おっと、しかもヨッシさんの方は麻痺が入ってる。あ、でもサヤの方は麻痺は入らず、アルの海水の中から飛び出していった。ちっ、やっぱり海水は拘束性能は良くないな。


「あ、水球から出たかな!?」

「ちっ、逃げられたか!」

「ハーレさん、ヨッシさん、2人で逃げた方は任せた! アル、もう1体の方に集中してくれ!」

「おうよ!」

「了解です! ヨッシ、狙い撃つから電気魔法を頂戴ー! 『魔法弾』!」

「電気魔法だね。まだエレクトロインパクトは使えないから……『エレクトロボム』!」

「ありがとー! 『狙撃』! あぅ、外したのさ!?」

「それならこれで! 『エレクトロボール』『電気の操作』!」


 ヨッシさんの状態異常は強力なのもあるけど、あっさり麻痺が入ったとこはやっぱり普通の雑魚敵って事か。でもカモメは飛行種族だから当てにくい事を考慮して、ハーレさんは狙撃を選んだみたいだね。

 でも狙撃はギリギリの所で避けられて、ヨッシさんが操作する電気の弾も追い付けないでいた。……回避が上手いな、このカモメ。あ、無色のオーラが見えてはいるから自己強化が発動してて移動速度が上がってるのか。まぁ、あっちは2人に任せておこう。


「アルとサヤは俺と一緒に麻痺してる方を先に片付ける! アル、岩で器を生成するからその中に海水! サヤは魔法砲撃で雑魚の始末を頼む!」

「って、それだとこのままカモメが落ちるぞ!?」

「それは俺がどうにかしてくる!」

「なら、任せるぞ!」

「私は邪魔なカモメの始末かな! 『略:エレクトロボール』『略:エレクトロボール』!」


 アルの海水の中から麻痺したカモメが落下して、海面に向かって更に落ちているから急がないと。サヤは小型化した竜をクマの腕に巻き付けて、その竜の口から次々と電気の弾を撃ち出して邪魔な群れのカモメを始末してくれている。

 被弾すればこれは失敗になるから、コケの視点でサヤの方を、ロブスターの視点で同時に確認しながら、飛行鎧で飛行開始!


 ちょっと予定はしてなかったけど、遠隔同調での同時視点の表示がこういう形で役立つとはね。おっと、サヤの魔法砲撃が当たりそうな位置なので少しズレて……よし、問題ない。


「あ、ケイ、ごめんかな!?」

「それは見えてるし、魔法砲撃なら予測しやすいから問題なし! その感じで続けて頼む!」

「うん、分かったかな! 『略:エレクトロボール』」


 とはいえ、サヤは今はクマの魔力値を消費して魔法を使ってる訳だから俺ほど使い続けられる訳じゃない。……多少は俺自身でも対応しないとね。


<行動値を4消費して『強連打Lv4』を発動します>  行動値 34/57(上限値使用:22)


 とりあえず目の前に突っ込んできた群れのカモメを殴り飛ばして……よし、落ちてきている2対の羽のカモメの真下にやってきた。連打数を使い切ってはいないから、このカモメを下から上へと吹っ飛ばすように殴る、殴る、殴る!


<行動値を4消費して『強連打Lv4』を発動します>  行動値 30/57(上限値使用:22)


 ちっ、魔力集中が切れてるし、自己強化は発動してないから思ったほど殴り飛ばせないから、ここは数で押すまで! おらおらおらー! 飛行鎧での加速も合わせつつの連打だー!


 よし、それなり海面から離れたし、この辺で良いだろう。


「アル、海水で包み込め!」

「おうよ!」


 アルが待機させていた海水で再びカモメを包み込み……あ、麻痺が解けたか。まぁもう準備完了は目前だから遅いけどな!


「ヨッシ、もう1回なのです! 『魔法弾』!」

「何か思いついたんだね? 『エレクトロボム』!」

「これならどうなのさー! 『並列制御』『狙撃』『狙撃』! やった!」

「ハーレ、ナイス! それじゃこれで! 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷の操作』『氷の操作』!」


 てか、ハーレさんとヨッシさんの方は何かをしたみたいだけど、声だけだから分からん! あっちの確認は後で良いか。……まぁヨッシさんがトドメに動いてるような気はする。まぁこっちはこっちでやるまでだ!


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 29/57(上限値使用:22): 魔力値 158/218

<行動値を19消費して『岩の操作Lv4』を発動します>  行動値 10/57(上限値使用:22)


 これでアルの海水ごと岩で包んで、カモメを海水に満ちた岩の中に閉じ込めて……よし、成功。ついでに通れない程度の穴を空けておいてっと。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


 あ、先にヨッシさんとハーレさんの方が討伐完了したっぽいね。てか、あっちの方が先に倒されるとは思わなかったけど……まぁヨッシさんの氷魔法も使ってたみたいだし、そこが強烈だったのかも。

 さて、それじゃ俺らの方も終わらせようか。閉じ込めるまでのカモメのHPは5割ちょっとだったから、そんなに倒すにはかからないはず。


「サヤ、魔法砲撃でエレクトロボムを穴の中に撃ち込みまくれ!」

「分かったかな! 『略:エレクトロボム』『略:エレクトロボム』『略:エレクトロボム』!」


 そうしてサヤの竜が放つ電気の爆発魔法が魔法砲撃として撃ち出され、カモメを閉じ込めた海水に満ちた岩の穴へと次々と着弾していく。

 今はサヤのクマの魔力値を消費してはいるけど、ダメージ判定は雷属性を持つ竜の方だからヨッシさんみたいに状態異常の確率は高くなくても威力は見劣りはしない。むしろ単純な威力だけで言えばサヤの竜の方が強いはず。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


 よっしゃ、討伐報酬が出たからこれでこっちのカモメも撃破完了っと! ふー、周囲にまだ生き残ってる一般生物の群れのカモメは慌てて逃げる様に飛び去っていったね。群れのボス倒せばいなくなるんだな。

 それにしても同調になってからロブスターをメインにして戦ったのは初めてな気がするけど、操作感の違いは特にないな。ま、今の状況はロブスターが死ぬと一発アウトだから、そこは気を付けようっと。

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