第458話 2体目の検証
瘴気の膜が薄れていき、進化を終えた大根とサソリが姿を表していく。さーて、どんな進化になったかな? おー、これはまた凄い姿になったな……。
「……凄いな、これ」
「変な大根だー!?」
「これ、なんて表現したら良いのかな?」
「この進化はビックリだね」
「っていうか、無理やりの継ぎ接ぎ感が凄くないか?」
「……アルに同意」
「同じくです!」
「私もかな?」
「……私もだね」
みんなの感想が一致したその大根とサソリの進化後の姿は、二股の大根にサソリの尾と腕のようにサソリのハサミが生えている状態であった。
うん、これは予想以上にカオスな光景である。アルの言うように継ぎ接ぎ感が凄いね。そしてフィールドボスの証である黒い王冠もしっかりとあった。この見た目でフィールドボスか……。
「……この最適化の進化がされていない感じだと、合成種の可能性が高いか」
「そうなのか、ベスタ?」
「……まぁ融合種の可能性も否定は出来ないが、少なくとも変異進化を挟んで最適化はされていないだろう。種族としての組み合わせが悪いんだろうな」
「まぁ大根とサソリだしな……」
伝説上の生物とかがモチーフになってる場合なら変異進化が発生して最適化されるんだろうけど、大根とサソリが一緒になっている伝説上の生物とかそういうものには一切心当たりがないもんな。
実は探せばあったりするんだろうか? ……まぁいいや。それはそうとして、これは進化の組み合わせを探るのに使えそうな気もしてきたぞ……?
「よーし、予想以上に変なのになったけど、みんな頑張るぞー!」
「「「「「おー!」」」」」
お、気合たっぷりで纏まりがあるのが招き猫さんのPTである。こっちのメンバーはネコの招き猫さん、サイの人、蜜柑の木の人、ハリネズミの人、フクロウの人、シカの人の6人だね。
今日ここに集まっている人達はやる気は充分なようである。さてと、カインさんのPTはどうかな?
「俺らもいくぞ!」
「おうよ、カイン!」
「了解だ、カイン!」
「ぶっ飛ばすぜ、カイン!」
「行くぜ、カイン!」
「全員でカインって呼ばんでいいわ! 俺らって臨時PTなのになんでそんなに息合ってんの!?」
「そりゃ……反応が面白いしなぁ?」
「「「まぁ、うん」」」
「なんでそこで全員納得するように頷いてんの!? ……まぁ、いいけどよ」
こっちはこっちである意味では纏まってはいるけども、カインさんだけが別扱いって感じだな。というか、カインさんって弄られキャラ化してないですかね? あ、小声でちょろいとか聞こえた。誰が言ったか分からないけど……。
えーと、メンバー的にはサルのカインさん、イカの人、杉の木の人、スライムっぽい人、カニの人みたいだね。うん、個性豊かで統一性がまるでないな。スライムっぽい人とイカの人は2ndのようである。
「おいこら! 今、ちょろいって呟いたやつがいたよな!?」
「それは俺だぜ。プロメテウス!」
「俺の名前はカインだよ!」
「あーうん、カインさん、ごめん。そろそろ戦闘に移りたいんだけど、良いかな?」
そうしている間にも大根が準備運動をするかように飛び跳ねていた。……なんで飛び跳ねてるの、この大根? そして段々と高く飛び上がれるようになってるのは、何かの準備ですかね!?
「……そうだよな。すまん、招き猫さん。準備するわ」
「流石にちょっと悪ふざけが過ぎたか」
「よーし、まともに頑張るかー!」
「初めから真面目にやれー!」
「カイン! 『アースウォール』!」
「お、おぉ、すまん」
「さて、おふざけモードは終了だ。やるぜ、てめぇら!」
「「「おう!」」」
「……なんだか釈然としねぇ」
なんだか戦闘前から息を乱しつつも、からかっていた杉の木の人に飛び蹴りを放ってきた大根から守られていたカインさんだった。……って、ちょっと待って。大根がさっき、空中を蹴ってなかった……? あの空中での挙動、心当たりがないでもないぞ。
「ほう? 風の生成と風の操作か」
「あ、やっぱりあれ?」
「あれって、ベスタさんやケイがたまに使う風の足場かな?」
「おそらくな。……ふむ、フィールドボスともなればあれを使う敵もいるのか」
「……地味に厄介な気もするんだけど?」
「何言ってんだ、ケイ。その辺の確認もする為の検証だろうが」
「あ、まぁそりゃそうだ」
1体目のボスでも魔法型のフィールドボスの戦闘方法について探ってたもんな。必ずしも同じ個体にはならないだろうけど、行動パターンのサンプルは欲しいよね。それに組み合わせの法則が分かれば、戦いやすいフィールドボスを狙う事も可能になってくるだろうし。
「よし! 気合を入れ直して、やってくぜ!」
「カイン、とりあえず識別からやっていけ。まずは推測通りの物理型になっているかが知りたい」
「リーダー、了解だ! 『識別』!」
「……あだ名に文句を言うカインがそれを言うのか?」
「はっ!? 悪い、ベスタ!」
「……はぁ……まぁ俺の行動にもそう呼ばれる原因はあるからな……」
「別にいいんじゃねぇか、ベスタ? どっちにしても行動を変える気もないんだろう?」
「……それに関してはアルマースの言う通りだな。……自称はしねぇが、否定するのはやめるか」
おっと、ベスタから完全にリーダーと認める発言が出てきたぞ!? そして地味にカインさんにブーメラン発言が突き刺さっているね。……俺も地味にブーメランが飛んできているような気もするけど、ベスタの事をリーダーと呼ぶのは心の中だけだからセーフだと思いたい!
「『魔力集中』『爪刃乱舞』! わっ!?」
「招き猫さん!? 『重突撃』!」
そうしている内にも招き猫さん達のPTが大根相手に近接戦を挑んでいっている。お、招き猫さんが連撃を狙いに行くけど、カウンターで連続して蹴りを受けていた。そこにサイの人が突撃していき、距離を強引に取っていく。でも直撃したのにほぼダメージはない。
「カイン、識別内容はどうだ?」
「えっとな、『豪傑蹴打大根』でLv12。黒の瘴気強化種で『豪傑蹴打合成種』だとよ。属性は毒と草、特性は豪傑、合成、強靭、打撃、蹴撃だ」
「あ、やっぱり物理型なんだね。という事は、あのハサミは斬撃じゃなくて打撃なんだ?」
さっきまではカインをからかっていたイカの人も、識別内容を確認しつつ意識を切り替えて臨戦態勢に移っていく。完全に悪ふざけモードは終了したようである。
そして招き猫さん達も識別内容を聞いて一旦距離を取っていた。まぁ近接物理なら距離を取ったほうが安全だよね。
「これは推測通り、物理特化型と判断してよさそうだな」
「注意すべき点はさっきみたいな攻撃ではなくて、移動の為の魔法の使用か?」
「そんなところだろうな。よし、魔力集中と自己強化に気をつけつつ、魔法をメインで削っていけ! ただし、空中での挙動も可能のようだから気をつけろ!」
「おうよ!」
「はーい!」
ベスタのその指示にカインさんと招き猫さんを筆頭に戦闘中のメンバーが頷いて行動を開始していく。何だかんだで個人のプレイヤースキルに差はあるけど、普段から戦闘で検証をしている人も多いので安心して見ていられるね。
そうして10分ほどで大根の討伐は完了した。途中で大根の魔力集中が発動中に蹴りと打撃のチャージ系の応用スキルの同時発動で危ない部分もあったものの、自己強化は発動させることもなく、昇華魔法の2連発で終わったね。
どうやら物理特化型は昨日の首長竜と同じで魔法には弱いようである。そして瘴気石を使って進化させる場合の傾向が少し分かった。この感じだと、強化の数値の大きい+6を食べた方が基本となるっぽいね。
「よし、2戦目もご苦労だったな。次は同じ+5ずつで魔法型と物理型を試してみるか。……このパターンだとどうなると予想する?」
ふむ、1戦目は魔法型のトカゲに+6で魔法特化型に進化して、2戦目は物理型の大根に+6で物理特化型に進化か。そこから考えるなら、同じ+5を2個でやるなら同格として扱われる?
「魔法型と物理型の組み合わせならバランス型になるってとこか? あと同じ型同士なら特化型とか?」
「だろうな。それと同格なら共生進化って可能性もあるんじゃねぇか?」
「あー! それはありそうだね!?」
なるほど、確かに同格なら共生進化というのも十分有り得そうな話だね。でもそうなってくると融合種の条件がいまいち分からない。前に見たクモとコケの融合種は遭遇した時には既に進化済みだったしな。
「……融合進化への条件が分からない……」
「そういえば発生させたフィールドボスはどっちも合成種だったよね?」
「大体はケイとアルマースの推測通り合成進化か共生進化だとは思うしな。融合種は現時点では狙っては発生させられないという可能性も否定は出来ん」
「あー、それもそうか……。出来ないって可能性もあるんだな」
現時点では単体のフィールドボスへの進化は不可能そうだし、共生進化が前提となる融合進化は出来ないという可能性もあるにはあるんだね。自然発生で共生進化した瘴気強化種がフィールドボス化する事で融合進化になるという可能性もありそうだ。
「とりあえず、推測の範囲ではやっていくが……あくまでそれらは瘴気強化種の場合だろうがな」
「あ、そっか。黒の暴走種なら別の可能性もあるのかな?」
「なるほど、支配進化か。……これって、融合進化も含めて成長体の時点で共生進化してないと無理じゃね……?」
「……おそらくな。そこは今回の検証で見当がつかない要素だ」
ベスタでも条件の把握が出来ていない要素になるんだな。ふーむ、成長体の時点で敵を共生進化させる方法かー。……うん、思いつかん! やっぱりここら辺は自然発生かな……?
「おーい、リーダー! さっきの大根でのドロップアイテムについて話してたんだけど、気になる事があるんだー!」
「どういう内容だ、招き猫?」
「えっとね、こっちの11人は全員が瘴気石を獲得したみたいなんだ。リーダー達はどうだった?」
「……そういえば確認を忘れていたな。俺は1個獲得しているが、ケイ達はどうだ?」
「え、ベスタもか? 俺もだな」
「ケイに同じ」
「あ、私もかな」
「私もです!」
「私もだね」
おや、どうやら俺らのPTは全員が瘴気石を獲得していたらしい。これはひょっとすると、確定入手か……? いや、でも確定と断定するにはまだ早いか。それでも高確率なのは間違いなさそうだけど。
「紅焔達はどうだ?」
「俺も獲得してるぜ!」
「僕もだね」
「私もですね」
「僕もだよ」
「俺もだから、もしかして俺らも全員獲得か?」
「……そのようだな」
これはボスの周回とは別の安定した瘴気石の入手のチャンスか!? あ、でも発生させるのに結構な個数の瘴気石を結構使うから、2PT12人で収支0くらい……?
ふむ、やっぱり瘴気石のメイン入手場所は周回ボスか。人数が少なければドロップ率は上がるって話だし、瘴気石の増加が出来なきゃ困る仕様だな。どこかの人数で劇的に増加するラインがあるのは確実だろう。
「おい、これまで他のフィールドボスを倒した事がある奴は、瘴気石の入手がどうだったか教えてくれ!」
「他のフィールドボスかー。そういや手に入れた気はするな?」
「私も手に入れたね。もしかしてフィールドボスだと確定入手?」
「確率での入手だと思って気にしてなかったが、こうなってくると違ってくるな」
「ちょっと情報共有板でも聞いてくる!」
「おう、任せたぞ!」
他にも集まっている人が次々にフィールドボスで瘴気石を入手していた事を話していく。どうもみんなは流石に確定入手だとは思ってなかったみたいで、PTメンバーにも報告していないという事例も多かったようである。
まぁ俺も瘴気石の入手に関しては話し合ってなかったっけ。あの時はシュウさんのテンペストで敵を集め過ぎて、話す機会をすっかり失っていたとも言うけども……。
「情報共有板でも、忘れたって人以外はみんな入手してたってさー!」
「そうなるとこれは確定入手の可能性は極めて高いな。よし、次からはフルPTで試していくぞ!」
「ほいよっと」
みんなもそのベスタの発案には賛同のようで、すぐさま次のフィールドボスからはフル連結PTで行う事が決定した。ま、確定入手になるなら個数を増やす為にもその方が良いよね。……でもそう上手く行くのかな……?
「おーい、リーダー!」
「……何か見つけたのか?」
「おうよ! 面白い成長体を見つけたぜ!」
「ほう? どんなものだ?」
「共生進化済みのラクダとカメだ!」
そうして砂漠エリアで成長体を探しに行っていたクマの人が、カメを背負ったラクダを引き摺って捕獲してきていた。……うん、さっきの疑問はこれで解決しそうな気がしてきたよ! 共生進化済みの成長体は用意されているんだね。
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