第766話 追加の検証案件
ベスタが融合進化で空いた2ndの枠を使って新たにタケノコで2ndを作ったのを聞いたけど、今後どんな風に進化していくのかが楽しみだ。とりあえずヨッシさんにベスタの狙いも伝え終わったしね。
それはそうとしてヨッシさんがログインしてきたし、サヤとハーレさんがログインするまで2人で何かをしていきますかね。
「ヨッシさん、サヤとハーレさんはいつ頃ログイン?」
「えっと、今日は特にこれといった事はなかったから、もう少ししたらだと思うよ。あ、そう言えばハーレが『横取りされたモノ』の話をしてたけど、ケイさんは確認した?」
「それならちょっと前に確認した。知らないところは結構検証されて、大体の条件は確定みたいだな」
「え、そうなの? ハーレがラックさんから聞いた話では再現の途中だって話だったけど……」
「……あー、その情報はもう古いと思うぞ」
「あ、ホントだね。今見てるけど、確かにこれは最新情報に変わってるよ」
多分、ハーレさんがラックさんから聞いた内容は昨日の夜までの段階の情報なんだろう。ラックさんはハーレさんの同級生なんだから昼間は普通に学校だっただろうし、群集のまとめの情報はゲーム内からしか見えない仕様だからそういう事もあるよね。
そうなるとあの検証は主に昨日の深夜から今日の昼間にかけて行われていた訳だ。まぁ俺らがログインしていない時でも、俺らと生活パターンの違う人はログインしてるもんな。ツキノワさん達は基本的には夜の時間帯で活動している検証勢って話だったし、情報の提供者名を確認すればツキノワさん達の名前もあるかもね。
「ま、その辺はとりあえず問題なさそうだから、サヤとハーレさんが来るまで何か特訓でもやっとかない?」
「んー、トーナメント戦も気にはなってるんだけどサヤとハーレが揃ってからの方がいいよね……。ケイさん、特訓をするとして場所はどうするの? このままここでやる?」
「あー、場所か」
ふむ、確かに特訓をするとしても場所の都合はあるな。どのスキルを鍛えるのかにもよるけど……あ、海中戦の特訓をするというのもあり……?
<群集クエスト《各地の記録と調査・灰の群集》の『???』が発見されました> 24/30
おっと、そうしてる間に群集クエストが進んだみたいだな。へぇ、いつの間にか前よりも結構進んでるような気がするぞ。
「あ、群集クエストは24個目になったんだね」
「今回は……近くじゃないみたいだな」
「あはは、まぁ何度か遭遇はしたけど、そういう時もあるよね」
ちょっと周囲を気にしてみたけど、黒い破片が散らばってくる様子はない。まぁ光ってる方の可能性もあるし、砕け散る黒い方もいつでも手に入る訳じゃないからな。多分、何度か遭遇している俺らは運が良い方なんだろうね。
「そういやこの経験値増加のアイテムって、『烏合の衆の足掻き』のボーナス経験値に効果があったりするのか?」
「……それはちょっと気にはなるけど、流石に試すのは厳しくない? 少なくとも私達がするなら空白の称号を使う必要もあるしさ」
「まぁそうなんだけどなー」
そもそもの話、『烏合の衆の足掻き』については大雑把に推測はしたけど、取得条件はまともに分かっていない。……そういや『烏合の衆』は人数が必要だと考えたのは合ってる気はするけど、この称号自体が地味に『格上に抗うモノ』と似てはいるんだよな。
ふむ、特定の称号を持っているのが前提になる称号という可能性もある? 風雷コンビと俺らが『格上に抗うモノ』を持ってるのは確定だけど……。
「ヨッシさん、『烏合の衆の足掻き』を取得する条件に連結PTのメンバー全員が『格上に抗うモノ』を取得しているって可能性はあると思う?」
「え? ……そう言われてみると可能性はありそうな気はするね」
「……ちょっと参考情報として上げとくか」
「うん、その方が良いと思う。『マッチポンプ』みたいに他の称号が条件になってたのもあるしね」
「あー、そういやそうか」
今言われるまで失念してたけど既に『マッチポンプ』の取得条件で2つの別の称号が必要だという前例はあったよ。既に前例があるのなら、条件を揃えるのが難しいかもしれないけど可能性としては0じゃない。
そうなると情報を上げる前に昨日のメンバー……風雷コンビが『格上に抗うモノ』を持ってるのは知ってるから良いとして、紅焔さん達と刹那さんが持っているかを確認しておきたいな。
えーと、フレンドリストを見て……んー、残念ながら紅焔さん達『飛翔連隊』のメンバーは1人もログインしてないか。あ、でも刹那さんはちょうど今ログインしたから、こっちは確認出来そうだな。
「ヨッシさん、ちょっと刹那さんにフレンドコールを――」
「拙者がどうしたのであるか?」
「うおっ!? あ、刹那さんか」
「ケイ殿、びっくりし過ぎなのである。拙者こそ、ログインした瞬間に目の前で自分の名前が出てきていて何事かと思ったのであるよ」
「あー、確かにそりゃそうだ……」
急に背後から声をかけられてびっくりしたけど、そういや刹那さんも同じタイミングでここでログアウトをしたんだから別に驚く事じゃなかった。確かに俺が今の刹那さんの立場だとしたら、ログイン早々に目の前で知り合いから自分の名前が出てた訳だし声はかけるよ。
「刹那さん、こんにちは」
「ヨッシ殿、こんにちはである! それで拙者へフレンドコールをしようとしていたようであるが、どういう案件であるか?」
「あー、そういやそれが本題だった。よし、それじゃ単刀直入に聞くけど、刹那さんって『格上に抗うモノ』の称号って持ってる?」
「それならば勿論、持っているのである! 行動値の増加は重要であるし、取れるなら取っておいた方が良いのである……が、何かあるのであるか……?」
「えーと、それは――」
「いや、ケイ殿、やはり待つのである! 拙者もこれでもそれなりに検証は行う身。ここは自身で結論を導き出すのである!」
「あー、そういう事なら了解っと」
そういや刹那さんも検証をやってるみたいな事は言ってたっけ。まぁこの辺のただ教わるのではなく、自分で考えて結論を出したいという気持ちは分からなくもない。っていうか、普通に俺も時々似たような事はやってるしね。
「……なるほど、分かったのである。昨日の『烏合の衆の足掻き』の前提条件として『格上に抗うモノ』が必要という考察であるな? 風雷コンビは『格上に抗うモノ』の発見者であるから持っているのは当然として、確認をしてくるという事はケイ殿達も持っているので確定と考えて良いのである」
「刹那さん、大正解。同じ結論になったって事は可能性は高そうだな」
「……そうであるな。再現の検証は必要ではあるが、検証項目に入れる必要性は高いと考えるのである」
「だろうなー。あ、刹那さん、紅焔さん達が『格上に抗うモノ』を持ってるかどうか知らない?」
「……すまぬが、それは拙者は知らないのである」
「そっか。まぁ俺も知らないからそこは仕方ないか……」
流石に紅焔さん達が『格上に抗うモノ』を持っているかどうかまでは知りはしないよな。仕方ない、とりあえず報告欄に可能性の情報を上げておいて、紅焔さん達がログインしてから改めて確認を取って――
「ケイさん、それなら私は知ってるよ?」
「……え? ヨッシさん、マジで?」
「うん。偶々だけど、取ってた所を見たからね」
「マジで!? え、いつ!?」
「えーと、具体的にいつだったかは忘れたけど、ケイさんとハーレが夕食でログアウトしてた時にだね。紅焔さんにライルさんの松の木の分を取りに行くって聞いて、取り終わった時に紅焔さんが『全員分取り終わったー!』って叫んでソラさんに怒られてたから間違いないよ」
「……予想外の方向からだけど、とりあえずヨッシさんナイス!」
「……あはは、これって喜んでも良いのかも微妙なとこではあるよね」
「確かにそうであるな!」
まぁ俺も自分でナイスとは言ったものの、この目撃情報でナイスと言われても微妙な心境にはなりそうなとこだよな。でもまぁここでヨッシさんがしょうもない嘘をつく訳がないし、紅焔さん達が持っているのは確定だ。
よし、それじゃその辺について一応は本人達に要確認とだけ注意書きをしておいて、検証の重要項目である可能性として報告をしておこう。……よし、書き込み終わり!
「おっと、拙者は今日は用事があるのでここで失礼するのであるよ!」
「あ、そうなのか。なんか足止めしたみたいですまん!」
「まぁこれくらいなら問題はないのであるよ。それではさらば!」
「おう、またな、刹那さん!」
「刹那さん、またね」
そうして刹那さんは少し離れたところにいる巨大なイソギンチャク……って、そういやあれがここの群集支援種のナギか。確かここのは追憶の実で見て、演出の流れとしてはミズキの森林と同じような感じだったはず。
「……それにしても今回の再現の残りは任せるしかないかー」
「でも、割といつもそうじゃない?」
「まぁそうと言えばそうなんだけど、今回は空白の称号を使えば再現も出来そうだから、そこが気になってなー」
「あ、確かにそれはなんとなく分かるかも……」
まぁ1つしか持ってない空白の称号を使ってしまえば再現の検証も出来るんだろうけど、1つしかないのがな……。流石に入手手段が増えなきゃ俺らで検証する為に使うには勿体無いし……って、ちょっと待ったー!?
「よく考えたら、空白の称号の取得手段が増えたじゃん!?」
「え……? あ、そういえばトーナメント戦での報酬になってたね」
「……ちょっと空白の称号を狙いに行ってみる?」
「……あはは、ケイさんは出来そうだけど、私は厳しそうな気もするよ」
「いやいや、ヨッシさんなら状態異常で完封の可能性もある!」
「それが出来ないと一気に厳しく……あ、今はそうでもないかも?」
「氷塊の操作が武器になってきてるもんな」
「それを狙ってた訳じゃないけど、ちょっと欠点を補えるようになってきたかも?」
「だなー」
今のヨッシさんの氷塊の操作や氷の操作は急激に精度が上がってきているし、状態異常も毒だけに限らず凍結や麻痺も狙えるようにはなっている。全くどれも通用しない相手というのは……攻撃を全部避けるようなプレイヤースキルの持ち主くらいになるから、1対1の模擬戦でもヨッシさんは通用するはず。
「あ、でもその辺はサヤとハーレさんが来てからか」
「うん、私はそうしたいね」
「ほいよ、ならそうするか。さて、それじゃヨッシさんの操作スキルの特訓でもやってみるか?」
「いいけど、具体的にはどんな感じでやるの?」
「久々に的当てゲーム方式。俺は土の操作を並列制御で石のナイフ5本と的を1個、ヨッシさんは氷の操作で同様にナイフ5本と的1個で、先に相手の的に当てた方が勝ちってのでどう?」
「……あはは、前よりもかなり複雑化してるね。でも、それは面白そうだし、特訓にもなりそうだね」
「んじゃそれでやりますか。あ、的は追加生成での変更はなし、ナイフでのお互いの妨害はありでいい?」
「えっと、キャラ本体への妨害はあり?」
「あー、それは無し。ナイフで妨害可能なのはあくまで相手のナイフのみって感じで」
「うん、それでいいよ」
さーて、俺とヨッシさんの攻撃方法の1つが属性違いの同系等な方法になっているから出来る対戦方法だな。これで俺自身もだけど、ヨッシさんの同時に複数の操作をする特訓になるはず。
それと刹那さんに手裏剣の案を見せた時に少し感じた、海中での微妙な操作感の違いに触れておくのも良いだろう。海中だとどうしても空中とは違った水の抵抗による微妙な違和感があるんだよね。まぁ強引に操作で押し切ろうと思えば押し切れる範囲だけど、それだと操作時間が短くなるからなー。
「それじゃそれでやりますか!」
「うん! 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』『並列制御』『氷の操作』『氷の操作』!」
そうしてヨッシさんが氷のナイフを5本と的になる小さめの氷の塊を1個生成していく。へぇ、かなり的は小さく生成して、ナイフは大きめに生成したみたいだね。ま、操作に関しては俺の方が上だという自負があるから、そこはハンデとしようじゃないか。
それにしても、体表が氷みたいになっているヨッシさんのハチの周囲に、氷のナイフが5本浮かんでいる様子は氷の羽根が追加されたみたいに見えるね。……うん、これは見た目の良さはかなりある。
さて、それじゃ俺も生成していこうっと。うーん、ヨッシさんは包丁をイメージして操作しているから同時操作はまだ甘いと思うし、もうちょいハンデを付け加えとくか。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 78/79 : 魔力値 215/218
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 77/79 : 魔力値 212/218
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
とりあえずこれで小石を6個生成完了。これを操作の支配下において、1つは少し大きめ的に、5つの石のナイフはヨッシさんより小さめな……いや、大きめの方が対処はしやすいか。よし、その方向でいこう。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を3消費して『土の操作Lv1』は並列発動の待機になります> 行動値 74/79
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『土の操作Lv1』は並列発動の待機になります> 行動値 68/79
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
よし、小石を操作の支配下において、さっき考えた通りに形成は完了っと。さーて、今のヨッシさんのお手並み拝見と行きますか!
「……あはは、結構なハンデは用意してくれたんだね」
「まぁ特訓だしなー。でも、操作自体の手は抜かないぞ?」
「うん、そうしてもらえるとありがたいよ」
「それじゃ勝負開始かな!」
「おっし!」
「全力で行くからね、ケイさん!」
って、ちょっと待って。開始なのは良いし普通に返事をしたけど、今の号令をしたのはサヤ!? いつの間に……って、ヨッシさんがナイフを一気に突っ込ませてきた!? くっ、これはヨッシさんはサヤが来てたのに気付いてたか。でもまぁそれならそれでやっていくまでだ!
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