第484話 あれが発覚……?


 とりあえずこれから雪山にヨッシさんの氷の昇華を取りに行くという事で、その為の下準備に桜花さんの桜の木まで移動しよう。あ、そういやザックさんと挨拶をしてからだな。ラックさんと灰のサファリ同盟については、絶賛反省会中だしね。


「よし、そろそろタケ達もログインして来る頃だし、俺はこの辺で!」

「あ、待ち合わせしてるのか」

「おう、そうだぜ。って言ってる間に、あいつらもこっちに来たのか」

「あ、ホントだ」


 そうやってザックさんと話している間に、イノシシのイッシーさんの上に乗ったタケさんと飛んでいる翡翠さんがやってきた。これはザックさんを迎えに来た感じかな? お、ちょっと翡翠さんとイッシーさんの見た目が変わってるね。


「……ザック、見つけた。 あ、ヨッシ達だ!」

「やっほー、翡翠さん。あれ、少し色が変わった?」

「……うん。氷属性を追加して、風と氷の2属性にした」

「あ、2属性になったんだね」

「ヨッシの色違いって感じになったねー!」

「……うん。でもヨッシも色が増えてない?」

「私は私で雷属性を増やしたからね」

「……むぅ。ヨッシはやっぱり凄い」


 ほうほう、翡翠さんは属性を増やしたんだな。雷属性を増やす前のヨッシさんの毒属性の模様の色が、翡翠さんの場合は緑色になってる感じになってるね。

 それでタケさんは前と変わらずキノコの生えたカニで、イッシーさんは……イノシシだけど鋭い角みたいなのが額から生えているから角を合成した感じかな。ザックさんは今更だけど、トリカブトのままで特に変化した様子はないか。


 やっぱり報酬で何を選ぶかというのは人それぞれになってくるんだね。うん、多様性があって良いんじゃないかな。


「おや、皆さん勢揃いのようですね」

「……そのようだな」

「ちょうどいいタイミングで迎えが来たな!」

「……ザック、待ち合わせ時間を忘れてない?」

「いやいや、こっちも色々あったんだよ! なぁ、ケイさん!」

「あー、翡翠さん、ザックさんには俺とアルの特訓を手伝ってもらってたんだよ。待ち合わせに遅れてたなら、俺らに原因もあるから謝る」


 実際はその後の灰のサファリ同盟の騒動に巻き込まれて身動きが取りにくくなってたってのもあるんだろうけど、そこまで言う必要もないだろう。


「……そう。それなら許すね」

「なにやら灰のサファリ同盟の方々が反省会を行っているのも非常に気になりますが、まぁわざとすっぽかしていた訳でもなさそうですしね」

「……そうだな」

「おう、みんな、あんがとよ!」


 とりあえずこれでザックさん達は一段落。ふー、色々とザックさんを巻き込んでたから、待ち合わせに遅刻させていたとなると悪い気がするからな……。あ、でも、ザックさんって特訓に付き合ってくれたけども、その後の騒動に巻き込まれた対象にはなってなかったんだから普通に移動出来てたような気も……?

 あれ、これってザックさんの遅刻のフォローをする必要性って実は薄かったんじゃ……? まぁ、過ぎた事だし別に良いか。


「んじゃ、今日の予定の共同体を作りに行くかー!」

「お、ザックさん達も共同体を作るんだな?」

「そうだぜ! ケイさん達は……ほう、『グリーズ・リベルテ』か。で、タケ、どういう意味なんだ?」

「……意味も分からず関心しないでくださいよ。グリーズが灰色、リベルテが自由という意味なので、灰の群集の自由な集団という意味合いでしょうかね?」

「お、タケさん正解!」

「……うん、私もその名前は良いと思う。……私達もちゃんと名前を考えないとね」

「……そうだな」

「私達はまだ名前が決まってませんしね」

「ま、ボチボチ考えようぜ! 別に急がなきゃならん訳でもないしな」

「……そうだね。それじゃ先にここで名前を決めていく?」

「翡翠さんに賛成ですね」

「……同じくだ。エンの前で悩みまくるというのもな……」

「イッシーさん、もしかして悩んでた人がいたのか?」


 エンの前で悩みまくっている人物っていうと、1人ほど思いっきり心当たりがあるんだよな。……それなりに時間は経ってるけど、もしかすると……。


「……いたぞ。あれは恐竜のプレイヤー集団だったか」

「……恐竜のプレイヤー集団かな? 紅焔さんじゃなかったんだね」

「みたいだな。てか、サヤも紅焔さんを連想してたのか」

「あ、うん。まぁ、あの時の様子を見てたからね」

「ん? 紅焔さん達なら、『飛翔連隊』って名前になってたぞ」

「あ、無事に決まったんだな。そりゃよかった」

「紅焔さんは随分ショックを受けてたもんね。決まったのなら良かったかな」


 予想とは違って、紅焔さん達は無事に共同体の名前が決まったみたいだね。それにしても恐竜集団っていうのもいるんだな。ふむ、やっぱり同じ系統の種族で共同体を作るという人達もそれなりにいるって事なんだろう。

 恐竜の共同体って、地味に迫力はありそうだよなー。ネス湖にいた首長竜みたいに大型化の進化も出来るみたいだし、何かの機会があればちょっと会ってみたい気はするね。


「ねぇねぇ、話し込むのも良いけど、みんな時間は大丈夫?」

「あ、そういやそうだった! ザックさん達、悪い。俺らこの後に行くとこあるんだよ」

「おっと、そういやさっきそんな話をしてたっけな! すまねぇな、足止めしちまって!」

「そういう事でしたか。それではこれ以上の雑談はまた今度、時間がある時にですね」

「……ヨッシ、サヤ、ハーレ、またね!」

「うん、翡翠さんもまたね」

「今度一緒に遊ぼうねー!」

「その時はよろしくかな!」

「……また会おう」

「おう、イッシーさんもまたな!」

「ま、そのうち一緒に動く事もあるだろうしな。その時はよろしくって事で!」

「おうよ! またな、ケイさん!」


 そんな風にザックさん達と挨拶をしていく。ふー、レナさんが言ってくれなければ、時間を無駄にするとこだった。

 さてとまだ時間には余裕があるから飛ばしていけば雪山までは充分辿り着けるはず。それに今日の報酬の獲得で転移の種は手に入ったからね。雪山まで今日中に行ってしまえば、そこで転移の種を使ってしまえばいい。


「それじゃ、桜花さんの桜のとこまでを行くぞー!」

「「「「「おー!」」」」」

「お、準備出来たか? んじゃ出発だな」

「……桜花さんはいつの間にか取引してたんだな?」

「まぁ、ちょっと時間掛かりそうだったし、予定の取引もあったからな。ま、出張分は終わったから問題ないぜ」

「桜花さん、流石だねー!」

「おうともよ、ハーレさん! 戦闘こそからっきしだが、こっちは俺の得意分野だからな!」


 やっぱり商人としての桜花さんは頼りになるね。……正直、出会った時の状況が状況だったから心配な面はあったけども、それは杞憂でしかなかった訳だ。

 でも、桜花さんでも太刀打ち出来ない寡黙な不動種のプレイヤーが青の群集にいるんだよな。……一体どんな人なのか、気になるところではある。確か青の群集の森林エリアだったはずだし、転移の種が手に入って移動はしやすくなったから今度遊びに行ってみようかな?


 まぁ、それは今はいいや。まずは雪山に行くのが先決である。さてとアルは今は地面に降りてるから、空飛ぶクジラになってもらわないとね。あ、その前に水のカーペットが出しっぱなしだから解除しとこ。


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 67/67 → 67/69(上限値使用:1)


 よし、これで問題なし。夜目は必須なので、このまま継続発動でいいね。


「それじゃみんなアルに乗れー! アル、よろしくな」

「おうよ。『移動操作制御』『上限発動指示:登録1』!」

「桜花さんも一緒に乗って移動するか?」

「あー、そうだな。そうさせてもらうか」


 そんな風にして、みんなはいつも通り各自の手段でアルの背中に乗り終わった。桜花さんはアルの木の枝に止まっていて、レナさんは例の小石の足場でササッと登っている。……レナさんだと一発で飛び上がれそうな気もするけど、あえて小石の足場を使う練習をしているような感じだね。

 俺は俺でさっさと登ってしまわないと。みんなの様子を見てたら最後になってしまったよ。……水のカーペット、解除するのが早かったかも……。まぁいいや、クジラの尻尾の方から登っていこうっと。


「さーて、みんな乗ったねー! それじゃ出発だー!」

「レナさん、それは俺のセリフだから!?」

「いやー、ちょっと言ってみたかったのさー!」

「……あ、そうですか」


 乗り終えた瞬間に、俺が言おうと思ってたセリフをレナさんに思いっきり取られたよ!? ……今更といえば今更だけど、レナさんって相当な自由人だよな。まぁこのゲームを全力で楽しんでるみたいだし、別に迷惑行為をしているわけでもないんだけどね。

 それにしても移動は完全にアル任せに出来るようになったのはいいね。後でハイルング高原の移動中にでも、情報共有板でも見てこようかな?

 

「とりあえず出発するぞ?」

「あーうん、任せた」

「……なんか気が抜けてるぞ、ケイ?」

「いやー、完全にアル任せに出来ると思ったら気が抜けてな?」

「……まぁ、別にこの辺のエリアならそれでもいいが、敵が普通に出てくるとこだとしっかりしてくれよ?」

「それは分かってるって」


 流石に戦闘の可能性がある場所ではここまで気を抜く気はないからね。でも今ぐらいはのんびりしてても良いだろう。


 そうしてひとまず氷の小結晶を確保する為に移動を開始である。うん、ただ初期エリアに移動をするだけなのに脱線し過ぎたね。

 あ、脱線し過ぎてた間に灰のサファリ同盟の反省会はどうやら終わったっぽいね。ベスタが仕切りながら、護衛に関しての案を詰めているみたいである。これは後で確認しておかないといけないね。


「ところで、ここからならミズキからエンへ転移するのと、直接陸路から森林深部に戻るのとどっち早い?」

「あー、微妙なとこだな? 桜花さん、どっちが早いかわかるか?」

「……そうだな。アルマースさんのクジラなら……あ、でも今は木でログイン中なんだよな。それなら大して変わらないと思うぜ?」

「わたしが蹴飛ばしたら、一気に推進力にならないかなー?」

「……レナさん、流石にそれはやめてくれな?」

「あはは、アルさん、冗談だよー! 桜花さん、その比較って高速遊泳とかは無しってとこ?」

「ま、そんなとこだな」


 あー、なるほどね。クジラでログインしている状態であれば、色々なスキルで移動速度を上げてしまえばいい訳だ。それに対して木でログイン中だと少し移動速度が落ちるんだな。まぁこの辺は種族の違いだから仕方ないか。


「今のアルなら水流の操作で移動は早く出来そうな気もするかな?」

「……まぁそうなんだろうが、ケイほどLv2の操作スキルを扱えないからLv3まではそれはハイルング高原まで行ってからだな。流石に森の中に水流で突っ込むみかねないのはパスだ」

「あ、確かにそれもそうかな」

「そだねー! ケイさんが無茶なだけさー!」

「うん、実用Lvが分かってるのに無理をする事ではないね」

「まぁケイさんだしねー!」


 なんか無茶苦茶言われてる気もするけど、これは反応したら負けな気もする。確かにこの辺はプレイヤースキルの問題で、俺は自分でも操作系スキルについては得意分野だとは思ってるけどさ……。とりあえず、近接戦闘でのプレイヤースキルがおかしいサヤとレナさんには言われたくはない!


「およ? わたしってそんなにプレイヤースキルはないよ?」

「え? ……レナさんについてはそれは流石にないかな」

「……っていうか、いつも思うけどなんでサラッと俺が思ってる事がバレてんの!?」

「あれ、ケイさん自覚ないんだ? 小声だけどちょいちょい声に出てるよ?」

「あ、レナさん、それ言っちゃダメかな……?」

「あらま、内緒だったんだ?」

「……何ですと!?」


 レナさんからのまさかの声に出ていた発言……。あー、そりゃ小声とはいえ声に出てたら気付かれますわ……。何やってんの俺ー!? それに他のみんなも、気付いていたのに黙ってたのかー!?


「あとそうやってハサミを小さく振り回したりする点も分かりやすい?」

「こっちにも癖があったんかい!?」

「……ケイさん、誰にでも癖ってあるもんだぜ。気にすんな!」

「……フォローありがとな、桜花さん」


 レナさんの遠慮のない性格によって発覚した変な癖……。小さくとはいえ声に出ていて、ハサミも無自覚のうちに動かしていたとは……。うん、これからは気をつけよう。


「……というか、みんな気付いてたなら教えてくれてもいいじゃん……」

「あー! ケイさんが拗ねたー!? というか昔からの癖だよねー!?」

「……え、マジで? この癖、リアルでもあんの!?」

「うん、あるよー! ゲームやってる時ほど頻度は多くないし、そもそもあんまり聞き取れない範囲の小声ではあるんだけどねー!」

「うわー、マジでか……」


 まさかの昔からのリアルでの癖だったのか……。くっ、そうなるとハーレさん的にはいつもの事だったから気にしていなかっただけか。


「……あはは、私は何度かその話は聞いたことあったんだよね。てっきり自覚があるものかと思ってたんだけど……」

「ヨッシさんにまで伝わってたんかい!」


 うわー、ヨッシさんも癖として把握してたのか。……なんだか無性に恥ずかしくなってきた……。


「私もケイには自覚があるかと思ってたかな……?」

「……サヤって、さっきレナさんが言おうとしてたのを止めようとしてたよな?」

「……な、なんの事かな……?」


 あ、露骨に視線を逸してるし!? さてはサヤは俺が自覚してないのを気付いた上で放置してたな!? 道理で色々と考えが筒抜けになってる筈だよ! 小声とはいえ自分で言ってたらそりゃそうなるよね!

 あれ、でもそれだとイマイチ納得が出来ない点があるな? そんな無自覚の癖があったのなら、ジェイさん達に気付かれないはずがない……?


「おーい、ケイ? また声に出てんぞ?」

「はっ!? ……これ、実はゲームのシステムの仕様だったりしない?」

「そんな設定項目はねぇよ!」

「……よし、思考が勝手に発声に変わるバグとして報告を……」

「ケイ、諦めろ。ケイは戦闘中に一切その癖が鳴りを潜めるから、バグじゃねぇよ」

「……え、戦闘中だと出てないんだ?」

「ビックリするほど、普段の状態からは比べ物にならないくらい態度すら読めなくなるぞ」

「あーマジか。まぁそれなら別にいいか……」


 ここまで無自覚だった癖がすぐに抜けるとは思えないし、戦闘時に支障さえないなら問題もないか。ハーレさんの言葉的には、リアルではゲーム内でのものよりは軽い気はするしね。

 ……あ、そういや言われてから思い出したけど、オフライン版をやってる時に独り言は多かったような気はする。もしかしてその辺が理由かな……? よし、とにかくこれからは気をつけていこう!

 

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