第520話 次の強化の予定


 川底にいたLv20の小さなイカを倒して、探索を再開である。さてと、青の群集の森林を目指して川沿いに下っていきますかー!


「ケイさん、提案です!」

「ハーレさん、どした?」

「クラゲに乗って、川下りしたいです! ついでに移動操作制御と風の昇華狙いで鍛えたいです!」

「あー、まぁ確かにありっちゃありか。みんな、どうする?」


 ハーレさんのクラゲの強化という意味では悪い内容ではないし、明日と明後日は昼間にはいないもんな。まぁその場合は予定が少し変わって川の周辺のみの探索になってしまうけども、そのくらいの予定変更なら問題はない範囲か。別に探索範囲を割り当てられている訳じゃないし、その辺は俺らで好きに決めればいい。


「俺は別に構わねぇぞ。流石に今日中に群集クエストが終わるって事もないだろうから、焦らなくてもいいだろ」

「それはアルの言う通りかな。ハーレは明日と明後日の昼間はいないし、今はハーレの希望を優先で良いと思うよ」

「私も賛成。せっかくだから、川を中心に破片の方を探しながら移動にしようよ」

「わー! みんな、ありがとー!」

「よし、それじゃそうするか」


 ま、みんながそれで良いなら、問題ないかな。……それにしても、色々と誘惑を無視しないと隣接してない群集のエリアに行くのは大変なんだな。

 桜花さんもこんな感じで……あ、ランダムリスポーンしまくったって言ってたからもっと大変だったのかもしれないね。……逆に成長体の方が簡単に死にやすくて、ランダムリスポーンはしやすかったとも言えそうだ。


「やったー! それじゃちょっとクラゲに切り替えてくるねー!」

「ほいよ」


 そうして一度ハーレさんはクラゲに切り替える為にログアウトしていった。まぁクラゲを本格的に鍛えたいのなら、クラゲでログインし直すほうがやりやすいだろうしね。

 そういえば、ハーレさんって爆散投擲か貫通狙撃がLv2になったらLv3にするとか言ってたけど、あの辺はどうするんだろう? まぁ通常戦闘時に良く使うから並行してという形でもいけるのか。


「あ、そういやみんなはこれからの強化はどうすんの?」

「あー、俺はクジラで凝縮破壊Ⅰの予定だぜ」

「ほうほう、アルはクジラの強化か」

「狙いとしてはあれだな。さっきの一戦でケイがやってた感じを狙いたいとこだ」

「……へ? さっき、俺がやった戦法……?」


 アルのクジラと木で出来そうな、さっきの俺の戦法? 魔法砲撃による連撃攻撃はクジラは関係ないし……あ、なるほど、そういう事か。スキル構成こそまるで違う形にはなるけど、狙い自体は同じにはなりそうだな。


「根の操作で拘束してから、チャージした激突衝頭撃で攻撃か!」

「おう、大当たりだ。その為にはまず凝縮破壊Ⅰで威力を上げないといけないからな」

「アルさん、それなら樹木魔法のコイルルートの方が良いんじゃない?」

「いや、魔法に関しちゃケイとヨッシさんがいるからな。様子を見て樹木魔法の方も鍛えるが、まずは物理向けの拘束を鍛えとくつもりだ。場合によっては、養分吸収や根縛も上げてくぜ」

「あ、なるほど。アルさんは物理での拘束を優先するんだね」


 ふむふむ、確かに魔法での拘束は俺の方が向いているもんな。土の昇華になり使えるようになってから使用頻度が高い岩の生成による拘束は地味に便利だし。あれって魔法産の岩で魔法攻撃の判定になってるから地味に物理系の相手には強い感じだよね。その分、魔力集中や純粋な魔法では破壊されやすそうな気もするけども……。

 そういう意味では、アルが物理での拘束を充実させるというのはよさそうである。サヤやハーレさんからの攻撃も叩き込みやすくなるしね。さて、アルの次の強化方針は分かった。


「サヤはどうするんだ?」

「私は言ってたと思うけど、爪刃双閃舞か連閃がLv2になったらスキル強化の種でLv3に強化かな」

「ふむふむ、その次の予定はどうする? 多分だけど、爪刃双閃舞はそう時間はかからないだろ?」


 レナさんの重脚撃は既にLv2に上がっていたはずだし、サヤのよく使っている爪刃双閃舞のLvが上がるのはもうすぐな気はする。まぁそうなったらサヤの攻撃力が一気に上がりそうではあるよね。


「うん、多分もうすぐだとは思うよ。……その先はまだ考え中かな」

「あー、まだ決まってないのか」

「ただいまー! 何の話をしてるのー!?」

「お、戻ったか。ちょっと次の強化についての話をしてたんだよ」

「おー、そうなんだー! サヤは応用スキルをLv3にした後の次がまだ決まってないって言ってたよねー?」

「うん、まだ決まってないままかな」

「それならレナさんみたいにクマで昇華を狙ってみたらー!?」

「……うーん、昇華かぁ……。操作系は苦手なのが、迷うところかな……」

「それは特訓あるのみさー!」

「こら、ハーレ。無理強いはしないの! まだレナさんの推測が確定した訳じゃないんだから、苦手なのを狙うのは厳しいからね?」

「あぅ!? 確かにそれもそうだった!?」

「まぁ、条件が確定してから狙うならありだと思うけど、そうでないならちょっとハードルが高いよな」

「……あはは、ケイ、ヨッシ、フォローありがとかな。どう強化していくかは、もう少し考えてみるよ」

「焦る必要もないから、それでいいと思うぞ」

「私もそう思うよ」


 とりあえずサヤに関しては現時点では未決定で保留か。まぁ新たなスキルを得ずに、今あるスキルをひたすら鍛えていくというのもありだろう。スキルLvの上限がいくつまであるのか分からないけども、もう頭打ちという事もないはずだしね。


「ヨッシはどうするのー?」

「私はまずは氷雪の操作をLv3まで上げるのが先決かな。その後は電気の昇華狙いのつもりだよ」

「おー! 次は電気の昇華なんだねー!」

「ヨッシさんは電気の昇華狙いか。まぁ属性としてもそれが割と適切だよな」

「まぁね。ところで、今の状態だと私達のPTには火属性が微妙なんだよね」

「確かにそうだー!?」

「……そういやそうだな」

「つっても、火属性に相性が良いって誰って問題もあるよな」

「……確かにそれもそうかな」


 うーん、俺のコケはどう考えても火属性は持ってる水属性でマイナス補正がかかる。ロブスターで取るという手もあるにはあるけど、先に凝縮破壊Ⅰとか移動操作制御を取りたいから火はどうしても後回しだな。

 サヤ以外はもう次の強化方針は決めているみたいだし、その予定を変更させるのも悪いもんな。火属性に関しては、先送りかな。いざとなれば光の操作と閃光のコンボで火をつけて、炎の操作で使えばいいだろ。


「……ケイ、進化の輝石……あ、輝く石の方ね。あれを一度使って纏属進化をして付与したスキルって、後から取得してもLv3から使えるようになったよね?」

「あーうん、そういやそんな仕様だったはずだけど」

「あれって、もう既に持っててもLv3まで上がるのかな?」

「えーと、どうなんだ? アル、知ってるか?」

「それならLv3までの熟練度が入るらしいから、既に持ってても行けるはずだぞ」

「そうなんだ、アル、ありがとかな」

「あー、もしかしてサヤ、火の昇華を狙う気になったのか?」

「竜の方で狙ってみるのも良いのかなって、ちょっと考えてるとこかな。ちょっと良く考えてみるから、少し時間を頂戴」

「そういう事なら了解ですよっと」


 さっきはクマの方で考えてたけど、サヤの竜に火を追加というのもありではあるんだな。火の進化の輝石を手に入れるというのが前提にはなるけども、Lv3からならサヤとしても多少扱いやすいというのは電気魔法を同様の手段で使い始めた事から悪い判断でもない。


「で、そういうケイはどう強化していくのかな?」

「あー、俺はとりあえずアルと一緒で凝縮破壊Ⅰを狙うつもり。それと並行して、全然上げれてない光合成やコケの固有スキルや、ロブスターで移動操作制御と脱皮とかも鍛えてみようと思ってる」

「多いな、おい!?」

「ま、明日と明後日の昼間は探索も出来ないからなー。ちょっと色々試してみようかと」

「ケイさん、ご配慮ありがとうございます!」

「別に気にしなくて良いって」


 アルも明日の午前中はログイン出来ないって事だし、ハーレさんは夏休みの旅費の為のアルバイトでみんなは揃わないんだ。こういう時こそ、普段上げれていないスキルを鍛える時! まぁ光合成については明日は夜の日だから、明後日になるかもしれないけど。


 最優先は凝縮破壊Ⅰだけども、フーリエさんの使っていた物理型のコケのマリモっぽい形になっての移動方法って割と気になってはいたんだよな。確か『群体塊』ってスキルだったはず。

 あれが同調化の今の状況で有用に使えるかは未知数なんだけど、取得条件的には厳しくはないから取ってから実際に試してみればいい。


「サヤとヨッシさんも、明日の午前中はスキルの熟練度稼ぎしようぜ!」

「確かにその方が時間は有効活用が出来そうかな?」

「そだね。ケイさんは色々上げつつ、私は氷雪の操作を、サヤは爪刃双閃舞を鍛えるのが良さそう」

「ま、その辺はケイ達に任せるわ。とりあえず、そろそろ移動しようぜ。時間が勿体無い」

「あー、そうだったー!? 明日と明後日の昼間が出来ない分だけ、今のうちに頑張ります!」

「それじゃ川下りに出発だ!」

「「「「おー!」」」」


 ハーレさんのキャラの切り替え待ちの間の軽い雑談のつもりだったけど、思ったよりも本格的に今後の方針のすり合わせになってしまっていた。まぁそれ自体は重要な事ではあるんだけど、移動中にすれば良かったかもしれないね。今更言っても遅いけど。


「それじゃ私は川に浮かぶのさー! 『傘展開』! よいしょ」

「あ、クラゲを被るんじゃなくて、クラゲを船にしてその上に乗るのかな?」

「そうしてると一寸法師みたいだね。ハーレ、スクショ撮っても良い?」

「あ、俺も撮っていいか?」

「俺も撮らせてくれ」

「あ、私も良いかな?」

「みんな、わざわざ確認を取らなくて良いよー! その代わり後でスクショ頂戴ねー!」

「うん、分かってる」


 お椀型のクラゲを上下逆さまにして、傘展開で広げた傘の中にリスが乗っている光景である。まぁヨッシさんが一寸法師と評したのもよく分かるよ。わざわざ許可はいらないという事だし、1枚撮っておこうっと。

 この様子はスクショに撮っておきたい光景だし、今はクエスト的にもスクショは大事だもんね。それにみんなの位置も微妙に違うから、ちょっと違った構図にはなってそうである。


「それで、ハーレはそこからどうするの?」

「ふっふっふ、そしてこれはこうするのさー! 『並列制御』『ウィンドボム』『風の操作』!」


 そう言いながらハーレさんは手動制御で指向性を与えた風の爆発魔法を水面ギリギリの場所から、水面に向けて鋭角になるように撃ち出して、水面に当たった瞬間に爆発の指向性を操作して推進力へと変えていく。

 これは風の昇華と、風魔法と、照準を触手でつけることによって魔法砲撃の取得の3つを同時に狙うつもりか。うん、結構な勢いで進んでいるし、色々と同時に鍛えられて効率は良さそうだね。


「アル、とりあえずハーレさんが先に行ってるから追いかけよう」

「ま、そうなるよな」

「私は大型化の竜に慣れたいから、自分で行くね」

「ほいよ」

「それじゃ行くかな! 『上限発動指示:登録1』!」

「ねぇ、サヤ、使用量の多い大型化は簡略指示じゃなくて上限発動指示の方がやっぱり使い勝手はいい?」

「時間制限はあるけどその時間は長いし、そうなるかな。こっちなら行動値は使わないしね」

「やっぱりその辺は使い分けなんだね」


 大体の予想は出来てたけど、やっぱり大型化や小型化を共生進化の状態で使うには上限発動指示の方が利便性は高いんだな。この辺は共生進化のみのメリットか。

 新たな簡略指示という手段が出てきて、実感する事になった大きなメリットだな。大型化と小型化は行動値の半分を使用っていう高コストなスキルだもんね。


 そうしてサヤは竜にクマで跨って飛んでいき、俺はアルのクジラの頭の上に乗り、ヨッシさんはアルの木の枝に止まった状態で、川を下っていくハーレさんの隣を飛んでいく。

 ハーレさんがウィンドボムを発動した直後は勢いは増すけども、川の流れはゆったりとしているのでそれ程の速度ではないね。ハーレさんも川底を覗き込んで破片を探しているので、まったりとした探索兼川下りである。


「あ、そういやハーレさん、移動操作制御の取得はどうなってんの? 確か、前に取りたいって言ってたよな?」

「まだ取れてないよー! だから今回ので取れるように頑張るのさー!」

「あー、そっちも狙ってるのか」

「そだよー! ポイントでも取れるけど、今のやり方なら一緒に狙えるからねー!」

「ま、そりゃそうだ」


 同時に取得を狙っているのは3つではなく、4つだったっぽいね。それにしても移動操作制御はポイントでも取れたか。ふむ、色々と鍛える予定ではあるけどロブスターの操作系を鍛えて移動操作制御をねらいつつ、他も鍛えるのは厳しいからポイント取得にしとこうかな。

 まぁ今すぐに必要になるわけでもないから、他のスキルを色々鍛えてからにしようっと。ポイント取得ならいつでも出来るしね。


「それじゃ破片を探しつつ、本格的に川下りを開始だ! 時間内に行けるとこまで行って、時間切れになったら転移の種で再開出来るように登録って事で!」

「「「「おー!」」」」


 少し予定は変わったけども、楽しめればそれでいい。転移の種も手に入った事で、移動の自由度が広がったのもありがたい事だね。

 さて、現在時刻は10時10分を少し過ぎた頃。時間切れの11時までに1個くらい破片とか見つけられるといいね。


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