第687話 不具合の発覚
晩飯の時間という事でログアウトをすれば、いつものいったんのいるログイン場面へとやってきた。今回のいったんの胴体部分は『ちょ!? え、マジで!? あ、でもまだ誰も辿りついてないし、影響範囲は少ないか?』となっている。いや、意味が分からないんだけど……。
学校から帰ってきた時のバグといい、なんか今日の運営はトラブル多発中なのか? うーん、とりあえずいったんに状況を聞いておこう。
「いったん、これってどうなってる?」
「ちょっと不具合が発覚してね〜。その不具合の修正自体は終わってるんだけど、今は影響範囲と該当者者の精査中だね〜」
「あ、修正自体は終わってるのか」
「そうなるね〜」
ふむふむ、既に修正済みであるなら問題はないけど、その不具合の内容は今の段階で教えてもらえるのかな? こうして不具合があった事そのものは教えてくれているし、既に修正済みなら教えてくれそうな気もするけど、正式な運営からの告知までは詳細は教えてくれないという可能性もあるんだよね。……ダメ元で聞いてみるか。
「ちなみに不具合ってどんな内容……?」
「進化条件を達成済みでもちゃんと表示されてないという内容の報告が多数あったようです〜」
「え、マジで!? って事は、既に進化条件を満たしてたのに表示されていないって状況になってる人がいるのか!?」
「うん、そういう事になるね〜」
うっわ、マジか。あー、さっきのいったんの胴体にあった文章の内容は、成熟体の進化条件を満たしててもまだ進化が実行に移せる段階じゃ無いから問題はないって事か。
まぁ未成体Lv30にならなきゃ、他の条件を満たしていても進化は出来ないもんな。……そういや進化先の表示って上限Lvで出る基本の進化先以外ではLv以外の条件を満たしていれば出てたっけ。
「今は非表示になってた原因は取り除いて修正したけど、実際に修正後の内容が反映されるのは影響範囲の精査が終わってからだね〜」
「……影響範囲の精査?」
「うん、急に進化先が表示されるようになるから、そういう状態の人に個別で連絡をしておく予定なんだ〜」
「あー、なるほど」
確かに何も変わっていないのに急に進化先が出たとなれば混乱してくる人も出てくるもんな。それを防ぐ為の処置って訳か。
「ちなみにそれってどれくらいで終わる?」
「んー、その作業に僕のリソースも使われているから、それほどはかからないと思うよ〜」
「え、いったんもその作業をしてんの!?」
「プレイヤーのキャラデータ管理は僕の管轄ではあるからね〜。その代わり、今はスクショの処理を停止してるだけど大丈夫かな〜?」
「まぁ、それくらいなら問題はないけど……」
ふむふむ、いったんの今までの対応を考えてみたら、プレイヤーの動作ログとかはチェック出来るようになってるみたいだもんな。急いでその不具合の処理をする為に、一時的にスクショの処理を停止しているのか。
「ちなみに、俺はそれに該当してる可能性はある?」
「可能性はあるけど、まだ精査中だから断言は出来ないよ〜。もし次のログインまでに精査が終わっていて該当していたら伝えるし、ログイン最中なら運営からの確認メッセージを送るからね〜」
「そういう形になるのか。了解っと」
「ご迷惑をおかけしてごめんね〜」
「ま、そういう事もたまにはあるだろ。んじゃ、晩飯食ってくる」
「そう言ってくれるとありがたいです〜」
そうして一旦ログアウトである。ま、こういう不具合があるのはどうしても避けられない部分もあるから、その事後対応が大事だよね。
さてと、まだはっきりとは分からないけど、もしかすると進化先が既に出ている可能性もあるんだよな。ま、それに関しては晩飯を食ってから考えれば良いか。
◇ ◇ ◇
ログアウトをして現実へ戻ってくれば、もう当たり前のように晴香が俺の部屋の椅子に座っていた。うん、もう見慣れたもんだな。
「兄貴、いったんから不具合の話は聞いたー!?」
「おう、聞いたぞ」
「私達の中に該当者はいるかなー!?」
「あー、いる可能性はあるな」
狙っている本命の進化……俺で言えば同調のままで進化する進化先は流石にない気はするけど、そうでない進化先なら可能性はありそうな気はする。実際に俺は『自在支配ゴケ』という選ぶ気のない進化先は出てるしね。
アルは支配進化狙いで、ヨッシさんは合成進化狙いだけど、サヤと晴香は単独進化狙いだから、場合によっては既に条件を満たしている可能性も否定は出来ない。
「晴香のリスや、サヤのクマが本命の進化先が出る可能性が結構あるんじゃないか?」
「それは私も思ってたー! 修正後の進化情報が楽しみです!」
「ま、あくまで可能性の話だから、期待はし過ぎるなよー」
「はーい! それはともかく、ご飯なのさー!」
「あー、はいはい。ちなみに今日の晩飯って何?」
「そうめんだってー!」
「あー、そうめんか」
ふむ、確かに冷たい麺が美味しくなってくる季節ではあるもんな。うどんの方が名産品としては有名だけど、そうめんはそうめんで名産品ではあるしね。
今日は生憎の雨だけど若干の蒸し暑さはあるから、さっぱりと食べられる麺類は良いかもしれない。割と好きだしね、そうめんも。
そんな風に話をしつつ、晴香と共に1階へと降りていく。お、台所を覗いてみればそうめんが箱買いされていて、茹でている最中のようである。
「あ、圭ちゃん、晴ちゃん、そろそろ茹で上がるからね。圭ちゃん、少し手伝ってくれる?」
「ほいよっと。何をすればいい?」
「そうめんが茹で終わったら、そこのキュウリとハムと錦糸卵を乗せていってくれる?」
「あー、盛り付けをすればいいのか」
そうやって手伝いをしつつ、今日の晩飯であるそうめんの完成となった。後はめんつゆとそうめんを食卓に運んでいって、食事の準備は完了である。さて、晴香も待ちかねているようだし、食べていこうっと。
「いただきまーす!」
「「「いただきます!」」」
そうして今日の晩飯を食べ終えて、いつものように晴香は先に自室へと戻っていった。さて、不具合の件がどうなったかが気にはなるけど、その前に食器洗いを片付けてしまわないとね。
「お、母さん、圭吾、今日の昼の弁当なんだが……」
「あー、そういや俺のはおかずだけだったっけ」
「俺は白米と梅干だけだったぞ……」
「え、もしかしてお弁当の組み合わせを間違えてました!?」
「「うん」」
「……あらら、それはごめんなさいね。やっぱり特売で買った同じお弁当箱を使っていたのは失敗だったかしら……」
そういや今使っている弁当箱って、何かの処分特価か何かで買った弁当箱だったっけ。その前に使っていた弁当箱は俺のも父さんのも痛み気味だったから、まとめて買い替えてた覚えがある。
そうやって話をしているうちに食器洗いは終了っと。とはいえ、まだ会話中なので自室には戻れないか。
「って事で、圭吾! 明日の帰りに代わりの新しい弁当箱を買ってきてくれ」
「あー、それは了解。買い替えるのは俺のと父さんのやつ、どっち?」
「それは圭吾ので良いぞ。自分で好きなのを選んでこい。母さん、それでいいよな?」
「えぇ、構いませんよ」
「おし、なら決定だ。ほれ、これな。お釣りは晴香と圭吾でお菓子なりアイスなり買ってこいな?」
「ほいよっと」
現金で3000円ほど渡されたけど、まぁこれだけあれば予算としては十分なはず。……弁当箱の相場とか知らないけど、多分大丈夫だろ。
多分普通のスーパーでも売ってるだろうから、明日の帰りにスーパーに寄って買ってくればいいだろう。ついでに明日が暑ければアイスを買ってくるのもいいね。
◇ ◇ ◇
明日の学校帰りの予定が少し出来たけど、まぁ必要な事なので良しとしよう。って事で、意識を切り替えてゲームの続きをやっていくぞー!
再びログイン場面へとやってきたけど、まずは晩飯の前に聞いた不具合の件がどうなっているかだな。とりあえずいったんの胴体部分を確認してみれば『不具合の修正のお知らせがあります。不具合の影響がある該当者には個別の説明がありますので、いったんからご確認ください』となっていた。
おー、俺が晩飯を食っている間に該当者の精査は終わっていたっぽいね。うん、それは良かった、良かった。
「いったん、不具合の続報を教えてくれー!」
「はいはい〜。えーと、君の場合は……コケの方が該当しているね〜」
「お、マジか」
ほうほう、既にコケには他の進化先も出ているという訳か。でもロブスターの方には特に進化先は出ていないんだね。……まぁスキルの育ち具合はコケの方が上だから、そうなるよなー。
「いくつ進化先が出ているかについては、自分で確認をお願いします〜」
「え、複数の進化先が出てる可能性があるのか?」
「人によってはそうなるね〜」
「あー、まぁそうなるか」
咄嗟に聞いてしまったけども、俺自身が他にも選択肢が出ているって状態だもんな。あ、もしかすると水属性のみの魔法型とか、土属性のみの魔法型とかは出てる可能性はありそうだね。……この辺は実際に確認してみるしかないか。
「あ、ところでいったん、スクショの方はどうなった?」
「えーと、そっちの処理はこれから再開だから、しばらくお待ち下さい〜」
「ほいよっと。それじゃコケでログインをよろしく!」
「はいはい〜。楽しんでいってね〜」
「おうよ!」
今日もまたいったんに見送られながら、ゲームの中へと移動していく。さて、まずは進化先の確認……いや、その前にみんなとの合流が先だな。みんなにも進化先が出ているかを確認しておきたいしね。
◇ ◇ ◇
さて、再びやってきました、ゲームの中! ログアウトしたのはミヤ・マサの森林で、すぐ近くには人がいる様子はない。うーん、ハーレさんはいると思ったんだけどそうでもなかったか?
いや、これは油断は出来ないやつだ。こういう時はみんな揃って待ち構えているという事もたまにあるからな。こうなると周囲を確認すべきか、それともフレンドリストからみんなの位置を確認すべきか……。
「あ、ケイさん、こっち、こっちー!」
「そっちにいたか、ハーレさん!? って、あれ?」
ハーレさんの声がする方を向いてみれば、木々の隙間の先にアル達の姿が見えていた。あ、そういやここの拓けた場所ってそれほど広くなくて、アルだと狭いよな……。
どうもみんな地面に降りているようだし、ただ単純にここが狭くて近くのもう少し広そうな場所に移動してただけっぽい。
「おーっす! みんなして、何の話し合い?」
「あ、ケイ。今、運営からメッセージが来てて、その話をしてたかな」
「うん、進化情報の不具合の連絡が来てたんだよね」
「俺もそうなるな」
「私はいったんからログイン場面で聞いてきたけど、サヤとヨッシとアルさんはメッセージだったんだってー!」
ふむふむ、俺とハーレさんはログインしたタイミング的にいったんからの説明を受けたけど、先にログインしていたサヤとヨッシさんとアルについてはゲーム内で運営からのメッセージという形で連絡を受けたようだね。
っていうか、そのメッセージを受けたという事はみんな何かしらの進化条件を満たしていたけど、表示されていない不具合の影響を受けてたんだな。
「で、ケイは不具合の影響はどうだったんだ?」
「あー、俺も該当してるぞ」
「あ、やっぱりかな」
「予想通りだったね」
「私達が該当してて、ケイさんだけ該当しないというのはあり得ないのです!」
「おーい、否定は出来ないけど、ハーレさん、言い方ー!」
「ケイ、それくらいは良いじゃねぇか」
「ま、それもそうか」
こういうのは別にいつもの事だし、ハーレさんの発言に本当に怒っている訳ではないから別に良いけどね。それにしても全員が該当していたとは、思った以上に規模の大きな不具合だったみたいだな。
「ところで、全員が進化先が出てるのならそれぞれ確認しておく? ちょっと出発が遅れるかもだけど」
「あー、それについてだが、俺から提案がある」
「ほほう? アル、どんな提案だ?」
「まぁシンプルな話ではあるんだが、移動しながらで良いんじゃないかと思ってな。俺も進化先は出て内容は確認したんだがまだ上がありそうなのばっかなのと、支配進化しか想定してないから今の時点だとあまり意味が無くてよ」
「あー、まぁそりゃ確かに……」
俺だって同調のままでの進化を目指しているから、かなり確率で見るだけで選ぶ事のない進化ばかりのはず……。アルは既にその状況を確認したという事なら、移動しながらの情報交換でも問題ないという訳か。
「みんなのはまだ聞いてないけど、私は選べそうなのが出てるかな」
「私は合成進化か、場合によっては融合進化を狙ってるから、微妙なとこだね。でも、有用そうなのはあるよ」
「私はまだ見ていません!」
ふむふむ、サヤは明確に何かが出ていて、ヨッシさんはちょっと微妙なとこだけど合成進化なら進化階位が上がらないから今ある進化先が全くの無意味とは言い切れないか。ハーレさんについてはまだ未確認。まぁ未確認なのは俺も同じだけどね。
うーん、そういう状況なのであればアルの提案に甘えさせてもらおうか。ジェイさんから聞いた限りでは今日通る経路は強敵が多い場所ではないだろうしね。
「よし、それじゃアルの提案を採用で!」
「おし、任せとけ」
「それじゃとりあえず昨日の場所まで転移かな?」
「まずはそうだね」
「それから進化情報の確認なのさー!」
そうして今日のこれからの予定が決まっていった。さて、俺自身のも気になるけど、みんなの進化先も気になるところだね。
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