第645話 闇の操作の使い方
ゲームを一旦ログアウトして、現実に戻ってきた。お、ちょうど7時ぴったりか。……うん、当たり前の様に俺の部屋の椅子に座って晴香が携帯端末の操作をしているっぽいな。サヤとヨッシさんにメッセージを送ってるんだろうけど……まぁいつもの事だし、この程度なら諦めよ……。
「メッセージ、送信完了!」
「お疲れさんっと。それじゃさっさと晩飯を食べてくるか」
「おー! 今日の晩御飯はなんだろなー?」
「ま、行けば分かるだろ」
「そうだよねー!」
そうして晴香一緒に1階へと降りていく。晩飯が何になるかは母さんの気分や帰宅時に買ってくる食材によって変わってくるんだよな。
時々買い出しを頼まれる時は、母さんが仕事帰りに買ってくる時間の余裕があまりない時だけど、そうでない時は母さんが決めている。まぁその辺は料理好きの母さんの楽しみではあるしね。
「お母さん、今日の晩御飯は何ー!?」
「今日は豚肉の冷しゃぶね。お父さんがちょっとさっぱりした物食べたいって言ってたらから、リクエストに応えたわよ」
「おう、俺のリクエストだぞ、晴香、圭吾」
「父さんのリクエストだったのか」
「冷しゃぶだー! お母さん、ゴマダレってあるー?」
「母さん、俺はポン酢な!」
「俺は晴香と同じでゴマダレで」
「はいはい、どっちもちゃんとあるから焦らないでね。圭ちゃん、運ぶの手伝ってくれる?」
「ほいよっと」
という事で、本日の晩飯は豚肉の冷しゃぶだったようである。まだキッチンで盛り付け終わったところだったので、テーブルの上に運んで食べられるようにしていこう。……晴香に運ぶのを任せると大惨事になりかねないので、そこは要注意である。
「いただきまーす!」
「「「いただきます」」」
それぞれに好みのタレをかけて、豚肉の冷しゃぶを食べていく。ふー、徐々に熱くなってきているからこうしてさっぱりとしたのを食べるのも良いものだね。
さっぱり系だと晴香が狙ってくる可能性が低いというのもありがたい。どちらかというとガッツリ系を狙う傾向が強いからね。……まぁ人のおかず狙うなって話ではあるんだけども。
◇ ◇ ◇
そんな晩飯を食べ終えて、晴香は先にゲームに戻っていった。俺も食器洗いを済ませて、自室へと戻ってきている。さて、続きをやっていきますか!
そして再びいったんのいるいつものログイン場面へとやってきた。まぁさっきの今で新しいお知らせも……いや、お知らせの更新のタイミングが19時くらいっぽいから、新しいお知らせが出ている可能性もあるにはあるのか。
よし、念の為にその辺はちゃんとチェックしておこう。えーと、いったんの胴体部分の内容は『新機能の実装の予告があります。詳細は公式サイトかいったんまで』……って、思いっきり新情報が来たか! え、まだ群集クエストやスクショのコンテストが開催中だけど、次の予告!?
「いったん、新機能って何!? どんな内容!?」
「気になるのは分かるけど、説明はするから少し落ち着いてね〜」
「あ、すまん。……で、どんな内容?」
「えっとね、すぐにではないから明確な実装時期までは言えないんだけど、再現クエストというのを実装するよ〜」
「……再現クエスト?」
えーと、名前的にはそのまま何かを再現するようなクエスト……? 再現……再現……今までの何かを再現する為か? でもイベントの演出とかは追憶の実で見られるし、何を……って、あー!
「もしかして、今まであったイベントやクエストを再度出来るようにするクエストか!」
「お、正解だね〜。まぁそのまま全く同じには流石に出来ないけど、インスタンスエリアを用意した上で、所定人数以上を揃えた状態で過去のイベントを再現するって形にはなるよ〜。マップ作成の群集クエストとかね〜」
「あー、あれは1度きりだと思ってたけど、また出来るんだ」
そっか、マップを埋めるとこから再現して同じイベントやクエストをやる事が出来るんだね。……あれ、ちょっと待てよ? 今、インスタンスエリアを用意してって言ったよな? ……もしかして、この再現クエストが群集拠点種の樹洞の中の役割か!?
「いったん、それって群集拠点種の樹洞の中でやるのか?」
「うん、そうなるね〜。まぁ色々と憶測が飛び交ってたから、ちょっと予定を前倒ししての情報公開だよ〜」
「あー、なるほどね」
確かに群集拠点種の樹洞の中で思ったより早くに模擬戦機能が実装された事で、元々は別の用途があったんじゃないかという憶測はあったもんな。あれは事実であり、そして変にはぐらかすのではなくて公開する事になったのか。
「とりあえず、実装時期は未定の予告だけって認識でいい?」
「うん、それで問題ないよ〜。追加の情報が公開出来るようになっら、続報をお伝えします〜」
「ほいよっと」
ま、すぐには実装ではないけども、そういう機能の実装の予定があると分かったのは良いよな。具体的な仕様については続報を待つとしても、今の育ったキャラや、そのうち解放される3rdで過去のクエストの再現を楽しむというのもありだよな。うん、これは楽しみになってきた!
「さてと、それじゃコケでログインをよろしく!」
「あ、スクショの承諾が何件か来てるけど、それはどうする〜?」
「あー、それは後でやるよ」
「はいはい〜。それじゃ楽しんできてね〜」
「おうよ!」
今はみんなを待たせてる状態だろうから、スクショについては今日の終わりの時でいいや。って事で、いったんに見送られながらゲームの中へレッツゴー!
◇ ◇ ◇
そしてゲームの中に再びやってきた。さて、みんなは森林深部側とハイルング高原側のどっちにいるんだろう?
天気としては少し雲はあるけど月が見えているから晴れていると言っていい状態。ここから見えるハイルング高原の方も天気が崩れている様子もない。そうなるとハイルング高原側か? ……とりあえず暗いから夜目は使っとこ。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 76/76 → 75/75(上限値使用:1)
よし、これで問題ないね。一応共同体のチャットで連絡してきてくれる事にはなってるけど、周囲をグルッと見るくらいはしとこうかな。
あ、近くの氷狼の所で戦闘中の声が聞こえてくるね。もう雑魚になってるボスだろうに、何だかんだで周回PTも頑張ってるんだなー。
ハーレさんが灰のサファリ同盟で周回部門もあるって言ってたし、もしかすると初のボス戦に慣れさせるとかそういう役目もありそうだ。
おっと、そうしている内に共同体のチャットのアイコンがが光っているね。みんなからの連絡が来たっぽいから、開いて確認していこう。
ハーレ : ケイさん、ハイルング高原の方にいるからねー!
ケイ : ほいよっと。そんじゃすぐにそっちに行くよ。
サヤ : うん、待ってるかな。
ヨッシ : ハーレからケイさんが何かまた思いついてるって聞いてるから、楽しみにしてるね。
アルマース : 来たら見せてくれな?
ケイ : え、もう伝わってんの!?
闇の操作の件だろうけど、伝わるの早くない!? あ、でも俺とハーレさんのログインには10分くらいのズレはあるから、伝えようと思えば伝えられる時間はあるのか。
ハーレ : ふっふっふ、ご飯の前にメッセージで伝えておいたのです!
ケイ : ログインしてからかと思ったら、その前からかい!
アルマース : ま、その辺はどっちでも良いじゃねぇか。
ヨッシ : どっちにしても伝わってただろうしね。
サヤ : そういう事かな!
ケイ : そりゃそうだ……。とりあえずサクッとそっちまで行くかー。
ハーレ : どんな手段か楽しみさー!
あー、なんか思いっきりハーレさんが期待してしまってるな。……まだ実際に試してないから上手く行くかも分からないんだけどなー。ま、やるだけやってみますかね。って事で、さっさと移動しよう。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 75/75 → 73/73(上限値使用:3)
とりあえず水のカーペットを生成して、その上に飛び乗って飛んでいこう。普通に歩いても大した距離ではないけど、こっちの方が移動は楽だからね。
<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ハイルング高原』に移動しました>
すぐにエリアの切り替えになって、ハイルング高原へと到着した。ふー、ここは唐突に強風が吹く訳でもないし、見晴らしも良くて清々しい気分になるね。月明かりで照らされた雪山を背景に広がる光景は何度見ても良いものだ。
まぁ所々で戦闘をしている様子もあるし、ここにいる固定のボス戦をしている様子も見えるけどね。それでみんなはどこだろ? 切り替え直後の場所だと邪魔になるから、少し位置をズラしているのかな?
「ケイ、こっちだ」
「あ、そっちか」
アルの声が聞こえた東側の方を見てみれば、エリア切り替え付近に少しある木々の横に、地面に降りた状態のアルのクジラや、魔法を撃ち合っているサヤとヨッシさんとハーレさんの姿が見えた。
どうやら少しズレた位置で邪魔にならないようにスキルの強化をしてたようである。
「ケイ、ほらよ」
「……ん? あ、PT申請か」
すぐにアルからPT申請が飛んできたので、了承っと。
<アルマース様のPTに加入しました>
よし、これでPTは組めたし雪山の中立地点に――
「PTも組めたし、早速見せてもらうかな!」
「え、ちょ!? サヤ!?」
「闇の操作を相手には手加減は抜きかな! 『魔力集中』!」
「マジで!?」
俺を見ると即座にスキルを発動しながらサヤが駆け寄ってきているし!? こりゃ俺が考えている手段が実戦の中でどういう効果があるのか確かめようって魂胆か! よし、そういうつもりなら受けて立ってやろうじゃないか!
さて、思いついている手段では発声での発動ではバレバレになるから、思考操作で発動していこう。出来れば生成はしたくないから……丁度いいのはないか。なら、こっちでやろう。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を20消費して『闇の操作Lv1』は並列発動の待機になります> 行動値 53/73(上限値使用:3)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を6消費して『土の操作Lv6』は並列発動の待機になります> 行動値 47/73(上限値使用:3)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
よし、今は夜だから周囲の闇は明るい光源がある所以外のものは操作が出来る。これで可能な限りの闇を支配下に置いて、少し土が剥き出しになっていた部分の土も多めに支配下に置いて準備完了。
これで操作した闇をサヤぶつける様に動かすと同時に、サヤから見て闇で死角になる位置に土を操作していく。
「ただ闇をぶつけてきても効果はないかな! 『略:ウィンドボム』!」
「ま、そりゃそうだろうな。って事で、こうする!」
「……え、なんでまだ暗いの? きゃ!」
「ふっふっふ、成功!」
よし、見事に引っかかった。発想の大元は弥生さんの闇の操作に隠した足場の小石ではあるけども、何も小さな物を隠すだけじゃない。まぁ新しい方法というよりは、使い方の方向性を変えただけではある。
まぁただ単純にサヤから見れば闇の操作だけだけど、その後ろには大きく広げた土があったってだけだけど。月明かりも遮ってるから、どこからが闇の操作の闇なのか、覆った土で出来た壁なのか判別しにくいだろう! ま、暗視で見れば分かるだろうけど、一瞬は戸惑うだろうからそこが狙い目だね。
「……外から見たら丸わかりだな」
「あはは、完全に闇は目くらましのみで、操作した土を面攻撃として叩きつけるのが狙いだったんだね」
「闇が散らない様にもしてたよねー!?」
「まぁ、そんなとこだなー。ぶっちゃけ、闇の操作の精度が低いから土の操作でカバーしてるとこでもあるし」
もっと闇の操作の精度が高ければ、死角に覆いとして使った土の操作自体も闇に隠してしまいたかったんだけどね。ま、そこは覚えたてでスキルLvが低いから仕方ない。
てか、現時点ではこの戦法を受けた本人には気付かれにくいけど、周りで見ている人からすれば丸わかりかー。……とりあえず、直接受けたサヤに感想を聞いてみよっと。
「サヤ、今のはどんな感じだった?」
「……あはは、これは参ったかな。これって暗視を持ってて警戒心が薄れている人ほど効果があるんじゃない?」
「手段を知られていない内に不意打ちとして使うならかなり有効だと思うぞ。今回はその辺の土を使ったけど、闇の中に岩を生成してもいいし、アースウォールを展開してもいいしな」
「そうか、闇の操作の効果を暗視で無効化したと思っているとこに不意打ちか。しかも中に仕込めるのは色々あると……。考える事がエゲツねぇな、ケイ」
「……多分このくらいなら他にもやってる人はいると思うぞ。ほら、ベスタとか弥生さんとかならやれそうではあるしさ」
「あー、まぁ確かにそりゃそうか」
まぁ弥生さんもベスタも近接ではあるから、大掛かりな魔法の仕込みは出来ないかもしれないけど……。その代わりに強烈な近接攻撃が待ち受けてるからね。
ともかくこれは闇の操作を破ったと油断して突っ込んできた所にカウンターを叩き込むのが目的だから、何と言われてもカウンターとしては有効な手段ではある。
それにカウンター狙いが気付かれたとしても、警戒度合いを上げる必要はあるからね。暗視を使う近接の人にはかなり有効だとは思う。……まぁ風魔法とかで闇を完全に吹き飛ばされたら意味が無くなるけど、そこは闇の操作のLvを上げて対応すればいい。
「ま、これって俺自身も気を付けないといけない戦法だけどなー。これを思いつくまで、この戦法に引っかかりそうな暗視頼りの対処をしてたしさ」
「あ、そういえばそうなるのかな? でも、それだとどうするの?」
「これからは閃光か光の操作で相殺する」
「ありだと思うけど、それなら閃光の明確な合図が欲しいのです!」
「あ、それは確かにそうだね」
「……確かにそりゃそうだが、合図は何にするんだ? 流石に昨日使った実況は使えんだろう?」
「あー、そりゃ確かにアルの言う通りではあるよな……」
閃光については味方にも悪影響があるスキルだから、使用には合図を決めておきたいのは確かなんだけどね。……対人戦で既にバレた合図を使い続けるのは危険か。
普通の敵が相手の時は普通に閃光を使うって言えば良いだけなんだけど、対人戦に有効な俺らだけに分かる合図か。うーん、これは必須だけど意味不明な言葉だと変に警戒されるだろうし、何が良いかな?
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