第760話 作戦が終わり……


 どういう風にするのかはまだ分からないけども、海エリアの競争クエストでの占有している『ナギの海原』で海鮮バーベキューでの打ち上げに行く事になった。


 まぁその前にナギの海原への妨害ボスを倒す必要があるけど順番待ちになっているし、そこで一緒になったツキノワさん達とちょっと雑談でもしておこう。

 それにしても、サヤ、ツキノワさん、黒曜さんとクマが3人いると迫力があるもんだなー。


「あー、そういやここで会ったのも良い縁だし『グリーズ・リベルテ』に聞いておきたい事があるんだが、聞いても良いか?」

「内容によるけど、ツキノワさんが聞きたい事ってなんだ?」

「いや、例のタッグ戦の事を聞きたくてな。『グリーズ・リベルテ』が決定権を持ったままどうするかは保留になってるって話だったが……」

「……あっ」

「おい、ケイさん!? その反応は不安になるんだが!?」

「あー、いやー、そのー」


 ヤバい、今言われるまでタッグ戦の事は完全に忘れ去っていたよ……。夜に集まった際にみんなの意見を聞こうと思ってたはずなのに……あー、あれか。夜にログインした直後ってアルマジロが泳いで逃げてたから、そのまま忘れてしまってたのか……。

 うーん、ここでそれを忘れた言い訳にするとヨッシさんが責任を感じてしまうだろうから、そこには触れないようにしておこう。まぁ俺が忘れてた事自体は事実だから、余計な事までは言わなくてもいい。


「すまん、その件はすっかり忘れてた。という事で、今から待ってる間に相談したいんだけど、みんなはそれでもいいか?」

「もちろんなのさー!」

「うん、それは問題ないかな」

「……あっ。……うん、私もそれで良いよ」

「……なーに重要な事を忘れてくれてんだよ、ケイ!」

「あー、悪かったって!」


 一応気を遣ったつもりだけど、ヨッシさんとアルには確実に気付かれたな。……ハーレさんに関しては隠す時は本気で隠してくるし、サヤも気付いていないとは思えない。とりあえずアルがヨッシさんに気負わせないようにわざと振る舞ってくれているから、それに乗っかっておこうっと。

 というか、ハーレさんは俺と一緒にレナさんとこの件は話してたんだよな。……うん、ハーレさんも忘れててシレッと俺に押し付けてきてる気もするけど、そこは気にしたら負けな気がする……。


「それで具体的にはどうするのであるか? 拙者もその件は地味に気になっているのであるが……」

「とりあえずレナさんから検討してる案は聞いてるから、それをみんなはどう思うか教えてくれー」

「お、既に草案自体はあんのか。ケイ、どんな内容だ?」

「えーと、明日から模擬戦の2段階目に実装されるトーナメント戦で勝ち抜いた人を選出するのはどうかってさ。それをやる場合は灰のサファリ同盟の方で実行してくれるとも言ってた」

「あー! そういえばそうだったのさー!」

「そういえばさっき共生進化をし直した時に、定期メンテナンスのお知らせはあったね。まだ内容は聞いてないけど……」

「私もまだ詳細は聞いてないけど、いきなりそれを活用するのかな?」

「まぁ、テストも兼ねるんなら良いんじゃねぇか?」

「まぁなー。ちなみにこの件は俺らに決定権があるから、それをせずに指名でも良いっぽいぞ。あと、面倒だったらベスタに決定権の移譲をしても良いってさ」

「ほう?」

「あと、参加者の人数によっては海エリアと陸エリアで別々にやって、それぞれに勝ち抜いた人で普通の模擬戦で最終決着をやるって言ってたぞ」


 改めて考えてみると、結構俺らにとって破格な扱いにはしてくれてるんだよな。負担でなければ自由に決めさせてはくれる上で実行役は灰のサファリ同盟が引き受けてくれるし、負担であれば代わりにベスタが決定権を行使してくれるんだしさ。


「ふむ、随分と配慮はしてくれているんだな」

「まぁ、そうなる。で、実際にどうする? というか、トーナメント戦でタッグ戦の出場者を決めるとしたら、どれだけ参加者がいるんだ?」

「トーナメントでやるなら、俺は参戦するぜ。黒曜もだよな?」

「うん、参加出来る時間帯なら僕も参戦させてもらうよ」

「私も参戦するねー!」

「拙者も興味はあるのである!」

「……なるほどね」


 ヒツジのモコモコさんとトンボのシオカラさんは興味を示していないけど、ツキノワさん、黒曜さん、アリスさん、刹那さんは興味ありか。

 ふむふむ、グリーズ・リベルテのメンバーだけでなく他の人がいる時に相談という形になったのは結果オーライかな?


「それなら俺も出たいぜ!」

「同じく!」

「俺は出ないけど、見るのはしたいとこだな」


 あ、なんか便乗する形で連結PTになっているもう1PTの人からもそんな意見が出てきた。この感じだと興味がある人はそれなりにいそうだな。それに自分は参加しなくても、見てみたいという気持ちも分かる。


「でも、それってトーナメント中は私達はずっと見ていないといけないのかな?」

「あー、まぁ決定権を持つ責任者って事で、俺らの誰か1人くらいは常駐しといた方がいいだろうな」

「……放置しておいても良いんだろうけど、出来れば見ておいた方がいいよね。私達が決定権やるとしたら、夜から開始?」

「多分、そうなるなー。あー、トーナメントも見たいけど、Lv上げとか探索もしたい……」


 うーん、トーナメントで決めるの自体は良いんだけど、決定権を持ったままだとそれ以外の身動きは取れなくなりそうだよなぁ……。明日の夜を丸々トーナメント戦の責任者で待機し続けるのもなー。

 トーナメント戦自体は見たいけど、他にもしたい事は色々とあるからちょっと悩ましいところ……。


「はい! それなら折角ベスタさんが決定権の移譲でも構わないと言ってくれているから、そこに頼るのもありだと思います!」

「……それが無難かな?」

「俺もそれで良いとは思うぞ。どっちにしてもベスタに決定権を移譲しても、海と陸でまとめる役目が必要だろう。それなら俺らよりもそういうのに慣れてるベスタやレナさんに任せる方が確実だ」

「うん、私もアルさんに同意。ここは慣れてる人に任せるのが良いと思う」

「……確かにそれもそうか」


 ベスタやレナさんならこういうイベント事のまとめ役には慣れているし、灰のサファリ同盟にも他に慣れている人もそれなりにいるだろう。

 別に俺らが決定権を無理に行使するつもりはないし、ベスタに決定権を移譲して取り仕切ってもらった方が色々とスムーズに済みそうではあるね。……その辺を見越した上での決定権の移譲か。


「よし、それなら決定権はベスタに移譲して、俺らは傍観者って事で良いか」

「賛成なのさー!」

「うん、それで良いと思うかな」

「俺も異論なしだ」

「私も賛成だね」

「それじゃそういう事で決定な!」


 無事にみんなの同意は得られたし、これで決定だね。流石にトーナメントを全然見ないつもりではないけど、俺らのPTが全員揃う夜にそれだけで予定を潰すのもあれだからね。

 土日だったならそれでも良かったんだけど、Lv上げやスキルの強化をしていきたいタイミングでそれはちょっと躊躇いがなー。


「聞いていて思ったのであるが、ケイ殿達はトーナメントには参加しないのであるか?」

「はっ!? そういえば私達が出るという手段もあったのです!?」

「……そういやそうだった。てか、俺らが出たけりゃトーナメントはせずに自分達で決定権を使えば終わりではあるけど」

「確かにそういえばそうであるな!? それは失念していたのである!」


 根本的に俺らの誰かが出たいのであれば、トーナメントの必要性は皆無なんだよね。……ベスタに決定権を移譲する前に一応みんなに聞いておくか。

 ぶっちゃけ俺はあんまり出る気はなかったからスルーしてたとこはあるけど、ハーレさんは単純に気付いてなかっただけみたいだしね。


「一応確認。トーナメントはせずに決定権を使って出たい人ー?」

「俺はパスだ。どっちかというと、このタッグ戦は外から観戦したいからな」

「私は盛大に目立ちそうなタッグ戦はパスかな」

「私もパスなのさー! その代わりにタッグ戦の実況権が欲しいです!」

「……あはは、それはハーレらしいね。私も遠慮しておくね」

「みんなパスなんかい! いやまぁ、俺も今回はパスだけど」


 赤の群集の誰とのタッグになるかというのもあるんだけど、それ以上に青の群集のジェイさんがなんか怖いんだよね。

 青の群集の方はタッグの組み合わせは自分達で決められるから、即興で対応する事になる赤の群集と灰の群集より優位ではある。そんな優位性をあのジェイさんが利用してこないとは欠片も思えないんだよなー。たまにはそういう所を傍観者の立場で見てみたい……って、これはアルと動機が同じだね。


「なるほどな。よし、それじゃその辺はまとめに上げておいても良いか?」

「ん? ツキノワさんがやってくれるなら助かるけど、いいのか?」

「ま、出来るだけ早めに欲しかった決定だから問題ねぇよ。それにまだ聞きたい事もあるしな」

「……へ? まだ何かあるの?」


 確かにまだ報告してない事は、白光する性質がよく分からないスキルとか、砂の散弾の魔法とか、称号の『烏合の衆の足掻き』とかもあるにはあるけどさ。

 称号は俺ら以外はまだ知らないはずだから、アンモナイトが使ってたスキル絡みかな。その辺は距離の問題もあっただろうから、近くで見た俺らの意見が欲しいとか?


「俺らが聞きたいのはあれだな。『烏合の衆の足掻き』の経験値が凄い多いってのはホントか?」

「……何故それを既に知っているんだよ、ツキノワさん」

「あれ、知らねぇのか? あの戦闘、風雷コンビが情報共有板でリアルタイムで実況してたぞ」

「そんな事をしてたんかい、風雷コンビ!?」


 衝撃の事実なんだけど、あのアンモナイト戦の最中に風雷コンビがリアルタイムで実況をしていたって……。確かにあの2人なら普通に出来そうだけど、あの戦闘の最中に無茶苦茶な事をやってんな!?

 その辺は後で報告を上げるつもりだったけど、不要になった……? いや、風雷コンビだと不充分な情報を上げてる可能性もあるにはあるのか。


「ちなみに他の情報は遠巻きに見てた俺らの推測と、紅焔達の『飛翔連隊』からちょうど報告が上がってるとこだぜ」

「……なるほど、紅焔さん達が報告を上げてくれてるのか」

「紅焔さん達は共生進化じゃないから、その分だけ復活が早かったのかな?」

「あ、それはありそうだね」

「そういやそうなるのか」


 ふむふむ、確かにサヤの言う通り紅焔さん達の中には共生進化をしてる人はいないから、ログイン場面での共生進化のし直しが必要がないだけ戻ってくるのは早かったのかもしれないね。

 それに風雷コンビが実況をしていた事や、距離があったとはいえツキノワさん達みたいに目撃者が沢山いたのなら、情報共有板で推測していく材料は揃っているか。


「おーい、ツキノワさんのとこの連結PT! 順番だぞ!」

「おう、了解だ!」

「順番が来たのであるな!」

「みたいだな。ところでボスは誰が殺る?」


 ぶっちゃけ今だと単なる雑魚のボスだから誰が仕留めても問題はないんだけど、やりたい人がいれば任せるのがいいもんな。勝手に決めずにこうやって意思確認をするのも大事である。特に普段一緒に行動していない人といる時はね。


「はい! 私がやりたいです!」

「あ、ハーレさんがやるなら私もやりたい!」

「……投擲のリスが2人は過剰じゃないかな?」

「ま、別に良いんじゃねぇか? この後には別に強いボス戦が控えてる訳でもないしな」

「アルさんが良い事を言ったのです! アリスさん、一緒にやるのさー!」

「うん、一緒にやろうね、ハーレさん!」

「それじゃボスはハーレさんとアリスさんに任せた」

「「任されました!」」


 さてと誰がここの妨害ボスである光クラゲを倒すかは決まったので、そこは任せてしまおうっと。ただの通過場所でしかないんだし。

 行き先であるナギの海原にあるっぽいバーベキューをする場所が気になるんだよね。実物を見てのお楽しみという事にはなってるけど、バーベキューをする手段はどういう風になってるんだろう? 流石に海中に建造物は無理だろうから、浅い部分を埋め立てているか、巨大イカダでも作っているか、とりあえず思いつくのはそれくらいだなー。


 おっと、そうしている間にボスのクラゲが出現してきた。さて、ハーレさんとアリスさんはどういう感じで倒すんだろう?


「瞬殺でいくのさー! 『魔力集中』『拡散投擲』!」

「わっ!? ハーレさん、大技だー! それじゃ私も。『魔力集中』『拡散投擲』!」


<ケイが成長体・瘴気強化種を討伐しました>

<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイ2ndが成長体・瘴気強化種を討伐しました>

<成長体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<『進化の軌跡・光の欠片』を1個獲得しました>


 えーと、いくらなんでもオーバーキル過ぎません? いや、まぁスキルの熟練度にはなるだろうし、オーバーキルでも別に良いんだけどね。


「ケイ、オーバーキルならケイもやってるからな?」

「……それもそうだな」


 そういや俺も昨日、青の群集の森林エリアに行った時に実験で岩の大剣で瞬殺したもんな。あれも間違いなくオーバーキルだし、サッサと倒したいならそれが手っ取り早いか。


 ま、それはともかくとして、これでナギの海原へと移動は出来るようになった。さて、どんな海鮮バーベキューの打ち上げ会場になってるんだろうね?

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