第704話 ようやく目的地へ
アルがスイカを食べるのに養分吸収を使った事で、俺のコケでも養分吸収をやってみる事になった。
とりあえずスイカはアルが預かってくれたから、コケの核をスイカに触れさせていけば良い。増殖してやるか、それとも……よし、こっちでいこう。
<行動値上限を1使用して『群体塊Lv1』を発動します> 行動値 74/78 → 74/77(上限値使用:1)
群体塊にして球状のコケの塊をロブスターの右のハサミの表面にコロコロと移動させていく。これで準備完了だから、いざ養分吸収をやっていこー!
<行動値を2消費して『養分吸収Lv2』を発動します> 行動値 72/77(上限値使用:1)
スイカに群体塊になったコケを触れさせて、いざ発動! さて、これでどうなる? お、スイカが萎れてきたって事は成功か!? あ、1回の吸収でスイカは全部無くなるんだ。そういやアルのも無くなってたっけ。
って、あれ? そういや行動値の回復量上昇って表示はされなかったような気もする。いかん、この状況じゃ効果があるのか分からない!?
「ケイ、成功か?」
「あー、うん、多分?」
「なんで返答が曖昧なのかな?」
「よく考えたら効果があっても、回復量の上昇中の表示は無かった!」
「……それって、実際に回復を見てみないと分からないって事かな?」
「まぁそうなるなー。って事で、しばらく様子見」
「……そういう仕様なら仕方ねぇか」
ま、体感的にはなるけども養分吸収での行動値の回復量の増加は明確に体感出来るくらいには早くなるからね。今はそんなに行動値は減ってないけど、効果があるかはこれくらいでも分かるはず!
それにしてもほんとにスイカのジュースを飲んだような感じだったし、冷えているのもちゃんと分かった。うん、不思議な感覚ではあるけど、これはこれでありだね。
そして少しの間、効果確認の為に待っている。おっ、何となく敵へ養分吸収をした時よりは遅い気はするけども、それでも普段よりは少し早くなった気がするね。
でも、行動値自体があまり減ってないからあっという間に回復していまいち分かりにくい。多分効果自体は続いてるはずなんだよな。……ちょっとだけ行動値を無駄遣いするか?
「ケイ、どんな感じだ?」
「んー、あんまり行動値を消費してなかったから分かりにくいけど、行動値の回復速度を上げる効果自体はありそうだね。でも敵に養分吸収を使った時ほどの効果はなさそうだ」
「ふむ、効果自体はあるっぽいんだな。まぁ敵に比べると使用が楽過ぎるから、効果値は下げられてるってとこか」
「ま、そんなとこだろうね」
ぶっちゃけ行動値の回復速度の上昇の効果自体がかなり破格だし、効果量が下がるにしてもアイテムでも効果があるのはありがたいものである。……コケってこういう変なとこで強みがあるよね。
ただ、完全にアイテムを消費する事になるのでその辺は要注意だな。調子に乗ってHP回復用のアイテムまで使い切ってしまうとかになれば間抜けだし……。
「ケイさん、他のアイテムでも試してみないのー!?」
「あー、それなー。試したいとこではあるんだけど……」
「行動値が全快だから意味がない……かな?」
「サヤ、大当たり! って事で、今は無理」
「残念なのさー!?」
「それにここは青の群集の影響が大きい場所だしね」
「まぁそれもあるなー」
ぶっちゃけこれについては同じコケであるジェイさんが既に検証をしているような気もしてるけど、本格的に検証をするのであればミズキの森林とかに戻ってからやるべきである。
今は……実行してからそれに思い至ったから仕方ないって事で! いや、本格的に灰の群集の影響が一切なくて青の群集の影響が強いエリアに来たのは初めてだから、微妙に感覚が狂ってるんだよね。……ただ単なる言い訳になるけどさ。
「……よし、明日の夕方にでも試してみるか」
「あ、それなら色んな回復アイテムを渡しておいた方がいい?」
「あー、そうしてくれると助かる」
「了解。はい、それじゃ……これと、これと、この辺もだね。はい、どうぞ」
「サンキュー、ヨッシさん」
そんな感じでヨッシさんから焼き魚、生魚、焼いた肉、生肉、各種果物など、HPと魔力値回復に使えるアイテムを渡してくれた。明日の夕方はサヤとヨッシさんは不在という事だし、検証をするのには丁度いいかもしれない。
まとめ機能を見れば既に検証済みの可能性は高いけど、なんでもかんでもあれを見て済ませる気はないし、全ての情報が網羅されている訳じゃないもんな。ベスタの融合したコケの養分吸収は普通の植物系の仕様になってるって言ってたしね。
それに具体的な効果値は表示されないから、感覚的に把握しておいた方がよさそうではある。もしかしたら、行動値の回復しやすいアイテムとかもあるかもしれないしさ。その時に駄目元でロブスターのHPが回復するかも確認しておこう。……まぁこれは駄目だとは思うけど。
さて、もう群体塊は必要なくなったから解除しておくか。これは普段から使うにはちょっと邪魔だしね。
<『群体塊Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 77/77 → 77/78
よし、これで解除完了っと。あとはサヤ達がスイカを食べ終わるのを待てば移動を再開出来るね。
「ぷはー! ご馳走さまでしたー!」
「美味しいスイカだったかな」
「残った3切れは保管しておくよ。それとまたどこかで機会があればスイカ自体も調達しておくね」
「俺の方でも桜花さんにその辺は聞いておくか」
「その辺はアルとヨッシさんに任せた!」
「うん、任されたよ」
「おう、任せとけ」
どうやら丁度いいタイミングでスイカは食べ終わったようである。とりあえずちょっと変則的にはなったけども、予定通りに滝の前でスイカを食べるのは終わりだね。
新たなスイカの入手については現段階ではなんとも言えないけど、今回のスイカを報酬でくれたスイカのミドリさんがいるんだし、都合が合えばそこからの入手は出来るだろうね。まぁ対価は必要になるけども。
「さてと、青の群集の森林エリアに向けて移動を再開するとして……アル、どういう経路で登る?」
「あー、どうすっかな。水のカーペットを生成して、そのまま空中から行っても良いが……」
「それで良いと思います!」
「あれ? ハーレなら横の傾斜を登りたいって言うかと思ってたけど、違ったかな?」
「ああいうのを登るのは、特に目新しくもないから今は良いのです!」
「……なるほど」
ふむ、最近はあまり見る事は多くはないけど、灰のサファリ同盟の本拠地で崖上に登るとかやってたしなー。あ、そういう意味で考えるなら俺らはアルの上に頻繁に登ってるし、確かに目新しいって程でもないか。
「それじゃアルに全面的に任せた!」
「おう、任せとけ! 『アクアクリエイト』『水の操作』!」
そうしてアルが水のカーペットを手動で生成して、その上に浮かぶ事によって高度問題を解決して滝の上へと移動していく。
いやー、それにしても滝を目の前にして空中を飛んでいくのも妙な感じだ。でもまぁ、色々と進行している現状では青の群集の人も特に驚いている様子はないね。なんというか、注目は浴びてはいるけど興味本位で見てきている感じ? 多分ジェイさんが俺らが来るって事を伝達していた影響なんだろうね。
「あ、そういやこの先のボスは誰が倒すのかな?」
「それ、俺がやってもいいか?」
「ケイさんがやるのー!?」
「ちょっと試してみたいのがあってさ」
「……あはは、ケイさんはまた何か思いついてるんだね」
「今回のはヨッシさんのさっきの包丁代わりの氷のナイフが発想の元だけどなー」
「え、あれなのかな!?」
「そうそう、あれだぞ」
「……あはは、そうなんだ」
「へぇ、どんなのか気になるな?」
「それじゃボスの討伐はケイさんにお任せさー!」
「って事で、ケイ、任せたぞ」
「ほいよっと」
さて、初期エリアの移動を妨害するボスの討伐については俺に任された。ま、ボスとは言っても成長体だから雑魚なんだよね。
ヨッシさんが氷でナイフを作っていたのを参考にして思いついているのは2パターンほどあるんだけど、どっちにするかは周回PTがあるかどうかによるね。周回PTがいれば前に一度使ったのに近い方にして、いなければ完全な新パターンの方でやっていこうっと。
おっと、そうしている内に滝の上へと辿り着いていた。そこから少し進んだ所でアルが向きを変えて、さっきまで通ってきた『涙の溢れた地』を見下ろしていく。
「おー、これはこれで絶景だな!」
「多分、撮られまくってるからコンテストには意味無いけど、スクショを撮っておくのさー!」
滝の上から全貌を見渡してみると、蓮などの水草に覆われた場所や、ちゃんと地面が出ている場所や、水草とかがなく水だけの部分や、木で作られた足場や、その材料になりそうな木々が植わっている場所も見受けられる。
へー、移動中でも周囲の様子を確認はしていたけど、こうやって上から見てみるとまた違った趣きがあるのもいいね。
それに水だけの部分を見てみれば、川としてちゃんと繋がっていて東側へと続いてはいるんだね。ふむ、あの先がどうなっているのかも少し気になるな。
「ここって、朝日が出る時が綺麗そうじゃないかな?」
「あ、確かに東向きだしそうかも?」
「うー! そのスクショを撮りたいです!」
「……ゲーム内の朝日って、昨日の夜か」
「あー、そうなるのか」
確かに東から上ってきた朝日で照らされたこの湿地帯は結構な絶景になりそうな気がする。なんというか、前に行ったスターリー湿原はホタルや月夜の星空が相まって良い雰囲気だったけど、ここはまた違った雰囲気になるように設定されているよね。
「ハーレさん、後でジェイさんに頼んでスクショを貰えないか交渉してみたら? ……ジェイさんが朝日のここのスクショを持ってればだけど」
「はっ!? その手があったのさー! 是非ともそうします!」
「おー、頑張れー」
ま、ほぼ確実にここのスクショは青の群集の人が撮っているだろうから、俺らが撮ったところで……いや待て。ちょっと忘れかけてたけど、よく考えたらスクショのコンテストは各群集で部門分けがされているんだよな。
その辺を考えてみたら、もしかすると灰の群集の人が少ないこの場所は逆に穴場の可能性もある……。もし穴場だとすれば、今日の終了時に転移の種を登録しておくのもありかもしれないしね。
「おし、とりあえず水のカーペットは解除して……それじゃ川の上を通る形で森林エリアに入って行くぞ」
「「「「おー!」」」」
そうしてアルが水のカーペットを解除して、改めて方向を森林エリアの方に戻し、川の上を少し浮いた状態で飛んでいく。アルが移動しても問題ないくらいの川幅はあるので、このまま進んでも問題はなさそうだな。
<『涙の溢れた地』から『始まりの森林・青の群集エリア1』に移動しました>
そしてやってきました、青の群集の森林エリア! さてと、すぐ近くに移動の妨害ボスがいるはずなんだけど、どうなってるかな?
お、周回PTっぽいのを発見。えーと、黒いカーソルの青いトンビが水中から飛び出して、その瞬間にクマの人に殴り飛ばされて仕留められてたね。瞬殺かー。まぁそうなるよなー。
「ん? そっち側からきたPTは珍しい……って、なるほど、灰の群集の人か」
「あ、グリーズ・リベルテってなってるぞ」
「あー、そういやジェイさんが来るって通達してたっけか」
「グリーズ・リベルテって、灰の暴走種!?」
「こら! 本人達を前にそれは失礼でしょ!」
「あ、そりゃそうだ。失礼しましたー!」
そういえばジェイさんが青の群集の中で俺らにそんな呼び名をつけてたんだっけ。ぶっちゃけそう言われる事そのものを否定できる気はしないんだけど、何か納得がいかないんだよね!? ……まぁ、今はそれを言っても仕方ないのでグッと飲み込んでおこう。
「……えーと、情報はなんか伝わってるみたいだし、森林エリアに入る為にボスを倒したいんだけど問題ない?」
「おう、それなら問題ないぜ! 灰の群集に倣って、討伐したいPTを優先って事にはなってるからな!」
「そうそう。初めはそうでもなかったけど、そうするようになってからはトラブルも減ったんだよね」
「っと、再出現したぞー!」
「おし、それじゃグリーズ・リベルテはサクッと仕留めてくれや!」
「……ほいよっと」
どうやら青の群集も今は灰の群集と同じように討伐をしたいPTが来れば、そのPTを優先するようになってるみたいである。これなら余計な待ち時間が発生しなくて助かるね。ま、サクッと仕留めてしまうか。
ふむ、空中で青いトンビが新たに出現して、すぐに川の中に突っ込んでいった。この感じだと水中から襲いかかってくるという行動パターンっぽいから、あれと組み合わせていくか。
「さて、それじゃやりますか」
「ケイ、サクッとやっちまえ」
「何秒で終わるだろうねー!?」
「どうだろね?」
「まぁ10秒もいらないんじゃないかな?」
なんというか瞬殺前提になってますがな。ま、俺もそのつもりだし、思いついている見られても良い範囲の攻撃なら可能だろう。それじゃさっさとやっていきますか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます