第473話 イベント報酬の確認 後編


 ハーレさんの食材系の詰め合わせ報酬の確認は済んだので、今度はヨッシさんの合成アイテムを詰め合わせの確認である。お、ヨッシさんがインベントリから取り出したのは、土器っぽい器だね。ハーレさんの時とは違って、こっちは壺みたいな感じか。


「あ、これは形は違うけど肉と同じで土器みたいかな……?」

「肉のやつよりは小さめだな」

「これも何かに使えそうだけど、とりあえず試すのは後だね。肝心の中身はどうだろ?」

「わくわく!」


 そう言いながらヨッシさんが器の中身を取り出していく。ハーレさんはもう口でわくわくとか言ってるけど、まぁ何が出てくるか楽しみな気持ちはよく分かる。


「えーと、癒水草、発光草、氷結草、発火草……」

「……何か知ってるのばっかだな」

「もしかしてこれは外れかな……?」

「がーん!?」

「……うん、そんな気がしてきたよ……。とりあえずまだあるから……あ、麻痺草は初めて見るね。漆黒草に旋風草、硬化草もだね。……えーと、合成用の草は3個ずつで、後は塩とハチミツが結構な量あるね……。うん、これは数があっても困る事はないし、よく使うから……」


 なんだろう? 知らないアイテムもあるし、塩やハチミツは有用なんだけど、このがっかり感……。いや、悪い内容じゃないはずなんだけど、これは灰のサファリ同盟とかが喜びそうな内容だな。


 それにしても合成用の草って、発火草が火、癒水草が水、硬化草が土、旋風草が風、氷結草が氷、麻痺草が雷、発光草が光、漆黒草が闇の属性に対応してる感じ? あー、でも癒水草は癒属性とどっちか微妙なとこだな。うーん、毒草は混ざってないから水属性の方な気はするけどね。

 こうして各属性の合成用の草が存在してるって事は、氷結草の群生地みたいにそれぞれの群生地があったりするのかもね。昨日行った砂漠とか、土の硬化草とかが洞窟の中にあったりするのかも? うん、可能性としては充分ありそうだ。

 

「ヨッシ、器が一番の収穫さー!」

「……あはは、確かにそれはそうかもね。これを火にかけても大丈夫か試してみたいけど、時間的にちょっと厳しいかな?」

「あ、ほんとかな」

「もう6時前か。確かに厳しいな」


 ヨッシさんの反応的にやっぱりがっかり感はあったみたいだね。まぁ調味料の類が欲しかったみたいだから、既に入手可能な塩とハチミツだけじゃ物足りなくはあるか……。

 それにしても思っていたよりも時間が経っていたようで、サヤとヨッシさんは一度夕食の為にログアウトの時間が目前に迫っている。まぁ最低限の報酬の確認は出来たから、良しとしようか。


「あ、そうだ。ハーレさん、ヨッシさん、器のトレードって可能なのか?」

「どうなんだろ!? ヨッシ、ご飯の前に試してみよー!」

「そうだね。それくらいならすぐに確認出来るし、やってみようか」

「それじゃ、お肉の器をどうぞ!」

「はい、こっちは壺型のやつ。あ、トレードは出来るみたいだね」

「みたいだねー!」

「ほうほう、トレードは可能なんだな」


 そうなると調味料的には残念な結果にはなったけど、ヨッシさんにとっては貴重な調理器具になる可能性を秘めているね。ドライフルーツには興味ないけど、魚の干物とか肉のジャーキーとかもありか? あ、だから塩がラインナップにあるのかも?


「この器がもし火にかけても大丈夫なら便利かもね」

「それじゃ、夜にみんなが揃って共同体を作った後に実験だねー!」

「うん、そうしようかな!」

「ほいよっと。みんなが再合流した後は、そうするか」

「「「おー!」」」


 今日、アルも含めて全員が揃ったら共同体を作るのは予定通りだしね。その後に何をするかはまだ未定だったけど、これでやる事は決定だ。


「それじゃ、一旦ログアウトしようかな。夜には打撃の特性を付与して戻ってくるね」

「あ、そういえばそっちもあったね。私も雷属性を付与してこないと」

「あー、そういやそう言ってたっけ。俺も後で斬撃の特性を付与しないとなー」

「……アルさんも堅牢を追加するって言ってたけど、追加しないの私だけー!?」

「あー、そういやそういう事になるか」

「別にそれでもいいさー! 特に追加したいのもないからねー!」

「まぁ必須ではないもんね」

「そうそう。私は、電気での麻痺も活用したいからだしね」


 ハーレさんについては投擲に特化してるから、必要ないっていうのもあるしね。この辺はそれぞれの育成状況に合わせた判断なので、ハーレさんが特性も属性も追加しないというのは特に問題はない。


「あと、ケイさんとアルさんは自力で昇華まで行ったけど、私はまだだから氷の操作の昇華にスキル強化の種は使うよ」

「あ、そういやヨッシさんはまだだったな。それなら色々とやる事を片付けたら雪山まで行くか?」

「それも良いんだけど、まずは順番にだね」

「まぁとりあえず今は一旦ログアウトじゃないかな?」

「それもそうだね。うん、詳しい事はまた後でって事で!」

「ほいよ」

「了解です!」


 ま、時間が時間だからあんまり引き止めても仕方ないね。そうしてヨッシさんとサヤは食事の為にログアウトしていった。

 さてと俺とハーレさんの晩飯まではあと1時間。何をするかというの問題ではあるんだけど、まぁ大体は決めていた。


「さてと、ハーレさん」

「ケイさん、何ですか!?」

「俺は砂の操作を実用Lvまで上げるけど、ハーレさんはどうする?」

「連鎖増強Ⅰの取得を目指します! 実はあと少しなのさー!」

「お、そうなのか?」

「うん! あと連投擲がLv5になったら取得さー!」

「お、マジか。ちなみに今のLvは?」

「Lv4です!」

「……それだとスキル強化の種を使うのは勿体無いか」

「そうなのさー!」


 流石にLv4からLv5にスキル強化の種を使うのはなしだよな。……それはそうとして、自力で土の昇華までを行ったもんだから俺のスキル強化の種はどう使ったもんかな。もし使うとしたらロブスターではなく、コケの方を優先したいんだけどどのスキルのLvを上げるかが非常に悩みどころ。

 候補としては水の操作をLv7にするか、水流の操作をLv5にするか、いっそ並列制御をLv2に……いや、行動値が足らなくなり過ぎそうだからこれは却下か。うーん、土の操作をLv7にするというのも悪くはないか。それにLv6の水魔法や土魔法にも興味はある……。


 あー、駄目だ。どれに使っても有用そうだし、ちょっと決めかねる。……すぐに使わなければならない訳でもないし、少し温存しとくかな。


「ケイさんはスキル強化の種はどうするのー!?」

「……ちょっと考えたけど、少し温存しとく。土の昇華がまだだったら一択だったんだけど、選択肢が増え過ぎたからな」

「あ、それもそっか! アルさんは空中浮遊に使うのかなー!?」

「アルは多分そうだろうな。サヤはどうすんだろ?」

「サヤは連閃か爪刃双閃舞のどっちかがLv2になったら、Lv3にするって言ってたよー!」

「ほうほう、連撃を一気に強化するんだな」


 操作系の応用スキルと違って、チャージ系と連撃系の応用スキルはLvが上がれば一気に行動値の消費が増えるけど、その分半端なく威力が上がるのはレナさんに見せてもらったしね。

 発動Lvは任意で指定出来るから、Lvが上がったからといって使い勝手が悪くなる訳じゃないし、サヤの予定は結構良い判断かもしれない。


「それならハーレさんも爆散投擲か貫通狙撃のLvを上げるのか?」

「それも考えたんだけど、連撃系とチャージ系のどっちが良いかで悩んでます!」

「あー、なるほどね」

「ケイさんはどっちがいいと思う!?」

「んー、そうだな……」


 チャージ系はどうしても溜めの時間が必要になるのが欠点ではある。そして連撃系は当て続けなければ威力が上がっていかない事が欠点だ。……でも、ハーレさんの今の戦闘スタイルを考えるなら遠距離からの高威力の方が合ってるか。

 問題は爆散投擲か貫通狙撃のどっちにするかだけど、やっぱりサヤの予定と同じようにしたほうが良いかもね。


「サヤと同じ感じでいいんじゃないか? 爆散投擲がLv2になってからLv3にする感じでさ」

「おー! 私が一番の候補にしてた案だー!?」

「一番の候補だったんかい! ……だったら、それで良いんじゃね?」

「うん、そうするねー!」


 とりあえずこれでハーレさんの方針決定か。俺だけが中途半端な事になった気もするけど、まぁそういう事もあるさ。俺自身はどうするかはじっくり考えようっと。


「さてと、それじゃ晩飯までは特訓でもしていくか」

「おー!」

「あ、そう言ったばっかで悪いけど、他にやる事あったわ」

「え、何かあったっけー!?」

「詰め合わせの内容の報告。まぁ他にも情報は出てるとは思うけどな」

「あ、それもそうだね! ラックも詰め合わせを選んだって言ってたー!」

「あー、やっぱり灰のサファリ同盟の方だと詰め合わせを選んだ人はいるんだな。まぁいいか、報告するだけしとこうっと」

「私もちょっと見ておこうっと!」


 そういう事なら無理に報告しなくても大丈夫そうな気もするけど、一応報告はするだけしておこうっと。とりあえずまとめを開いて……あれ? 全く見覚えの無い項目が増えているね。


 えーと、新規に結成になった共同体の一覧か。お、早速『オオカミ組』と『灰のサファリ同盟』は設立されてるね。それと『オオカミ組・運送部隊』とか『オオカミ組・護衛部隊』とか、『灰のサファリ同盟・森林深部本部』とか『灰のサファリ同盟・雪山支部』とか『灰のサファリ同盟・生産部門』とかで色々と小分けに設立されているね。


 規模が大きくなっているから、役割分担として部門で分けて、それぞれを連盟機能で繋いでいるみたいである。なるほど、連盟機能は上位組織と下部組織で区分けされて一覧見れるようになってるのか。

 最上位として登録されている……『灰のサファリ同盟』なら『灰のサファリ同盟・森林深部本部』から下部組織の一覧になってるんだな。共同体の連盟名ってのがあって、それが『灰のサファリ同盟』になってるね。ふむふむ、大規模な所はこうやって整理されているのか。


 他にも小規模な共同体も既にいくつか結成されているようである。あ、チラホラと設立した共同体の専用ページってのも出来てるね。誰でも見れるようになっているのもあれば、メンバーのみしか見れないのもあるんだな。


「灰のサファリ同盟やオオカミ組が凄いことになってるね!?」

「どうやらそうみたいだな。ま、正式に集団として発足出来て良かったんじゃね?」

「そだねー! 今までは自称だったもんねー!」


 これまではただの自称でしかなかった集団が、これで正式な集団として登録された訳だ。所属が明確に決まっていなかった訳だし、これはこれで良さそうな機能だね。

 まぁ共同体の中だけで完結するようになるとちょっと厄介な事にはなるけど、群集としてこれまで協力してやってきたんだ。その辺は多分、灰の群集では大丈夫だろう。


 さてと共同体のページの確認はこれくらいにして、まとめの報告をしておこうっと。……よし、書き込み終了!


「よし、それじゃ特訓を始めるか」

「了解です!」

「で、どういう風にやる?」

「ケイさんの砂の防御を、連投擲で撃ち抜きます!」

「よし、それじゃそれでいこう」

「勝った方がアイスを提供で!」

「ハーレさんのアイスは残ってないだろ。却下」

「あぅ、駄目だった……」


 今日買ってきたアイスは4個入りのやつだったから、もうハーレさんの分は残っていない。そもそもあったとしても、ハーレさんとは食べ物を賭けた勝負は二度とやらん! まだ砂の操作はLv1で制御が甘いから、普通に抜かれる可能性もあるしね。前はカツで酷い目に合ったから、迂闊な勝負には乗らないのに限る!


「ま、いいやー! ケイさん、準備よろしくねー」

「ほいよ」


 ハーレさんも早々に諦めてくれたようなので、気分を切り替えて特訓開始だな。あ、出しっぱなしで乗ったままになってる水のカーペットは必要ないし解除しておこうっと。


<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 67/67 → 67/69(上限値使用:1)


 よし、これで水のカーペットは解除。そして地面に降りてから砂の操作の準備開始である。


<行動値1と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』を発動します> 行動値 66/69(上限値使用:1): 魔力値 197/200

<行動値を20消費して『砂の操作Lv1』を発動します>  行動値 46/69(上限値使用:1)


 大量の砂を生成し、その砂を支配下に置いていく。ふふふ、昨日まだまだ制御が甘い状態で使ったけども、精度が上がればもっと色々な事が出来るようになる!

 とにかく特訓の為に広範囲に散らす感じで砂を操作する。固めておいてもいいんだけど、それだと視界が悪くなるからね。


「それじゃ特訓開始だー! 『自己強化』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『木登り』『連投擲』!」

「おう! ハーレさん、来いや!」


 そこからハーレさんの小石の連続投擲が始まって、その小石を防ぐように砂を集めて防御をしていく。おー、ハーレさんは周囲の木の上に登ったりしながら狙いを散らしまくって投げてきているので、これを防ぐには意外と反射的な操作が必要だな。

 とにかく晩飯まで、砂の操作のLv上げを頑張るぞ! その後は晩飯食ってから、いったんのところで斬撃の特性を付与しないとね。


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