第577話 検証、頑張り中


 ベスタが今までに判明した付与魔法の効果を整理してくれたので、まだ未確認となっていた部分の確認をしていこうかな。えーと、未確認の項目は……Lv3の拘束魔法の魔法砲撃化についてはさっき伝えたので、Lv4〜6の魔法の魔法砲撃にした際の効果だね。

 厳密には各属性での差異があるかもしれないって話だけど、それについてはこれから色々な人が試していくだろうから慌てなくても良いだろう。まず全く確認出来ていない事の方が優先だね。


「そういやアル、樹木魔法や草花魔法ってどういう内容になってんの? 樹木魔法ってLv1が葉っぱで切り刻むリーフカッター、Lv2が根で突き刺すスタブルート、Lv3が根で巻き付くコイルルートだったよな?」

「おう、そうだぜ。まぁ俺も地味に樹木魔法はLv3で止まってるから少し前にまとめで見ただけにはなるが、Lv4が根を鞭みたいにして叩きつけるルートウィップで、Lv5が大量の根で防御するルートウォールだっけか。Lv6の情報は前に見た時はまだなかった」

「へぇ、そんな風になってるんだ。それで草花魔法は?」

「草花魔法はLv2がルートウィップで、Lv3がコイルルート、Lv4がスタブルートだったはずだ……。Lv5と6は知らん」

「ほうほう、Lv2とLv4の順番が入れ替わってるのか」

「ま、そういう事だな。そのうちその辺の情報も出てくるだろうから、その時に必要なら確認すれば良いだろ」

「それもそだな」


 相手として戦う事を想定するのであればどこかで内容を確認しておいた方がいいんだろうけど、予め情報がある場合ばかりではないからそれに頼り過ぎないように要注意ではあるね。……まぁ今は単純に優先順位の問題である。


「ケイ、とりあえず回復は済んだのかな?」

「あ、そういや見てなかった。……うん、問題なく全快してる」

「それなら良かったかな。それで、魔法砲撃の検証を再開かな?」


 ここまで検証してきて、あと検証項目は3つだけなんだから最後までやってやらないという選択肢は俺の中にはない。

 時間を見てみれば意外と時間が経っていてもうすぐ11時だけど、みんなも駄目とは言わないと思う。でも、一応はみんなに確認は取っておくべきだな。


「みんな、それで良いか?」

「あはは、もちろんかな! それじゃ私達は検証の相手役をやればいい?」

「ここで中断っていう選択肢はないよね」

「ま、その辺は同意だな。俺は報告に専念するから、今回はサヤとヨッシさんで相手役をやってくれ」

「あ、それもそうだね。うん、分かったかな!」

「了解!」

「よし、それじゃ検証の大詰めをやっていくか!」

「「「おー!」」」


 みんなの気合は充分だし、残っている検証項目は3つ。サクサクやってしまおうじゃないか! まずはLv4の爆発魔法の検証からだな。

 みんなも適度に位置を離して、いつでも検証が開始出来るように待機中である。アルは高度を上げて、完全に上から傍観状態だしね。


「それじゃLv4のアクアボムからやっていくけど、ヨッシさん、氷の防壁を頼める?」

「私が受け止めたら良いんだね? ……並列制御で複合魔法にしといた方がいい?」

「あー、ちょっと悩ましいとこではあるけど、まぁ壊れたら壊れたでダメージもないから通常で大丈夫じゃないか……?」

「それもそっか。うん、それで了解」

「それじゃ私は邪魔にならないように、飛んでようかな?」

「お、サヤ、お気遣いありがとよ!」

「どういたしましてかな」


 そう言いながらサヤは邪魔にならないように竜に乗って上空へと飛んでいき、逆にヨッシさんは俺の真正面へと移動してきた。俺は水のカーペットに乗ったままだけど、この辺は薪の元になる木を伐採したという場所なだけあって、切り株だらけで浮いてないと地味に足場は悪いんだよね。


「それじゃ始めるね。『アイスウォール』!」

「ほいよっと!」


 さて、ヨッシさんが氷の防壁を展開してくれているので俺もやっていこうじゃないか。さっきのベスタのまとめでは通常発動での爆発魔法の強化効果は弾数を1発追加だったけど、魔法砲撃にすればどうなるかな?


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値7と魔力値21消費して『水魔法Lv7:アクアエンチャント』は並列発動の待機になります> 行動値 63/70(上限値使用:3): 魔力値 185/206

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値8と魔力値12消費して『水魔法Lv4:アクアボム』は並列発動の待機になります> 行動値 55/70(上限値使用:3): 魔力値 173/206

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、自動的にアクアボムへの攻勢付与の効果はかかった。それじゃ次はこれを魔法砲撃にして、起点をいつも通りに右のハサミに指定して、ヨッシさんの生成した氷の防壁に向けて狙いをつけて……発射!


「……え、特に普通と変わらな――きゃ!?」

「ヨッシ!?」

「ちょ、え!?」

「んなの、ありか!?」


 俺の撃ち出したアクアボムは見た目も射出速度もこれまでの物とは大して変わらなかったけども、それは着弾するまでの話。氷の防壁に当たった瞬間に、これまでのアクアボムの規模とは段違いの爆発が発生していた。

 ……いや、1発で氷の防壁を破壊してその後ろにいたヨッシさんまで吹き飛ばすとは思わなかったぞ。すぐに受け止めに行ってくれたサヤ、グッジョブ! って、考えてる場合か!


「ヨッシさん、大丈夫か!?」

「あ、うん。サヤが受け止めてくれたし、ビックリしただけでダメージもないから大丈夫」

「そっか、それなら良かった。サヤもすぐに動いてくれてありがとな」

「どういたしましてかな。でも、この威力はビックリだね」

「……だな。アル、この効果はどう見る?」

「今の感じだと攻勢付与での強化効果は、威力そのものと効果範囲の増大だろうな」

「だよなー。この威力は流石に予想外だった」


 発動した俺自身の方まで爆風は届いていたし、威力的には水の操作で指向性を1方向に絞った時の威力くらいが基本になってるくらいの威力だろう。……Lv4の爆発魔法でこれなら、もっと威力のあるLv6の衝撃魔法だとどうなるんだ……?


「なぁ、アル。今、水魔法のLvっていくつ?」

「ん? 俺か? 俺なら水魔法はLv5だが……ケイ、何する気だ?」

「いやさ、アルに守勢付与をかけたアクアウォールと、俺の攻勢付与をかけたアクアインパクト、どっちが強いかなって?」

「……俺が負ける気しかしねぇな、おい。……って、今思ったんだが守勢付与がかかってる間って複合魔法化は可能なのか?」

「あ、そういやどうなんだろ? よし、試してみるか」

「……なんか、俺は報告役をしてるのに検証対象に巻き込まれ過ぎてねぇ!?」

「それは気にしない方向で!」

「いや、そこはちょっとは気にしようぜ!?」


 そうは言っても、今の状況で水魔法Lv5を持っててこれを試せる相手ってアルしかいないしさ。ここに今ダイクさんでもいれば、一緒に試す事も出来るんだけど――


「およ!? わー!?」

「ちょっ!? 今の威力、なんだ!?」


 そんな聞き覚えのある声と共に、凄まじい勢いの水と共に吹き飛ばされてきた赤いリスが近くの木に打ち付けられていた。あ、流石に朦朧入ったっぽくて、フラフラと足取りが危うい感じである。っていうか、思いっきりレナさんだな。


「……レナさん、一体何事?」

「あー、朦朧でまともに操作がー。って、およ? ケイさん達?」

「レナさん、大丈夫……って、ケイさん達か!」

「あ、ダイクさんかな」

「これって、もしかしてダイクさんがレナさんを吹っ飛ばしたの?」

「あー、そうなると言えばそうなるか……? 俺もびっくりしてんだよ、この威力ってさ」

「いやー、付与魔法の効果ありでの衝撃魔法の魔法砲撃の威力が想像以上で参ったねー。朦朧、早く治ってー」

「……今のってその組み合わせなのか」


 いやいや、強力になるとは思っていたけど、これはいくらなんでも強力になり過ぎてません? Lv6とLv7の魔法の強化に、魔法砲撃の効果がかかると威力がとんでもなく跳ね上がってるっぽいぞ。

 えーと確か、Lv6の衝撃魔法の通常発動時の効果は衝撃魔法の展開時間の延長ってなってたけど、魔法砲撃になるとシンプルに威力が増強か……?


「……ダイクさん、質問いいか?」

「ちょっと困惑中だけど、良いぜ。ケイさん、どんな内容の質問だ?」

「今の、攻勢付与で魔法砲撃のアクアインパクトで良いんだよな? 変化があったのは威力だけ?」

「あー、そういや見た目自体は変化は無かったな。だからこそびっくりしたんだけどな」

「なるほど、見た目の変化がないのはアクアボムと一緒な訳か」

「……ケイさん、もしかしてアクアボムでも同じような事があったとかか?」

「ついさっきなー。ダイクさんとレナさん程では無かったけど……」


 ちょっと予想外にダイクさんがレナさんを吹っ飛ばしてきたけども、どうやら2人にとっても予想外の結果みたいである。まぁ、流石にこの強化はちょっと想像を超えるよね。


「うわ、マジかー! だから先にLvが低い方から試そうって言ったじゃんか、レナさん!」

「あー、そこでわたしに責任転嫁してくるんだ、ダイクはー!? 最終的には納得してたじゃん!」

「ぐっ、それはそうだけど……」

「ちょっと吹っ飛んだけど、別に被害もないから問題なし! ……まぁまだ朦朧中だけどー」


 聞いている感じでは一番強力な組み合わせを真っ先に試した様子だね。……Lvの低い方から順番にやってれば多少は心構えも出来たかもしれないけど、いきなりあれは流石に驚くか。


「あー、とりあえずLv4の爆発魔法の報告を上げとくぞ。レナさん、ダイクさん、良いタイミングではあるし、衝撃魔法の方の報告も俺の方でまとめて上げとこうか?」

「あ、それなら報告はアルマースさんに任せよっか。ダイク、それでいい?」

「まとめて報告してくれるなら、それはありがたいな。頼むわ、アルマースさん」

「おうよっと。あ、ちゃんと2人の検証分って事は報告しとくからな」

「お任せしますさー!」

「サンキュー、アルマースさん!」


 とりあえず検証の追加報告は、レナさんとダイクさんの分を含めてアルがしてくれるようである。まぁ偶然近くにいたという事もあるし、まとめて報告できるのならその方が良いだろう。ベスタ的にも情報の整理はしやすいだろうしさ。


「あ、朦朧が治ったね」

「さーて、レナさん、ここからどうするよ?」

「んー、どうしよっか? どうも爆発魔法はケイさん達が終わらせたみたいだしねー」

「それならさっきケイが言ってたのをダイクさんとしてみたら良いんじゃないかな?」

「あ、それはいいかもね」

「お、確かにその手があった!」


 さっきチラッとダイクさんがいれば出来るかもしれないと考えてたとこではあるし、良いタイミングで来ているのは間違いない。よし、そうとなれば協力要請だね。


「……ケイさん、どういう事だ?」

「割と単純な内容ではあるんだけど、付与魔法をかけた状態で複合魔法を発動出来ないかって疑問が出てきてさ?」

「え、そんな事出来るのか? あ、どっちかが複合魔法を発動で、どっちかが付与魔法をかけるって感じで2人でやるのか!」

「そそ、そういう事。同じ水属性同士の必要はあるだろうから、アクアウォール辺りが狙い目かと思うんだけど……」

「そういや、無い訳じゃないけど防壁魔法での複合魔法以外じゃ同属性での発動って少なかったっけ……。よし、それをやってみようじゃねぇか!」

「お、そうこなくっちゃな!」


 そうと決まれば、実際にやってみるまでだな。防壁魔法の複合魔法は同属性でしか発動しないという特徴もあるから、そこに何か意味がありそうな気もするんだよな。


「それじゃ俺が守勢付与をかけるから、ケイさんが複合魔法を発動してくれ」

「ダイクさん、ちょっと待った! PTを忘れてる!」

「あ、そういやそうか! ……人数的には1PTに出来るけど連結PTで試してみるか?」

「お、それもありだな。よし、連結PTでいくか」

「それならわたしがPTリーダーだから、申請はわたしによろしくねー!」

「レナさんの方か。ほいよ、PT連結申請」

「承諾です!」


<レナ様のPTと連結しました>


 ただの偶然ではあるけども連結PTにする事も出来たね。多分変化があるとすればPTの人数よりは連結PTであるかどうかだろうから、これで検証としては大丈夫なはず。


「準備完了したし、やるか、ダイクさん!」

「おう、んじゃ行くぜ! 『アクアエンチャント』!」


 ダイクさんが俺に向けて守勢付与の付与魔法をかけてくれて、周囲に水球が3つ漂っている。ふむふむ、連結PTでも問題なく付与は可能か。そして付与された水球は周囲を漂って移動をしているものの視界の邪魔にはならないように位置調整はされているんだね。

 さてと、それじゃ最後の検証をしていきますか! あ、最後じゃないや。魔法砲撃の守勢付与の防壁魔法がまだ残ってた。……まぁそれは後でやるとして、今は複合魔法化が可能かどうかの検証をしていくのが先だね。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』は並列発動の待機になります> 行動値 60/70(上限値使用:3): 魔力値 179/206

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値10と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』は並列発動の待機になります> 行動値 50/70(上限値使用:3): 魔力値 164/206

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 えーと、これで守勢付与の効果はどうなっている? ……あ、3つの漂っていた水球が消滅して片方に付与されたみたいだけど、もう片方は付与されてないか。あとはこれを重ねて発動して……ってあれ? 同じ位置に指定が出来ない……? ……複合魔法に出来る時はこれでいけるんだけど、それが駄目という事は複合魔法化は無理か。

 まぁ、思った通りになるばかりにはならない時もあるよね。これはこれで成果ではあるから無駄ではなかったけども。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る