第695話 スイカを食べていたら
とりあえず水分吸収をする為に川に潜っていて、獲得出来るだけ川の水を確保したので水面へと戻ってきた。さて、PT会話で聞こえていたヨッシさんの氷のナイフはどんな感じだろう?
おっと、さっきはアルのクジラの上でやってたけど、河原の方に移動してたか。ふむふむ、ヨッシさんの前に氷で出来たまな板があって、割れていたスイカだから少し歪に切り分けられたスイカが並んでいる。
そして、ヨッシさんのハチを守るような雰囲気で氷のナイフが浮かんでいた。うわー、この氷のナイフは想像以上に良いな! よし、氷では無理だけど後で他ので真似しよう。
「それじゃ、ケイさんも戻ってきたのでスイカを食べるのさー!」
「賛成かな!」
「え、アルって水分吸収は10回は終わった?」
「いや、まだだが別にそれはスイカを食いながらでも良いからな」
「あ、なるほどね」
「それじゃ配っていくね」
アルについてはまだ水分吸収は終わっていないけど、まぁ根の操作と並列制御をするとか、ハーレさんがクジラの口に投げ込むとか、そういう手段はあるもんな。
さて、それじゃ何度か忘れ去ってしまっていたスイカを食べる時がやってきた。ま、既にハーレさんが味見をして美味いという事は分かっているけど、楽しみだね。
えーと、スイカは割れている部分を取り除いた形で5分割されているみたいだけど……あ、割れてた部分はハーレさんが食ってるね。思いっきり両手に割れた部分のを持ってるし、サヤがそこに塩を振りかけてる様子だしなー。まぁ別に良いけど。
「はい、ケイさんの分ね」
「ヨッシさん、サンキュー!」
そしてヨッシさんが氷のナイフの形状を変えて板状してから、切り分けたスイカの1切れを俺の方目の前に持ってきてくれた。その様子を見た感じだと、なんだか少しの間でヨッシさんの操作の精度が一気に上がったような気がする。
これってLv1の氷塊の操作での特訓がかなり効果を発揮した? ふむ、意外とあれは操作系スキルのコツを掴むのに良いのかもしれないね。
まぁ、その辺ははっきりとした事は断定出来ないけど、今度サヤが特訓する時にちょっと組み込めるか考えてみようかね。
ともかく今はスイカだ、スイカ! えーと、ハサミは斬撃の特性を追加してから鋭利化してるから、このままハサミで掴むとスイカを切りそうだな……。それなら両方のハサミで下から支えるように……いや、それだとロブスターの口に届かないか。
えぇい、地味に食べにくいぞ!? サヤは普通に掴めていて、ハーレさんは……遠慮なく自分から齧り付いているな。
まぁこういうゲームだし、綺麗な食べ方とかは気にしなくてもいいか。そのまま俺も齧り付いてしまおう。……うん、よく冷えてて美味い! あ、でもスイカの種は……そのまま一緒に食っちまうか。
「アルさんは食べ方はどうする?」
「アルさん、私が投げようかー!?」
「あー、俺は根で掴むから大丈夫だ、ハーレさん」
「そっかー! それなら了解です!」
「おし、『根の操作』! ……ふむ、よく冷えてて美味いな」
「おー、相変わらずクジラだと豪快な食い方だな」
「まぁそればっかりはどうしようもねぇからな」
アルはほぼ丸呑みの1口で食べてしまったけども、まぁクジラのサイズ的にはそうなるよなー。とはいえ、個体の大きさで食材アイテムの効果が変わる訳でもないし、回復手段として考えるとこっちの方が得ではあるんだよね。……食べ物として味わいたい場合はハーレさんくらいのサイズが満足出来そうではあるけども。
「っ!? ……ハーレ、気付いてるかな?」
「え? 今気付いたよー」
ん? 何やらサヤとハーレさんが俺の背後の方の河原に視線を向けて、声を潜めつつ話し始めている。急にどうした……って、河原でこの2人が声を抑えて何かを見つけたって事は、ひょっとするとひょっとする?
もし想像している通りのものなら、下手に刺激するのは愚策だな。……喋っているのすらどこまで判定されるのか分からないし、ここは共同体のチャットを使うか。いくらなんでも、これすら駄目って事はないだろう。
ケイ : サヤ、ハーレさん、もしかして隠れてる小さなカニか何かか?
サヤ : うん、そうなるかな。ケイの背後にある石の影に隠れてるよ。
ケイ : それって、俺が一番動いたら駄目っぽい状況?
ハーレ : 多分、そうなのさー! そして、ケイさんの持ってるスイカに徐々に近付いているのです!
ケイ : マジか……。
え、カニの可能性は考えてたけど、もしかしてスイカを食べてたのに引き寄せられてやってきた……? っていうか、俺の背後にいるんかい! あー、こりゃ迂闊に動かずにこっちで聞いて正解だったっぽいね。
ちょっとロブスターの背中のコケに視点を移して背後の様子を見てみよ。……えーと、どれだ? うーん、分からん! 相変わらずサヤとハーレさんはこういうのをよく見つけられるね。
ヨッシ : 私にはどこにいるのか分からないんだけど……。
アルマース : 俺も分からねぇな……。それって多分あれだよな。経験値が多いが、逃げ足の無茶苦茶早いやつ。
サヤ : うん、多分そうだと思うかな。
ハーレ : でも、下手に動きを見せると逃げられそうな気がします!
ヨッシ : ……今までの経験上ではそうだよね。
どうやらアルもヨッシさんも見つけられないみたいである。そうなってくると、やっぱりアルの言うように経験値を大量に持っている逃げ足の早い敵……というかカニになるんだろう。成熟体へと向けて強化をしていきたい今の状況としては是非仕留めておきたいな。
ケイ : よし、そのカニ、絶対に仕留めるぞ!
アルマース : だな。逃すのは勿体無い。
ハーレ : 今回は絶対に逃さないのさー!
サヤ : 同感かな!
ヨッシ : あはは、まぁそうだよね。……それで、具体的にはどう倒すの?
みんなも倒す気満々だけど、この状況で下手に動けばサヤとハーレさん以外はまともに視認すら出来ずに逃げられる可能性はある。サヤかハーレさんに看破を使ってもらってもいいけど、それで後手に回るのも避けたいな。多分、識別をする時間も無いと考えた方がいい。
この条件で確実に仕留めるとなると広範囲の昇華魔法が良いけど、問題はどれを使うかだ。ウォーターフォールやアップリフトはこの場合には対象を視認出来ていないから不適格。デブリスフロウでも良いけど視認してからでないと見失いそうだし、ここはヨッシさんの状態異常を狙って氷を使う昇華魔法が無難なところか。
ケイ : まずはダイヤモンドダストか、ヘイル・ストームか、アイシクルのどれかだな。
サヤ : ヘイル・ストームは駄目な気がするかな? 確実に当てられるかどうかが微妙だと思うよ。
アルマース : 雹が当たらない可能性はありそうだな……。
ケイ : ……ちょっと運要素も出てくるのか。
ふむ、まぁ確かに河原の小石に隠れられるくらいの大きさのカニだとかなり小さいという事になる。ヘイル・ストームが広範囲に雹を降らせる昇華魔法であっても、そのサイズなら当たらない可能性も出てくるのか。……当たらない可能性はかなり低いとは思うけど、万が一の状況は避けたいしなー。
そうなるとダイヤモンドダストか、アイシクルか……。威力を重視したいから2人での発動で行きたいけど、アイシクルは地面から多数の氷柱を生成だからそれじゃ当たらない可能性も……って、あれ?
ケイ : ヨッシさん、ちょい質問。アイシクルって、ドラゴン戦の時に地面も凍らせてなかった? 初めて使った時にも冷気は広がってたし、もしかして氷柱の生成以外に凍結効果あり?
ヨッシ : え、あ、そういやそうだね。……でも、確実にそうなのかはちょっと自信ないよ?
アルマース : ……確率による追加効果って可能性もあるにはあるか。
ケイ : あー、確かにその可能性はあるか。
うーん、アイシクルを使った時に確実にいつも地面まで凍っていたなら、それを確定効果として判断も出来るんだけどなー。冷気が発生するのは間違いないんだろうけど、確実に凍らないのであれば今回の作戦には向かないか。
ハーレ : それならダイヤモンドダストで決定なのさー!
ヨッシ : 選択肢としてはそうなるよね。……私、正確な位置も分かってないし、単独発動での昇華魔法になるけど大丈夫?
ケイ : あー、それはサヤかハーレさんが位置の指定を頼める?
サヤ : うん、分かったかな。
まぁダイヤモンドダストなら、デブリスフロウよりは見失いやすくないと思うからね。どちらかというと状態異常狙いなので、これだけで仕留めきる必要もない。
サヤ : ところで、それで仕留めきれなかったらどうするのかな?
ハーレ : ふっふっふ、その時は私の新スキルの出番なのです!
ケイ : あ、拡散投擲か。確かにそれはありだな。
アルマース : あぁ、あの弾の消費量が多いやつか。
あの面制圧の性能のある拡散投擲なら、非常に避けにくいものである。まぁ普段使っている小石でやると微妙に当たらない可能性もあるけど、ここは砂を生成してやっていくか。
ケイ : よし、それじゃ作戦決定。まずヨッシさんがダイヤモンドダストを発動。その後にハーレさんが魔法で生成した砂を弾で拡散投擲って感じで。
ハーレ : ケイさん、拡散投擲に魔法産の砂は相性が悪いのです! 昇華で追加生成が必須なのさー!
ケイ : え、マジで? ……でも小石じゃ外れる可能性もあるよな?
サヤ : ハーレ、前に砂漠で採集した砂は使えないかな?
ハーレ : はっ! そういえば持っていたのを忘れてました!?
ケイ : ……まぁ、あるならそれでいいや。
正直俺も忘れてたけど、そういや前に望海砂漠に行った時に採集してたよな、砂漠の砂。今まで特に使いどころが無かったけど、拡散投擲には役立ちそうだ。……なんでも拾っておくもんだね。
アルマース : もしその手順で仕留めきれなかった場合はどうする?
ケイ : その場合は俺とアルでデブリスフロウ発動して一気に巻き込んで仕留める。……それで無理なら、サヤが魔法砲撃で電気の拘束魔法を狙ってくれるか?
サヤ : うん、分かったかな。
アルマース : ……そこまでやって無理なら、根本的に手段を変えるしかないか。
ケイ : ま、そうなるな。
これらの手段を使っても倒し切れないとか攻撃が当てられないとなると、根本的に逃げられないように捕獲するしかなくなるからね。俺かアルが今の段階で敵の姿を視認出来ているならそれでも良いんだけど、今の時点で視認が出来ているサヤとハーレさんは捕獲が得意とは言えないもんな。
まぁその辺は得手不得手の問題だから仕方ないし、これで駄目なら運が無かったと諦めるしかないだろう。でも、倒す手段が1種類しかないって事もないとは思うけどね。
ケイ : それじゃ作戦開始!
サヤ : あ、ちょっと待ったかな!
ハーレ : どしたのー!?
サヤ : もしなんだけど、成熟体だった場合はどうするのかな?
ケイ : あ、その可能性もあるのか……。
今までの経験上から経験値の多いカニだと判断していたけども、言われてみれば成熟体の可能性も否定は出来ないな……。でも、そこまで警戒する必要もない気はするね。
アルマース : 仮に成熟体だとしても、多分大丈夫じゃねぇか? どっちかと言えば、逃げていくタイプの成熟体だろ。
ハーレ : 私もそうだと思います!
サヤ : やっぱりそうかな? 一応念の為に聞いてみたんだけど。
ヨッシ : それなら戦闘が始まってすぐに転移の種……は今日は使えないから、転移の実の登録をし直しておく?
ケイ : あー、そうしとく?
アルマース : いや、それはみんなはしなくて良いぞ。やっておくのは俺だけで十分だ。
ケイ : え、良いのか? アルだけ岩山の登録が消える事になるんじゃ?
アルマース : 甘いな、ケイ。課金で別のスタック枠になる追加の転移の実を購入してきている!
ケイ : ……流石、社会人。金ありますなー。
まぁ使い捨ての転移の実は課金アイテムだもんな。俺は課金アイテムを買う気はないけども、こういう所で社会人であるアルとの差が出てくるとはね……。
サヤ : でも、それってアルに負担を任せて良いのかな?
アルマース : あー、別に気にしなくていいぞ。これ、俺が1人の時の移動用に買ったやつだし、全滅の可能性は非常に低いだろうしな。
ケイ : ま、アルの言う通り全滅の可能性も低いだろうから、ここは甘えとくか。
ハーレ : アルさん、ありがとねー!
サヤ : アル、ありがとかな。
ヨッシ : アルさん、ありがと。
アルマース : なに、気にすんな! んじゃ、ケイ、合図を頼むぜ。
ケイ : おうよ! それじゃ作戦開始!
その合図で経験値を大量に持っている可能性のあるカニの討伐作戦の開始である。まぁ成熟体の可能性は低いとは思っているけど絶対ではないし、経験値を大量に持ってるかどうかはあくまで推測でしかないんだけどね!
「サヤ、正確な位置をお願い!」
「今はケイの真後ろ、30センチくらい先かな!」
「え、そんなに近くにいんの!?」
<ケイが未成体・暴走種を発見しました>
<未成体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・暴走種を発見しました>
<未成体・暴走種の初回発見報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>
あ、確かに俺が声を上げたところで動き出したカニの姿が見えたと同時に発見報酬が出たね。……うん、小石っぽい色で、小石っぽい大きさのカニだな。
っていうか、そこまで近くにいるとは思わなかったんだけどね!? あ、思いっきりカニが逃げ出した。
「あ、逃げたー!?」
「ちょ!? いくらなんでも逃げ出すの早くない!?」
成熟体である可能性は否定出来たけど、やっぱりこの逃げ足の速さは普通じゃないやつだな! これはやっぱり経験値が期待出来るぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます