第696話 大量の経験値


 俺らに動きがあった時点で一目散に逃げ出したカニは、やっぱり経験値が多そうだよな。……よし、あんまり時間の余裕もないけど、ここはあれを使うチャンスか。それとアルに転移の実の登録をしてもらう必要はないな。

 それにしてもこの位置だと、思いっきり俺は巻き込まれるね。……まぁ、ダメージもないしそれくらいは良いか。


「ヨッシさん、カニを逃がすな! 俺も巻き込んでいいから!」

「了解! 『並列制御』『アイスクリエイト』『アイスクリエイト』!」


 逃げていくカニの姿を確認したヨッシさんが即座にダイヤモンドダストを発動して、太陽光でキラキラと反射している氷の粒が広がっていく。お、明確にカニの動きが鈍って明確にHPが減り出したぞ!

 まぁそれはそれで良いんだけど、やっぱりダイヤモンドダストの効果範囲に巻き込まれてたなー予測の範囲内だけどちょっと光が乱反射して視界は良くないから、とりあえず効果範囲から脱出!


「ケイ、大丈夫か?」

「……まぁとりあえずは無事だな。ちょっと乱反射する光が眩しかったくらいで、デブリスフロウとかに巻き込まれるよりは全然マシ」

「……巻き込んでごめんね、ケイさん」

「巻き込んでも良いって言ったし、気にしなくていいって」


 今はこのカニを逃さない事が最優先事項だから、ダイヤモンドダストに巻き込まれたのは不可抗力って事で問題はない。っていうか、同じ共同体のメンバーの攻撃に巻き込まれたくらいで気にしてたら、灰の群集ではやっていけないしね。……巻き込む方が多い俺が言うのもあれだけども!


 まぁそれは良いとして、想像していたよりもかなりカニのHPの減りが悪い。ダイヤモンドダストはダメージ控えめで状態異常に寄っているとはいえ、まだ3割くらいしか削れていないし……これは思っていたよりもHPが結構ある感じか?

 ただ、動きは非常に鈍くなっているからダイヤモンドダストの効果中は少し話す時間の余裕はありそうだ。


「とりあえずアルは転移の実は使わなくても良くなったし、大量の経験値が手に入りそうだから経験値増加のアイテムを使おうぜ」

「あ、それは良いかな!」

「賛成なのさー!」

「お、そりゃ確かにありだな」

「そだね。私は昇華魔法の効果が切れたらそうするよ」


 特にみんなから反対意見もなく使う事が決定した。えーと、水草が1個と破片が2個で2種類持ってるけど、どっちを使おうかな……? ……まぁ効果は同じだし、ここは多く持ってる破片の方を使うか。


<インベントリから『経験値の結晶の欠片』を取り出します>


 あ、進化記憶の結晶の破片とか呼んでたけど、欠片が正式名称か。……ま、別に間違ってても困る訳でもないから別に良いや。とりあえず……これって、どう使うんだ?


「これ、どうやって使うのかな?」

「それなら食べるなり、砕くなりすれば良いらしいぞ」

「あー、そういう使い方か」

「アル、ありがとかな」

「どういたしましてっと!」

「……なるほど、そういう感じか」

「えいや!」


 アルはクジラで飲み込んで、サヤは爪で砕くようにして、ハーレさんは地面に破片を叩きつけていた。おー、砕けたのが粒子みたいになって、キャラに取り込まれていっているね。それじゃ俺もハサミで挟んで破壊してしまおう。


<『経験値の結晶の欠片』を使用しました> 30分間、経験値50%上昇


 おっと、視界の右上の方に効果時間のカウントが表示されたね。よし、これで経験値の増加の効果は得られた! さて、ダイヤモンドダストも効果が薄れてきたから、次の一手を開始していくか。


「ハーレさん、全力での拡散投擲の準備! ダイヤモンドダストの効果切れと同時に投げれるように!」

「了解です! 『魔力集中』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』! そんでもって、砂漠の砂さー!」

「サヤは念の為、今のうちに魔法砲撃の準備!」

「分かったかな! 『略:魔法砲撃』!」


 さて、是非とも大量の経験値は欲しいから、しっかりと仕留めていかないとね。とりあえず次の一手の準備は出来たのでダイヤモンドダストの効果切れまでは待機である。

 この間にアルは空中に浮き、俺もその間にアルの背中の上に乗って退避中。デブリスフロウを使うのに地面にいたままだと、巻き込まれかねないからな。


 そしてハーレさんはサヤの竜の頭の上に乗り、サヤ自身はダイヤモンドダストの効果範囲のぎりぎり外の部分で待機している。ま、拡散投擲や魔法砲撃を使うなら出来るだけ近い方が良いからね。


「ハーレ、そろそろ効果が切れるよ!」

「了解なのさー! 『拡散投擲・風』!」


 よし、ダイヤモンドダストが切れてすぐにハーレさんが拡散していく砂を投げ放っていく。……お、流石に標的のカニが小さいから外れる砂の方が圧倒的に多いけど、それでも砂がカニに当たる度に緑色を帯びた銀光がどんどん強まっているね。

 この拡散投擲ってこういう当てにくい敵に当てる手段としてもありだけど、アルのクジラみたいに巨大で避けにくい相手にもかなり有効そうだな。……ただ、弾の消費が激しいのが問題になりそうだけど。


「うん、今のうちだね」


 そしてその間にヨッシさんは手早く黒い破片を取り出してそれを砕き、上空へと飛び上がっていた。よし、これで全員が経験値の増加状態に出来たな。


「追撃なのさー! 『アースクリエイト』『散弾投擲・風』!」


 おっと、ハーレさんの拡散投擲も終わり、魔法で砂を生成して散弾投擲を行っている。……これでHPが4割を切ったくらいって、やっぱり思ってる以上にこのカニはHPが多いぞ!?

 でも、まだ凍結の状態異常になったままだから、今のうちに一気に攻めるまで! 経験値増加にアイテムまで使ったんだ、絶対に逃してたまるか!


「アル、デブリスフロウで押し潰すぞ!」

「おうよ! って、ちょっと待て!?」


 俺らの持ってる昇華の属性の組み合わせとしては俺が土を使うしかないから、アルは水になるよなー。ま、目視出来てる間に一気に仕留め……って、ちょっと待てーい!?


「わっ、カニが分裂したかな!?」

「おいこら、ここで分裂ってありかー!?」

「ちっ、識別はしておくべきだったか! ケイ、どうする!?」

「……ヨッシさん、ハーレさん、サヤ、足止めを頼む! アルはデブリスフロウの待機!」

「倒す手段は継続だな。了解だ!!」


 くっ、まさかこのカニが4匹に分裂してそれぞれ4方向に逃げ始めるとは思わなかったぞ。アルも言ってるけど、逃げないように倒すのを最優先して識別を怠ったのは失敗だったかも……。

 でも、今から識別していたら確実に逃げられる。今はちょっとで良いからカニの動きを鈍らせてくれればそれでいい。


「私は右を受け持つよ! 『並列制御』『略:棘乱射』『略:棘乱射』!」

「私が前後を抑えるのさー! 『並列制御』『散弾投擲・風』『散弾投擲・風』!」

「それなら私は左かな! 『略:エレクトロプリズン』!」


 ハーレさんが前後に逃げたカニのそれぞれ前方に砂を、ヨッシさんが右に逃げたカニに向けてウニの棘を撃ち出し、サヤが左のカニに電気の拘束魔法を放っていた。それでもカニはハーレさんの散弾投擲以外は躱していたけど、少なからず回避の為に逃げ足は落ちている。

 よし、この位置関係ならアルとの2人での発動のデブリスフロウなら4体とも呑み込めるはず! 分裂しただけ1体辺りのHPの上限値も下がってるだろうしね。


「やるぞ、アル!」

「おうよ! 『アクアクリエイト』!」


 ここで捉えきれなければ、せっかくの経験値を取り逃す事になってしまうから大急ぎでデブリスフロウを発動しよう。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 60/77 : 魔力値 211/214


 これで土を生成して、アルの生成した水と重なった。このタイミングなら逃しはしない!


<『昇華魔法:デブリスフロウ』の発動の為に、全魔力値を消費します> 魔力値 0/214


 よし、分裂した4体のカニを生成した土石流で呑み込んでいくのは確認出来た。後はこれで倒し切れれば良いんだけど、分裂した場合って全部倒す必要があるんだよな。……多分、分裂した事でHP自体が減ってるから問題ないとは思うけど。

 あ、川の方まで土石流が流れ込んで、川の流れを少し変えてしまったっぽい。……まぁ、位置が位置だったしなー。


<ケイがLv21に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『川を荒らすモノ』を取得しました>

<増強進化ポイントを3獲得しました>


<ケイ2ndがLv21に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『川を荒らすモノ』を取得しました>

<増強進化ポイントを3獲得しました>


 お、Lvが上がったって事は無事に分裂したカニの全てを倒せた……って、あれー!? なんか討伐報酬が多くない!? え、もしかして気付いてなかっただけで他にも敵がいた……? まぁこれはラッキーだったって事かな?


「お、分裂したカニ以外にも瘴気強化種が居たのか。木で地味に持ってなかった『無自覚な討伐』がここで手に入るとはな……」

「え、アルは持ってなかったっけ? 暴発を使ってた事あったよな?」

「あれはポイント取得だっての。……まぁ、クジラの方では持ってるがな」

「あ、そういやそうだっけ?」


 うーん、流石にその辺は細かくは覚えていないけど、アルが言うならそうなんだろう。それはそうとして川のすぐ近くというか河原でやると、川を荒らすモノの称号が取れるんだ。これはあれか、ミズキの森林にある小さな湖を荒らした時と同じような系統になるんだろうね。


「あー、でもまぁ分裂した時は焦ったー! 思いっきり判断ミスったな……」

「……だな。ヨッシさんがダイヤモンドダストを使ってる間に識別をしておけば……」


 戦いを始めてから経験値の増加アイテムを使っている時間はあったし、その間に識別をやっておけばなぁ……。まぁ分裂するという心構えが出来てるかどうかの差が出るだけで、やること自体は同じになっただろうけどね。……その心構えが重要とも言うけども。


「あはは、それでも倒せたんだし、今回はそれでいいんじゃないかな?」

「うん、私もサヤの意見に同感。誰も識別しようとは言わなかったし、みんなの反省点って事で次からの気をつけよう?」

「ま、それもそだな。次から気をつけるかー!」

「……確かに俺ら全員の落ち度だしな。って、ハーレさんは何をやってんだ?」

「……ん?」


 とりあえず今回の識別をしなかった件は反省しておくとして、ハーレさんが……あ、いつの間にやら河原の方に降りていて、思いっきり項垂れている。どうしたんだろ?

 えーと、デブリスフロウの効果が切れて、その影響で河原や川が盛大に滅茶苦茶にはなってるけど……あー、なるほど、そういう事か。


「食べかけのスイカがないのです!」

「……食べてた最中で河原に置いてたもんね。デブリスフロウにスイカも押し潰されたかな……?」

「まだ半分も食べてなかったのさー!?」


 そんな事を言いながら悔しそうに河原の石にリスの手を叩きつけている。……そこまで悔しがる事か、ハーレさん? 


 そういや俺もスイカは一口食べて、その後はどうなったんだっけ……。えーと、食べてる最中にサヤがカニを見つけてそのまま作戦会議に入って、その後に戦闘になった時にどうしたっけ? ちゃんと意識してなかったから、そのままスイカは普通に地面に置いたような気もする。

 位置的には俺のスイカはダイヤモンドダストに巻き込まれていたはずだし、ついでにそこからほぼ同じ位置でデブリスフロウを発動してるから、ほぼ確実に食べられる状態ではなくなってるだろうな。


 あーあ、そう考えると1口しか食べれてないのかー。アル以外はみんな食べかけだったし、カニで経験値は手に入ったけど、せっかくのスイカは台無しか……。でも、割れたスイカは俺が受け取ってたけど、ヨッシさんが普通のスイカを2個は持ってるんだよな。

 あ、そういや雪山でスイカを凍らせるとかって忘れてるような気もする。うーん、ハーレさんの悔しい気持ちも分からなくはないけど、どうしたものか……。



【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調強魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 20 → 21

 進化階位:未成体・同調強魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化


 群体数 468/6900 → 468/7050

 魔力値 0/214 → 0/216

 行動値 60/77 → 60/78


 攻撃 79 → 80

 防御 126 → 129

 俊敏 93 → 95

 知識 189 → 194

 器用 209 → 215

 魔力 275 → 283



 名前:ケイ2nd

 種族:同調打撃ロブスター

 所属:灰の群集


 レベル 20 → 21

 進化階位:未成体・同調打撃種

 属性:なし

 特性:打撃、斬撃、堅牢、同調


 HP 8050/8050 → 8050/8250

 魔力値 100/100 → 100/101

 行動値 67/67 → 67/68


 攻撃 274 → 282

 防御 251 → 258

 俊敏 208 → 214

 知識 74 → 75

 器用 88 → 90

 魔力 46 → 47

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