第535話 もう1つの移動操作制御


 薪割りで特訓とは言ったものの、手が足りてるから必要ないとか言われたらどうしよう……? いや、さっきチラッと灰のサファリ同盟の依頼募集の中に薪割りってあったのが見えた! ……ただ、流し見てたからどこのエリアの依頼かを確認してないんだよな……。

 まぁ駄目なら駄目で、薪を自分達で確保していても構わないか。うん、インベントリを圧迫はするけど枠自体はかなり増えてるから余裕自体はあるし、その方針で行こう。


 それはそうとして、考えていた1つの手段も移動中に試してみようかな。些細な移動中も無駄にはしないようにしないとね。……まぁ、今思い出したからここに来るまでの移動時間は無駄にしちゃったけども……。


「よし、ちょっとロブスターの方の操作を使ってみるか」

「え、なんでかな?」

「あ、ロブスターでの移動操作制御の取得だね?」

「ヨッシさん、正解!」

「あ、そんな事も言ってたっけ。でも、ロブスターでコケのスキルを登録出来るのかな?」

「……そういえば、そっちの確認がまだだった」

「それなら先にそっちが優先かな?」

「……だな」


 それは確かにサヤの言う通りである。コケとロブスターのそれぞれで同時に移動操作制御Ⅰを取ってしまおうという目論見ではあるけど、基本的に登録したいのはコケが持ってるスキルだもんな。

 基本的にはそもそも別のキャラのスキルは共生指示や簡略指示で呼び出すしかないから、不可能な仕様ではある。でも支配進化やその先の同調ではその辺の条件が異なってくるから、ワンチャンあるはず!


「移動するって言っといてなんだけど、ちょっと待ってもらってもいい?」

「別にいいけど、ケイは私の竜に乗っていかないかな? 移動の間に確認だけなら出来るよね」

「お、それは助かる」


 サヤの竜に乗せてもらってなら、移動中でもロブスターのスキルの登録が可能かどうかは確認できるしね。そういう事ならサヤの好意に甘えさせてもらおうっと。


「それじゃ乗りやすくしようかな。『上限発動指示:登録1』! あっ」

「『あっ』ってどうしたの、サヤ?」

「あはは、上限発動制御のLvが上がって枠が2枠に増えたかな?」

「お、登録枠が増えたのか」

「うん、そうなるね。でも、いまいち使いどころもなさそう。あ、そういえばヨッシのウニの上限発動制御はどうなってるのかな?」

「あ、それなら昨日の夕方には上がってたよ。特に意味もないから、そのまま気にしてなかったけどね」

「ヨッシさんも上がってたんかい!」


 いやまぁ基本的にいつもヨッシさんのウニの小型化で常用してるから気にしてもなかったけど、昨日の時点で上がってたのか。確かにヨッシさんのウニはほぼ戦力として使ってはいないもんな。うーん、いまいち現状では相性が良くないのは分かってるけど、少し勿体無い……。


「ヨッシさん、ウニは鍛えないのか……?」

「あ、それについては融合進化まで特に鍛える気はなかったんだけど、今朝ちょっと考え直したよ」

「ほう?」

「ケイと合流する前に相談してたんだよね」

「そうそう。それでね、簡略指示を手に入れたらウニは近接の防御用に使おうかなって決めたよ」

「あー、なるほど」


 ふむふむ、サヤがLv16になって簡略指示を手に入れて共生進化幅が広がったから、それに合わせて少し方針を調整したという事か。


「本当はLv16になって、みんなが揃った時に言うつもりだったんだけどね」

「……確かに今言っても仕方ない内容ではあるか」

「今はまだ氷雪の操作が先だしね」

「そりゃそうだ。これは失礼しましたー!」

「あはは、別に謝る必要はないって、ケイさん。今まで未成体になってから殆どウニに手を付けてなかったのは事実だしね」

「これからのヨッシのウニの強化に期待かな」

「だなー」


 ヨッシさん的には色々計画してたけども、まだ言う段階ではなかったってだけなんだな。まだ未成体のLvも折り返し入った所だし、成熟体への進化までにヨッシさんのウニがどう強化されるのか楽しみにしておこう。


「まぁ、とりあえず私のウニについては良いとして、移動しない?」

「あ、それもそうかな。ケイ、早く乗ってね?」

「話を脱線させて失礼しましたー。ほいっと」

「それじゃ出発かな!」

「「おー!」」


 とりあえずサヤの大型化した竜の頭の上に乗って移動開始である。あ、ヨッシさんもサヤのクマの前に乗ってるね。うん、サヤの竜の移動も便利になってきたもんだ。


 さてと移動は任せるって事になったし、コケの移動操作制御Ⅰにロブスターのスキルが登録出来るのかを試していこうっと。これが可能であれば、ロブスターで移動操作制御Ⅰの取得は確定だ。駄目なら取る意味も薄いから取らないけどね。


<『移動操作制御Ⅰ』を登録モードで発動します。なお行動値の消費はありません>


 よし、後で登録は水のカーペットには戻すけども確認の為に登録モードで移動操作制御を発動っと。さて、これでどうなるかな? まずはロブスターでも取ってたはずの水の操作で……って、あれ? 発動出来ないって、持ってたはずだよな……? うん、所持スキル一覧を見てもちゃんとある。って事は、登録は無理なのか……。

 いや、ちょっと待てよ。そういやコケと重複してた魔法や操作は同調共有の登録に入れてなかったような気も……。うーん、それだとロブスターにログインを切り替えて登録してくる必要があるし、試すだけなんだから別のスキルでもいいか。


<行動値1と魔力値4消費して『電気魔法Lv1:エレクトロクリエイト』を発動します> 行動値 71/72 : 魔力値 200/204

<行動値を4消費して『電気の操作Lv3』を発動します>  行動値 67/72


 おー、ロブスターの方で持ってた電気魔法と電気の操作は登録出来た! よし、どう考えても移動には向かない電気だし、光源としても非常に微妙ではあるけどそこは関係ないので別にいいや。さてと、ここからコケのスキルを追加して水のカーペットを混ぜる事は可能かな?

 ……あ、駄目だ。これだと次のスキルを発動する事が出来ないから登録手順を間違えた。一旦、登録終了でやり直し!


<移動に使用するスキルの登録を終了します>

登録内容:『電気魔法Lv1』・『電気の操作Lv3』

使用上限値:2


 さっきは手順を間違えたものの、とりあえずコケの移動操作制御にロブスターのスキルを組み込む事は成功だね。次は並列制御で同時に組み込めるかを確認しとかないとね。


<『移動操作制御Ⅰ』を登録モードで発動します。なお行動値の消費はありません>


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値1と魔力値4消費して『電気魔法Lv1:エレクトロクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 71/72 : 魔力値 200/204

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 69/72 : 魔力値 199/204

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 まずは操作する電気と水の生成の登録完了。そして次はそれぞれの操作の登録!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を4消費して『電気の操作Lv3』は並列発動の待機になります>  行動値 65/72

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を6消費して『水の操作Lv6』は並列発動の待機になります>  行動値 59/72

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、並列制御を使えばコケとロブスターのスキルを混ぜての登録も可能だね。これは俺にとっては大発見だぞ! うーん、今は割と進化ポイントもあるし、ロブスターで時間をかけて移動操作制御Ⅰを取るのも面倒になってきたな。

 よし、今回は進化ポイントで取るか! そうと決まれば、早速ポイント取得をやっていこう。使用するにはロブスターでログインして同調共有にスキル登録する必要はあるけど、取るだけならコケ側からでも出来るしね。おっと、その前に登録を終了にしとかないと。


<移動に使用するスキルの登録を終了します>

登録内容:『並列制御:エレクトロクリエイト・アクアクリエイト』・『並列制御:電気の操作Lv3・水の操作Lv6』

使用上限値:8


 無駄に上限使用量が多いから後で水のカーペットのみに戻さないといけないけど、先にサクッとロブスターの方で移動操作制御Ⅰを取っていこう。これは有用なのは確実だ。


 確かポイント取得が可能と聞いた覚えもあるし……お、あったあった。えーと、融合進化ポイント20、生存進化ポイント40って応用スキル並みのポイントだな。まぁ有用性を考えれば、こんなもんか。進化ポイントに余裕はあるし、サクッと取得完了! うん、他にも育てるスキルは沢山あるし、ここは時間短縮を優先で!


「ケイ、そろそろ着くけどまだかかりそうかな?」

「あー、とりあえず確認と取得は終わったから問題なし!」

「取得したって事は成功?」

「ばっちり狙い通りの事は出来そうだぞ。まぁ後でロブスターでログインして……って、何か騒がしくなったな?」


 何だかよく分からないけど、もうすぐ到着する湖の方から騒がしい声が聞こえてきている。湖で何かあったんだろうか?

 木々の上を飛んでるから湖の畔は見えてるんだけど、みんなが湖に向かって騒いでいる様子である。これは、湖の中に何かあったのか? そういやさっき微妙な水音が聞こえてた気もするな。特訓している人も多いから全然気にもしてなかったけど、これは湖の中に何かがあったか。


「一体何が原因かな?」

「……一応マップを見てみたけど、他の群集の人が紛れ込んでる訳ではなさそうだね」

「そうなると、成熟体が出たとかか?」

「かもしれないね。巻き込まれる可能性もあるかな?」

「あるだろうね。ケイさん、どうする?」

「ま、ここは行くしかないだろ。防御だけなら攻撃的な成熟体でも問題はないらしいから、巻き込まれそうなら俺がウォーターフォールかアップリフトで防ぐ」

「了解」

「分かったかな」

「それじゃ、突撃!」

「「おー!」」


 そうして警戒しつつ、湖の畔へと戻ってきた。ふむ、湖を覗き込んでる人や、何かを飲んでる人や、湖に飛び込んで行ってる人もいるね。ただ、騒がしいだけで緊迫感はそれほどないようである。


「……なんか思ってたのと様子が違うな」

「これって、みんなが湖に何かを探しに行ってる感じかな?」

「そだね。もしかしたら、黒い『進化記憶の結晶の破片』でも落ちたんじゃ?」

「あー、その可能性はありそうだけど……」

「でも、群集クエストのアナウンスは無かったかな?」

「あ、そういやそうだね……?」


 さっきの水音の直前にアナウンスがあったなら、その可能性は極めて高かったんだけどね。……そうでないとなると、これは一体何をやってるんだろうか?


「……ちょっと待って。ねぇ、サヤ、ケイさん、あの飛び散る黒い破片は群集って関係あるの?」

「「あっ!」」


 確かにあれは見つけた人の所属の群集の所にしか飛び散らないとも、同じ所属群集の人しか回収出来ないとも明言されてはいない。そもそも俺らが昨日見つけた黒い破片は、群集に全く関係ない場所で見つけた物だった。……ならば、他の群集が見つけて砕け散った破片は、群集は関係なく回収出来る?


「おや、ケイさん達じゃないか。早速聞きつけて来たのかい?」

「あ、ソラさんか。いや、俺らがここに居たのは偶々なんだけど、この状況って黒い破片が湖に落ちたのか?」

「え、知らなくて来たのかい?」

「まぁ、そうなるな。って、やっぱり黒い破片なのか。砕け散る前のを拾ったのは赤の群集か、青の群集?」

「灰の群集にアナウンスが無かったから、多分そうだろうね。僕は場所も場所だし無理に取りに行く気はないんだけど、ケイさん達はどうするんだい?」


 どうやらソラさんは回収に行くつもりは無いようである。まぁミズキの森林は徘徊している成熟体と、このエリアにいる未成体の水砲ザリガニ以外では成長体しか出てこないもんな。そういう意味で考えるなら、成長体の人に優先的に回した方が良いんだろうね。

 改めて事情を把握した上で周囲を見てみれば、潜って行こうとしているのは成長体の人っぽい感じだな。うん、明らかに慣れてる感じのバーベキューをしてた人達がフォローする感じで声をかけてるっぽいしね。湖を覗き込んでる人も、自分が探すんじゃなくて光源で湖の中を照らしているみたいだ。


「あー、サヤ、ヨッシさん、どうする?」

「ここは私達は無理に探さなくていいんじゃないかな?」

「うん、私もサヤに賛成」

「ま、そうなるよな」


 ここで俺らが成長体の人達を押しのけて自分達用に取りに行くには無粋だから、却下だよな。それにこの感じなら黒い破片の方はどんどん追加されていきそうだし、光る方のと違って複数入手も出来そうな予感がしてきた。

 黒い破片を探すなら、みんなが勢ぞろいして初期エリアから遠い場所を探索するのが良いだろう。よし、そういう事で今回は見送りだ。


「ちなみにソラさん、参考までに聞くけど湖に何個落ちたんだ? どうも1個にしては探し方が大掛かり過ぎる気がするんだけど」

「あぁ、それかい? 正確な個数は分からないけど、落ちた時の水音からすると4〜5個くらいは落ちたと思うよ?」

「思った以上に多かった!?」


 4〜5個もこんなに人が集まる場所のすぐ近くに落ちれば、そりゃこうなるわ。でもまぁ、これは良い情報ではある。場合によっては近くに数個、まとめて落ちている事もある訳だしね。


「ま、予定通りにスキルのLv上げだな」

「私達が手伝う程でもなさそうだし、そうなるかな?」

「もう充分なほど手伝いに動いている人もいるみたいだしね。それに、ケイさんとしてはちょうど良いんじゃない?」

「ん? ヨッシさん、それってどういう事?」

「ほら、今って薪割りをしてる人はいなさそうだよ?」

「あ、マジだ!」


 ヨッシさんに言われて薪割りをしていた人が居た所を見てみれば、そこには誰もいなかった。でもバーベキューで火の番をしている人は普通にいるので、これは俺にとって良いタイミングかもしれないな。


「ん? ケイさんは薪割りをするのかい?」

「まぁ、ロブスターのスキルの熟練度稼ぎを兼ねてな」

「サヤさんとヨッシさんもかい?」

「えっと、私とヨッシは別のスキルの強化かな」

「うん、そうなるね」

「そうなんだね。それなら、ケイさん。僕も一緒に薪割りを手伝ってもいいかい?」

「え、そりゃ別に良いけど、紅焔さん達は?」

「昼までは僕だけで、少し暇だったんだよ」

「あー、そういう事か。それなら一緒にやろうぜ」

「そう言ってくれると助かるよ。割った薪や、割る前の丸太の運搬は僕に任せておくれ」

「おう、ソラさん、よろしく頼む!」


 薪にする木の運搬はその場にいた誰かと出来ればいいかと思ってたけど、ソラさんがやってくれるのならばありがたい話だね。さてと、後はバーベキューをしている人達に薪割りをやっても良いか確認を取ってから、それで問題がなければ薪割りをしながらロブスターのスキルのLv上げをやっていこう!

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