第487話 情報共有板へ


<『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』から『ハイルング高原』に移動しました>


 今は森林深部で特に見るべきものもないので、森の上を突っ切ってサクッと移動完了である。共闘イベントは終わったけど、ここのボス戦の周回はどうなったんだろうか?

 お、ちょっと見渡してみれば、蝶がとまった牛と戦っているPTがいるね。ふむふむ、ここは確かあれがボスだったはず。えーと、再戦の場合は黒の暴走種と瘴気強化種による支配進化じゃなくて、瘴気強化種同士の共生進化になってるんだったっけ。


「ボスについては継続して戦えるんだな」

「そうみたいだな。まぁ、ここのエリア限定のフィールドボスみたいなもんじゃねぇか?」

「あー、そうなるのか」


 そういやハイルング高原は調査クエストの対象エリアだったから、昨日検証したフィールドボスの発生は不可能なんだった。その代わりに固定した種類のボスがそのまま残ってるって訳か。この感じだと、ヒノノコやここみたいな固定のボスが瘴気石を集めやすい周回場所なんだろうね。


「よし、ここからはクジラに切り替えるから少し待っててくれ」

「ほいよっと。あ、ちょっとハイルング高原の移動中に情報収集しときたいんだけど、良いか?」

「……確かに最新情報も必要か。それじゃその辺は任せるぞ、ケイ」

「ほいよっと。サヤ達はどうする?」

「はい! 私は一緒に見に行きます!」

「アルが戻ってくるまではする事も微妙だし見てようかな? ヨッシとレナさんはどうする?」

「それなら私も見るよ。アルさんに乗って移動を始めたら私とサヤで周囲の警戒だね」

「うん、分かったかな」

「それならわたしも見に行こうかなー。周囲の警戒はわたしもやるよー?」

「あ、それならレナさんもお願いね」

「任せといて!」


 ふむふむ、とりあえずアルがクジラに切り替えてくるまでの間はレナさんも含めてみんなで情報収集だ。まぁそれほど時間はかからないだろうから、短時間にはなりそうだけどね。


「よし、それじゃサクッと切り替えてくるか」

「アル、いってらー」

「おうよ」


 という事で、一旦みんなはアルから降りていく。そして、クジラへとログインを切り替える為に一度ログアウトしていった。……うん、こういう光景を見るとやっぱり支配進化って便利なんだなって思うね。支配進化にデメリットがない訳じゃないけども、こうやってアルみたいに切り替えが多い場合だと切り替え不要のメリットは大きいよな。

 まぁ成熟体への進化はまだ結構かかりそうだし、今は気にし過ぎても仕方ないか。成熟体になるにはLv自体がまだまだ足りてないしね。


「よし、それじゃ情報収集をしていくぞ!」

「「「おー!」」」


 アルが戻ってくる少しの間ではあるけども、5人で情報収集である。もちろん情報収集場所については情報共有板である。さて、何か有用な情報はあるかな?


 マグロ   : 今回のイベント報酬、器が重要だとはなぁ……。

 タコ    : おう! タコ壺にちょうど良いぞ、これ!

 イノシシ  : ……なんか、進化先にそんなのありそうだな。合成進化の条件に出てたりしない?

 タコ    : なんとなくありそうな気はするけど、流石に出てないな?

 草花    : タコ壺ねぇ……。進化先にあったら面白そうだよね。

 木     : 今回の報酬の器は耐久値ありだからな。もしかすると耐久値の無い器が今後出てくる事があれば……。


 マグロ   : 進化用の合成アイテムが存在する可能性はありか。

 

 お、どうやら例の報酬の器の話の途中みたいだね。……ふむ、確かに進化用の合成アイテムっていうのは気になるところではあるけど、アイテムでの進化ってオフライン版には無かったんだよな。


 リス    : ねー! オフライン版でアイテムでの進化ってあったっけー!?

 イノシシ  : いや、厳密にはアイテムを直接使う事での進化は無かったぞ。

 サル    : だなー。でも、進化ルート次第では宝石のドラゴンとかは存在してたしな。

 コケ    : あー、そういや派生ルートでそんなのもあったっけ。

 サル    : ま、見た目重視であんまり強くはなかったけどな。

 川魚    : へぇ、オフライン版ってそんなのあったんだ?

 木     : 結構特殊な進化ルートだったけどなー。

 草花    : えーと、確か特に役にも立たない宝石を無駄に集めまくってたら派生ルートが出るんだったよね。


 タコ    : そうそう! オンライン版だと進化の輝石とかの合成進化用のアイテムもあるから、その辺ワンチャンあるんじゃね?


 リス    : その進化はやったことないかもー!?

 川魚    : オフライン版をやった事ある人でも知らないんだ?

 草花    : まぁ、見た目を派手にするだけの特に意味はない進化だったしねー。世界樹ルートほどの隠し要素ではなかったけど、あれはあれでやり込み要素でのやつだったもん。


 そうそう、そうなんだよな。宝石を取り込んだみたいな進化って、かなり無意味な行動をした上で発生する特殊な派生ルートだけど、それで特に強くなる訳でもなかったもんな。

 でも、オフライン版での世界樹ルートの繋がりで不動種が実装されてるみたいだし、オンライン版でも合成進化で宝石……いや、宝石に限らず他にもタコの人が言ってたみたいに壺とかの合成アイテムが出てくる可能性はありそうだ。


「ハーレ、あの進化はやった事なかったのかな?」

「うん、やったことないよー! 宝石とか使い道が分からなかったもん!」

「あはは、確かにあれは持ってるだけ邪魔だったもんね」

「オンライン版だと合成進化のアイテムとして実装もあるかもな。ぶっちゃけ、見た目だけでもやりたい人はいるだろ」

「はい! 私はやりたいです!」

「およ? ハーレさん、興味あり? ちょっと意外だねー?」

「ふっふっふ、レナさん! 私はアルさんの木を飾り付けたいのです!」

「あー、それいいね!」

「ハーレさんが自分にやるんじゃないんかい!」


 まさかのアルの木の飾り付けが目的であった。……うん、全く無意味な気もするけど、オンラインゲームという事を考えれば個性を出すアイテムとしてはありなのか……?


「……ちょっと気になったんだけど、機械とか金属とかもあり得るのかな?」

「あ、それはちょっと気になるね」

「……機械とか金属か。世界観的にそれってーー」


 いや待てよ? 世界観としては昨日までなら機械は無しとか思うんだろうけども、今日のイベントの終了演出で敵の正体が判明したんだよな。……機械人の来襲のイベントがあるとすれば、もしかすると報酬に機械との合成アイテムがある可能性も……?


「……機械人の存在が示唆された以上は、可能性がないとは言えない……か?」

「あー! もしかしてイベント報酬になる可能性があるの!?」

「……そうだね。確かにその可能性はあり得るかも……」

「確かにありそうではあるねー」

「だよね? もし金属があるなら、爪の金属化とかしてみたいかな」

「お、サヤ、それいいな!」


 勝手な想像でしかないけど、攻撃部位の金属化とか攻撃力が一気に上がりそうだ。機械化とかも出来るとすれば、ロブスターのハサミを機械製のものにするというのも面白そう。……まぁ現時点では単なる妄想でしかないけど、ちょっと今後のイベントの敵や報酬が早くも気になってきたよ。


 あ、そんな事を話してる間にアルが戻ってきた。……うん、何となく楽しみになりそうな推測は得られたけど、即座に有用な情報は何も得られてないな!?


「おう、戻ったぞ。なんか盛り上がってたか?」

「まぁな。でも、すぐに使えそうな有用な情報はまだ得られてないから、今の話なら移動しながらサヤとヨッシさんとレナさんから聞いてもらっていい?」

「あー、なるほど、盛り上がってはいても現時点で有用な情報じゃないんだな。そういう情報なら移動しながら聞くので良いか」

「という事で、サヤ、ヨッシさん、レナさん、説明任せた!」

「お任せあれー!」

「うん、分かったかな」

「了解。それじゃまずはアルさんに乗って出発だね」

「おう、任せとけ。って事で、みんな乗ってくれ」

「はーい!」


 元気の良いハーレさんの返事を聞きながら、みんながアルのクジラの背の上に登っていく。何度も登っているので、もうみんな慣れたもんだ。俺とサヤが木の根本、ハーレさんは巣、ヨッシさんは木の枝と、定位置に収まったね。

 レナさんは、アルのクジラの頭の上で仁王立ちか。まぁレナさんについて落下の心配はいらないだろう。仮に万が一落ちても自力で戻ってくる気しかしないし。


「よし、それじゃ行くぜ。『空中浮遊』『自己強化』『高速遊泳』『上限発動指示:登録1』『共生指示:登録1』『共生指示:登録2』!」


 そして浮かび上がるクジラの下に水を生成して舟みたいな形状に変化させ、生み出した水流の上に浮かべていく。ほうほう、ただの水のカーペットではなく舟型にする事で水流に乗りやすくする訳か。

 その状態でハイルング高原の上空へと水流を持ち上げていき、流れに乗っていく。……でもこれって……。


「……なぁ、アル?」

「……今俺も思ってるところだから言わなくていいぞ」

「ほいよっと」

「高速遊泳があったら要らねぇわ、水のカーペットというか舟!」


 うん、ですよねー。水流から浮いている状況になるから高速遊泳で水流を泳ぐ効果が発揮出来ずに、ほぼ無意味。これ、水の船とクジラの相対位置を合わせる為に無駄な労力を使うだけだな。

 そして一旦、移動操作制御の水をクジラの下部から離してアルのクジラが水流に着水する。お、高速遊泳の効果と水流の効果が合わさって加速を始めていく。


「きゃ!」

「ヨッシ!?」

「ヨッシ、大丈夫かな!?」

「……サヤ、ありがと」


 一気に加速を始めたアルの背中にいたヨッシさんが振り落とされかけたけれど、サヤがヨッシさんを受け止めていた。ふー、危ない危ない。


「アル、前方に防風用に水のカーペット!」

「失念してたが、そうなるよな! ヨッシさん、すまん!」

「サヤのおかげで落ちてないから大丈夫だよ。アルさん、制御は大丈夫?」

「あぁ、水流の操作がちとキツイがそれ以外は問題ねぇぜ」


 水流はアル自身が言うようにまだ制御が厳しいようで、たまに盛大に乱れる事はあるみたいだな。でもクジラで直接泳いでいる分だけ、そのフォローもしやすいようである。うん、これなら木の根っこにハサミで掴まっていれば問題ない範囲だね。

 水の舟は全くの無意味ではあったけど、防風用の水の防壁に変わったし良しとしよう。というか、アルも失念する事はあるんだな。


「とりあえず安定したみたいだし、移動は任せて情報収集に戻るけど、良い?」

「おう、ちょっとミスったけどその辺はすまんな。情報収集は任せたぞ」

「ま、誰だってミスはあるからお互い様って事で。それじゃハーレさん、行くぞ」

「はーい! サヤ、ヨッシ、レナさん、アルさんへさっきの事の説明と、敵の対処はお願いします!」

「うん、任せてかな!」

「任されましたよー!」

「ハーレも情報収集、お願いね!」

「はーい!」


 ハイルング高原を抜けて……そういや雪山って命名クエストが終わって名前がついてたはずだけど、名前なんだっけ……? いかん、掲示板でチラッと見ただけだから名前が思い出せない。……まぁ行けば分かるし、無理に思い出さなくてもいいか。

 さてと、移動と敵の対処は任せたし、俺とハーレさんで改めて情報共有板へ行ってみよう!


 オオカミ  : ふむ、確かに機械人というところから、合成進化用のアイテムとして機械があるかもしれないというのはあり得るな。……そうなると、鉱石やら宝石やら無機物を合成する進化も可能性としては存在しそうではあるか。


 タコ    : だよな! こうなってくるとちょっと宝石とか探してみたくなってきた!

 クジラ   : それっぽいものの発見情報って何かあったっけ?

 マグロ   : 今のところ特にはないが、それが逆に気になる。

 草花    : 確かにそうだねー。オフライン版で人化するまではほぼ意味なかった鉱石や宝石も、序盤で手に入れる事自体は出来てたもんね。それがオンライン版ではまだ見つかってないとなると……。


 サル    : まだ手に入れるべき段階ではないって事なんだろうな。……今回の群集クエストで探すべきものってこれか……?


 オオカミ  : それは決めつけるには早計な話ではあるが……探す目的物がまだない以上は候補としてはありかもしれんな。


 イノシシ  : とりあえずその方向性であちこち探してみるか。

 草花    : そだね。その途中で他に何かが見つかるかもしれないし、とにかく色々と探してみようー!


 リス    : はい! 質問良いですか!?

 オオカミ  : どうした、リスの人?

 リス    : そういう新しいアイテムが群集クエストが始まって初めて登場するという可能性はありますか!?


 オオカミ  : その可能性は充分過ぎるほどあるだろうな。お茶に使われたハーブも今日のメンテ明けから見つかったものだしな。


 草花    : ハーブに関してはそだねー。それに群集クエストの開始前に前兆はあっても、クリアに肝心なものは開始時点から出現した可能性はあるよね。


 まぁ、ある意味では当たり前な話である。群集クエストが始まる前に、クリア条件を満たしているとかになれば台無し感は結構あるもんな。っていうか、ハーブはメンテ明けから見つかったんだな。……そういやそれっぽい事をラックさんが言ってた気もするね。

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