第462話 砂丘の上へ


 それぞれのPTで分かれてLv20の成長体を探すという事で、俺らはとりあえず砂漠の北部へと向かって進んでいる。砂漠を歩くとなると大変なんだろうけど、アルが地面ぎりぎりの低空飛行をしているのでその辺は心配はいらないね。


「情報共有板の担当はサヤが継続でもいいけど、交代するか?」

「あ、それなら私が続けるから大丈夫かな。未成体の敵もいるだろうし、ケイとハーレは索敵をお願いね」

「はーい!」

「サヤが情報交換役の継続で、俺とハーレさんで索敵だな。ヨッシさんはどうする?」

「私は臨機応変にサポートに回るよ」

「ほいよっと。アルはいつも通りに移動を任せるとして、とりあえず砂丘の上まで行くか」

「「「「おー!」」」」


 とりあえずの目的地は距離は結構離れているけども、前方に見えている砂丘の上である。その途中でLv20の成長体が見つかれば良いんだけどな。





 そうして進んでいけば、もう少しで砂丘の手前という所までやってきた。途中では残滓が結構出て来たので倒しながら進み、そして今も絶賛戦闘中である。


「あー!? また砂の中に隠れたー!?」

「アル、少し高度を上げろ!」

「分かってる! 砂の中からまた毒針で刺されたら堪らんからな!」


 慌てるようにアルが地面から距離を取り、地味に厄介な敵が砂の中に潜っている。ちっ、動きが素早い上に擬態持ちで砂の中にも隠れるとか面倒過ぎる!?


「ヨッシさん、俺が砂の中から引き摺り出すから捕獲よろしく! サヤ、ハーレさん、チャージ準備! アルは位置取りに気をつけて攻撃を受けないようにしろ!」

「了解!」

「了解です! 『爆散投擲』!」

「分かったかな! 『重硬爪撃』!」

「おうよ!」


 戦闘開始の直後にアルが麻痺毒を受けて墜落してしまったからね。水のカーペットを展開していなかった上に、真下からの奇襲だったからな。下の様子が分からない巨体で地面スレスレの移動は、場合によっては危険だという事がよく分かったよ。

 サヤもハーレさんも既に魔力集中は発動済みで、チャージを開始していく。敵自体は奇襲に特化しているみたいで、麻痺したアルが墜落した際に少し押し潰しただけでHPは1割くらい削れていたからね。


 雑魚敵としては厄介ではあるけど、応用スキルを数発ほど叩き込めば倒せるはず。さてと、砂に紛れた厄介なヤツを捕獲して仕留めていきますか!


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を20消費して『砂の操作Lv1』は並列発動の待機になります>  行動値 25/62(上限値使用:1)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値を2消費して『看破Lv1』は並列発動の待機になります>  行動値 23/62(上限値使用:1)

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


<熟練度が規定値に到達したため、スキル『看破Lv1』が『看破Lv2』になりました>


 おっと、予定外に看破のLvが上がったね。まぁ今はそれどころじゃない。砂の中のどこにいるのかが分からないから、居そうな場所の砂を丸ごと操作してっと。

 ふっふっふ、砂の操作はまだまだ制御が甘いけど狙いを付ける必要がなく、砂の移動さえ出来るならこれで充分! そーれ、周囲の砂ごと空中へ飛んでいけー!


 お、浮かび上がらせた砂の一部から落ちていく何かに看破の効果が発揮して、擬態を破ったぞ。見つけたぜ、砂の中を泳いで砂に擬態する『擬砂エイ』! 予定通りに周囲の砂ごと空中へと放り出されたエイは泳ぐような素振りを見せてはいるが、全然泳げてはいなかった。このエイは砂漠の表面を移動する事は出来ても、空中を泳ぐ事は出来ないみたいなんだよな。

 地上に適応している海中の生物だからといって、全てが空中を泳げるように進化している訳ではないようだ。まぁ砂に潜るから、それはそれで厄介だけどね!


「ヨッシさん!」

「了解! 『並列制御』『アイスプリズン』『氷の操作』!」

「ヨッシ、ナイスかな!」


 これでヨッシさんの氷の檻がエイを捕らえた。改めて思うけど、氷の拘束魔法は他の拘束魔法と違って檻の形状をしているから連携して使う時には使い勝手が良いよな。ヨッシさんの異常付与の特性もあって、凍結の状態異常になる確率も高めだしね。


「それじゃ爆散投擲を行くよー!」

「あ、ハーレ、ちょっと待ってかな?」

「え? サヤ、なんでー!?」

「ちょっと試してみたい連携があってね。ヨッシ、ハーレに向かって檻を加速は出来るかな?」

「あ、うん、それは出来るけどどうするの?」

「ハーレの投擲の威力と、ヨッシの檻の加速でダメージが上がらないかなって思ってね? それと、竜で上に行ってから落下の勢いも使ってみようかなって」

「おー! サヤ、それいいねー!」

「了解! それじゃ、2人とも行くよ!」


 どうやらサヤはサヤで色々と連携攻撃を考えていたっぽいね。檻に捕らえたままのエイを檻ごとハーレさんの元へと加速させていくヨッシさんと、それに向けて眩い銀光を放つ手を構えているハーレさんと、その着弾予想地点の上空へと竜に乗って飛ぶサヤという光景になっていた。


「サヤ、ヨッシ、いっくよー!」


 そして加速する檻の隙間を縫ってハーレさんの爆散投擲が炸裂し、エイに大ダメージを与えていく。だが、まだそれで終わりではない。


「ハーレ、ナイス! ヨッシ、檻の解除をお願いかな!」

「了解!」


 その合図と同時にサヤは自由落下していく。おっ、ただ落下するだけじゃなくて竜を足場にして加速していく感じか。そしてサヤの攻撃が当たるタイミングに合わせて、ヨッシさんが氷の檻を解除し、エイに眩い銀光を放つサヤの爪の一撃が決まっていった。

 エイのHPはそれらの一連の攻撃によって、HPが全て無くなりポリゴンとなって砕け散っていく。それを確認してからサヤは竜に乗って、アルのクジラの上に戻ってきた。


<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


 とりあえずこれで討伐分の報酬はゲット。それにしても明確なダメージ量が表示される訳でもないから感覚的になるけど、普通に攻撃するよりは威力は高かったな。まぁ勢いを乗せれば威力が上がるのは今までの経験から何となくは分かってたけどね。


「おう、みんなお疲れさん! サヤ達の連携はかなり良かったんじゃないか?」

「えっへん、そうなのです!」

「こら、ハーレ。考えたのはサヤだからね?」

「あはは。でもハーレもヨッシもタイミングはピッタリだったかな!」

「だよね!? 私も頑張ったのです!」

「はいはい、ハーレも頑張ったね」


 まぁさっきの連携は確かに良かったよな。チャージ系の攻撃は確実に当てるのが重要になるし、そこに勢いでの威力を上乗せした上で連続で当てるのは良い連携なのは間違いない。

 発想としては俺の水流でのチャージ連発に近いけど、あれはもっと大人数での使用が前提になるもんな。1PTで成立させる連携としてはかなり良いんじゃないだろうか。


「さて、それじゃ改めて出発するか」

「あ、その前に、ケイさんもグッジョブだったよ!」

「そうだね。ケイさんの砂の操作が無かったらもっと苦戦してたかもしれないしね」

「ケイもグッジョブだったかな! もちろんアルもね」

「ま、俺は飛んでただけだがな」

「アル、それはそうでもないぞ? エイの方に地の利はあったしね」

「……それもそうだな。全員の連携って事でいいか」

「それでいいと思うぞ」


 みんながどんどん出来る事が増えてきているからこその連携でもあるし、誰かが欠けていてもさっきの連携は上手く行っていなかったはずだもんな。

 そう考えると進化階位はまだまだ先があるけど、俺らも随分強くなったもんだね。……まぁそれでも勝てる気がしない相手も何人かはいるけども……。決して最強を目指している訳じゃないけど、負けたくはないから育成も頑張っていかないとな。


「まぁ、これから連携は鍛えて行くとして、あと少しだし砂丘を目指そうぜ!」

「そうだねー! 砂丘の上からの景色が楽しみさー!」

「このエリアの由来にはなってそうだもんね」

「紅焔さん達がお勧めしてたのもあるから、気になるよね」

「ま、あと少しだからとりあえず進んでいくぞ」

「「「「おー!」」」」


 あと少しで砂丘の上には辿り着くんだし、その光景は自分の目で確かめればいい。それにしても他にも未成体のサソリやヘビを数体倒したけど、Lv20の成長体は全然見つからないな。……グラス平原で2体も見つけられたのはただ単に運が良かっただけか。


「それじゃ私は情報共有板確認に戻ろうかな?」

「ほいよ。サヤ、よろしく!」

「任せてかな!」


 情報の共有は重要だしな。さっきのエイとの戦闘中はアルが墜落するような状況だったから一旦それは中断してたけど、移動を再開するならそっちも再開しないとね。


「そういや今のうちに共同体の名前を決めとくか? そうしてたら夕方に俺がいない内にでも作っておけるだろ?」

「いや、アル、それはなしだぞ。名前を今決めるのには賛成だけど、共同体を作るのは全員揃ってからだ」

「アルさん、ケイさんの言う通りだよ!?」

「アル、それは流石に水臭いかな!?」

「私もみんなと同意見だね。それは無しだよ、アルさん」

「……そうか、そうだな。すまん、余計な事を言った。さっきの発言は忘れてくれ」

「ほいよっと」


 アルはアルなりに気を遣っての発言なんだろうけど、俺ら5人でここまで一緒にやってきたんだからそんなところで仲間外れは流石に無しだよな。共同体を作るのは全員が揃ってからじゃないと駄目である。

 

「それで、誰か何か良い名前の候補とかある?」

「うーん、うーん、うーん!? はっ! 『食べ物発掘隊』とかどうですか!?」

「ハーレさん、それは却下」

「流石にそれは……」

「私もそれはちょっと……」

「それはなしだね、ハーレ」

「あぅ、盛大に却下された……」


 うん、どう考えてもそれはハーレさんの個人的な欲求が全開だもんな。それにしても、ハーレさん以外の気持ちは完全に一致していたようである。


「『エクスプローラーズ』ってのはどうだ?」

「探検家とか探検隊ってとこか……。アル、流石に安直じゃない?」

「やっぱり安直過ぎるか」

「でも、まずは案だけでも出していくので良いんじゃないかな?」

「……そうだね。とりあえず出すだけ出して、後で多数決で決めるのが良いかも?」

「あー、それもそうだな。それじゃそのヨッシさんの案を採用で、候補を挙げていくか」

「あぅ、さっきの私のはー!?」

「満場一致で否決だったし、最後の多数決で無理だから諦めろ、ハーレさん」

「……はーい」


 まぁちょっと悪い事をした気がしないでもないけど、さっきの俺を含むみんなの反応からして候補に残しても多数決では確実に通らないから無理である。流石に『食べ物発掘隊』はない。


「あ、話の腰を折る形になるけどごめんかな。ベスタさん達の結果が出たみたい」

「お、マジか。どんな風になったって?」

「イナゴとネズミを+5同士でやったら、イナゴを背負ったネズミって感じの共生進化になったみたいかな。それぞれの個体が進化前の特徴を強化した進化だったみたいだよ」

「なるほど、同じ強化数の瘴気石同士なら共生進化になるんだな。ん? ちょい待った、Lvは?」

「どっちもLv6って話かな。フィールドボスにはならなかったみたい」

「あー、共生進化に関しては失敗なのか」

「そうみたいかな」


 ふむふむ、合成進化にしたいなら2体の瘴気強化種メインにする側により強化した瘴気石を使い、融合進化にしたいなら共生進化済みの成長体を使えば、フィールドボスの発生は可能か。

 そして共生進化の未成体にしたければ2体の瘴気強化種に同じ強化数の瘴気石を食べさせればいいけども+5ではフィールドボスへの進化は無理なんだな。強化した瘴気石については数値をズラすのが必須か。


 まだ支配進化になる場合と、黒の暴走種での確認が出来てないけど、それなりに情報は集まってきたね。あとはフィールドボスになる際の最低Lvの確認が必要ってとこか。少なくともLv6ではフィールドボスとしては駄目みたいだしね。


「あ、他のPTの方で2体の成長体が見つかったみたいかな。これからベスタさんがそっちに向かって、フィールドボスになる最低Lvを検証していくって」

「これからフィールドボスの最低Lvの洗い出しか。それじゃ俺らもLv20の成長体を見つけないとな」

「ま、そうなるか」

「頑張って探すぞー!」

「うん、頑張って探そうね」

「まぁその前に、もう目の前まで来てる砂丘の上まで行こうな」

「「「「おー!」」」」


 みんなもLv20の成長体を探すという目的を忘れているわけではないけども、砂丘の上からの光景は気になっているようである。まぁもう目の前だもんな。景色を少し堪能してからでも罰は当たらないだろう。

 という事で、いざ砂丘の上に行ってみよう! さぁ、どういう光景があるのかは想像は出来ているけども、実際に見たらどんなもんだろうね?


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