第533話 威力の確認 後編
ひとまずの検証で爪刃双閃舞のLv3が相当な驚異になるという事は判明した。まぁ消費する行動値が劇的に増えるという側面もあるから一概に良い事だけではないけどね。さて今が9時半くらいだし、まだ時間はあるから、次の威力検証をやっていこう! まぁ、まずは相談してからだけど。
「とりあえずこれで確認は完了かな?」
「あー、サヤ、他にも試したいのがあるんだけどいいか?」
「私はいいけど、ヨッシもいいかな?」
「私もいいよ。それでケイさん、何を試すの?」
「まぁ単純に言えば、さっきのサヤの攻撃を俺が真っ向から凌げるかどうかの確認だな。ただし、次は魔力集中ありで。それが無理なら逃げの一択になるしさ」
「あ、確かにそれは必要そう」
「えっと、それなら私はケイに向かって全力で攻撃をすれば良いのかな?」
「ま、そうなるな。俺はいくつかパターンを変えて魔法で防ぐから、サヤは連撃に集中してくれ。流石に今駆け引きまで入れられると確認が厳しいしさ」
「うん、分かったかな」
ダメージこそ無いけど、魔法の破壊の基準は重要だもんな。ふー、味方の攻撃でも魔法については破壊出来るのはこういう時に役に立つね。流石にこの手の検証を他の群集に頼むわけにもいかないもんな。まぁ、その代わりと言っては駄目な気はするけど、戦闘時に味方に魔法を破壊されないようには気をつけなければいけないけど。
さて防御の確認だし、ここはLv5の防壁魔法からやってみるか。サヤには連撃のみでしてもらうけど、そのままじゃまず受けきれないから工夫は必須だね。
「サヤ、行動値は足りるか?」
「あ、うん、ぎりぎり足りるかな。でも再使用時間がまだ駄目だね」
「あー、そっちが駄目か」
ふむ、やっぱり連発は出来ないのも連撃系とチャージ系の応用スキルのデメリットではあるね。俺の方も少しは魔力値は回復してきているけど、ほぼ底は尽いている。流石に消耗が激しいか。……こればっかりは仕方ないから、回復と再使用時間を待つしかないな。
「あ、それなら昨日のうちに確認しておけば良かったんだけど、気になった事を確認してみてもいい?」
「それは良いけど、どんな内容?」
「えっと、アルさんと私でヘイル・ストームを発動したじゃない? あの時は気にしてなかったんだけど、後から考えたらアルさんの方の魔力値の消費ってどうなってたのかなって思ってさ」
「あ、そういやあれって共生指示からの発動か! あれ? そういやその場合の魔力値の消費ってどういう仕様!?」
言われて気付いたけども、確か共生指示で呼び出した魔法については魔力値は消費せずに再使用時間へ加算されるという仕様である。昇華魔法自体は普通に発動してたから、どこから魔力値が消費されたのかが謎ではある。
「くっ、知ってるはずのアルがなぜ今いない!?」
「使ったアルは確実に知ってるよね? ……昨日何も言わなかったって事は、元々どうなるのか知ってたのかな?」
「あ、それはありえそうだね」
「……ありそうだなー。よし、そこだけはまとめで確認しとくか。ヨッシさん、それでいい?」
「あ、うん。それならそれでもいいよ」
「それじゃそういう事で」
ヨッシさんのログインをウニに切り替えて共生指示でハチの氷の昇華を呼び出して、俺と何かの昇華魔法を試してみれば確認は出来る。でも、それは地味に面倒だし、俺の魔力値も完全に無くなるからね。……アルが今ログインしてれば即座に分かったんだけどな。
とりあえずアルがいないのは仕方ないし、アルが既に知っていた可能性があるなら手軽に済ませてもいいだろう。
という事でまとめをチェック。えーと、関連しそうな項目は昇華魔法か共生進化の辺りだろうけど……お、昇華魔法のとこにあったね。内容としては……ふむふむ、あー共生相手の魔力値分を全て使用して、その数値分×2の秒数を再使用時間に加算か。
俺のコケの魔力値204を基準に考えると408秒が加算……って約7分近くも加算されるんかい! いや、威力を考えれば当然といえば当然か。……それでも長めではあるし、確実にログインして使った方が再度の発動は早いな。
「使用魔力値の2倍の秒数を加算は便利とは言えないラインだな……」
「……確かにこれはそうかな」
「……そうだね。回復アイテムで魔力値も回復できないから、これは少し微妙そう」
「なんでもかんでも便利って訳でもないんだなー」
「でも、これなら簡略指示でなら普通に使えるんじゃないかな?」
「そっちだと消費魔力値はクジラの方になるんじゃない?」
「てか、そう書いてるな」
「あ、ホントかな」
アルのクジラの方は物理型だから魔力値は少ないだろうし、消費する魔力値が威力に影響する昇華魔法だと微妙なとこだよな。そういう側面から考えるなら全てのステータスの高い方を参照する支配進化の優位性は凄まじい。やっぱりアルは支配進化向きの育成状態になってるね。
そんな風に話しているうちに行動値も魔力値もある程度は回復してきた。よし、これなら検証を再開しても問題ないだろう。
「さてとヨッシさんの疑問も分かった事だし、再開しますか」
「そだね。まだしばらくかかりそうだし、私は私で隣でだけど氷雪の操作を鍛えておくね」
「うん、分かったかな。『魔力集中』『爪刃双閃舞』!」
「ほいよっと」
さーて、今度はサヤの強化した爪刃双閃舞Lv3にどこまで耐えられるのかの検証だ。俺が使える防御魔法は今のところ水と土の2種類。防御としての性質が大きく異なるから、両方で試してみるべきだろうね。
まずは水の防御魔法からやってみよう。こっちは衝撃を受け止めて勢いを殺す感じの防御方法だから、斬撃との相性はどんなもんだろね。
<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』を発動します> 行動値 56/70(上限値使用:2): 魔力値 37/204
さてと、魔法砲撃については今回はなしでいこう。とりあえず自分の前方に水の防壁を生成していってと。改めて2度目の爪刃双閃舞Lv3を見てみれば銀光の強弱の変化頻度は確実に上がっているね。
「それじゃ行くかな、ケイ!」
「おっしゃ、来い!」
そこからサヤの連撃が始まっていく。1撃目では水が斬撃の勢いを殺して思った程は耐久値は減っていなかった。それに続いて連撃が続いて行く度に、耐久値の減少幅がどんどんと増えていく。流石に防御用の魔法だけあって、魔力集中があってもアクアボールほど簡単に破壊されはしないようである。
でも、これは最後の連撃までは耐えきれそうにないぞ!? 6撃目までは耐えれただけマシなのかもしれないけど、思った以上に威力が高い。ここまで強化されるのか、連撃系の応用スキルって!
「あ、破壊出来たかな」
「くっ、まだだ!」
<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』を発動します> 行動値 51/70(上限値使用:2): 魔力値 17/204
今度は魔法砲撃ありで再度水の防壁の為に砲撃化して水弾をサヤに目掛けて撃ち出していく。……ん? 魔法砲撃で撃ち出して衝突して防壁が展開されたけど、衝突した一撃では展開されただけで耐久値に変化はない? これってまだ魔法が発動しきってないから破壊対象にならなかったのか? ほほう、これは良い事を見つけた気がするぞ。
「今度は魔法砲撃の効果ありかな!」
「そういう事! てか、意外と魔法砲撃で耐久値が上がってんな!?」
「見た目からだと分からないけど、そうなんだ?」
ふむふむ、これは魔法砲撃の強化効果を使って運用する方が良いのか? うーん、でも今回は検証の為に真っ正面から受け合ってるけど、実際の戦闘中には微妙かも……。それに連撃の後半になった威力では耐えきれる筈もなく破壊されてしまった。
ただ耐えるだけなら、魔法型の人なら複合魔法にすればぎりぎり凌げるって感じだろう。それ以外で対抗するなら工夫が必要になりそうではある。
一応思いついた反撃手段はあるにはあるけど、これは現状では実行不可能か……。んー、思った通りの手段にするには一手分だけ足りないな。並列制御のLv上がればワンチャンあるか……? まぁ反撃ではなく防御のみに絞ればなんとかいける? ……これは実際にやってみるしかないな。
「ふー、とりあえず威力としてはとんでもないってのは分かった」
「これは思った以上に強力かな!」
「みたいだね。ところでケイさん、対応策は思いついてたりする?」
「あー、全くない訳じゃないけど、現状じゃちょっと一手足りないな。……それでも一応は現状で出来る範囲のも思いついてはいるぞ」
「流石、ケイかな!」
「そりゃどうも。サヤ的には攻撃してみてどんな感じだ?」
「うーん、相手の動き次第かな? 単純な防御だけなら全然問題はないけど、警戒されて距離を取られると厄介かも……」
「……それもそうだよね。私だって拘束されてなければ、目印もあるんだしまず近付かないよ」
「うん、そこが問題かな」
「ま、当たり前と言えば当たり前の対応だよな」
わざわざ強力だと分かりきっている攻撃に突っ込んでいくより、可能であれば距離を取ってそもそも連撃を受けない方向性にする方が確実である。逆に言えば、この連撃を当てたい時は絶対に逃げられない状況を作るべきという事でもあるね。
「……ケイが思い付いた手段って試してもらっても良いかな?」
「んーまだ構想的に実行不可能だぞ? その片鱗だけで良いなら別に良いけどさ」
「それでも良いから見てみたいかな」
「うん、私もちょっと見てみたいかも」
「不完全だからあんまり期待はするなよー。ま、とりあえず回復してからだな」
「まぁそうなるかな?」
本当ならもう一手欲しいとこだけど、無いものは仕方ない。今あるものだけで構成して、サヤ相手にどの程度通用するものかを試してみないといけないだろう。
うーん、並列制御で同時発動数を1つ増やしたいとこではあるけど、流石に行動値が厳しくなるんだよなー。それに3つ同時発動だと、少し仕様が分からない部分もあるんだよね。複合魔法にしたくない場合にはどうしたら良いのかとか、その辺の問題がなぁ……。単純に重ねなきゃいいだけかな?
まぁ、実際に使ってみないことには分からないし、並列制御がLv2になった時に考えよ。うーん、スキル強化の種を並列制御に使うというのもありなんだけどね。
そしてサヤと俺の行動値と魔力値の回復を待っていく。その間にヨッシさんは氷雪の操作の特訓をしていて、目に見えて動きの精度が良くなってきていた。
「うん、まだLv2だけど何となくコツが分かったかも」
「え、ヨッシ、凄いかな!?」
「ケイさんとアルさんの操作を何度も見てた影響かな? これ、変に逆らうように操作しない方が扱いやすいんだね」
「おう、そうだぞ。だから、逆に操作系スキルって完全に停止させるのが難しいんだよ」
「そうみたいだね。サヤ、後でちょっとこの辺のコツを教えてあげるね」
「え、ホントかな!?」
「うん、ホント、ホント」
「それじゃ後でよろしくかな!」
割とオフライン版の時から躓いた事がない操作だから、サヤみたいに完全に苦手って人に教えるのは苦手だからなー。何となく最小限の操作で無駄に変な方向に操作をしないってのは分かってるんだけど、それを説明しろと言われるとね……。
「てか、サヤは竜の方で練習しといたらどうだ? 共生指示からなら行動値はいらないし、クマの回復を待つ間には丁度いいだろ」
「あ、確かにそうだね。サヤ、少しだけでもやっとく?」
「ただ待つのも勿体無いし、お願いしようかな? あ、でも電気の操作は登録してないかも……」
「あらま……。んー、それならどうしよっか……?」
あー、サヤは共生指示で呼び出す半自動制御の中には電気の操作の登録はしてなかったのか。簡略指示だとクマの行動値を使うから、行動値を回復させたい今は使えないんだよな。そうなると……。
「サヤ、今の共生指示で呼び出す登録って何になってるんだ?」
「えっと、電気魔法のLv1とLv2とLv3をそれぞれに登録してるかな」
「……それって、電気魔法Lv1と電気の操作を同じ半自動制御に入れとけばよかったんじゃね?」
「あっ!? 確かにそうかな!?」
「……サヤ、操作系スキルが苦手だからその辺りは適当に登録してたりしない?」
「……あはは、ヨッシ、何の事かな?」
「別に怒ってる訳じゃないから、顔を逸らさない」
「こりゃ、まずは苦手意識の克服からか」
「あはは……火の昇華を考えるなら、慣れる事は無視は出来ないよね。ヨッシ、お願いしてもいいかな」
「了解。まぁ今はとりあえず、魔法砲撃なしで生成魔法からやってみようか。簡単なイメージトレーニングからね。前に飛ばすようなイメージでやってみて」
「うん、分かったかな!」
それなりに竜で魔法を使う様になってきたとは思っていたけども、それはあくまで魔法スキルであって操作系スキルの方はほぼ手付かずだったって事か。まぁ無理強いするような事でもないんだけど、サヤにやる気が皆無という訳でもないみたいだしね。
それに本格的に火の昇華を得る事も検討しているみたいだし、ここは是非とも頑張ってもらいたいところ。電気は電気で鍛えるんだろうけど、火属性があるのも助かるのも確かだもんな。ヨッシさんも操作のコツを掴んだみたいだし、サヤへの操作系スキルを教えるのは任せようっと。
それからしばらくの間は、サヤが竜で電気を生成してそれが霧散していくという、パッと見では無意味としか思えない光景が続いていた。でもまぁ、サヤの場合は慣れるのが最重要だもんな。電気については天然産の調達が特に難しいし、まぁシンプルに電気を飛ばすみたいにイメージトレーニングが良いのかもね。まずは慣れろだな!
ヨッシさんはヨッシさんで氷雪の操作を特訓中だね。今はあえて効果時間を短縮する為に高速で吹雪を動かすようにしている。うん、何度か再発動していく度に少しずつだけど精度は上がっているから、Lv3になれば確実な戦力になりそうだ。
そうしている内に行動値も魔力値も全快した。それじゃサヤの電気魔法の特訓は一時中断して、目的の事をやっていこう。
「さてと、俺の方は回復は済んだけどサヤはいけるか?」
「私も全快かな」
「よし、それじゃやっていくか」
「分かったかな」
「これはちょっと見物だね」
ちょうど氷雪の操作が切れたヨッシさんはどうやら完全に見物をする事にしたようである。まぁヨッシさんも合間で回復を入れながらではあったけども、行動値をかなり使ってるはずだから回復も兼ねているんだろう。
さて、それじゃ俺の不完全ではあるけども思いつきでの防御方法と、サヤの強化した爪刃双閃舞Lv3での運用検証を開始だな!
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