第646話 雪山へと移動中
閃光を使う時の合図をみんなで考え始めたけど、中々に難しい内容だな。相手には気付かれにくく、それでいてみんなには確実に伝わる、戦闘中に発しても不思議ではない言葉か……。
「はい! 合図を思いつきました!」
「ハーレ、どんな合図かな?」
「サヤ以外に火魔法の指示でどうですか!? ケイさんなら自分で使うし、サヤ以外は戦闘中にはほぼ使わないよね!?」
「あ、それは良いかも?」
「確かにそれはありかな」
「俺もそれで良いと思うぜ。ケイ、どうだ?」
ふむ、確かにサヤの竜以外には火魔法の指示を出す事はないもんな。特にこれと言って問題はないし、気付かれにくい合図ではある。……ついでにハッタリにも使えそうだね。
俺自身が使う事は稀にあるにはあるけど、それ自体はハーレさんが言うように俺の判断で使えばいいから大丈夫か。
「よし、ハーレさんの案を採用!」
「やったー!」
「この合図はちゃんと覚えておかないといけないかな」
「そだね。忘れると意味ないし」
「だな。ケイ、忘れんなよ」
「俺が忘れてたら意味ないよな!?」
「その時はケイさんのおかずを貰うのさー!」
「おいこら! そういう事ならハーレさんが忘れてたら、俺がおかずを貰うからな!」
「あ、ケイさん、ハーレに食べ物を関連付けたら絶対に忘れないよ……?」
「……あ」
「ふっふっふ、そうなのさ!」
くっ、相変わらず食べ物が絡むと妙な所で妙な効果を発揮するな、ハーレさん!? ……まぁそれで覚えておけるなら問題ないし、俺自身が忘れさえしなければおかずが減る事はないからちゃんと覚えておこうっと。閃光を使う時はサヤ以外に火魔法の発動の指示を出す……うん、覚えた!
「さて、それじゃ予定通りに雪山に行くぞ!」
「「「「おー!」」」」
俺の闇の操作の手段を見たいという事でサヤに強襲はされたけども、その辺はこれで片付いた。これから雪山の中立地帯に行って、サヤは水月さんと、俺はアーサーとの手合わせを予定だしね。
いつの間にかサヤ以外はアルのクジラの上に待機しているし、サヤもいつも通り竜に乗ってアルのクジラの上に移動している。俺も乗ったままだった水のカーペットで浮かんでアルのクジラの上に着地。……よし、もう水のカーペットはいらないな。
<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 73/73 → 73/75(上限値使用:1)
これで水のカーペットの解除は完了っと。あ、そういえば一応サヤには確認しとかないと駄目な事があったっけ。……多少は移動に時間もかかるし、これは移動しながらにするか。
「アル、とりあえず出発!」
「あー、速度はどうする?」
「今日のは急ぎでもないし、ゆっくりで良いんじゃない?」
「昨日の夜は慌ただしかったし、私もゆっくりが良いかな」
「今日はゆっくりで行くのさー!」
「だそうだぞ、アル」
「……みたいだな。んじゃゆっくり行くぜ。『略:空中浮遊』!」
流石にみんなも2日続けて大急ぎの移動をする気も起きなかったようである。ま、昨日あれだけ上風の丘や岩山を大急ぎで飛びまくったらなー。うん、俺も適当に闇の操作か強連打でも鍛えながらゆっくり進みたいとこだね。
そうしてアルのクジラは浮かぶだけで、それ以上の移動速度の上昇はせずにゆったりと空中を泳いでいく。今はまだ8時前だし、約束の8時半までに雪山に辿り着くには今の速度でも問題はないはず。
「アルさん、背中の上で特訓してても良いですか!」
「別に良いけど、あんまり動き回るスキルは無しにしてくれよ」
「はーい! サヤ、魔法の撃ち合いをしよー!」
「あ、うん、分かったかな。ヨッシとケイはどうする?」
「流石に周囲を無警戒って訳にもいかないし、アルさんだけに任すのもあれだから、私は警戒をしてるね」
「お、あんがとな、ヨッシさん」
「いえいえ、アルさんこそ移動ありがとね」
ふむふむ、とりあえずサヤとハーレさんが補助として使う魔法の強化をして、ヨッシさんが周囲の警戒を、アルがいつものように移動を任せてる状態か。
「アル、折角だし移動しながら何か鍛えといたらどうだ?」
「あー、それもそうだな。……よし、海水の操作でも鍛えとくか。『シーウォータークリエイト』『海水の操作』!」
「あ、それなら私もそうしよっと。『ポイズンクリエイト』『毒の操作』!」
「それじゃ俺も鍛えていくかー!」
アルとヨッシさんもただ生成して操作しているだけだけど、これでも熟練度自体は稼げてるみたいだしね。ま、熟練度に関しては具体的な数値が出ないから、何となくの体感ではあるけども……。
さて、俺は俺で同じようにやっていこう。動き回るのは却下という事だから、ここは闇の操作を鍛えていきますか。夜の日なら、大体どこでも使えそうな感じだしね。……むしろ同時に取った雷の操作を鍛える方が難しそうな気がする。
<行動値を20消費して『闇の操作Lv1』を発動します> 行動値 55/75(上限値使用:1)
えーと、支配可能な闇がほぼ視界の全てなのがちょっと面倒だな。……とりあえず、前方の方の闇を支配下にして操作をしていこう。
この闇の操作はさっき初めて使って気付いたけども、闇を集めてくるというものではなく、操作した範囲の闇の密度を上げてより暗い闇へと変質させているような感じなんだよね。だから、操作したからと言って他の所が明るくなったりはしない……って、あ!?
「……おい、ケイ!」
「悪い、操作ミスった!」
「……流石に俺の視界を潰すのはやめてくれ」
「だから悪かったって!?」
まだまだ制御の甘いLv1の闇の操作だから、思いっきり操作を誤ってアルのクジラの顔を闇で覆ってしまった。くっそ、この闇の操作、他の操作と比べて実体があやふやだから地味に操作がしにくいぞ……。
とにかくアルの前方で闇の操作を使うと邪魔になるから、上部へと移動させて……うわっ、月明かりを隠した感じになって暗くなった!?
「あー、これは発光を使おうか……?」
「ケイ、これからこうするから特に問題はないかな! 『略:エレクトロボール』!」
「いっくよー! 『略:ウィンドボール』!」
「……特に問題なさそうだな」
「あはは、そうみたいだね」
サヤの竜が放つ電気の弾がちょっとした明かり代わりになっていて、俺の闇の操作で月明かりが隠されていても問題はなさそうだ。
てか、この闇の操作って俺自身の視界も妨害されるんだなー。本格的に使う際には暗視との併用が必須かもしれない。
「わっ!? ケイさん、何するのさー!?」
「すまん、ハーレさん! 地味にこの闇の操作、操作感が独特でLv1だと思った以上に扱いにくいんだよ」
「え、そうなんだ!? ケイさんでも扱いにくいって相当だよね!?」
「……だなー」
弥生さんやベスタは上手く使っていたけども、ここまで操作に癖があるとは思わなかった。ただ、この闇の操作単体では暗視で対応出来る程度の効果だけど、使い方次第では大きく化けるのは間違いない。
俺が試した手段でも、弥生さんやベスタの使い方でも脅威にはなるからね。……闇の操作は上級者向けって感じがするし、是非とも使いこなしたいところ!
それはそうとして、もう移動しつつ特訓も開始になったから、雪山に辿り着く前にこの辺は確認しておかないとね。
「あー、サヤにちょっと確認しときたい事があるんだけど……」
「え、確認しときたい事って何かな?」
「……フラムがこれからの水月さんやアーサーとの手合わせのを中継したいという、俺らにはあまりメリットのない要望をしてきててな?」
「はい! それなら私は実況もやりたいです!」
おー、ハーレさんはサヤに何度も却下されているのに、まだめげずに実況を要望してくるんだね。地味に実況をするのが気に入ってるよね、ハーレさんって。でもサヤの事だから、中継も含めて却下だろうな。
「あ、それはお断りかな。ハーレの実況も、フラムさんの中継もね」
「あぅ! 相変わらずその辺りはサヤは容赦がないのです……」
「……あはは、前に実況されてた時にはサヤって相当やりにくそうだったもんね」
「……流石にあれは集中力が削がれるかな」
「なんとなくは予想してたけど、やっぱりサヤはその辺はNGか」
やっぱりサヤにはバッサリと切り捨てられたね。まぁ俺も中継については断るつもりでいたし、明確に断る理由が1つ増えたって事で良しとしておこう。どう考えてもフラムに中継させるメリットが俺らには無い。……あー、俺らの方も中継するのであれば少しはメリットがない訳でもないか。
どっちにしてもサヤは嫌がっているから無しだな。イベント中ならまだしも、個人間での手合わせで、同意なしの中継は認める訳にもいかないしね。
でも毎回実況を希望して却下されているハーレさんについてはちょっと何とかしてあげたいところなんだけど、集中力が削がれるのが嫌なサヤに無理強いする訳にもいかないんだよね……。何か良い手段でもないものか……。
「あー、サヤ、中継はともかく実況の件でちょっと良いか?」
「アル、どうしたのかな?」
「いや、ちょっと思いついた事があってな。サヤとしては、集中力が削がれるから実況の声が聞こえるのが嫌って事で合ってるか?」
「うん、そういう事になるかな」
「だったら、こういうのはどうだ? サヤが戦う時にはPTを一旦解除した状態にして、俺の樹洞の中で遮音設定にした上で投影した映像を見ながらハーレさんが実況をする。これならサヤには実況の音声聞こえないだろ」
あ、そうか。アルは移動種だからそんなに大人数は樹洞の中には入れないけど、そういう手段もあるにはあるのか。それだと実況を聞くメンバーが限られるから、正直あまり意味もない気もするけど……。でも、前にハーレさんが水月さんとサヤの対決を実況をしてた時は人数もそう変わらないか。
ふむふむ、サヤも無言ではあるけどアルの提案について考え込んでいる様子ではある。……そしてハーレさんが思いっきりサヤに向けて熱烈な視線を送ってるなー。
「じー!」
「……ハーレ、声に出さなくてもいいからね?」
「はーい! それでサヤ的にはどうですか!?」
「……まぁ、それなら問題はないかな?」
「やったー! サヤから限定的ではあるけど、実況の許可が出たよー!」
「……あはは。まぁ喜んでるし、これくらいなら許容範囲かな」
ハーレさんが思いっきり喜んでて、サヤはちょっと苦笑い気味ではある。まぁサヤも本気で嫌なら友達相手でもバッサリと容赦はないし、結構考え込んでたから無理をしてという訳じゃないはず。
ハーレさんはただ単に実況がしたかったのと、断られ続けてたの許可が出て嬉しいってとこなんだろう。ついさっきも即座に却下されて、がっかりしてたもんな。
「良かったな、ハーレさん」
「うん! アルさんもナイスアイデアです!」
「おう! で、ケイとサヤに相談なんだが、中継の方も許可は出せないか?」
「……俺らにメリットなくね?」
「ま、フラムさんが実況するだけならな。俺らもするって事ならどうだ?」
「あー、そういう事か」
「……アルが桜花さん辺りと組んでやるって事かな?」
「ま、桜花さん次第だし、他の人になる可能性もあるが、基本的にはそういう事だ」
まぁフラムに中継を許可する代わりに、俺らの方にも中継をさせろという要求をする事も出来るか。……というか、俺らのその要求を突っぱねるのなら許可を出す理由が欠片も無くなるから、フラムが中継をしたいのなら絶対に呑ませられる条件ではある。
「サヤ、どうする? 水月さんやアーサーの今の状況を分析するのにはありと言えばありだけど……」
「……でもその代わりに私達も分析されるんじゃないかな?」
「それについては中立地点で赤のサファリ同盟のメンバーの2人と戦うんだから、直接のギャラリーには確実に見られるぞ」
「でも、それなら灰のサファリ同盟もいるから条件は同じじゃない?」
「灰のサファリ同盟は再現には向いているけど、分析には向いてないです!」
「……そういやそうなるのか」
ふむ、そうやって考えてみると桜花さん……まぁまだ話を通していないから、他の人になる可能性もあるけど、中継で多くの人に分析してもらう方がいいのかも……?
よく考えたら一番赤の群集で分析出来そうな赤のサファリ同盟は確実にいるだろうし、中継をしない方が俺らの方がデメリットが多いのかもしれない。
「……サヤ、本気で嫌なら無理強いはしないけど、俺は中継をした方が良い気がしてきた」
「……私もそんな気がしてきたかな」
「おー! それなら中継をするのは確定!?」
「それはフラムさん……というよりは、赤のサファリ同盟との交渉次第じゃない?」
「ま、それはヨッシさんの言う通りではあるんだが、俺らの方で意思統一はしとこうぜ」
「……アルの意見に一理ありだな。よし、それじゃ俺らの方でも中継するって条件が通ったら許可する事に賛成な人!」
「はい!」
「……一応賛成かな」
「私も賛成だよ」
「発案の俺は勿論賛成だ」
「んじゃ、それで決定って事で!」
フラム……というか、ギャラリーとしているだろう赤のサファリ同盟の人との相談の結果にはよるけど、俺らとしては条件付きで中継は許可という事に決定だね。
「よし、それじゃ俺は今のうちに桜花さんか灰のサファリ同盟に連絡を入れて、中継の用意だけはしといて貰うわ」
「アル、そこは任せた!」
「おう、任せとけ!」
さてと、中継を実際に行う不動種の人との交渉はアルに任せておこう。っていうか、アルとフレンド登録をしている不動種の人でないと実行出来ないしね。
元々は完全に断るつもりでいたけども、まぁ状況をちゃんと整理すればこうなるかー。……フラムが関係するとちょっと個人的な心境の問題で判断が鈍るみたいだから、その辺は気をつけないとなー。
ま、とにかくまったり移動ではあるけども、スキルを鍛えながら雪山へ辿り着くのが先決だね。色々と分析とかの思惑も出てきたけども、今の水月さんとアーサーがどんな強さなのか純粋に楽しみだ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます