第761話 作戦の完遂の打ち上げ
エリア移動の妨害ボスを瞬殺したし、話している間に俺らの後から来てた人が順番待ちをしているのでサクッと移動をしてしまおう。さーて、どんな海鮮バーベキューの会場になってるのかな?
<『始まりの海原・灰の群集エリア5』から『ナギの海原』に移動しました>
久々にやってきました、ナギの海原! 前に来た時は……えーと、いつだっけ……? あ、思い出した。あれだ、ロブスターを進化させる為にウツボに倒された時だ! ……よく考えたらほぼ探索してないな、ここ。
とりあえず移動をしながら周囲を改めて見ていくとして、このエリアはギリギリでアルの木も含めて海面に出ないくらいの深さのエリアだね。うん、海藻とか一般生物の魚の群れとかが結構見えている。……それ以上には今はプレイヤーが集まりまくってるけどね。
うわー、陸のエリアの多種多様な種族が集まっているのもあって、もの凄いカオスな光景だな。海の中で普通にオオカミとかネズミとか木とか草花が歩き回ってるよ。
「よし、この中では俺が一番エリア的には馴染んでるな!」
「物言いをつけたいとこだが、否定は出来ないな……。それにしてもケイは陸で見るとデカいザリガニだけど、海で見ると立派なロブスターだな」
「ロブスター……ジュルリ……」
「おいこら!? 何度目だ、ハーレさん!? アルも何を言い出してんの!?」
「あはは、確かにケイのコケはあってもロブスターとしてはあまり違和感はないかな」
「……毛ガニとかの亜種と考えたら、それほど不思議でもないよね?」
「毛ガニ……ロブスター……甲殻類……美味しかったよね、あの時のロブスターとか、ヨッシに送ってもらったカニとか……」
「余計な事を言った俺が悪かったから、落ち着け、ハーレさん!? もうちょいでその辺も食べれるはずだからな! カニとかロブスターとかその辺の一般生物もあるよな、刹那さん!?」
「あるにはあるけども、その辺りは中々獲りにくいので数は少ないのであるよ?」
「……え? マジで?」
「嘘を言っても仕方ないのであるな」
えー、確かにそれはそうだけど、カニとかロブスターの一般生物って希少なの……? そんなとこまでリアル基準にしなくても良いんじゃないですかね。
ほら、ゲームだからこそ気軽に食べられても良いような……うっ、ハーレさんからの視線が痛い。くっ、アルが余計な事を言ったからハーレさんの我慢が限界になってきてるじゃん!?
「伊勢海老なら拙者が一匹ほど持っているので、これを皆で――」
「刹那さん、それホント!?」
「……切り替えの勢いが凄いであるな、ハーレ殿。まぁ拙者達はアンモナイトに全滅させられたとはいえ、作戦としては大成功ではあるから、これくらいは奮発するのである!」
「やったー! 伊勢海老だー!」
「とりあえずハーレは落ち着いてかな?」
「はーい!」
ふー、なんというかハーレさんはひとまずは落ち着いてくれたかな。ここは刹那さんに感謝!
「んー、刹那さんに出してもらうのだけじゃあれだから、私からも何か出すよ。共闘イベントの報酬で貰ったサンマとかアジを塩焼きにするのが良いかな。あ、タイを塩釜焼き……流石にそれは厳しい……?」
「塩釜焼き!? 結構前にヨッシが私の誕生日に作ってくれたやつー!?」
「うん、あれだよ。材料自体はシンプルなんだけど……ゲーム内にあるかが問題なんだよね……」
ほほう、塩釜焼きか。あれは隣の家の釣り好きの叔父さんが釣れ過ぎた時にお裾分けでタイがあった時に母さん作ってたりしたな。
その時にちょっと手伝った事があるけど、確か卵の白身と塩を混ぜてた気はするね。その後はそのままオーブンで焼いてた筈だから、やろうと思えばゲーム内でも作れそうではある。あー、でもヨッシさんが気にしているのは卵か。
「塩なら割と即席で作れるようになっているので数が用意出来ると思うのであるが、他に何か必要なものは何であるか?」
「あ、うん。鶏の卵……正確には卵白だね。塩と卵白を混ぜて、それで覆って蒸し焼きにするんだけど、鶏卵ってある……?」
「鶏卵であるか……。それは拙者には心当たりがないであるな」
「やっぱりそうなんだ。うーん、そこは普通に塩焼きにしよっか」
「ヨッシ、諦めるのは早いのです!」
「え、ハーレには心当たりがあるの?」
「ふっふっふ、共闘イベントの詰め合わせ報酬には鶏肉があったのを忘れたら駄目なのさー!」
「あ、鶏肉があるなら、鶏がいるのも当然かな!」
「……そういえばそうだね。まだ鶏卵の入手方法が正確に分かってないだけかも……?」
ふむ、よく考えてみたら当然の話ではあるか。一般生物の小鳥とかも普通にいるんだし、鶏も探せばどこかにいるのかもしれない。……場合によってはダチョウの卵とかでも代用出来たりしないかな?
「なんか美味そうな話が聞こえてきてるが、鶏卵なら誰かが見つけたんじゃなかったか?」
「え!? ツキノワさん、それホント!?」
「あー又聞きだから信憑性までは分からんが、確かどっかの草原にいる成熟体の大きな鳥が飼ってるとか聞いたぞ」
「……え、成熟体が一般生物を飼ってんの?」
「鶏って野生じゃねぇからな。飼われて初めて鶏になるってとこだろ」
「あー、鶏の元になったのは……えーと、確かセキショクヤケイって種類だったか? イノシシを家畜化したのが豚ってのと似たようなもんだな」
「ま、アルマースの言う通りだな」
ふむふむ、まぁ今のところ、家畜化されたのはこのゲームじゃそのままでは出てきてないもんな。まさか成熟体が一般生物を飼う形で家畜化された生物がいる可能性というのはちょっと驚いたけど……まぁ、まだ未確定情報っぽいから気に留めて置くくらいにしておこう。
「お、そうしている間に見えてきたのである!」
「なるほど、こういう感じなのか」
イカダを作って浮かばせているか、岩を積み上げて埋立地を作っているか、どっちかかと思ってたけどどうやら合わせ技みたいだね。岩を積み上げて埋め立てて、その上に丸太を並べて組み上げている感じか。それで丸太が海水には直接浸からないようにしているみたいだね。
でも繋ぎ目の部分があからさまに即興で用意した感じの魔法産の生成した岩のようである。ふむ、本来なら天然の岩を積み終わった上で、イカダ……というよりは普通に床か。それを設置する予定だったんだろうね。とりあえず今日のところは即興で使えるようにしたってところかな。
「それほど広くはないみたいかな?」
「サヤ殿、それは仕方ないのである! まだ土台自体が出来ていないので、ただ持ってきた丸太を並べているだけで丸太の固定も何人かが手分けをして操作でしているはずである!」
「あ、そうなのかな」
「あくまでこれは即興で用意した場所なんだな」
「そういう事であるな!」
ふむふむ、ハーレさんの要望に合わせて急遽用意してくれた場所って訳か。まぁ途中までの土台は出来ているから、元々そういう場所を作る事自体は計画してたみたいだけどね。
さてと、今は海中から見ている状態だから、とりあえず海面まで出て海鮮バーベキューの舞台の上に誰がいるかを見に行きますか。10メートル四方もないくらいだから大きさ的に多分それほど多くの人は乗れないと思うけど、海鮮バーベキューをする以上は焼く人とその道具はそれなりにはいるはず。
「アル、海面まで浮上!」
「おうよ!」
そうしてアルが海面へと向けて浮上してくれた。よし、これで海鮮バーベキューの会場の様子が少しでも見えるだろう。どれどれ、どんな風に……。
「……なんか見覚えのあるような妙な光景が見えるんだけど?」
「……サボテンの棘に色々刺して焼いてるみたいだな」
「あれはシンさんなのさー!?」
「えっと、焼いているのはカインさんと紅焔さんかな?」
「そうみたいだね? あ、一応竈も作ってはいるみたいだよ」
「荒野エリアではサボテンのプレイヤーの棘に刺して焼くというのは話には聞いていたのであるが、凄まじいインパクトであるな……」
あー、まぁ初めて見るのならその感想は真っ当な感想ではあるよね。でもそれほど広くないイカダの上でやるには地味に理には叶っているんだな。
パッと見た感じでは竈の方は魔法で生成してるような雰囲気はあるから、時間制限もダメージ判定も何もないサボテンに突き刺して焼くというのはこの状況では有用な手段な気はする。
他にイカダの上にはレナさん、ベスタ、『飛翔連隊』のメンバー、ザックさん、風雷コンビとかがいるね。イカダの近くの海中にはシアンさん、ソウさん、ケンローさんとか、アンモナイトを誘導してきた招き猫さん達もいる。
あれ、これってもしかして意図的に活躍が多かったメンバーが集められてる? ダイクさんとか知ってる人以外でも、名前を初めて見る人が結構いるからそれだけって訳じゃなさそうではあるけども。
「お、主役の最後が来たか」
「あ、ベスタ。って、俺らが主役?」
「あぁ、まぁな。アンモナイトの誘導班と足止め班には負担が大きかったのと、全滅までに色々な情報を得てきた事もある。集まってる連中からの了承は得ているから、こっちの近くに来たらいい」
「あー、やっぱりか」
さっき感じた通り、どうやら今回の作戦で特に重要な役割を果たした人達が会場の良い場所に揃うようにしてくれているようである。
そういや、ここの群集支援種のナギってどこにいるんだろ? ……今回の件に関係する訳でもないから、今はそれで良いか。
「俺らの事は良いから、ケイさん達は行ってこい! あれだけ成熟体を相手に戦った上に、情報まで得てきてるんだから文句を言うやつはいねぇよ」
「まぁ文句を言うのがいれば、僕らも黙ってはいませんがね」
「あはは、それは物騒だよ、黒曜。ハーレさん、さっき食べたがってた海鮮も色々食べれると思うよー!」
「はっ、それは確かにそうなのさー! みんな、すぐに近くまで移動なのです!」
「ま、これを断る理由もねぇよな」
「だな。んじゃアル、移動は任せる!」
「おうよ!」
「アリスさん、他のみんなもまたねー!」
「うん、ハーレさんもみんなもまたねー!」
そうしてツキノワさん達との連結PTを解除してから、海鮮バーベキューの会場であるイカダの近くへと移動してきた。おー、灰のサファリ同盟の本部で見た事のある人が結構いるな。
あ、モンスターズ・サバイバルのライオンの肉食獣さんが色々と指揮をしているね。ラックさんもいるし、どうやら竈は灰のサファリ同盟とモンスターズ・サバイバルが連携しているみたいだな。丸太の固定も灰のサファリ同盟で土の昇華を持ってる人が交代でやっているようである。
「さて、全体へ話をして打ち上げをする前に少し話しておく事がある。無茶な作戦だったが、どうだった?」
「あー、まぁ負けたのは悔しかったが、不満はないな。今やれる範囲の事はやりきったし、成果もあったからな」
「俺も基本的にはアルと一緒だ。勝てないのは分かってたけど、称号を得られるまでの事はやったんだしさ」
そこで一旦言葉を切ると、他のみんなも俺やアルの意見に同意するように頷いている。まぁ、今回の作戦は成功したし、全力で戦ったのは間違いない。そしてその結果として得たものもいくつかある。ただまぁ、これだけは付け加えておきたいね。
「でもまぁ、俺ら『グリーズ・リベルテ』と刹那さんでアンモナイトにはいつかリベンジをするつもりだな!」
「……そうか。まぁ負けたままではいられないってのはよく分かるぞ。紅焔達と風雷コンビについては既に聞いたから改めて聞かなくてもいいだろう」
あ、紅焔さん達と風雷コンビは俺らより先に到着してたから、その辺の話は既に終わっているのか。ベスタとしては最後に来た俺らに聞きたかったって事なのかもね。
「さて、『グリーズ・リベルテ』に確認だ。さっきツキノワから報告を受けたが、タッグ戦の決定権は俺に移譲する事に決めたのは間違いないな?」
「おう、それは間違いないぞ。でも、ベスタに任せる形になるけど良いのか?」
「それについては構わん。今の状況だとオオカミのLv上げも厳しくなっているからな。少し考えている事もあるし、基本的には問題ない」
ふむふむ、ベスタは現状ではオオカミのLv上げがほぼ頭打ちの状態になってるんだな。……少し考えている事というのが少し気にはなる。
まぁ今日見つけた称号である『烏合の衆の足掻き』を狙えば大量の経験値は狙えそうな気はするけど、明日はトーナメント戦をするのならすぐに再現検証とはいかないか。あれって経験値が凄いし、地味に再現の難易度は高そうだよなー。
「俺達はLv上げもしたいから、その辺はベスタに全面的に任せるよ」
「ケイさん、わたしや灰のサファリ同盟も動くのを忘れないでねー?」
「……そうだった。レナさんも灰のサファリ同盟のみんなも、よろしく頼む」
「うん、その辺は任せなさい! あ、でも最終戦とかは顔は出せるかなー?」
「それはもちろんなのさー! それで私が実況をしたいのです!」
「その辺は元々決定権を持ってたんだから、どうとでもするよー! ねぇ、ベスタさん?」
「実況周りはレナに任せておくとするか。どうせ既に手回しはしているんだろう?」
「んー、実はその辺はまだなんだけどねー」
「え、レナさん、そうなの!?」
「ふっふっふ、今のこのタイミングを待ってたからねー!」
「なるほど、イカの件が片付いて大勢が集まるのを待っていたのか」
「ベスタさん、正解ー! それじゃ確認しておきたかった事も確認出来たし、そろそろ良いんじゃない?」
「……それもそうだな。いつまで待たせておくのも悪いし、始めるか」
色々とレナさんが画策していたようだけど、どうやらハーレさんの希望も通りそうで良かったよ。元々俺らが持ってきたタッグ戦だから、このくらいの特別扱い自体は簡単に通せるよな。
さて、これで伝えるべき事は伝え終わったから、これから集まっているみんなで大騒ぎってとこだな。現時刻は10時半をちょっと過ぎたくらいだから、まぁ1時間くらいは大丈夫だろう。
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