第475話 みんなの強化
晩飯も食べ終え、再びゲームの中へとログインしていく。あ、そういや集合場所ってエンのとこにしてたのに、ログアウトしたのはミズキの森林の特訓していた場所だった。周囲を見回しても場所的に誰もいないか。
しまったな、ログアウト前にエンの場所に移動しとくんだった……。まぁ位置的には森林深部との切り替えの場所に近いから、水のカーペットで飛んでいこう。
その前に先にサヤかアルにでもフレンドコールしておいて、遅れることを伝えておいた方がいいか。えーと、とりあえずサヤにフレンドコールをしておこうっと。……お、すぐに出てくれたね。
「ケイ、どうしたのかな?」
「あー、悪い。ちょっと遅れたけど、これからエンの場所に移動するからーー」
ん? あれ、ちょっと待て。何か、今のサヤの声が2方向から同時に聞こえた気がするのは気のせいか……? フレンドコールとは別に上の方から聞こえてきていたような……?
「あ、気付いたかな?」
「あー!? 空中にいたのか!?」
「うん、そういう事かな」
そう言いながらサヤは竜に乗って、俺の真上に水のカーペットに乗った状態のアルのクジラの背の上から降りてくる。アルもクジラを小さくしながら降りてくるし、その背中にはハーレさんとヨッシさんの姿もあった。
なんだ、みんなここに揃ってたのか。流石に空中までは確認してなかったけど、よく見たら影が落ちてるね。今日は夜の日だから気付かなかった! っていうか、夜目を使っとこ。
<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します> 行動値 70/70 → 69/69(上限値使用:1)
よし、これで問題なし! お、ヨッシさんは電気が表面を走るように姿が変わってるね。まぁサヤの竜や風雷コンビの電気のエフェクトに比べるとかなり控えめだから、複数の属性があればこの辺の演出は大人しくなる感じかな。
サヤのクマについては少し腕が太くなった感じか? アルも少し表皮が硬そうになっている気がする。ハーレさんについては特に何も追加していないので変化はなし。
「サヤも、ヨッシさんも、アルも、少し様子が変わったな」
「そういうケイもだな。ハサミが鋭くなったか?」
「うん、切れ味が上がってそうかな! 予定通り斬撃にしたんだね」
「うー!? ケイさんは土壇場で別のに変えると予想してたのが外れたよー!?」
「あはは、ハーレ、残念だったね」
「ハーレさんはそんな予想をしてたんかい!」
でもまぁ、ちょっと他の特性に心を惹かれたのは間違いではないからなぁ……。極端に外れてるとも言い難いのがなんとも微妙な心境になる。
「ところでケイ、それって色々と持ちにくくなったりはしないのかな?」
「え? ……あっ、その可能性は考えて無かった……」
「それならちょっと試してみようか。はい、ケイさん」
「お、サンキュー、ヨッシさん」
そうしてヨッシさんが取り出した竹の器を鋭くなったハサミで挟んでみる。あ、力加減は前より弱くした方が良いけど、即座に真っ二つって事にはならなさそうかな。まぁ流石に持ちにくくなる様にはなってないか。
「サヤ、意外と大丈夫そうだぞ」
「……そうみたいかな?」
「でも少し、切れ込みが入ってるよー!?」
「え、マジで?」
「うん、ちょっとだけだけどねー!」
ハーレさんがそういう風に言ってきたので、確認の為に竹の器を地面に置いて観察っと。あ、マジだ。挟んでた部分に薄っすらとだけど切れ込みが入っていた。うーん、アイテムを持つ分には問題はない範囲みたいだけど、昨日のイナゴを挟むみたいな事をすればHPをどんどん削っていきそうではある。
「これ、魔力集中と操作属性付与で土属性を付与したら、切れ味は落ちるか……?」
「……ケイ、それだと潰す威力の方が上がりそうな気がするぞ?」
「あー、それもそうか。ならこれだな」
確かにアルの言う事も一理あるし、他の手段を試してみよう。操作属性付与だと駄目そうなら、これならどうだ!
<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 68/69(上限値使用:1): 魔力値 197/200
<行動値を3消費して『土の操作Lv6』を発動します> 行動値 67/69(上限値使用:1)
石を生成して、ハサミの鋭利な部分の表面を覆うようにしていく。よし、石でのコーティング完了! これで改めて竹の器を挟んでみれば……お、良い感じだね。
「あ、そういう手段があんのか」
「思いつきだったけど、こっちの方が扱いやすいな。そんでもって、これでもっと安定するんじゃないか?」
「おー!? 石が竹を包み込んだー!?」
「あ、それいいね。氷の昇華になったら、私も同じように出来るかも?」
「ん? ヨッシさんは氷の昇華はこれから? てか、氷の昇華でも同じような事が出来るんだ?」
「氷の操作はLv6にはしたから、後は雪でも操作をしに行けば取れると思うよ。昇華になったら、氷の塊や雪や冷気っていう風に生成出来る幅が広がるんだって」
「あー、なるほどね」
これまでの氷の生成魔法は小さな氷か冷気の生成までだったけど、昇華で生成量が増えると自由度が増すんだな。性質的には土魔法と似たような感じなんだろうね。……やっぱり氷雪の操作以外にも別の氷関係の応用スキルがあるんじゃね……?
「ケイ、ヨッシさん、その辺は後にしようぜ。まずは共同体の結成をやっちまおう」
「あ、それもそうだな」
「確かにそうだね」
「うん、その方が良いと思うかな」
「そだねー! 共同体の結成に出発さー!」
共同体の結成はアルのログインを待って、全員が揃ってからという事になってたんだしね。全員揃ったんだから、他の確認とかは後回しで問題ない。
「それじゃ全員乗ってくれ。エンのとこまで飛ばしていくぞ」
「はーい!」
「アル、よろしくかな」
「アルさん、お願いね」
「ほいよっと。てか、ログインはクジラ側でしてるんだな?」
「さっきまでクジラから上限発動指示で木の移動操作制御を呼び出せるように調整してたんだよ」
「あー、なるほどね」
そりゃ確かに重要な内容ではあるね。クジラからでも水のカーペットを呼び出せるようになっていれば、より高速な移動が可能に……あれ? 水のカーペットってそんなに行動値の上限使用は多くないけど、効果時間は大丈夫か?
えーと、確か上限発動指示だと効果時間は上限値使用✕5分で、水のカーペットは上限値使用が2だから10分か。……効果時間が微妙すぎない?
「……アル、その場合の上限発動指示での効果時間ってどうなってる?」
「ケイの言いたい事は分かった。で、それの答えがこれだ」
それと共にどこからともなく、小石が飛んできた。あ、なるほど、そういう手段もありか。これはネス湖に行った時に見つけた手段の応用だな!
「並列制御で登録したな、アル!」
「おう、当たりだ。1つ目の並列制御で土の生成魔法と水の生成魔法、2つ目で土の操作と水の操作だ。これで上限使用が8になるから、40分はいけるぞ」
「おー、やるじゃん!」
無駄に使わない小石を並列制御に組み込んで生成して、操作の方も無駄に並列制御にして上限使用を水増しするとはね。ふむふむ、クジラから呼び出すにはそれが良いのかもしれない。
「でも、それって木の方で使うと行動値の上限を無駄に使用しない?」
「あー、まぁそれはヨッシさんの言う通りではあるんだよな。って事で、木で移動する時は手動発動にするって事にしたわ」
「そっか、移動中の攻撃は私達が担当するから、別にそれでも問題はないのかな?」
「ま、そういう事だ。不意打ち対策には移動操作制御よりは手動発動の方が確実だしな。後、クジラから水流の操作も使える様にはしたぞ」
「クジラでも流せるようにしたんだねー!」
「ほいよっと。ま、状況に合わせて使い分けって事だな」
「その辺は臨機応変にだな」
アルは木でログインしている時は手動で水のカーペットを展開し、クジラでログインしている時は移動操作制御の水のカーペットを呼び出して使うって事だね。
後は状況に合わせてどれを使うかを切り替えていけばいい。水流や水のカーペットは俺も使えるから、そっちとの兼ね合いもだな。
「よし、アルの強化状況も分かったし、エンのとこに向かうか!」
「「「「おー!」」」」
ちょっと脱線はしたけども、空飛ぶクジラ計画としては重要だもんな。そしてみんなもアルのクジラの背に乗っていく。さてと俺も風の操作と体当たりで跳ねて……いや、これでもいけるんじゃないか……?
ハサミの内側をコーティングしていた石を動かして、ロブスターが乗れる程度の石板の形に変えていく。おー、水のカーペットより足場はしっかりしてて意外と良い感じ。その生成した石板に乗って、アルのクジラの背の上に登っていく。
「あー!? ケイさんのそれ、なんかそれいいなー!?」
「ふっふっふ、これは結構ありだな」
あまり水のカーペットみたいに範囲を広くしすぎると、前にジェイさんと斬雨さんが乗っていた岩のように視界が悪くなりそうではある。だけど、1人分だけでロブスターのみで扱うのなら実用性は充分だな。
並列制御で水流の操作と組み合わせて、たまにサヤがやっているようなサーフィン的な利用もありかもしれない。水の昇華と土の昇華の組み合わせは色々と考えてみるのが良さそうだね。
「あー、とりあえず全員乗ったし、移動しながらにするぞ」
「ほいよ」
「はーい!」
「うん、分かったかな!」
「了解」
とりあえずまた脱線しかかっているので、本筋に戻していかないとね。目的地は群集拠点種のエンで、目的は共同体の結成だー!
「お、そうだ。こういう事も出来るようにはなったぜ。『共生指示:登録1』『共生指示:登録2』!」
え、既に水のカーペットが展開されているのに、アルはその下側に大量の水を生成して水流を生み出していく。……この発想は無かったけど、組み合わせる事も出来るのか、この2つ!?
「まだ水流の操作はLv2だから、制御が甘いのは勘弁な」
「それはいいけど、アル、これってまだ加速可能なんじゃ……?」
「おう、まだ自己強化と高速遊泳もあるからな。流石にやり過ぎると速度が出過ぎて、ちょっと何かに当たっただけで水のカーペットは消滅しそうだがな」
「……まぁそりゃな」
どうやらアル1人で成立させられるようになった事で、思った以上に自由度が増しているようである。これ、俺の土の昇華と合わせたらとんでもない勢いの突撃攻撃とか出来るんじゃないかな? まぁそれなりの助走距離が必要にはなりそうだけれども……。
そうして水流に流される水のカーペットの上で浮かぶクジラという光景になりつつ、移動開始! これ、どう考えても目立つだろうな。
<『ミズキの森林』から『始まりの森林深部・灰の群集エリア2』に移動しました>
エリア切り替えの割とすぐ近くにいたので、すぐに森林深部へと移動してきた。お、空飛ぶクジラが他にもいるね。あれは水のカーペットみたいなのは見当たらないから、どうやら空中浮遊のみっぽい?
「そういや、アルってスキル強化の種は空中浮遊に使ったのか?」
「……実はまだ使ってねぇんだよ。こっちがかなり有用になっちまったからな」
「あー、確かに……」
アルが水の昇華を手に入れた事で、自由度が増したのはさっきまでのやり取りでかなり実感したしね。空中浮遊にスキル強化の種を使う優先度が下がっちゃったか。
まぁ決してそれが悪い訳ではないし、むしろ他のスキルの強化に使えるんだし良い事ではある。俺もそうなっちゃってるしね。
「ま、次に何を鍛えるかを決めてから用途は考えるつもりだ。そういうケイも予定とは変わったよな?」
「そうなんだよなー。土の昇華に使うつもりだったけど、自力で辿り着いたしさ。ヨッシさんは氷の昇華って言ってたけど、サヤとハーレさんは?」
「私は爪刃双閃舞がLv2になったら、Lv3にする予定かな」
「私は爆散投擲をサヤと同じように強化する予定です!」
「なるほど、一気に火力を上げようって事か」
そういやハーレさんからサヤはそういう風に強化するつもりって聞いてたっけ。ハーレさんはその時は悩んでいたけど、爆散投擲の強化に決めたんだな。
操作系の応用スキルは通常スキルと同様にLvが上がれば消費行動値は減っていくけど、チャージ系や連撃系は行動値がどんどん増えていくもんな。その分だけ、とんでもない威力にはなるんだろうけどね。
さてと、みんなの強化の方向性もはっきりしてきてる事だし、サクッとやる事を済ましていかないとね。とにかく今は共同体の結成が最優先だ!
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