第683話 雪飛ウサギ討伐戦


 さてと耳が翼になった白くなったウサギの捕獲作戦をやっていこうじゃないか! それにしても名前に雪が付くか、氷が付くかで氷属性は様子が変わるのか? シュウさんが光属性で白いネコになってるけど、このウサギも似たような感じではあるんだよな。

 あー、でも前に見た氷砲グマは雪は名前に入ってないけど、こんな雰囲気だったっけ。ふむ、見た目の違いは毛皮とかがあるかどうかってとこか? 微妙な差ではあるけど、氷属性の雪っぽいのは僅かに寒色寄りだし、光属性の方は暖色寄りだもんな。……まぁ微妙な差だけどね。


 まぁそういう見た目の分析はいいや。とりあえず作戦通りに実行していくまで! さて、閃光の使用には合図を決めてはいるものの、今は対人戦ではないから普通に使用する事を言っても問題はない。っていうか、ギャラリーに赤の群集も青の群集もいるこの状況で無駄に合図を使う方が損だしね!


「閃光をいくぞ! 全員、光は見るなよ!」

「了解です!」

「了解!」

「……分かった!」

「ザックさん、ケイの方に引きつけるかな!」

「おうよ! とりあえずダメ元で『麻痺毒生成』『硬化根』『連刺突』!」


 さて、必要最低限の戦力メンバーからの返事は確認出来た。他の人は……まぁちゃんと言ったから、直接見て盲目の状態異常になったとしても自己責任って事で!

 そうしている間にサヤの竜に乗って、ザックさんが根で毒ありの連続突きを放っていく。おっ、回避が今までより大きく避けていたような……? あ、ザックさんに向かってアイスニードルを撃ち出してきたか。……これは、麻痺毒が有効っぽい? いや、それはそれで重要だけど、今は元の作戦が重要だっての!


<行動値を3消費して『閃光Lv3』を発動します>  行動値 58/70(上限値使用:7)


 なんだかウサギの弱点に対する行動パターンを少し見つけたような気もするけど、作戦通り閃光が直撃したウサギはフラフラと安定しない飛行になっている。よし、盲目がバッチリ入ったっぽい!


「ぎゃー!? 前が見えねぇー!?」

「……なんで言われてたのにザックまで……」

「だってよ、行動パターンが――」

「ザックさん、悪い! それは気付いてるけど今は後回しで! ハーレさん!」

「了解です! 『狙撃』!」


 よし、ヨッシさんの発光針をハーレさんが投げて、ウサギの腕に突き刺さった。ダメージ自体はほぼ無かったけど、目的はダメージじゃないから問題なし!


「ねぇ、ケイさん、これってブリザードまでは必要?」

「あー、要らないかも……? ……すぐに捕獲するけど、もし盲目の回復が早かった場合に備えておいてくれ」

「……それもそだね。翡翠さん、いつでもいけるようにしておこうね」

「……うん!」


 このまま盲目の効果が続いているのであれば何の問題もなく岩で固めて捕獲出来るけど、相手は仮にもフィールドボスである。それほど長い間は状態異常が続くとは思えないから、次の手を打っていこう。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 57/70(上限値使用:7): 魔力値 211/214


 ウサギのすぐ側にまずは小石を生成して、そこから岩の操作を発動し追加生成で固めて捕獲をしてしまえば――


「っ!? 『並列制御』『略:ファイアボム』『略:火の操作』!」

「もう回復しやがった!? とりあえずサヤ、ナイス!」

「それは良いから、ケイは急いでかな!」

「そりゃそうだ!」


 うへー、生成した小石がアイスニードルでふっ飛ばされるとこだった。っていうか、生成した小石が落下中だから岩の操作の発動を急がないと。……やっぱり思った通りだけとはいかないもんだな。


<行動値を19消費して『岩の操作Lv3』を発動します>  行動値 38/70(上限値使用:7)


 よし、これで岩の操作での追加生成の準備は完了……と言いたいとこだけど、少し距離が出来てしまったか。ちっ、思った以上に盲目の回復が早過ぎたな。


「ヨッシさん、翡翠さん、ブリザードを頼んだ!」

「了解! 翡翠さん、やるよ! 『アイスクリエイト』!」

「……うん、ヨッシ、やろう! 『ウィンドクリエイト』!」


 少し手順は変わったものの、ヨッシさんと翡翠さんによる昇華魔法のブリザードが発動していき、荒れ狂う吹雪に空飛ぶウサギが飲み込まれていく。おっと、昇華魔法で岩が削られても困るから範囲外に出しておこう。

 やっぱりこれだけだと俺らにとっても視界は悪いけど、先に仕込んでおいた発光針の発する光がその位置を示してくれている。ははっ、発光針は思った以上の成果を発揮してるじゃんか。


「ケイ、これってウサギには目くらましになってないんじゃない?」

「……どうもそうっぽいな。動きは少し鈍いけどそれほど悪影響はなさそうだし、氷属性持ちには効果が薄いか」


 まぁでもそれについても想定はしている。っていうか、氷属性持ちだとこの吹雪の影響がないのなら問題ないよね。でも、劇的にではないけどHPはちゃんと削れているし、少しは行動の阻害になっているのであれば充分だな。


「ヨッシさん、実は吹雪の中は丸見えだったりする?」

「……あはは、外からだとはっきりと見えてる訳じゃないんだけど、敵の位置はシルエットで見えるようにはなってるみたいだね。多分、吹雪の中に入れば普通に見えそうな気がするよ」

「あー、外からだとそんなもんか」


 どうやら氷属性持ちでは見え方が違うみたいだけど、とりあえず発光針のおかげで俺らにも大雑把な位置が把握出来ているだけでも充分だな。

 ヨッシさんが昇華魔法の発動中で身動きが取れない状態でなければ、吹雪の中に突っ込んで行ってもらう手もあったけど、それは無理だろう。……となると、よし、この手でいくか。


「サヤ、ザックさんを乗せて吹雪の反対側に回り込んでくれ。ハーレさんは吹雪の上側に飛んで、上から散弾投擲。弾はなんでも良い。ザックさんは吹雪の中で発光してる部分を狙って麻痺毒で遠距離攻撃を頼んだ」

「了解です! 『略:傘展開』『略:ウィンドボール』!」

「ザックさん、行くかな!」

「お、おう! あっぶねー、盲目が今治ったとこだぜ……」

「……ザック、油断は許さない」

「分かってるって!?」


 これで吹雪そのものでは視界を奪えなかったけど、さっきの麻痺毒に対する反応と、ハーレさんの面攻撃になる散弾投擲があれば回避も難しくなってくるはず。ブリザードで命中精度や威力は全然駄目だろうけど、行動を乱す事が目的だからそこは問題なし。

 本命は俺の岩の操作で捕獲する事だし、チャンスはブリザードが消えた瞬間だな。岩をブリザードの中に突っ込ませても良いけど、その場合は岩が破壊されるのと追加生成でどれだけ相殺できるかの問題になるしね。


「それじゃいくよー! 『散弾投擲』『散弾投擲』『散弾投擲』『散弾投擲』!」

「俺もいくぜ! 麻痺毒の『ポイズンボール』『ポイズンボール』『ポイズンボール』『ポイズンボール』!」

「あ、動きが変に乱れてるかな!」

「……吹雪の外に逃げようとしてる?」

「ケイさん、ウサギが吹雪の外に出るよ!」

「よし来た!」


 はっはっは! サヤとザックさんが吹雪の反対側に回り込んで、ウサギが俺やヨッシさんと翡翠さんのいる方に逃げてきてくれたのはありがたい! ハーレさんも散弾の方向性を俺らの方に誘導するようにしてくれたのも良かったのかもね。

 さて、目印になっている発光針の位置も、ヨッシさんの言うように吹雪の中から出てくる目前である。……目の前に岩が待ち構えているのに、そこにウサギが突っ込んで来るとはなー。追い詰めた成果か……?


 まぁ、それは今はいいや! この距離ならブリザードの効果も収まってきたし、吹雪の中に岩を突っ込ませても追加生成でどうにかなるだろう。って事で、吹雪の中に岩を突っ込ませて、発光針の周囲を適当に固めていく! ……よし、手応えあり!


「おし、捕まえた!」

「おー! ケイさん、ナイスさー!」

「威力は抑えたからあんまり弱ってはないかな?」

「ヨッシさん、翡翠さん、昇華魔法が切れ次第、氷の操作!」

「了解!」

「……うん!」


 さて、吹雪の中から引っ張りだしてから、脚や胴体や翼になった耳とかのそれぞれの部位をちょっとずつ固めている状態のを、しっかりと岩で固め直してっと。……とりあえず頭だけ出てればいいか。

 みんなが全体的に威力を控えめにしていたから、HPは7割以上は残っている。これだけHPが残っていればただの氷塊を3回ぶつけるのには充分だろう。


 それじゃブリザードの効果が切れるのを待ってから……って、あれ? 今のこの状態なら、俺が先に氷塊をぶつけても良いんじゃね……? ふむ、ちょっと確認を取って、良いというのであればそうしようかな。


「ヨッシさん、翡翠さん、氷塊のやつ、先に俺がやっても良いか?」

「え、その状態で出来るの?」

「……折角捕まえたのに、逃がすの……?」

「あー、逃しはしないから大丈夫だぞ」

「何か考えがあるなら、先にしてくれていいよ」

「……台無しにならないなら、私もそれでいい」

「ほいよっと。んじゃ先にやらしてもらうよ」


 ヨッシさんと翡翠さんからの許可の出たし、先にやらせてもらおうっと。ただ、このウサギは回避型かつ魔法型だから耐久性がないのだけには気を付けないとね。

 流石に天然産の氷塊にぶつけてHPの7割が無くなるとは思えないけど、念の為に手加減はしていかないとね。


 って、そうしている間にブリザードの効果が切れちゃったか。ま、ササッと俺のは済ませて、ヨッシさんと翡翠さんの順番に回してしまおう。


「……ケイ、どうするのかな?」

「それはこうする!」

「おー! ケイさんが持ってきて置いてた氷塊に、ウサギを頭から叩きつけたね!?」

「うへぇー! いや、確かにそれもありっちゃありか!」

「……あはは、氷塊をぶつけるんじゃなくて、氷塊にぶつけたのかな」


 ふっふっふ、条件としては天然産の氷塊を利用すれば良いというものである。すなわち、氷塊そのものを動かす必要性は無いという事!


「やりますね、ケイさん。ラックさん、意外とこの手段はやりやすいのではないですか?」

「んー、有効だとは思うけど、フィールドボスの種類を選ぶ必要があるよねー。今回のウサギとか、ケイさん達はあっさり捕まえたけど、本当なら今の手段には向かないタイプだし……」

「……確かにそれはそうですが、その辺は後で色々と検討していきましょうか」

「うん、まぁそうしようかー」


 なんか、カグラさんとラックさんが今の手段を有効活用しようという話し合いがチラッと聞こえて来た。これをやるなら、動きが鈍いフィールドボスを用意して、あの凍った池に叩きつけるのでも良いんじゃないかな? まぁそのフィールドボスを氷塊に叩きつける手段は必要になるけども。


 それはともかくとして、今の一撃でHPが6割くらいまで減っている……。いや、今のは勢いのある物理攻撃ではあるけど、思った以上にHPが削れたな!? 回避型は当てるのが難しいだけで、HPはかなり少ないのかも……。いや、物理攻撃に弱いのか?

 でも残り6割ならヨッシさんと翡翠さんが氷塊をぶつけても問題はないはず! しかも頭から叩きつけたから、朦朧も入ってるしね。


「それじゃヨッシさんと翡翠さんもやってくれ!」

「翡翠さん、先にやっていいよ」

「……うん、ありがと、ヨッシ! 『氷の操作』!」


 あ、翡翠さんが氷の操作で氷塊を持ち上げた瞬間に朦朧から復活したウサギが、周囲に氷の礫を生成し始めてきた。


「邪魔はさせないのさー! 『魔力集中』『連投擲』!」

「……ハーレ、ありがと!」


 ハーレさんがウサギの攻撃を阻止し、それに対する翡翠さんのお礼の言葉と同時に2回目の氷塊での攻撃がウサギの頭部へと炸裂する。あ、また朦朧が入ったね? ……もしかして、このウサギは朦朧が入りやすい? ふむ、回避型の敵ならそういう弱点があっても不思議ではないか。


「それじゃ次は私だね。『氷の操作』!」


 そして最後にヨッシさんの操作する氷塊がウサギの頭部へとまた叩きつけられていく。おー、これで残りHPは3割ちょっとか。これはやっぱりウサギの物理攻撃への耐久性が低いっぽい。

 それにしても俺の使った氷塊も、ヨッシさんと翡翠さんが使った氷塊も少し砕けてしまった。どうしても天然産の氷塊だと耐久性には難ありか。ま、これについては仕方ないね。

 

 さて、これで取得を狙っているメンバーのやるべき事は終わったから、後は手っ取り早く倒す――


「ケイ、ちょっと試したい事があるんだけど良いかな?」

「ん? どうした、サヤ?」

「うん、折角だから私も氷塊の操作を取っておこうかなって思ってね?」

「あー、それは良いけど、どうやって……あ、さっきの俺みたいにウサギを掴んで氷塊に叩きつけるのか?」

「あはは、それでも良いんだけど別の手段かな」


 ふむ、サヤはサヤなりに氷塊を利用した攻撃方法を思いついているって事か。まぁ育成しきれるかは分からないけど、取っておいて損も無いしね。


「俺はそれで問題ないけど、みんなはどうだ?」

「問題なしですさー!」

「特に反対する理由も無いし、手段が増えるし良いと思うよ」

「俺も問題ねぇぜ!」

「……私も大丈夫」

「って事だから、やってくれて問題ないぞ。あ、これって俺が捕獲したままの方がいい?」

「その方がやりやすいね。あ、ウサギの頭は横に向けてくれなかな?」

「横って言うと、こうか?」

「うん、そんな感じかな」


 とりあえずサヤに言われるがままに、岩で固めたウサギを水平にして側面部に頭部が来るように移動させてっと。ふむ、どんな手段でやるつもりなんだろ?

 あ、サヤは俺の使った氷塊の方へと移動しているね。俺が使ったのは砕けてがいるけど、まだ氷塊として使えそうな大きさのがあるので、どうやらあれを使ってやるつもりのようである。


「これなら良さそうだし、これでいくかな! 『魔力集中』『大型砲撃』『強投擲』!」

「あー!? サヤが投擲ー!?」

「確かにこの手があったね」

「なるほど、そう来たか」


 サヤは大型砲撃を持ってたんだし、氷塊を投げつける事も可能だったって訳か。おー、見事に氷塊がウサギの頭部に直撃して、完全に氷塊が砕け散ったね。

 そしてそれと同時にウサギのHPも全て無くなり、ポリゴンとなって砕け散っていった。……うん、何度も思ったけど回避に特化したのは耐久性がないな。この手の敵はフィールドボスであっても、一度捕まえてしまえば楽勝という事である。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『雪山の強者を打ち倒すモノ』を取得しました>

<増強進化ポイントを3獲得しました>

<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『氷塊を扱うモノ』を取得しました>

<スキル『氷塊の操作』を取得しました>


<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『雪山の強者を打ち倒すモノ』を取得しました>

<増強進化ポイントを3獲得しました>

<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『氷塊を扱うモノ』を取得しました>

<スキル『氷塊の操作』を取得しました>


<『瘴気石』を1個獲得しました>


 よし、これで無事に目的であった氷塊の操作の取得は成功だな。後は今回手に入れた瘴気石をザックさんと翡翠さんに提供すれば夕方の予定は完了だ。

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