第540話 不具合の報告
ロブスターで同調共有に移動操作制御Ⅰと半自動制御を登録し終えたので、コケにログインし直すためにログイン場面へと戻ってきた。……まぁその前にいったんに報告すべき事があるな。
「いったん、ちょっと不具合っぽい報告があるんだけど」
「あ、ほんと? それじゃ真面目モードで対応します。分かる範囲で構わないので、内容を教えてください」
「ほいよっと」
てか、真面目モードとかあるんだな。あー、この前の青の群集の問題連中に関する内容で、掲示板ではそんな風になってたっけ。なるほど、大真面目な話についてはこういう風に変わるのか。
「あー、分かる範囲でいいんだな。スキル絡みの不具合っぽいんだけど、『半自動制御』ってログイン中の仕様だと再使用時間ってどの枠を使っても共通で時間が過ぎるまで再使用不可だよな?」
「現状の仕様ではそうなります。それでどのような風に不具合がありましたか?」
「えっと、再使用時間が確実に経っていないタイミングで別の枠の発動が出来たんだよ。これ、支配進化というか同調だと仕様が変わる内容かどうか少し悩んだんだけど……」
「そちらにつきましては支配進化で仕様が変わるという事はないですね」
あ、やっぱり仕様が変わるって訳ではないんだな。……それにしても、このいったんの真面目モードは少し調子が狂うね。まぁ不具合報告とかになると、普段の調子という訳にもいかないんだろうけどさ。
「その現象が起こった時の時刻は分かりますか? ある程度、大雑把でも構いませんので」
「えーと、ちょっと待って。それは思い出す」
確か昨日の夜にイカと戦った時が確実に該当するはずだから、その辺の時刻だよな。えーと、確かあれは9時は過ぎてたと思うけど、10時はなってなかったはず。うん、確か時刻としてはそんなとこだ。
「昨日の夜の9時から10時の間の筈。えーと、場所も言ったほうがいい?」
「いえ、行動ログはありますので時間帯だけ分かれば大丈夫です。……ログのチェックを行いますので少々お待ち下さい」
「ほいよ」
なるほど、運営にはプレイヤーがどこで何をしていたかは分かるんだから、不具合の起きた時間帯さえ分かれば絞り込みは容易なのか。流石にリアルタイムで全てをチェックするというのは無理なんだろうけどね。
「確認は終了しました。確かに仕様外の挙動になっていますね」
「あ、やっぱりか」
「えぇ、こちらは不具合となります。この度は不具合のご報告をありがとうございました」
「いやいや、こっちも楽しませてもらってるからね。それでなんだけど、修正が入るまでは使用は控えた方がいい?」
「これからすぐに開発の方に報告を上げて修正していきますので、そうしてもらえると助かります」
「了解っと」
ま、これは当然の話だよな。不具合と知っておきながらそれを乱用すれば規約違反になりかねないし、修正が入るまでは半自動制御は使わないでおこう。……せっかくロブスターの方の半自動制御を使う事も考えたけど、この内容で注意や警告は受けたくないしね。
「はい、真面目モード終了〜。報告ありがとうね〜」
「……すげぇキャラの変わりっぷりだな、いったん」
「こういう時は真面目にやらないと舐められるからね〜」
「あー、そういう事もあるのか」
そりゃ対人相手でも無茶苦茶な事を言うやつもいるんだから、こういう冗談混じりで済ませてはいけない内容については大真面目に対応か。
「ちなみに修正ってどのくらいかかる?」
「うーん、原因次第ではあるけど早ければ1時間もあれば直るかな〜? でも原因次第ではあるから、明確な時間は告知出来ないね〜」
「あー、確かにそりゃそうか」
「修正が終わったら告知はするから、それまでお待ち下さい〜」
「ほいよっと」
さてと、これで一応は不具合の報告は完了っと。あ、いったんの胴体部分が書き変わっていってるね。内容としては『半自動制御において、再使用時間についての不具合が発見されました。大急ぎで修正を行いますので、修正が完了するまでは半自動制御の使用を極力控えるようにお願いします』となっている。
ふむ、報告を上げたばっかなのに動きが早いね。いくらなんでも人力でここまで早く動けるもんか?
「なぁ、いったん。不具合の告知、早くない?」
「あ、それはチョーチの担当だからね〜」
「あーなるほど、それなら納得」
チョーチは開発補佐の支援AIだもんな。いったんがプレイヤーから受け取った不具合の報告をチェックして、その情報をチョーチに送って実際に修正に入るという事なんだろう。まぁ運営の内情を知ってる訳じゃないから、これはただの推測だけどね。
「とりあえず報告は済ませたし、コケの方でログインをよろしく」
「はいはい〜。コケでログインだね〜」
そうして報告すべき事は報告し終えたので、再度ログインである。さて、サヤとヨッシさんはもうログインしたかな?
◇ ◇ ◇
改めてコケでログインし直して、再びミズキの森林へとやってきた。やっぱり今日は曇っているせいで暗めだな。夜目を使っておこうっと。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 72/72 → 71/71(上限値使用:1)
よし、視界は良好になった。周囲には……あれ、特に誰もいない? サヤやヨッシさんがまだログインしてない可能性はあるけども、アルが待っててくれないとは思えない。はっ、この状況はなんとなく覚えがあるぞ。これは上か!
「アル、発見!」
「おっと、思った以上に気付くのが早かったな」
「あはは、まぁ2度目だもんね」
「まぁな! って、サヤはいないのか?」
「私ならこっちかな」
「あー、単純に見えてなかっただけか」
予想通りに上空を飛んでいたアルのクジラの背中から、サヤが俺の方を覗き込むように乗り出してきた。ヨッシさんは普通に見える範囲を飛んでたからすぐに気付けただけか。
「とりあえず下に降りない?」
「ケイを驚かせるのは失敗したし、いつまでも上空にいても仕方ないかな」
「それもそうだな。『上限発動指示:登録2』!」
そうしてサヤは竜に乗り、アルはクジラを小型化させ、ヨッシさんは普通に飛んで降りてきた。てか、俺を驚かせる為に仕込みをしてたんかい! まぁ即座に気付いて見破ったから、俺の勝ちだけどね!
「で、ケイ? 不具合についてはどうだった?」
「あー、うん。普通に不具合だったから修正するって。それが終わるまでは使用は控えてくれってさ」
「なるほどな」
「ねぇ、何の話かな?」
「何か不具合を見つけたの?」
ありゃ? てっきり合流済みだったからアルが話してたと思ったけど、そうでもなかったっぽいね。
「アル、話してないのか?」
「あー、悪い。先に午前中の成果を聞いてたんだよ」
「……そういえばアルが聞いた後に伝える事があるって言ってたけど、そのことかな?」
「おう、そうだぜ。ま、その前にケイが戻ってきたけどな」
「ちょっとタイミングが悪かったって事なんだね?」
「聞いてる感じだとそうみたいだなー。とりあえず、それぞれの情報をまとめていくか。いいよな?」
「おう、良いぜ」
「確かにその方が良さそうかな」
「そだね。それに賛成」
「んじゃ、そういう事で!」
まずは行動していた時間のズレがあるから、その辺の情報を埋めとかないとね。みんなの同意を得られたので、まずは情報交換だな。
そうして少しの間は情報交換をしていった。アルに報告することも多いし、さっきの不具合とかも伝えておかないといけないからね。
「ケイはロブスターでも移動操作制御を取ったんだね。半自動制御も取ったけど、そっちは不具合の修正が終わるまでお預けかな?」
「ま、そういう事になるな」
「そういうサヤは、凝縮破壊Ⅰとチャージ系の断刀と爪刃双閃舞Lv3と盛り沢山だな」
「あはは、結構頑張ったかな!」
「みたいだな。んで、ヨッシさんは氷雪の操作が実用Lvになった訳か」
「うん、そうなるね。アルさんは昨日の夜のうちにLv16で簡略指示を使えるようになったんだね」
「まぁな。応用スキルと水の昇華をメインに大体の主力スキルは登録しといたぜ」
「って事は、色々と手段は増えそうだな」
枠数は結構限られているものの、やっぱり簡略指示を手に入れれば幅が大きく広がるのは間違いないね。俺はLv16になっても何もないだろうけど、この調子でハーレさんとヨッシさんもLv16にして簡略指示を手に入れたいところである。
「そういやヨッシさんももう少しでLv16?」
「あ、うん、そうだよ。でもそれはハーレが合流してからのつもり」
「ま、そうなるよな」
「あー、俺はちょっと先に上げ過ぎたか?」
「アルの場合は普段から1番時間のズレがあるから問題ないだろ。俺らだって夕方に戦闘してない訳じゃないしな」
「ケイの言う通り、そこは気にし過ぎなくていいかな」
「そだね。ハーレの場合はこの土日だけだけど、アルさんは日常的にだしね」
「……そう言われるとそうなるか。ま、合わせられる時は合わせるぜ」
「それでいいと思うぞー」
どうしてもアルとは時間がズレるから絶対に全員が揃った時以外の戦闘は無しとか出来ないしね。今日はハーレさんに合わせてスキルの強化を重点的にしてるけど、これはこれで重要ではあるからなー。
さて、夜にはレナさんとスクショ撮影の約束はあるものの、少しくらいはLv上げをする為の時間くらいは確保出来るかな? そこで俺も含めてヨッシさんとハーレさんのLvを16にするのがいいかもね。……そうなるとハーレさんが合流するまではLv上げは出来ないか。
「……そういやハーレさんが帰ってくるのって何時だ……?」
「え、ケイ、聞いてないのかな!?」
「一緒に住んでるのに!?」
「……あー、単純に聞き忘れ」
「何やってんだよ、ケイ……」
「……面目ない」
ハーレさんが今日と明日の2日間、近所のスーパーのイベントの短期アルバイトをするのは聞いたけど、今になってその時間を聞くのを忘れていた事に気がついたよ。……サヤとヨッシさんの反応からすると2人は知ってそうだよね。
「ハーレは17時にはアルバイトは終わりって言ってたかな」
「疲れてたら晩御飯を食べ終わるまではログインは控えるって言ってたよ。でも元気ならログインするって」
「……なるほど。それなら夜のどっかでLv上げをしたいとこだな」
「ま、その辺はレナさんとの約束の時間次第じゃないか?」
「そりゃそうだ。……そういや時間って決めてたっけ?」
「あ、それなら今調整中だってさっき連絡があったよ。9時くらいにしようかって言ってたから多分大丈夫って答えたけど、問題ないよね?」
「あー、ヨッシさんに連絡があったんだな。その時間なら問題ないから大丈夫だぞ」
「それなら良かったよ」
やっぱり2人はハーレさんの予定を知ってたのか。うーむ、聞き忘れてた俺も悪いけど、今は一緒にゲームをやっているんだし言ってくれれば良かったのにな。てか、父さんや母さんに聞いても済んだ話ではあるから、やっぱり俺の落ち度か……。
それと、ヨッシさんにレナさんから待ち合わせ時間に調整中の連絡ありか。うん、9時なら俺も問題ないし、ハーレさんも大丈夫だろう。ついさっきの連絡だったなら、サヤとアルも問題なしか。
「さてと、待ち合わせ時間も問題ないし、ケイがど忘れしてるのは割といつもの事だから良いとしてだ」
「アル、その言い方って地味に失礼じゃないか!?」
「……否定出来るなら、取り下げるが?」
「……否定出来ないのが悔しい!」
ぐぬぬ、不満はあれどもそれを否定出来るだけの材料がない以上はどうしようもないな。……ここは甘んじて受け取るとしよう。あまり言い訳をし過ぎても見苦しいし、それは流石にやりたくない。
「それでだ。それなりに時間がある訳だが、何をする?」
「俺は凝縮破壊Ⅰを狙う!」
「私は操作系スキルの練習をしたいかな?」
「うーん、私は電気の昇華って言いたいとこだけど、ウニのスキルを今の内に上げておくよ」
「なんだ、みんな上げたいスキルがあるのか」
「そういうアルはどうなんだ?」
「俺も凝縮破壊Ⅰを取っておきたいとこだな」
「それなら今日は夜までは徹底的にスキルの強化で良いんじゃないか?」
というか、Lv上げや探索はハーレさんがいる時にしたいからこそそれ以外に選択肢がないとも言う。まぁ、Lv上げも重要ではあるけどもスキルの強化も重要ではあるもんね。たまにはこういう日があっても良いだろう。
「私は賛成かな」
「私も!」
「俺もそれでいいぜ。まぁ平原に行ってフィールドボスを生み出して『風属性強化Ⅰ』を取りたい気もするが、それは全員が揃ってからで良いだろ」
「そういやアルも取りたいって言ってたもんな。んじゃ、夜にLvを上げる時にはそうするか」
「あ、それは良さそうだね」
「でも上手くLv20の成長体が見つかるかな?」
「まー、そりゃ運次第だろ。駄目なら駄目でも、急ぐわけじゃないから別にいいさ」
「だな。重要なのはヨッシさんとハーレさんのLv上げか」
「ま、そういう事だ」
アルの希望の平原でのフィールドボスの誕生に関しては、今日の内にLv16に上げてからなら明日の昼間に狙うというのもありだろう。ま、その辺に関してはハーレさんとも要相談ではあるけどね。
「そういや、フィールドボスの誕生なら湖でやりたいとこだな」
「あー、確かに『水属性強化Ⅰ』が手に入りそうではあるもんな」
「でも、今はネス湖って混雑してるんじゃないかな?」
「んー、どうだろね? 混雑し過ぎて効率が悪くなってるって話だったし、今なら意外と空いてるかも?」
確かに混雑していたというのは昨日の話だし、今は落ち着いている可能性は充分あるね。他に湖がある可能性もあるけど、今のところ他の湖の場所って知らないんだよな。それに行った事のない湖なら、ハーレさんがいない時に行くのは無しだ。
「あ、でもハーレがいないから、今の時点では却下じゃないかな? ハーレならあのアロワナとかコケボウズのスクショを撮りたいって言いそうだしね」
「あー、それは確実に言うだろうな。それじゃネス湖に関してはみんなで行けそうな時に行くってことで」
「それが無難なとこだな」
「うん、それがいいと思うよ」
「私も賛成かな」
みんなとしても全員が揃ってない時に行く気はないようである。ま、その辺は共通認識なので特に問題はないね。
さてと、それじゃ結構な時間はあるけども、今日は夕方までとことんスキル強化だね!
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