第538話 午前中の強化の結果


 しばらく薪割りを続けていき、もうすぐ昼時という時間になってきた。うん、成果としては『はさむLv5』『鋏切断Lv4』『鋏鋭断Lv4』となったので、そこそこ順調である。戦闘中よりもスキルを使いまくってる事もあって、上がるのが早いね。

 それにおまけで『魔力集中Lv3』と『自己強化Lv2』になったのもありがたい。大型化もLvが上がればもう少し効率も上がりそうだけど、まぁそこまで求めるのは欲張り過ぎだな。


 さてと、ミズキの森林にストックしてあった丸太の半分以上を薪にして、ちょっとやりすぎ感もあるけど、まぁ多い分には問題ないだろ。


「みんな、それで終わりにしよう!」

「うん、分かったかな。『強投擲』!」

「そろそろお昼時だし、頃合いだね。『双翼斬舞・風』!」

「はい、みんなお疲れ様」


 ヨッシさんが氷雪の操作で最後の薪を一番上に積み上げて完了だ。ヨッシさんの氷雪の操作って、追加生成の時にそれなりに大きな氷の粒も生成出来て、それを上手く利用して薪を跳ね飛ばしながら位置調節をしていたんだよな。大雑把な性質は吹雪を操る感じで強風の操作に近いところもあるけども、追加生成で氷が作れる性質が大きく違っている点か。

 さて、もう時間も時間なのでこれで切り上げだね。でもその前にみんなの成果も聞いておこうかな?


「まだ目標には届かなかったけど、俺は結構育ったぞ。みんなはどうだった?」

「私は大型砲撃と狙撃が手に入ったかな」

「お、マジか。って事は称号で『大きな物を投げるモノ』だっけか? あれも取得か」

「うん、そうなるかな」


 ほほう、サヤは丸太を投げてばっかだったからそれで称号取得になったか。何だかんだでサヤが投げて対応するという事もたまにあるから、これは予定外ではあっても良い感じかもしれないね。

 それにサヤは凝縮破壊Ⅰを……って、あれ? サヤって凝縮破壊Ⅰの取得状況ってどうなってたっけ? 最近はサヤは連撃の応用スキルの種類が増えて、そっちを使う事が多かったもんな……。


「あー、サヤ。今更って気もするんだけど、凝縮破壊Ⅰの取得ってどうなってる?」

「……え? そういえば言ってなかったかな!?」

「あ、そういえばそうだね」

「あー、サヤとヨッシさんの今の反応で大体予想がついた……。今日、俺が合流する前に取ったんだな?」

「……あはは、当たりかな?」

「完全に言い忘れてたね」


 どうやら2人とも完全に言い忘れていたようである。まぁ俺だって伝え忘れている時は結構あるし、こうして思い出して伝わったのなら問題もないか。誰にだってど忘れする事くらいあるもんさ。


「まー、俺も人の事は言えないしな。って、それならサヤって爪系のチャージの応用スキルが増えたりしたのか?」

「あ、うん、そうなるかな。爪系じゃなくて斬撃系の断刀だったけどね」

「なるほど、断刀か」


 断刀と言えば斬雨さんを連想するね。確かサヤが凝縮破壊Ⅰの取得の為に上げてたのは爪を使った単発スキルかな? でも既にその爪系の応用スキルである重硬爪撃は持っているから、斬撃の特性に寄った断刀が取得になったのか。

 もっと連鎖増強Ⅰや凝縮破壊Ⅰの取得時に得られるスキルの取得サンプルの情報が欲しいとこだけど、この感じだと元になったスキルの発展系を持っていなければその応用スキルを、既にポイントで取得していれば所持している特性に合わせたスキルが取得になる感じかな? ……よし、その辺の検証をしてる人もいるだろうから後でまとめに情報上げとこ。


「私は氷雪の操作は特にLvは上がりはしなかったね。でも、かなり使い方には慣れたかも」

「ヨッシは途中から雹を作りながら操作してたもんね。あれは凄かったかな!」

「あれは僕も良いものを見せてもらったよ。氷雪の操作は結構厄介そうだね」

「確かにあれは使い方次第で、かなり厄介な事になるな」

「うん、それは私もそう思うよ。……多分、連撃系の応用スキルを使う相手とは相性は最悪だね」

「あー、確かにそれは間違いない。だよな、サヤ?」

「……そうだね。あれはよっぽど上手く扱わないと、連撃の回数稼ぎに使いやすいかな」


 軽く見た限りでは氷雪の操作は広範囲に妨害的な使い方が出来るので、有用なのは間違いない。ただし、連撃系の応用スキル相手だと簡単に連撃数を稼がせる事にもなるんだよな。スキルとしての相性っていうのは間違いなく存在しているか。


「でも逆にチャージ系の応用スキルにとっては天敵じゃないかい?」

「うん、それはソラさんの言う通りだね。チャージ中に妨害するにはかなり有用かも」

「そういう意味でなら、昇華魔法潰しにも良いんじゃないか?」

「あ、それもありだね。確か、昨日の1戦で昇華魔法を発動中にダメージを受けたら解除されてたしさ」

「おや、そんな仕様になってるのかい? ……それは僕も気をつけないといけないね」

「まぁ、昇華魔法を使う身としては利点だけとは思えないよな……」


 なにせその弱点は俺ら自身にも当てはまる弱点だ。状況次第にはなるけども、みんなの手札もかなり増えてきたし昇華魔法の発動中は誰かに防御を任せるという事も考えていかないとね。

 まぁその辺の対策はアルとハーレさんが揃った時に相談するとして、とりあえず薪割りの報酬を貰って来よう。


 そんな風に考えているとライオンの肉食獣さんが、竈から離れて俺らの方に近付いてきた。俺らが薪割りを終えたのを確認してから来たようである。


「薪割りを止めたっぽいが、昼飯時だしそろそろ終了か?」

「お、肉食獣さんか。まぁ、そんなとこだな」

「それにしても、まぁ大量の薪にしたもんだな。ま、量的には問題ねぇ範囲だが、人数が増えてる分の報酬ついては俺はどう対応すりゃいいんだ?」

「それについては俺らの中で分配するって決めたから、薪の数だけ希望してた報酬をくれればいいぞ」

「そりゃこっちとしては助かるな。えーと、ケイさんが牛肉の干し肉で、ソラさんが干したレモンだったな。ふむ、この薪の量なら両方10個ずつってとこか」


 ほほう、これは結構な報酬かもしれないな。スキルの熟練度稼ぎが目的だったけども、結構な量の薪にはなったしね。プレイヤーが加工した回復アイテムは割合回復になってるし、これは儲けもんだな。


「え、乾物系ってまだそんなに量はないよね? そんなに良いの?」

「ま、あんだけ大量に薪があればな。つっても、その分だけしばらくは薪割り依頼は減らすぞ?」

「なんですと!? 昼からもやろうかと思ってたのに!?」

「いやいや、ケイさん。何事にも数の限度ってのがあるし、あれだけありゃ数日は困らねぇよ」

「……つまりやり過ぎた?」

「端的に言えばそうなるな。まぁ他のエリアでなら、薪割り依頼もしてるだろうぜ」

「あ、その手があったか」


 ここの需要は満たしてしまったけども、他のエリアならまだ薪を必要としている所がある訳だ。俺も灰のサファリ同盟から薪割り依頼があったのは見たし、そっちに行けばまだ強化はいける!

 昼からはアルが合流するし、ちゃんとどこのエリアからの依頼かを確認してから行くのもありだね。アルは拘束魔法のコイルルートではなく、根の操作や根縛を鍛えたいとも言っていたからその辺で丸太を運んで貰うのもありだろう。


「でも、肉食獣、薪割りって意外と人気じゃなかったかい?」

「あー、まぁ地味に激戦区ではあるな。斬撃系のスキルを鍛えたいって奴には人気だから、ケイさん達は割と運が良かったんだぜ?」

「え、マジで!?」

「おう、マジだぜ。破片が降ってきて、人が離れてなきゃ流石に無理だったしな。割と薪割りは早いもの勝ちなんだぜ」

「……そうだったのか」


 よく考えてみれば、報酬を貰いつつスキルの熟練度稼ぎが出来るんだし人気があるのも当然ではあるのか。軽く考えていたけども、破片が湖に落ちて来た事は相当運が良かったようである。

 そうなってくると、薪割り依頼が常時あるとは限らないんだな。……これはもしあったらっていう運任せになるか。


「……今更なんだけど、そういう事情なら私とヨッシが後から勝手に混じったのはまずかったのかな?」

「あー、それか。まぁ流石に何人も無尽蔵に増やして、報酬の内容の変更を後から要求されるとかなら問題だな。でもまぁ同じ共同体の2人くらいなら許容範囲だぜ」

「……許容範囲なだけで、あんまり褒められた事ではなかったんだね。サヤ、これからは気をつけよう?」

「……うん、確かにそうかな」

「あっはっは! ま、そういう感じで素直に受け入れてくれるならありがてぇな!」

「まぁ時折、とんでもないワガママを言うのもいるからねぇ……」

「あー、やっぱりそういう奴もいるんだな」


 灰の群集はそれほど問題はない方だとは思うけども、全くそういう事がないという訳でもないようだ。まぁあまりに酷いプレイヤーともなれば運営も動いてくれるみたいだし、そこまで大事にはならないんだろうけど……。


「昨日いた、報酬の釣り上げをしてきた奴はふっ飛ばしたしな!」

「あぁ、そういえばそんなのもいたね」

「「「……え?」」」

「ん? 不思議そうな声を揃えてどうしたよ?」

「あぁ、そういえばケイさん達に『モンスターズ・サバイバル』と『灰のサファリ同盟』の1番の違いを言い忘れていた気もするね。これはさっき説明した僕のミスだね」

「……言い忘れ? え、それじゃ生産特化だけじゃないのか?」

「あっはっは、なるほど、生産特化のみだと思ってた訳か! 俺ら『モンスターズ・サバイバル』は『灰のサファリ同盟』として集まってた中で生産特化でやっていたのとは別の系統の奴もいるんだよ。結構武闘派が揃ってんだぜ、俺達ってよ」

「……マジかー」

「ま、オオカミ組やリーダーやケイさん達の『グリーズ・リベルテ』には劣るけどな。ソラさんのとこの『飛翔連隊』にもか」


 どうやら生産中心の共同体とはいえ、それなりに強い人も揃っているという事である。灰のサファリ同盟は戦闘が苦手な人が多いという印象ではあったけども、あくまで多いだけであってそれが全てだった訳でもなかったという事か。

 それに初心者への支援もやってる訳だし、そこから強くなった人もいるんだろうね。そのまま灰のサファリ同盟に残ってる人もいるんだろうけど、サファリ系プレイヤーではなく生産と戦闘をメインにしたい人が別勢力として分かれたのがモンスターズ・サバイバルの実態なんだね。


「ま、『灰のサファリ同盟』もだが、俺ら『モンスターズ・サバイバル』についても今後ともよろしくな。基本的にはこのミズキの森林を中心に集まってるからよ」

「ほいよっと。俺らの方も何かあったらよろしく頼むわ」

「改めて、よろしくかな」

「時々、ここの設備を使わせてね?」

「おう、大歓迎だぜ、ヨッシさん」

「それで時間も時間だし、報酬を貰えないかい?」

「おっと、そうだったな。ほらよ。分配は自分達でやるんだったよな?」

「まぁね。とりあえず報酬、ありがとさん!」

「おう! それじゃ俺は焼きに戻るぜ!」


 そうして牛肉の干し肉と干したレモンを10個ずつ受け取っていく。どっちも聞いていた通り魔力値の回復アイテムで、効果は端数切り捨ての15%回復か。

 ふむ、これ1個を食べる事で今の俺の場合は30回復するんだな。これは結構良い回復量だね。まぁ割合回復だし魔力値の最大値が多ければ多いほど効果は高くなるから、場合によっては固定値回復の天然産のアイテムの方が良いかもしれないけどね。ま、この辺は使い分けだな。


「1人5個までとして、サヤとヨッシさんは干し肉と干したレモンのどっちがいい?」

「えっと、両方を少しずつってのは駄目かな?」

「別に僕は構わないけど、ヨッシさんはどうだい?」

「俺も別にいいけど、ヨッシさん次第だな」

「え、私次第なの? んー、確かに両方欲しいと言えば欲しいから、それでいいよ」

「やったかな! ヨッシ、干し肉を3個貰っても良いかな?」

「うん、いいよ。それじゃ私は干しレモン3個と、干し肉2個だね」


 特に報酬の分配に揉める事もなく、みんなに報酬アイテムが行き渡ったね。さてと、普段使いをする時にはアルのレモンを使うけども、これで割と危ない時に使える回復アイテムが手に入ったね。

 実際に使ってみないとはっきりとは言えないけども、乾物系なら果物に比べると戦闘中にでも食べやすいはず。……まだ数が少ないって話だし、安定して入手が可能になるまでは基本的には温存だね。


「あ、もう12時かな」

「それじゃ一旦解散だな。昼からどこで何をやるかはアルと合流してからでいいか?」

「うん、それでいいかな」

「私もそれでいいよ」

「僕は昼からは紅焔達と合流だからここまでだね」

「ま、ソラさんはそうなるか」


 ソラさんは臨時PTメンバーとして一緒に行動していたけども、昼からは自分の共同体のメンバーが揃うのならそっちに行くのは当然だよな。

 って、あれ? 今更ではあるけど、紅焔さんがここ数日は誰かしら都合が悪いとか言ってなかったっけ?


「あぁ、今日は紅焔が午前中の都合が悪かったんだよ。まぁ他のみんなもだったんだけどね」

「あー、そうなんだ。……てか、声に出てた?」

「出てたけど、そういう聞き方をするって事は自覚したのかい?」

「……まぁそうなるな」


 気をつけてはいるつもりなんだけど、やっぱり癖が抜けないか。癖を抜くのって難しいもんだよね……。

 それはともかくとして、紅焔さんの都合が悪かったの午前中だけだったのか。まぁ丸一日都合が悪いとは言ってなかった気はするね。


「ま、その辺はいいや。それじゃ午前中の部はこれで解散!」

「昼からも頑張ろうね」

「今度はアルも一緒にかな!」

「それじゃまたね、みんな」


 そうしてみんな、昼食を食べる為に一旦ログアウトである。アルもハーレさんも居ないからスキル強化だけにはなったけども、結構強化が出来たもんだね。

 さーて、昼飯はなんだろね? ま、それはログアウトすれば分かるか。

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