第539話 気付いた事
一旦昼飯で休憩という事でログアウトである。まぁその前にいつものいったんのいる場所にやってきた。えーと、今回の胴体部分は『ちょ!? 既にスクショの数が多過ぎるんだけど!?』となっている。……うん、事前審査とやらを頑張ってくれ、運営の人。
「お疲れ様〜。お昼かな〜?」
「そんなとこだな。ちょっとは余裕あるから、スクショの承諾は来てる?」
「多くはないけど来てるね〜。はい、どうぞ〜」
「ほいよっと」
いつものようにスクショの一覧を受け取って、チェックをしていく。数はそんなにないし、目新しいスクショも特にはなしだね。
来ているスクショは、昨日の夕方にダイクさんとのコンビ移動で吹っ飛んだ時のくらいか。うーん、特に欲しいのもないな。まぁほぼ灰の群集からなので、いつも通りの処理にしとけばいいか。
「いつも通り灰の群集だけ許可でよろしく」
「はいはい〜。それじゃそう処理しておくね〜」
さてと、ロブスター側で同調共有のスキル登録に移動操作制御を登録しておきたいけど、それは昼飯を食ってからでもいいかな?
<システムメッセージ:外部からの呼びかけがあります。接続しますか?>
ん? 今は家に晴香は居ないはずだけど、呼び掛けてきてるの母さんか? 普段はこんな事はないのに珍しい気もするけど、とりあえず外部に接続してっと。
『圭ちゃん、ちょっと来てもらっていい? トラブルがあってね?』
あ、母さんからの呼びかけか。ちょっと焦ったような声でトラブルがあったって言ってるけど、一体何があったんだろう?
「すまん、呼ばれてるからログアウトを頼む」
「はいはい、了解です〜」
そうしてとりあえずログアウトをしていった。うーん、母さんがこんな風にトラブルと言ってくるのは珍しいね。とにかく何があったのかを確認しないといけないな。
◇ ◇ ◇
そして現実へと戻ってから、すぐに1階へと降りていく。さて、トラブルって一体何事だ?
「母さん、何があった……って、そういう事か!」
「圭ちゃん、ごめんね。あれの処理をお願い出来る?」
「ほいよっと」
トラブルとは黒光りするあれが台所の床に転がっていた事のようである。どうやら殺虫剤を浴びせられて既にピクピクと動くだけでほぼ死にかけではあるけども、母さんもこれは苦手だから死骸の回収を俺に頼みたいようである。
既にほぼ仕留め済みの状態だったから、完全に仕留めてからゴミ箱行きである。よし、これで処理は完了っと。
「圭ちゃん、ありがとね」
「ま、これくらいはなんて事ないって」
「そう言ってもらえると助かるわ。それじゃお昼にしましょうか」
「そういや今日の昼飯って何?」
「そろそろ暑くなってきたから、ざるうどんとかき揚げにしてみたわよ」
「お、そりゃいいや」
そろそろ冷やしの麺類が特に美味しくなってくる時期だし、かき揚げ付きというのも嬉しいとこだね。まぁうどんが有名な地域ではあるからうどんの頻度は高いけども、俺としては素麺や蕎麦も好きである。冷やし中華とかいい時期だよね。
「食べ終わったら晴ちゃんの様子見がてら、晩御飯の買い出しに行ってくるけど、圭ちゃんは何かいる物ある? あるなら買ってくるけど」
「あ、そうなんだ。えーと、特には無かった――」
「圭ちゃん?」
ん? 無かったと言いかけたけども、何か買う物があったような気もする。あ、そうだ。そういや昨日晴香を川に沈めたお詫びでお高いアイスをデザートに奢るって約束してたんだった。うーん、これは自分で買いに行くべきか?
「あー、晴香とちょっとした約束でアイスを奢るって事になっててさ。でもアルバイトしてるとこに俺が顔を出すのも微妙じゃない?」
「……確かにそれもそうね。まぁ晴ちゃんとしてもその方が気楽だろうし、それくらいなら代わりに買ってくるわよ?」
「それじゃ母さん頼むよ。あのお高いアイスって事になってるから」
「あ、あれね。分かったわ」
そうして俺の携帯端末から母さんの携帯端末へと電子マネーを送信しておく。ま、今回は俺の奢りって事だから、母さんに出してもらうって訳にもいかないしね。
「それはそうと、今朝の父さんは結局どうなったのさ?」
「後ろ髪を引かれながら、仕事に行ったわよ。まぁ明日の休みには、絶対に晴ちゃんの様子を見に行こうとするでしょうね」
「……まぁ、あの様子だとそうだよな」
あの父さんの様子なら、明日の休みには確実に行くはずだろう。……あのままの様子だと晴香がバイト先で悪目立ちしそうだし、ちょっと対策を考えておいた方が良いかもね。
それにしても晴香の事になると父さんから父親の威厳とかがどっかに吹っ飛んでいくよなー。まぁ色々あって心配だってのは分かるけど、流石にあれはやり過ぎだろう。
てか、晴香ってああいう父さんの少し暴走気味な一面が少し似てるのかもね。まぁ親子なんだから似ている一面があってもおかしい事ではないけどね。
「それじゃ、食べましょうか」
「いただきます」
「はい、いただきます」
今日は母さんと2人で昼飯を食べていく。さてと、晴香への奢りのアイスも母さんが買ってきてくれる事になったし、俺は食べ終えたらゲームの続きをやっていこうじゃないか。
◇ ◇ ◇
そして昼飯を食べ終えたので、ゲームを再開だ。再びいったんのいるログイン場面へとやってきた。胴体部分の内容は変わっていないので、スルーでいいか。
さてと、今回は1回ロブスターでログインする必要があるので、そっちをやっていこうじゃないか。
「いったん、ロブスターでログインをよろしく」
「お、珍しいね〜? いや、この前も少しログインしてたからそうでもないのかな〜?」
「ま、スキルの登録をしにいくだけだけどな」
「まぁ進化構成的にはそうなるよね〜」
「そういう事だな」
万力鋏や大型化を同調共有のスキル登録をする時にもロブスターでログインしたもんな。まぁ基本的にはコケの方が本体として扱いやすいから、ロブスターでログインをメインにする気はないんだよね。
「そういやちょっと気になった事があるんだけど、聞いてもいい?」
「質問の内容によるね〜。何でもは答えられないしさ〜」
「ま、そりゃそうだ。ダメ元での質問なんだけど、各進化の人数の割合とかって教えてもらえたりする?」
「それは答えられない内容だね〜」
「あー、やっぱり駄目か」
単独進化、共生進化、融合進化、合成進化、支配進化の人数の割合が地味に知りたかったんだけど、流石に教えてもらえる情報ではなかったか。まぁダメ元で聞いてみただけだし、別にいいか。
「そんじゃ、改めてロブスターでよろしく」
「はいはい、了解です〜」
そうしていったんに見送られながら、まずはロブスターでログインしていく。まぁ、スキルの登録を済ませたらすぐにコケでログインし直すけどね。
◇ ◇ ◇
本日昼の部で、ゲームの中へとやってきた。場所は薪割りをしていたミズキの森林の湖の近くである。ま、ここなら成長体の敵がいない訳じゃないけど基本的に安全地帯ではあるので、混雑しやすい場所さえ避けてログアウトすれば問題はない。
どうやらゲーム内の今は曇っているようで、普段の夜の日よりもより暗い感じである。夜目を使おうかと思ったけど、ちょっと離れたところで野外炊事場の火の灯りも見えてるし、どうせすぐにログインし直すから別にいいか。
「お、ケイが1番乗りか」
「あ、アルはもうログインしてたんだな。てか、俺らがログアウトしてた場所を知ってたのか?」
「あー、さっきソラさんと会ってな。この辺でログアウトしたと聞いたぜ」
「なるほど、ソラさんか」
すぐ近くにクジラを小型化した状態のアルがいたようですぐに声をかけてきていた。俺らがログアウトした時に一緒にいたソラさんから場所を聞いていたなら、アルはログインしてくるのを待っててくれたって事か。
うーん、すぐにアルと合流が出来たのは良いんだけど、合流前にスキルの登録を済ませておきたかったな。
「ん? ケイがロブスターでログインって珍しいな?」
「あー、これは同調共有でのスキル登録をする為なんだよ。登録が終わったらコケに戻すよ」
「なるほど、そういう事か。それなら俺は待ってるからサクッと済ませてこいよ」
「もちろんそのつもり。って事で、しばらくお待ちを!」
「おうよ!」
アルはすんなりと俺の意図を汲み取ってくれてありがたい話である。まぁあんまり時間をかけても仕方ないので、手早く済ませてしまおうじゃないか。
<ケイ2ndの『同調共有』による共有スキルの登録を開始しますか?>
はい、登録開始っと。さてとロブスター側で取得した『移動操作制御Ⅰ』の登録は確定だけど、重複してる操作系スキルの登録も……って、『移動操作制御Ⅰ』は進化ポイントで取ったからその必要はないか。
結局のところ重複のスキルの登録は必要ないって事になるから、それはスルーでいいや。必要な分だけ登録していこう。
<ケイ2ndの共有スキルに登録しました。 21/45>
『移動操作制御Ⅰ』
よし、これで登録は完了。万力鋏と大型化は前に登録していたけど、Lvが上がって上限数も増えてまだまだ登録数は余裕があるね。えーと、他に登録し忘れているようなものは特にはないかな……?
でも何か忘れてるような、何かが引っかかるような気もしているんだよな。よし、ちょっとロブスターの所持スキルを改めて見返してみよう。もしかしたら何か見落としがあるかもしれない。
「おーい、ケイ? うんうん、唸ってどうしたよ?」
「あー、ちょっと何かを見落としてる気がしたんだけど、何かが微妙に思い当たらなくてさ」
「……ほう? そういや今、ロブスターの方で登録しようとしてるスキルって何だ?」
「あ、それはロブスター側で取った『移動操作制御Ⅰ』だな。同調相手のスキル登録出来るって事が分かって実用性ありって判断したから、午前中に取得したんだよ」
「あぁ、そういやそんな話をサヤから聞いたな。それにしてもそんな枠の増やし方があるとは……」
「ふっふっふ、これこそ支配進化の系統の特権だ!」
支配進化や同調で同じようにスキルを呼び出せるからこそ出来る話だもんね。そのままのスキルとして扱えない他の進化なら、不可能な事……って、ちょっと待った! え、今考えてて思ったけど、簡略指示を使えば共生進化でも使えるんじゃ……?
「……ケイ、今何を思いついた?」
「これ、もしかして簡略指示でも使えるんじゃね?」
「あー、言われてみればその可能性もあるのか。だけど、登録枠数がケイの同調よりも遥かに少ないから、それほど余裕はないかもしれんぞ」
「あ、そっか。そういう縛りも出てくるのか」
えーと確か、簡略指示での登録数はキャラLvの半分までだからそんなに余裕はないって事にもなるんだよな。今のアルはLv16になってるし、その場合は8枠まで。共生指示とか組み合わせても決して多いとは……って、アルがLv16になってますがな!?
「えーと、アルがLv16になってるって事は……?」
「おう、俺もサヤと同じで称号『共生を続けるモノ』と『簡略指示』は手に入れたぜ」
「おっしゃ、これで手札が増える! あ、そういやアルって共生指示で昇華魔法を発動した時の魔力値の消費の仕様って知ってたのか?」
「ん? まぁ知ってるが……あ、俺、もしかして伝え忘れてたか?」
「……そうなるな。なんだかんだでみんな、結構言い忘れってあるんだな」
「……そうみたいだな」
まぁ何もかもミスも皆無で完全な人がいる訳でもないし、この辺は仕方ないんだろうね。俺自身だって何度も言い忘れや書き忘れもあるんだから、そういう面で人を責める資格なんてものはないしさ。
「それにしてもその仕様で何か見落としてる事か……。要するに支配進化の系統なら、どっちのキャラのスキルもキャラの縛りもなく登録出来るって話だよな?」
「簡単にまとめるとそうなるか」
「あ、そうか! ケイ、見落としてる内容が分かったぞ!」
「え、マジで!?」
全然俺は思いつかなかったけども、アルが気付いたようである。これは相談してみて正解だったみたいだね。……って、あれ? 話をしながらロブスターのスキル一覧を見ていたら、登録していないスキルを発見。
これって、コケと重複するから候補から外したような……。いや、単にコケの方の枠が足りなかったから除外してただけっぽいな。
「アル、俺も今気付いたぞ」
「お、ケイも気付いたか」
「どうせなら、一緒に言ってみるか」
「おう、良いぜ」
「それじゃ、せーの!」
「「半自動制御!」」
「やっぱりか」
「よく考えたらこれだよな!」
おー、やっぱり思いっきり被ったし、どうやら考える事は同じだったようである。半自動制御について失念していたのは移動操作制御と同じ理由だろうね。
コケとロブスターで重複する同じスキルという事で、応用範囲のあるスキルだという視点がすっぽり抜け落ちていた。それに半自動制御については俺は魔法の連射で使っているけども、基本的には共生指示で呼び出す対象という役割があるからね。
「ま、気付いたからには試してみないとな」
「……またとんでもない手段が出てきそうで怖いんだが」
「ふっふっふ、既に思いついている手段はある!」
「……マジか」
半自動制御は再使用時間の秒数が設定されているから同じものの連発は……ってあれ? そういえばログイン時の仕様ってどれかの枠を使えば全枠一律で再使用時間を待たなきゃ使用不可になるんじゃなかったっけ?
昨日イカと戦った時に普通に連発出来てたような気もするんだけど、もしかして不具合かバグ? うーむ、気付いた以上はログインし直した時にでもいったんに報告を上げとくか。ただ単に支配進化だと仕様が違うという可能性もあるけど、その場合なら不具合ではないと言ってくれるだろう。
ま、それはそうとして今気付いた手段は半自動制御がコケとロブスターにそれぞれあって、スキルそのものが別枠になるはずだから、再使用時間には引っかからないはず。
<ケイ2ndの共有スキルに登録しました。 22/45>
『半自動制御Lv1』
という事で、コケからロブスターの半自動制御を呼び出せるように登録完了! ふっふっふ、これで魔法砲撃の45連発を両方のハサミから撃ち出す事も出来るはず!
「さてと、それじゃちょっとログインし直してくるわ」
「おうよ」
そうしてアルに声をかけてからコケへと切り替えだね。流石に不具合らしきものにここで気付くとは思わなかったけど、こういうのはちゃんと報告をしておかないといけないよな。
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