第460話 融合種のフィールドボス
融合種のフィールドボスであるカメ・ラクダが甲羅に引き篭もってしまったので、まずはあの甲羅を何とかしないといけないな。
そういえばカメといえば、前に荒野エリアに行った時にカメの甲羅を削った事もあったっけ。……そして、ここは砂漠で砂が大量か……。
「ちっ、これじゃ埒が明かねぇ。リーダー、いきなりだけどチャージで叩き割ってもいいか?」
ツキノワさんが甲羅を殴りつけながら、甲羅に篭ったラクダの本体を引き摺り出そうとしているけども、どうやら上手くいっていないようである。うーん、確かにこの状況だとどうしようもないけど、叩き割れるかな……?
まぁ駄目なら駄目で大量の水でも生成して溺れさせてみてもいいか。それに甲羅に篭ってるとはいえ、全然ダメージを与えられていない訳ではないしね。まぁダメージ量はかなり少ないけども……。
指示を求められたベスタも少し考え込んでいるようではある。戦闘の方針を考えているってところかな? このカメ・ラクダは魔法には弱そうではあるけども、物理攻撃でどうにか出来るのかってのも確かに気になるしね。
「……まずは引き摺り出すのが先決か。よし、チャージ系の応用スキルで甲羅を割るぞ」
「お、強行突破なんだ?」
「まぁな。今回は防御寄りのボスの耐久性を確認をする。アルマース、逃げないように水流の操作で上から抑えつけろ」
「おう、任せとけ! 『アクアクリエイト』『水流の操作』!」
ベスタの指示を受けて、アルが大量水を生成してカメ・ラクダを水流で抑え込んでいく。うーん、なんだかいつもの俺の出番を取られた気分……。あれ、思ったより意外とダメージ入ってるな? あー、そっか。魔法産の水を使ってるからダメージ判定としては魔法攻撃になるんだったっけ。
それはそうとして、なんか勢い余って砂に埋まっていってない? あ、でも脚がちょっと出てきて踏ん張っているね。ここで脚を攻撃するのもあり……?
「ケイ、気持ちは分からんでもないがそれは後にしろ」
「耐久性の確認だもんな。分かってるって」
「チャージ攻撃はツキノワ、黒曜、サヤ、ハーレ、アリスの順でいけ。効き具合を確認しながらにしたいから、少しタイミングはズラしてくれ」
「お、クマ3連とリス2連か! やってやろうじゃねぇか、なぁ、黒曜!」
「そうだね、せっかくクマが3人もいるんだし頑張ろうか」
「よろしくかな、ツキノワさん、黒曜さん!」
「おっし、始めるか! 『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『殴打重衝撃・土』!」
「私もやるかな! 『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『重硬爪撃・土』!」
「どうも僕らは同じクマでも全員使うスキルは違うようだね。『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『重脚撃・土』!」
3人のクマが揃っているのを見比べてみると、サヤは外骨格となっている巨大な爪が目立っており、ツキノワさんは爪は普通だけど腕がサヤより太く、黒曜さんと呼ばれたクマの人は脚の太さが違っている。
共通しているのは3人共が場所こそ違うけど、茶色を帯びた銀光を放ち出しているという事だろうか。へぇ、同じクマといってもツキノワさんは打撃重視で、黒曜さんは蹴り重視の育成みたいだね。
そしてそれと同時にお互いの巣の中で準備をしていくリスの2人。向こうのリスの人は、アリスさんだっけ?
「アリスさん、頑張ろうねー!」
「ハーレさん! 私、ハーレさんと一緒に戦えて嬉しいです!」
「あれ!? 何処かで会った事あったっけー!?」
「いえ、私が一方的に知ってただけですけど、ハーレさんを真似て投擲を選んだんです!」
「そうなのー!? 照れるなぁ」
どうやらアリスさんはハーレさんの投擲を見て育成方向を決めていたようである。まぁ実況される事とか色々あったしなー。そういう事もあるんだろう。そしてまんざらでもない様子のハーレさんであった。
「……ハーレ、アリス、そういう話は後にしろ」
「ベスタさん、了解です!」
「あ、すみませんでした! 準備していきますね。『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『アースクリエイト』『爆散投擲・土』!」
「あ、私と全く一緒なんだー!? 私も行くよー! 『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『アースクリエイト』『爆散投擲・土』!」
アリスさんはハーレさんを目標にしてたようなので、覚えているスキル構成も似ているような気はするね。リスは2ndのようだけど、わざわざ2ndで作った感じかな?
さてと5人でのチャージ系応用スキルを叩き込むのは確定として、その後どうするんだろ? 正直なところまだ凝縮破壊Ⅰを持ってないサヤをメンバーに組み込むのもいまいち腑に落ちないんだけども……。
「で、ベスタ? サヤがチャージっていうのがちょっと腑に落ちないんだが……」
「サヤについてはクマ同士のスキル比較で刺激になればいいと思っているだけだ。それに連撃系が温存は出来るしな」
「あー、なるほどね」
確かにチャージの進んでいくクマ3人はどう見ても戦法がまるで違う。うん、そういう意味ではクマ同士でお互いに刺激にはなるかもしれないね。場合によっては共闘イベントの報酬で特性を追加して、他の系統の応用スキルも使えるようにするというのもありだもんな。
「それで、他のメンバーはどうすりゃいい?」
「他の魔法が主体な奴は一連の攻撃が終わるまでは待機でいいが、ケイは何か思いついてるだろ?」
「なるほど、待機ね。それにしても、試したい事があるのバレてた……?」
「新スキルを手に入れた後はいつもそうじゃねぇか。って事で、チャージ攻撃の連撃が終われば遠慮なくぶっ放せ」
「ほいよっと」
ベスタからの新スキルを使った新技の実験許可も下りたことだし、ぶっつけ本番でやってみますか! ぶっつけ本番なのはいつもの事だしね。……今回は荒らすような範囲にはならないと思うから、巻き込む心配は多分ない!
「おっしゃ、チャージ完了だ!」
「よし、ツキノワ、いけ! アルマース、水流はもういい!」
「おうよ、リーダー!」
「水流は解除すればーー」
「アルマースさん、水流に乗せて上空に飛ばしてくれないか?」
「ん? それなら問題ないぜ、黒曜さん」
「それじゃよろしく頼む!」
アルがカメ・ラクダを水流で抑え込むのを止めて黒曜さんを上空へと流していくと同時に、軽くジャンプをして眩い茶色い銀光を纏った拳をツキノワさんが甲羅に叩きつけていく。
「ちっ、せいぜい5%ってとこかよ! こりゃ、硬いな!」
「それでも少しはヒビは入っているようだよ、ツキノワ。これでどうだろうね!」
そこに追撃としてアルの水流によって上空に運ばれて、そこから落下しながら踵落としの要領で蹴りを叩き込む黒曜さんだった。その1撃で更に5%ほどHPが削れて、甲羅に入ったヒビも少し広がっている。
ほほう、硬いといえば硬いけども銀光の眩さから判断すれば凝縮破壊Ⅰ込みのチャージ攻撃みたいだし、この威力なら効果ありか。
「何だかツキノワさんと黒曜さんの威力がかなり強そうかな。でも私だって!」
そして竜に乗って少し上から飛び降りるようにサヤが爪の一撃を加えていく。……HPは2%程度の減少だから、威力としてはかなり劣るね。まぁ、サヤは連撃がメインだから仕方ないか。
さてと、この後すぐにハーレさんとアリスさんの爆散投擲の2連撃が待っている。それまでに俺の実験の準備をしておこう。ここは砂漠で周囲は砂だらけだからそれを使ってもいいんだけど、魔法に弱いという推測もあるしな。覚えたてだからちょっと制御が甘いのも考慮して、魔法産にして魔法攻撃判定にした方がいいか。
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 61/62(上限値使用:1): 魔力値 197/200
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値2と魔力値3消費して『土魔法Lv1:アースクリエイト』は並列発動の待機になります> 行動値 59/62(上限値使用:1): 魔力値 194/200
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
魔法砲撃が発動したままだけど、今回は使わないのでスルー。とりあえず並列制御で水と砂を通常発動で空中に同時生成していく。
これで重なって昇華魔法になってもそれはそれで困るから、重ならない位置にそれぞれ少量だけ生成した。初めは少なくても昇華になっていれば追加生成をすればいいだけなので、問題なし。さて、即座に次の段階へ移行だ!
<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>
<行動値を20消費して『砂の操作Lv1』は並列発動の待機になります> 行動値 39/62(上限値使用:1)
<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>
<行動値を38消費して『水流の操作Lv4』は並列発動の待機になります> 行動値 1/62(上限値使用:1)
<指定を完了しました。並列発動を開始します>
行動値はギリギリセーフ! ふふふ、これはやはり近いうちに成熟体に挑みに行く必要がありそうだね。って、それは今はいいや。
とにかくさっき生成した砂と水を支配下において、どちらも追加生成して量を増やしていくけど砂は水より少なめでいいかな。それで適度に増えた状態で混ぜ合わせて、砂混じりの水球を上空に用意完了っと。
「ケイ、相変わらず無茶な事をやってんな!?」
「これくらいはいいだろ、アル。前々から応用操作スキルのコンボ攻撃をやってみたかったんだよ!」
前々から砂の操作を手に入れたら試してみたいとは思ってたんだ。砂を混ぜた高圧水流って相当な切断力があるみたいだしね。まぁまだ砂の制御が甘過ぎるから、水流の操作で半ば無理矢理に調整はしてるけども。
「……やはりこういう事を企んでいたか。まぁいい、ハーレとアリスはぶっ放せ! その後にケイがやれ!」
「了解です!」
「分かりました!」
そうして2人の投擲型のリスの爆散投擲が未だに甲羅に篭ったままのカメ・ラクダの甲羅に直撃していく。おー、結構ヒビが広がって甲羅の中への隙間が出来たね。よし、狙いはその隙間だ!
「それじゃこれでもくらえ!」
そんな掛け声と同時に可能な限り絞った砂入りの水流を甲羅の隙間へと流し込んでいく。よっしゃ、ついでに体内だと思われる場所に渦巻くように適当に操作してやろう! あ、一定以上は流れ込んで行かないから体内は無理なのか。それなら甲羅を削っていこうっと。
おっと、甲羅が無くなった場所に当たればハーレさんとアリスさんで1割くらいは削って合計3割は減っていたHPが一気に減っていくね。やっぱり硬いのは甲羅だけみたいだな。
「……あはは、ケイさんの攻撃は相変わらずエゲツないね」
「ヨッシさんもそう思うか? まぁ敵には容赦ないもんな」
「まぁそれでこそケイって感じもするかな?」
「敵に回らなければ良いだけなのさー!」
なんかみんなが言っているけど、まぁ自覚はあるから別にいいや。敵対してくる相手に容赦なんかする必要性も感じないしね。とりあえずこれで甲羅を使い物にならなくしようっと。
そうやって攻撃して甲羅が役立たずになった頃にはHPは5割を切っていた。でもそこで操作の時間切れだね。まぁ、流石に勢いをつけたら操作時間が短くなるのは仕方ないか。
あ、ようやくラクダが首や脚を出してきたと思ったら前脚を鞭のようにして伸ばして薙ぎ払うように蹴ってきた!? やば、伸びるって事は伸縮の特性か、これ!? しかも魔力集中も発動してるっぽいし、ちょっと一方的に攻められてたから油断した。やばい、これを防げるだけの行動値が無いぞ!?
「ケイさん!? 『アイスウォール』!」
「ヨッシさん、助かった!」
「ケイ、今のは気を抜き過ぎだ!」
「悪い、ベスタ! 行動値が足りなかった!」
「ちっ、応用の操作系を並列制御で使えばそうもなるか。よし、耐久性と対応方法は大体把握した。サヤ、一気に仕留めるぞ! 『魔力集中』『爪刃双閃舞』!」
「分かったかな! 『爪刃双閃舞・土』!」
ヨッシさんがその伸びる蹴りを防いだ後に、カメ・ラクダは銀光を放ち始めた踏み潰すような連続の蹴り攻撃を繰り広げてくる。その蹴りを回避しつつ、サヤとベスタがどんどんと連撃を加えていく。
「あー、サヤさんは連撃系なのか。どおりでさっきは威力が低かったわけだ」
「みたいだね。それにしてもこの連撃は凄まじいね」
「サヤ、合わせろ! 『連閃』!」
「分かったかな! 『連閃・土』!」
カメ・ラクダの連撃はサヤとベスタを捉えることは一度もなく、連携して次々と決まり続けるサヤとベスタの連撃によってHPはもう残り1割となっている。でも連撃では仕留めきれなかったか。うーん、やっぱり魔法の方が効きはよさそうだね。
「シオカラ、モコモコ! 盛大に昇華魔法で仕留めろ!」
「あ、出番ないかと思ってた。モコモコ、やるよ。『ウィンドクリエイト』!」
「出番があって良かったねー。『エレクトロクリエイト』!」
えーと、シオカラさんがトンボの人で、モコモコさんがヒツジの人か。この組み合わせの昇華魔法といえばテンペストだな。
即座に攻撃範囲からみんなが退避して、雷の荒れ狂う竜巻が周りの砂をも巻き上げている。……こりゃ雷も含まれた砂嵐だな……。
そして雷光を放ち雷鳴を轟かせる砂嵐が収まると同時にHPが全て無くなったカメ・ラクダはポリゴンとなって砕け散っていった。
<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>
<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>
<『瘴気石』を1個獲得しました>
はい、これでフィールドボスの検証は3体目が終了っと。とりあえずここまでの検証は順調だね。後は支配種の確認と、進化した直後にフィールドボスになる最低Lvの見極めくらいかな?
今捕獲出来ている成長体はイナゴとネズミの2体だから、そろそろ他のも探しに行かないと駄目そうな気がする。まだ砂漠の入り口からちょっと進んだ程度の場所だし、2戦はやったから次は成長体を探しに行こうかな。まぁみんなと相談してからになるけども。
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