第492話 かまくら作り
雪山を滑り降りてたら空中にふっ飛ばされ、同時に近くにいた長ネギも吹っ飛んできて、その長ネギを捕獲しておく為にかまくらを作る事になった。……うん、整理してみたら謎過ぎる流れだね。
「レナさん、かまくらを作るのは良いけど、積み上げたのをくり抜くタイプと、ブロックで積み上げるタイプのどっちかな?」
「んー、時間があればどっちでもいいんだけど、時間短縮でくり抜くタイプでいこうー! という事でヨッシさん、氷の操作をお願いねー!」
「あ、やっぱり私なんだ?」
「ヨッシさんは氷属性だから当然だよねー! あとケイさんも!」
「へ? 俺も?」
「またまた惚けちゃってー! ケイさんの事だから、氷の操作も持ってるよね!?」
「俺は氷の操作は持ってないぞ?」
「ほぇ!? え、持ってなかったの!? あぅ!?」
なんか驚き過ぎて大袈裟に仰け反ったせいか、バランスを崩して雪の中に倒れていくレナさんだった。いや、確かに操作系は結構持ってるけど、全部を持ってる訳じゃないからね。ちょっと驚き過ぎじゃない?
「あははー。ごめん、ごめん。てっきり持ってるとばっか思ってたよー」
「俺だって何でも持ってる訳じゃないからな」
「とは言ってもケイは氷雪の操作は持ってたよな。そういやサヤもか」
「何で通常スキルをすっ飛ばして、応用スキルの方で持ってるのー!? あ、そういやまた荒らしてたとか聞いた気もするよ!」
「……あはは、前に雪山に来た時に荒らしたかな……?」
「まぁ、あの時に雪崩を起こしたもんな……」
「色々ツッコみたい! ツッコみたいけど、時間もないから今回は省略で!」
ツッコみを入れられても、いつもやってる事としか答えようもないんだけどね。荒らすモノの称号で応用スキルの取得とか、何個もあるし。まぁ天然産のものがなければ特訓すら出来ないので、全然育ってないのもあるけどね。
というか全面的に同類な気がするレナさんには言われたくはない。……よし、今回は気をつけて癖が出ないようにしてみたけどどうだ!?
「それじゃケイさんとサヤさん……あれ? サヤさんって確か操作系が苦手って話じゃなかった?」
「あ、うん。それはそうかな」
「それじゃ育ってもなさそうだし厳しそうだねー。よし、ケイさん!」
「……結局俺なのな?」
「もちろんですとも! 氷雪の操作でいいから大雑把に雪の塊を作ってくださいなー!」
「……まぁそれくらいなら何とかなるか」
よし、今回は見抜かれなかった! いいぞ、気をつければ見抜かれるのも大体防げるっぽいな。……何やってんだろうとも思うけど、この辺の癖は無くしていきたいところ。
さーて、それじゃサクッとかまくらを作っていきますか! そういやかまくらって作った事ないな。まぁ雪とか年に1度か2度くらい軽く積もる程度だし、半日もすれば解け切る地域じゃ作りようもないんだけど。
「はい! 私は何をすればいいですか!?」
「ハーレさんは……うん、長ネギを預かっといてもらおうかなー?」
「暗にやることが無いって言われた気がするー!?」
「……わたしもサヤさんもアルさんも、今の段階では特にする事はないんだけどねー?」
「確かに雪を積む段階なら、特にやる事はなさそうかな……?」
「あ、そうなんだ!? それなら了解です!」
そうして長ネギはハーレさんに受け渡されていき、暴れ出したのでハーレさんにブンブンと振り回されている。……うん、とりあえずHPは大丈夫そうだけど、ホントにこの長ネギをかまくらに閉じ込めておくって出来るんだろうか……?
「……なぁ、レナさん?」
「ん? ケイさん、どしたの?」
「かまくらでホントに捕獲出来るのか? どうにも無駄足になる気がしてるんだけど……」
「さぁ? 試した事がないから出来るかどうかは分かんないよ? それにさっきも言ったけど、別に駄目なら駄目でいいしねー。あ、無駄足になるのが嫌なら諦めて切り上げるのでもいいよ?」
「……無駄足上等での検証か。レナさんがそれでいいなら、そういう検証も大事ではあるよな」
「ここはアルの言う通りか。よし、無駄足上等! やるだけやってやろうじゃねぇか!」
「おー! ケイさんが思いっきりやる気になったー!?」
「それじゃケイ、氷雪の操作をお願いかな?」
「ほいよ!」
なんだかレナさんに流されてる感もあって無駄足になる可能性に躊躇いがあったけど、失敗もあって当然の検証だ! それにかまくらが作れる事そのものは確定しているみたいだし、作り方を覚えておいても損はないはず。まぁサヤが雪国の方に住んでるし、会話の節々で作り方を知ってる感じではあったけどね。
さてとそれではかまくら作りをやっていこうじゃないか。幸いな事に、現在地は平坦になっている所だし足場も問題はなさそうだ。それじゃ氷雪の操作をやっていこうー!
<行動値を20消費して『氷雪の操作Lv1』を発動します> 行動値 49/69(上限値使用:1)
地面に積もっている雪を支配下において、操作をしていく。うわっ、やっぱり前に操作した時と同じで局所的な吹雪に変わったか。くっ、これは水流の操作と同じ感覚で吹雪の向きを操作して……砂の操作とは逆で1ヶ所に固めるのが難しいな。
「あらま、思ったより苦戦してるねー? ……そだね、ケイさん。自分の上に渦巻くような感じで操作出来ない?」
「あー、それなら多分出来ると思う」
積もっていた雪を巻き上げてそれを1ヶ所に固めて盛り上げようとしてたから、操作の難度は上がっていたようである。だけど、ただの吹雪として扱うのであればそう難しくはなかった。……よし、俺の上部に渦巻くような吹雪の完成!
「お、見事に出来たねー! それじゃその状態で操作解除をよろしくー!」
「ほいよ! って、ちょっと待った!? それ、俺が生き埋めにならない!?」
「あ、気付かれた?」
「わざとかよ、レナさん!?」
「あはは、冗談だってば」
「……まぁ、これくらいは良いけどさ」
気付かなければそのまま本気で俺が生き埋めになっていた気もするけど、まぁそうなると流石に気付かなかった俺自身も間抜けにはなるか。……それはそうとして、これでやるなら吹雪の位置を変えて解除すればいいのかな。
「さて、ヨッシさんの出番だよー!」
「あ、ここで私の出番なんだね」
「そだよー! 氷の昇華で後からくり抜く部分を先に作っとくのさー!」
「あ、ゲームだからそういう手段が出来るのかな?」
「えーと、どゆこと?」
かまくらの作り方とか大雑把な想像しか出来ないからいまいち良くわからない。うーん、知ってる知識の範囲なら雪を盛り上げてから、その中をスコップとかでくり抜いているよな……?
「えっと、かまくらって作り方が2種類あってね。片方は雪を思いっきり積み上げて固めてから中を掘っていって空洞を作るのと、ブロック状にした雪をレンガみたいに組み上げいくみたいな感じの作り方になるかな」
「そうそう! それで今回は前者のをゲーム的にアレンジしたやり方だねー!」
「うん、聞いてた感じだとそうなるね。最終的に空洞になる部分を氷の昇華で生成したもので埋めておいて、その周りだけを固めていって、その後に生成した氷を消す感じでいいんだよね?」
「うん、まさしくその通り!」
あ、今の説明で何となく想像が出来た! つまり、くり抜く部分を氷の昇華で氷を生成して、型を作ってしまおうって事か。氷の昇華がなければ無理な話な気もするけど、今はヨッシさんが氷の昇華は持っている。……ん? いや型として使うなら強度さえあれば氷である必要はない……?
「とりあえず何となく分かった。……これ、岩の昇華でも同じ事が出来たりしない?」
「え、もちろん出来るよー! 灰のサファリ同盟でかまくら作る時は主にそっちだしね」
「あ、そうなんだ。え、だったら俺の岩の昇華でも良かったんじゃ……?」
「ふっふっふ、全く同じじゃ面白みもないからね!」
「……深い理由は特にないんだな」
「ま、別にいいんじゃねぇか? それで失敗って事でもないだろうよ」
「アルさんの意見に賛成さー! 何でも実験あるのみなのです!」
「……まぁ、いいか」
とりあえずそれで問題があるという訳でもないし、色々試してみるのも悪くはない。いつでも必要なスキルが揃っている訳でもないから、代替手段を探しておくのもありか。……それに、土と氷で2重に覆うとか、ちょっと使えそうな手段ではあるよね。
「それじゃこういう事で良いんだよね? 『アイスクリエイト』『氷の操作』!」
そしてヨッシさんが氷の塊を作り出していく。ふむふむ、サヤがどうにか入れそうなくらいの氷の塊だね。アルが入るのは無理っぽいな。
「……あ、氷の塊だとこれくらいが最大サイズなんだ」
「え、そうなのか? 他のに比べると生成量が少なくない?」
「うん、少ないと思う。でも多分だけど、冷気や雪ならもっと大規模に生成は出来そう? 試してみないと分からないけどね」
「あー、あくまで氷の塊はここまでが限界って事か」
氷の昇華によって生成出来るのが氷と冷気と雪って話だったっけ。追加生成の効果が出るのは応用スキルの方だしなー。あ、あと魔法砲撃を使った場合か。
ふむ、やっぱり氷塊の操作とかありそうな気がする。……その辺の確認は後でやっておこう。もしかしたらヨッシさんならポイントでの取得に出ているかもしれないしね。
「それじゃケイさん、氷雪の操作を解除しちゃってくださいな!」
「ほいよ」
レナさんの指示に従って、吹雪の位置をヨッシさんの生成した氷の塊の上に移動させてっと。そこからちょっと細長い感じに吹雪を変化させから、操作解除! お、見事に氷の塊が埋まっていった。
なんだかんだで氷雪の操作で扱える雪の量って多いんだな。流石は応用スキルという事だけはあるね。
「はっ!? 絶好のスクショのチャンス!」
「あはは、確かにこれはねー! さて、長ネギはハーレさんに任せてわたし達は雪を叩いて固めていくよー! あ、スキルは強力過ぎるから使用は控えてねー」
「ほいよっと。足場を作って、側面を固めていくか」
「よし、それじゃ俺は上側をやるか」
「私も側面かな?」
「それじゃ上はアルさんに任せて、わたし達は側面を固めていこうー!」
「「「おー!」」」
ヨッシさんは型となる氷の塊の維持が必要だし、ハーレさんは閉じ込める長ネギを預かってるからね。ここは他のみんなで手分けをしていくのが良いのだろう。
何となく型を岩で作って、氷の昇華で固めていく方が効率が良さそうな気もするけど、ここまでやってそれを言うのも無粋だな。それに効率だけを求めるより、こうやってワイワイやりながらの方が楽しいだろうしね。
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 68/69(上限値使用:1): 魔力値 197/200
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します> 行動値 65/69(上限値使用:1)
とりあえず叩いて雪を固めるにしても高さの問題があるので、石の足場を生成。ロブスターの脚を生成した石に埋まる感じにしたので、安定感は抜群だ。こうやって使ってみると土の昇華は汎用性が非常に高いね。
でもまぁあんまり規模を大きくし過ぎると視界が悪くなるので、基本的に透き通っている水のカーペットの方が利便性は高そうかな。ま、この辺はケースバイケースで使い分けていこうっと。
そうしてしばらくの間、手分けをして雪を固めていく。……流石に氷雪の操作で上から吹雪を落としただけではムラもあったので、地面にある雪を追加していく必要はあったけどその辺はサヤが対応してくれていた。手慣れた様子ではあったから、サヤは実際にかまくらを作った事があるんだろう。
途中で危うく入り口になる場所まで埋めてしまうところだったけども、それにも気付いてくれたしね。最終的には長ネギを閉じ込めるとはいえ、入り口は開いてないと中に入れれないし。
「よし、これくらいでいいでしょー! ヨッシさん、氷の操作の解除してもいいよー!」
「あ、間に合ったんだね。……そろそろ操作時間が危なかったんだよ」
「おー!? ぎりぎりだったんだー!?」
「お、氷が消えてかまくらっぽくなってきたな」
「うん、これで完成かな!」
「おっしゃ、完成だ!」
かまくら作りに結構時間がかかったような気もするけど、時間を見てみれば11時目前というところである。あ、氷結草茶の効果時間切れはぎりぎりってとこだった。危ない、危ない。
もうすぐいつものログアウト時間だけど、長時間の予定ではないし、ちょっとくらいなら中立地点の見学は出来るよね? 最低でも転移の実の登録だけは済ませておきたいし。
「それじゃハーレさん、長ネギを中に放り込んでねー!」
「はーい!」
そうして目的通りに、ハーレさんが完成したかまくらの中に長ネギを放り込んでいく。お、何か慌てるように長ネギが挙動不審になっていった。うんうん、まぁこれから閉じ込められようとしているのだからそういう反応にはなるよね。……地味にこういう演出があるって事は、閉じ込めるという行為も想定内なんだろうな。
「あとは私が蓋をすれば良いんだよね。『氷の操作』!」
ヨッシさんが周囲の雪を操作して、押し固めるようにしながらかまくらの入り口を塞いでいった。……うん、これで完全に出口のないかまくらの中へと長ネギを閉じ込める事に成功したね。
あとはあの長ネギがこのかまくら破壊して脱出出来るのかどうかが問題だけど、それに関しては俺らは今日中に確認することはなさそうだ。ま、どういう結果になるかは明日以降にでもレナさんに聞けば良いだろう。
「さてとやる事はやったし、中立地点の見学に行きますか!」
「「「「おー!」」」」
「さーて、今はあそこには誰がいるかなー?」
あ、それも確かに気になるところではあるね。各群集のサファリ同盟を筆頭にそれ以外の共同体もいるみたいだもんな。知ってる人も知らない人もいるだろうから、ちょっと楽しみだね。さー、中立地点に向けて出発だー!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます