第728話 何が出るか?
ちょっと……じゃないな。大幅に無駄な戦闘をしてしまった気もするけども、とりあえずそれは気にしない方向で。とにかく大量に虫が出てくる林は抜けたから、ザッタ平原を東に向かって一気に突っ切って行けばいいだろう。
そういやさっきの戦闘の途中で倒し切るのではなく吹き飛ばす形に変えたから、ザッタ平原での敵との遭遇数の上限には達していないのかな? まぁ、変に敵を集めるような事をしなければ戦力的には問題はないか。
「あ、そういやこの辺に光る進化記憶の結晶があるんじゃなかったっけ?」
「あぁ、そういえばそういう情報もあったね」
「紅焔さん、ソラさん、それはケイさんが見つけたやつなのさー!」
「あー、そういやそうだったな」
「お、マジか! ケイさん達が見つけたのは知ってたけど、場所はここだったんだな」
「あれだよねー! わたしとダイクとケイさんとハーレさんでデンキウナギを取りに行った時のやつ!」
「まさかケイさんがデンキウナギと一緒に取るとは思わなかったもんなー」
うんうん、思い出してみればその4人組でデンキウナギを捕獲しに来た際に、偶然見つけた進化記憶の結晶なんだよな。あれはここより少し北側の方にある小さな湖の中にあったんだよね。
「それなら折角近くまで来ているんだし、少し様子を見に行くかい?」
「ソラさんに賛成なのさー!」
「んー、見に行くのは賛成だけど、生成された経験値増加のアイテムはあるかなー?」
あー、行っても確実にあるとは限らないんだよな。昨日の広範平原にあるという光る進化記憶の結晶の場所は既に先客がいたから寄らずに通り過ぎたし、無駄足になる可能性は否定し切れない。そもそもここって森林深部からは結構来やすいエリアではあるからね。
でも、今の場所からはあの小さな湖の様子は確認出来ないし、無いと決めつけるのも早計か。場合によってはタイミング良く経験値増加のアイテムが生成される直前になるかもしれないしね。
「レナさん、それは駄目元でもいいんじゃないか? 行かなきゃ絶対に手に入らないのは確実だしさ」
「ま、それもそだねー! それじゃダイク、あの小さな湖の方に目的地を変更で!」
「ほいよっと」
そうしてダイクさんが水のカーペットの進行方向を東から北へと変えて、光る進化記憶の結晶がある小さな湖へと進んでいく。
実際にあるかどうかは運次第ではあるけど、まだ6時くらいだし時間的には問題はないからね。あまり早くにネス湖に辿り着いても、俺はあんまり出来そうな事もないしなー。
「はっ!?」
「どうした、ハーレさん?」
「携帯端末の方にメッセージが届いたっていう通知なのさー! 多分サヤかヨッシだと思います!」
「お、返事が来たんだな」
俺とハーレさんは晩飯でログアウトする都合があるからフィールドボスの誕生に使う成長体を持っていけない。だから灰のサファリ同盟からの依頼の報酬である成長体を受け取るのはサヤとヨッシさんに任せたいんだよね。
その件についてハーレさんに確認の為に連絡をしてもらってたけど、今その返事が来たんだろう。多分サヤとヨッシさんが駄目だと言う事はないだろうけど、もし万が一の問題があれば対処しないといけないしね。
……場合によっては誰かに運んできてもらうのを依頼するとか、方法を考えないといけないもんな。
さてと、今はダイクさんの水のカーペットの上にいるからこの場ですぐにログアウトは無理だね。とりあえずこの場で止めてもらって、みんなには待ってもらうか……? それとも進化記憶の結晶がある小さな湖まで辿り着いてからにする……?
「ハーレ、一度止めよっか?」
「ううん、大丈夫なのさー! ログアウトは小さな湖に到着してからにするのです!」
「そっか。それじゃ、ダイク、大急ぎだよー!」
「おうよ!」
ちょっとどうするかを考えてる間に結論がすぐに出たみたいだね。ま、変に他のみんなを待たせる事になるよりはこの方が良いだろう。
ダイクさんもみんなが落ちない程度に速度を上げてくれたし、元々それほど離れている訳でもない場所だからすぐに辿り着くよな。
そうしてそう時間は掛からずに進化記憶の結晶がある小さな湖へと辿り着いた。パッと見た感じでは特に先客は居ないようである。これはラッキーだったかな? ……まだそう言うには少し早いか。
「それじゃちょっとログアウトして、話をしてきます!」
「おう、ハーレさん、任せた!」
「任されました!」
そう言ってハーレさんは地面に飛び降りて、ログアウトをしていった。さて、ハーレさんが戻ってくるまでの間に進化記憶の結晶の確認をしていこうじゃないか。
そういや一番初めに見つけた事はあるけど、発見後の光る進化記憶の結晶がある場所にこうやってちゃんと確認をしに来たのって初めてな気がするね。どんな風になってるんだろ?
「えーと、確かあの辺に……あ、あった! ダイク、真上まで移動!」
「え、ちょ!? レナさん、どこにあんの!?」
「ほら、真正面から少し左の方の湖の底! 夜の日で曇ってるんだから、分かりやすいでしょ?」
「んー!? あれ、どれだ!?」
「だからあれだってー! なんか光ってるのは多いけど、その中で動いてないやつ!」
えーと、レナさんが指し示している場所を俺も確認はしてみているけど、ダイクさんと同じで上手く見つけられない。
いや、見つけられないというより、なんか光ってるのがあるのは分かるんだけど、光って動いてるのが複数いるんだよな。どうもこれは周囲に敵がいて、それが発光を使っているような感じか。光は弱いから発光のLvは低そうだけど……。てか、前にこんなのいたっけ?
「……これは確認した方が良さそうだね。『鷹の目』!」
「ソラ、どうだ?」
「……ちょっとこれは予想外だったよ。残滓辺りかと思ったら、光ってるのは一般生物だね」
「え、マジで!?」
「こんなとこで嘘を言ってどうするんだい……。それと矢印がない光源が1つあったから、それがレナさんが言ってるやつだろうね」
「ほら、ちゃんとあるじゃん! それにしても何匹も光ってる一般生物って何だろ?」
「それに関しては謝るって、レナさん……。でも本当に何が光ってんだ?」
ふむ、一般生物で光る水中の生物か。うーん、曇ってて普段より暗いせいか、水中の様子はよく分からないんだよな。あ、よく観察してみれば動かない光源が1つだけある……って、レナさんが断言したのはこの動きの違いにいち早く気付いたからか。流石の観察力だな。
「光ってる一般生物……あっ、もしかしてそういう事か……?」
「ケイさん、何か心当たりがあんのか?」
「その光ってる一般生物、全部が経験値増加のアイテムになるやつかもしれない」
「えっ? ケイさんがここで拾った時って水草だったよね?」
「……ケイさん、どういう事だい? 僕もここで手に入るのは水草だとしか聞いた覚えしかないよ?」
ふむ、水草でしか手に入らないという情報があるのか。どうやらこれは、ちゃんと確認をしていかないといけないないようだね。もし俺の予想が正しければ未発見のレアケースという可能性もありそうだ。
そう言っても、俺はここのは既に取得済みだから2個目は手に入らないと思うけど……。まぁそれでも確かめる価値はある状況なのは間違いないか。
「えーと、とりあえず後でちゃんと確認はするけど、まずは俺の推測からな」
「そだねー。まずはそこから聞かせてもらおっかー!」
「ま、単純ではあるけどなー。そもそも光る方の進化記憶の結晶から発生する経験値増加のアイテムって、水草じゃなくて長く触れていた一般生物って条件なんだよ」
「あっ! なるほど、そういう事かー! そういえば見つけた時にそう言ってたのを失念してたよー!」
「え、レナさん、もう分かったのか!?」
「ふっふっふ、ダイクは鈍いねぇー! 要するに長時間触れてさえいれば、水草には限定されないって事! そういう事だよね、ケイさん?」
「ま、そういう事。多分、これってレアケースの大量生産版なんじゃないかと思う」
「確かに毎回1個のみなら手に入る数が少ないから、そういうレアケースはありそうな話な気はするね」
ソラさんも言ってるけど、光る方の進化記憶の結晶では毎回1人ずつしか手に入らないというのは、盛大に砕け散って大量に手に入れられる黒い方に比べるとバランスは悪いもんな。
でも毎回ではなくても、稀に一気に複数個が生成されるというのであれば数はそれなりに手に入れられる。……こっちは同じ場所では1回手に入れたら、2回目はない訳だしね。
「おし、理屈は分かったぜ! で、ケイさん、具体的に何の一般生物なんだ?」
「それはこれから確かめるしかないって、紅焔さん。……出来れば小魚であってほしいけどな」
「……ケイさんのその一言、嫌な予感がするんだけど!?」
「いやー、オタマジャクシだったら嫌だなーってね? ダイクさん的にはどう? オタマジャクシをアイテム化して食べるのは?」
「それは……うん、なんか嫌だな。……そうか、長く触れていたのは一般生物の卵って可能性か」
「ぶっちゃけ一番最初に連想したのはそれなんだよね……」
でもまぁ食用カエルとかもいたりするし、オタマジャクシが経験値増加のアイテムになる可能性って否定出来ないんだよな。ここは小魚であって欲しいけど……って、俺はここのは水草を既に確保してるからこれ以上はここでは手に入らないんだった。それなら特に心配する必要は――
「ただいまー! あれ、ケイさん、何でホッとしてるのー!?」
「ハーレさん、しー!」
「あ、ケイさんはここには関係ないんだった!?」
「げっ、バレた!?」
「ほほう、ケイさんは俺らにはオタマジャクシでも良いと……?」
「どうやらそうっぽいな。紅焔さん、どうする?」
「どうするのが良いんだろうな、ダイクさん?」
ちょ、まだオタマジャクシと決まった訳じゃないし、仮にオタマジャクシだったとしても俺の責任じゃないんだけどー!? 確かにこのタイミングでちょっと安堵したのはあれだったとは思うけど、その苦情を俺に言うのは筋違いじゃないですかね!?
「まぁまぁ、紅焔もダイクさんも落ち着いてだね?」
「そうは言ってもなー」
「だよなー」
「そこはケイさんを責めても仕方ないところだろう? それにまだちゃんとオタマジャクシかどうか確認はしていないよね」
「「うぐっ」」
ふー、ソラさんが止めに入ってくれて助かった。確かに俺も悪かった点はあったけど、まずは確認をしてから――
「それに一般生物なら普通のオタマジャクシもいるだろうからね。ケイさんだけ仲間外れにはしないよ」
「お、それもそうだな!」
「ソラさん、良い事を言うじゃねぇか!」
「ソラさんの裏切り者ー!?」
「ケイさん、仲間外れは良くないからさ?」
くっ、ソラさんは味方をしてくれたと判断したのは失敗だった!? 一番の敵はソラさんだったじゃないか……。
いや、まだ諦めるのは早い! ここにいる光っている一般生物がオタマジャクシではなく、普通の小魚なら問題はないはずだ! もしくは小海老でも問題はない!
「ねー、みんなして何の話ー!?」
「えっと、オタマジャクシを食べるかどうかの話……?」
「食べるって事はオタマジャクシの一般生物がいたのー!? カエルって一度食べてみたいけど、オタマジャクシはどうなんだろ!?」
「「……なっ!?」」
流石はハーレさん。オタマジャクシを食べるかどうかの話で一切の躊躇なく食べる方向性に持っていったな。……まぁ実際に食べた事はないけど、カエルの肉は鶏肉みたいと聞いた事はあるし、ハーレさんはあんまり躊躇はしないか。
「まぁそういうのはとりあえず確認してからにしようねー。ハーレ、簡単に状況を説明しておくよ」
「よろしくお願いします、レナさん!」
「えっと、光る進化記憶の結晶から手に入る経験値増加のアイテムで、どうも初の事例に当たったみたいでね。ほら、あそこで光ってるのが何匹か泳いでるじゃない?」
「おー、ホントだー! でも何かはよく分からないねー?」
「うん、そうなんだよね。それでオタマジャクシの可能性があるって話が出てねー」
「なるほど、大体把握したのです! それじゃまずは確認が先なのさー!」
うん、なんというかハーレさんのこういう時の適応力は凄いとこがあるよな。……とにかくここはちゃんと捕獲してから確認をするのが最優先だ。
それに冷静になって考えてみたらオタマジャクシを食べるのに抵抗がある人の方が多いだろうし、小魚の可能性の方が高いはず!
「って事で、捕獲していこっか。今のケイさんには負担が大きいだろうから、真上まで行ってダイクの水の操作で捕獲をお願い」
「……ま、とりあえずはそこからだよな。了解だ!」
「わくわく! あ、ケイさん、成長体の受け取りはサヤとヨッシがしてくれるって事で話はまとまったよー!」
「お、そりゃ良かった。連絡、サンキューな、ハーレさん!」
「えっへん!」
ハーレさんが自慢げに誇っているけど、まぁ実際にハーレさんが重要な連絡役を引き受けてくれたんだしね。とにかくフィールドボスの誕生に使う成長体の運搬についてはサヤとヨッシさんに任せられるという事で一件落着だな。
そしてそうしている間にダイクさんの水のカーペットが光っている一般生物が泳いでいる付近の真上までやってきた。さて、ここからが重要事項だね。果たして、オタマジャクシなのか、小魚なのか、他の何かなのか、それがこれからはっきりする。
「……よし、それじゃ捕獲していくぞ。『アクアクリエイト』『並列制御』『水の操作』『水の操作』!」
みんなが息を飲みながら見守っていく。ダイクさんが光っている一般生物を操作した湖の水の中に巻き込んで一気に持ち上げて、生成した魔法産の水で中にいる一般生物が落下していかないようにしていった。
そして、遂にその光っている一般生物の姿が確認する事になる。頼む、オタマジャクシ以外の小魚か海老辺りであってくれ!
「お、これって海老じゃねぇか!?」
「これは手長海老だね」
「うはー! オタマジャクシじゃなくて、ホッとしたー!」
「じゅるり……。一般生物の手長海老なら食べられるよね!?」
「おーい、ハーレさん!?」
「うん、手長海老なら塩をかけて焼いたら美味しいね」
「はい! 手長海老を食べたいです!」
とりあえずオタマジャクシを食べるという事態は避けられたけども、今度はハーレさんの食欲スイッチが入ってしまったようである。まぁ一般生物の海老なら、食べる事については問題はないか。
さて、肝心の光っている一般生物の手長海老の数だけど10匹以上いるから確実に余る。……余分に持っていきたいとこだけど、それって出来るのか?
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