第474話 新たな特性の付与
ハーレさんと2人で特訓を始めて、もうすぐ30分位になってきた。今回のハーレさんとの特訓は、周囲の木々を移動しまくって色んな方向から連続投擲が放たれている。ふむふむ、ハーレさんは森の木々を上手く使ってやってるね。
「えーい! 『連投擲』!」
「ふふふ、まだまだ甘い!」
「ふふん! 甘いのはケイさんだー!」
「……何? あいた!?」
「やったー! ケイさんから一本取ったー!」
「……何で上空から小石が落ちてくるんだよ……」
木々の上からは警戒の範囲内だったからまだ精度の甘い砂の操作で防御しきれたけども、流石に真上は警戒してなかったな……。まぁ痛覚はないから痛くはないんだけどさー。
「ふっふっふ、作戦勝ちさー!」
「あー、もしかして途中で真上に投げてた?」
「砂で防御してる間に、発声無しの狙撃でね!」
「……なるほどね」
まんまとハーレさんの作戦に引っかかった訳か。うーん、直接投げて当てた訳じゃないから威力としてはそれほど強力でもないけど、集中力を分散させるという意味ではありな戦法だし、毒の弾とかを使えば不意打ちにもありだね。
あ、砂の操作の効果時間が切れたか。とりあえずLv2には上がったけど、Lv3にはまだもうちょい掛かりそうだね。
「ハーレさん、一回休憩! 操作の時間も切れたし、行動値の回復も必要だ」
「はーい!」
とりあえず7時まではこれを繰り返して鍛えていこうっと。Lv3までは育つのは早いし、晩飯までにLv3になればいいけどね。
そうして休憩を挟みながら特訓を続けていく。あ、もう少しで7時か。うーん、残念ながら砂の操作はLv3には到達せずか。もうちょいな気はするんだけどな。
あ、また砂の操作の時間切れになった。Lvが低くて精度が悪いのを結構強引に操作してるから、操作時間が切れるのが早いね。まぁこの辺は仕方ないか。
「ハーレさん、そろそろ終わりにするぞー」
「あ、あと1発だけー! 次で目的達成だと、私の勘が告げているのさー!」
「……胡散臭!?」
「あー、その言い方は酷いんだー!」
そう言われてもな……。サヤなら勘が鋭いから説得力もあるんだけど、ハーレさんは特にそうでもないし……。でもまぁ、それはやってみないと分からないか。
「……当たってればいいな?」
「むぅ! それならやってみるまでさー! 『連投擲』!」
「あ、俺を狙いはしないんだな」
「操作が切れてるのに、それはしないよー! むぅ、勘は外れだったー!?」
「ま、そんなもんだろな。とりあえず一旦ログアウトな?」
「はーい!」
勘は当たらなかったみたいだし、晩飯の時間もあるので夕方はこれで終了っと。いったんのところで、特性付与の水を使うのは、晩飯を食べる前か後にするか、どっちが良いかな?
うーん、そんなに時間がかかるとは思えないけど晩飯を食った後にしよう。ということで、一旦ログアウト!
◇ ◇ ◇
そしていつものようにいったんの所にやってきた。胴体部分には『共同体の機能は正常に作動中!』となっている。あー、そういやバグがどうとか前にあったけど、その辺は問題なく機能してるって事かな?
「お疲れ様〜。ご飯休憩かな〜?」
「まぁそんなとこだな」
「そっか〜。それで報酬のアイテムはどうするのかな〜?」
「それは飯食ってからにするよ。急ぎの告知とかはある?」
「今は特にないよ〜」
「そっか。ならログアウトでよろしく」
「はいはい〜。了解したよ〜」
「んじゃ、また後で!」
「お疲れ様〜」
空白の称号についてはまだ使う状況でもないからとりあえず取っておくとして、晩飯を食った後にはロブスターに斬撃の特性を付与しないとね。
そういやロブスターのハサミの切れ味が良くなるのなら、竹の採集とかもやりやすくなったりするかもしれない。……まぁ現状ではこの前採った竹もまだあるから容器には困っていないし、誰かに採集依頼をされたりしないと行く機会もなさそうだけど……。
とにかくいったんに見送られながら、ログアウトである。さて今日の晩飯はなんだろね。
◇ ◇ ◇
そして現実世界に戻ってくる。よし、手早くログアウトしたので今日は晴香が俺の部屋に来る前に1階に移動だ!
「あ、兄貴。今日は早いんだー!」
「……ちっ」
「何で舌打ちなのさー!?」
「いや、目論見が外れただけだから気にすんな」
「気になるよー!?」
自室のドアを開けた瞬間に、晴香は晴香で自分の部屋から出てきたところであった。まぁ晴香が悪い事をした訳ではないんだけど、ちょっと気分の問題である。
「圭ちゃん、晴ちゃん、手が空いたなら降りてきて頂戴ー!」
「分かったー! だとよ、晴香」
「むぅ、何か釈然としない……」
「あー、俺の言い方が悪かった。デザートのアイスを1口やるから、それでチャラにしてくれ」
「おー、やったー!」
そうして揃って1階へと降りていき、晩飯を食べていった。ちなみに今日の晩飯はザル蕎麦と天ぷらだったね。それらを食べ終わってから、晴香に1口分だけアイスを進呈してデザートは堪能した。後は食器の片付けを済ませるだけである。
「それじゃ兄貴、先に行ってるよー!」
「おう。待ち合わせはエンのとこだよな?」
「そだねー!」
「あ、特性の付与をやってから行くから、少し遅れたらすまんと言っといてくれ」
「了解です!」
それだけ伝えたら、晴香は一足先にゲームに戻る為に自室へと戻っていった。ま、そんなに特性の付与に時間がかかるとは思えないけど、万が一って事でね。
エンの場所で集合ってのは昨日の解散時に決めていたから、これは問題ないはず。まぁ変更があってもみんなは先に集まってるだろうから、その辺は問題ないだろう。
「圭ちゃん、晴ちゃんの最近の様子はどう?」
「あー、ちょっと無茶な行為は減った感じかな? 楽しそうにはしてると思う」
「そっかー。お母さんから見ても、思い悩んでる風には見えないからもう大丈夫そうね」
「まぁ多分ね」
この辺に関してはハーレさんの押し隠した辛さを見抜いて、諭してくれた弥生さんに感謝だな。近所のおばさん達も心配してたのも判明はしたけど、そっちもホッとしていたみたいだしね。
「母さん、逆に父さんの方をどうするかじゃない?」
「……そうね。どうしましょうか?」
地味に晴香の成長と、家族旅行を断られた事の板挟みの複雑な心境で悶えている父さんであった。まぁ数日経てば落ち着くだろうし、それまでは生暖かい目で見守っておくとしよう。
さてと、そうしている内に食器の片付けは完了っと。それじゃゲームを再開していこうじゃないか。
◇ ◇ ◇
自室に戻りゲームを再起動して、再びいったんの元へとやってきた。一応いったんの胴体をチェックしておこうっと。えーと『共同体の機能は正常に作動中!』って、特に内容には変化はなしか。うーん、公式からの次のイベントの告知は無しっぽいね。
次にやる事は群集クエストとかのゲーム内部で発生させる類のものかな? この辺はログインしてから情報収集の方が良さそうだ。まぁ今日は共同体を作るのが最優先だけども。
「さてと、いったん、共闘イベントの報酬を使わせてくれ」
「はいはい〜。えーと、『空白の称号』と『特性付与の水』のどっちかな〜?」
「『特性付与の水』でよろしく」
「『特性付与の水』だね〜。付与するキャラはコケとロブスターのどっちかな〜?」
「ロブスターの方で」
「はーい、ロブスターに改造入りまーす!」
「改造って言うんかい!?」
その声と同時に並んで立体映像として映し出されているコケとロブスターの位置が変わり、ロブスターが俺の目の前に少し拡大された状態で移動してきた。
というか、いったんは一体誰に呼びかけたんだよ!? ……ん? ちょっと待った。どこからともなく提灯が現れて来た? あれ、思いっきり見覚えがあるぞ……?
「……もしかして、チョーチ?」
「はい、そうですよ」
「……え、何で?」
確か前にチョーチが出てきた時っていったんがバグって臨時メンテになった時だよな。開発補佐用のAIとか言ってたと思うから、基本的にこっちに出てこない筈じゃないのか? え、いったんがまたバグったの……? うん、いったんは普通にいるし、いったんがバグってる風には見えないな。
「その疑問は仕方ありませんね。ええとですね、事情の説明は必要ですか?」
「……説明してくれるならよろしく」
「はい、ではそのように。イベント報酬の使用で一時的にいったんの負荷が増加していましてですね。そちらが落ち着くまで私が補佐として動く事になりまして……」
「あー、なるほど、そういう事か」
「ということなので、チョーチに任せるよ〜」
「そういう事になりますので、ご了承下さいね」
「ほいよ」
役割が切り替わったのか、いったんは少し離れた場所へと飛んでいき、チョーチがいったんがいつもいる場所にやってきた。見た感じではいったんは何もしなくなったように見えるけど、並行して掲示板の管理や他の人のログイン処理とかもしてるんだよな。
ふむふむ、だからこそのいったんとチョーチの同時運用か。イベントの報酬の使用がここになるのもいくつかあるからそれに対する負荷軽減……いや、この場合は負荷分散か。
まぁこれは一時的な混雑だろうけど、それでも待たされないように負荷分散の手段を用意してくれるのはありがたいかな。いったんが処理落ちして、臨時メンテになって報酬が使えませんとかなったら嫌だしね。
「それじゃチョーチ、ロブスターの特性の付与をよろしく」
「はい、承りました。こちらが付与できる特性の一覧になりますので、ご希望の特性を1つお選び下さい」
「ほいよっと」
そうしてチョーチから付与できる特性の一覧を渡された。へぇ、一覧から選ぶようになってるんだね。斬撃の特性を追加するのは確定だけども、どんなのがあるのか見てみるのもいいかもしれない。
ふむふむ、まずは攻撃系の特性からだね。刺突や蹴撃とかもいけるのか。お、砲撃もある。……ふむ、砲撃か。こうして見てみると魔法砲撃の強化に砲撃の特性もありかもしれない。いやいや、でも砲撃だと応用スキルの追加ってどうなんだ……? それに同調化しているからあんまり気にしてないけど、撃ち出してるのは基本的にコケの魔法なんだよなー。ロブスターの特性が反映されるのかが若干怪しい……。
えぇい、とりあえずこれはスルー! 応用スキルの種類を増やしたいのに、不確定な物を選んでどうする! でも、一覧は見ていったほうが良いかもしれないね。忘れている有用そうな特性もあるかもしれないし……。
えーと、投擲や突撃はとりあえず無し。突撃は使えそうではあるけど、打撃に近いところがあるからね。お、豪腕もいけるのか。うーん、これも悪くはないけど優先順位は高くない。
攻撃に関する特性はこんなもんか。砲撃にちょっと心が惹かれたけども、とりあえず全部チェックしてから!
防御系の特性は……強靭も悪くはないけど、基本的に俺は遠距離攻撃だしなー。そういう意味でも魔法吸収や回避や魔法耐性も無しかな。そういや防御系の応用スキルってあるんだろうか?
うーん、硬化とかのスキルがあるんだし、存在はしそうだよね。応用スキルの取得は特性や属性の所持が絡んできたりするから、まだ未発見のものも多そうだもんな。……次の土日は昼間にハーレさんがいないし、無駄に脱皮でも繰り返しまくってみようか? うん、それもありだな。
それからもうちょい確認していって大雑把にだけど一通りの付与出来る特性は確認した。徘徊の特性があったけど、あれってプレイヤーでも手に入る特性なんだね。どんな効果なのかは分からないけど、これってレナさん辺りが持ってそうな特性だよなー。
よし、色々考えたけどもやっぱり斬撃の特性で良いや。並列制御で拘束魔法とチャージの組み合わせとかも良いしね。
「そろそろお決まりになりましたか?」
「おう、決めたよ。ロブスターに斬撃の特性の付与でよろしく」
「ロブスターに斬撃の特性を付与ですね。特性の付与では少々見た目が変わる場合もございますが、問題無いでしょうか?」
「あ、見た目が変わるんだ?」
「付与する特性にもよりますけれどね。ロブスターに斬撃を付与ですと、ハサミの内側部分が鋭利に変化します」
「あー、そういう感じか」
なるほど、今のロブスターのハサミの内側はそれほど鋭利ではなくゴツゴツして切れ味はあんまり良くないからな。それが斬撃という特性に見合った形に変化するって事だね。
「それなら特に問題なし! チョーチ、やってくれ!」
「了解しました。それでは『特性付与の水』を消費して、ロブスターに斬撃の特性を付与していきます」
そのチョーチの宣言と共に、立体映像で浮かび上がっているロブスターがどこからともなく現れた水に包まれていく。ほう、この水が特性付与の水って事か。
そうしてその水はロブスターに吸収される様に徐々に消えていき、水が無くなったかと思えばロブスターが少し淡い光に包まれていく。
「おー、これが特性の付与か」
「そうなりますね。光が収まれば、特性の付与は完了です。……はい、これで付与は完了しました」
「お、確かに終わったっぽいな。ハサミが鋭利になってるよ」
基本的にはこれまでのロブスターとは大きくは変わらないけども、ハサミが鋭利化したのは間違いないね。今のロブスターならば斬りにくかったあの竹もズバッと切断出来るかもしれない。
まぁ具体的に斬撃の特性で何が出来るかは、後で色々と確認しようっと。ロブスターの物理攻撃系ってそんなにチェックしてないからね。場合によっては大型化で、ズバッとやるのも面白いかも。
「とにかくチョーチ、ありがとな!」
「いえいえ、これが役目ですので。それでは私はこの辺りで失礼しますね」
「おうよ!」
「いったん、後はお願いしますよ」
「お、終わったんだね〜。それじゃここからは僕の役目さ〜」
そうしてチョーチの姿は掻き消えていき、いったんがいつもの場所に戻ってくる。それと同時にコケとロブスターの立体映像の位置も普段の位置に戻っていた。
久々に見たチョーチの出番はこれで終わりなんだね。まぁちょっとした混雑がある時にも出てくるみたいだし、またチョーチの出番がある事もありそうだ。
「いったん、スクショの承諾は来てる?」
「今は特にないね〜」
あー、そういや今日初めにログインした時に処理してたっけ。その後には来てないって事か。
「それじゃみんなも待ってるだろうし、そろそろログインするよ。あ、ログインはコケの方でよろしく」
「はいはい〜。それじゃ楽しんでいってね〜」
「おうよ!」
そうしていったんに見送られながら、再びログインしていく。ちょっと時間がかかったけども、夜の部の開始である。さーて、みんな合流したら共同体の結成からやっていこう!
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