第440話 判明していく瘴気石の仕様


 2個の瘴気石を1個にする為の手段の確立は出来た。その強化された瘴気石の効果はまだ未知数ではあるけども、これはかなりの発見のはず!


「ケイ、桜花、その強化された瘴気石を貰っていいか? 少しエンの所に行って、ボスのヒノノコに使うとどうなるかを確認してみたいんだが」

「あ、それもそうだな。そこは任せた、ベスタ!」

「ほらよ! 任せたぜ、リーダー!」

「……リーダーになった覚えはないんだがな。まぁいい、ついでに検証への協力を募ってこよう。いくつ瘴気石が必要になるか分からないからな」

「それもそうだな」


 確かに俺らの持っている瘴気石と、ベスタの持ってる瘴気石と、桜花さんが在庫として持っている瘴気石で足りるかは正直未知数である。必ず成功するとも限らないし、正確な法則が見えるまでは数はいくらあっても良いくらいだな。


「ねぇねぇ、ベスタさん! 他にも検証に動いている人達もいるよね!?」

「……あぁ、居るな。ハーレ、情報共有板で検証情報の相互報告を頼めるか? 流石に俺だけじゃ手が足らん」

「了解です! 報告に行ってくるねー!」


 うん、中途半端な状態で情報共有板を放り出してきてしまったので、その辺の対応は必要だよな。おそらく、俺らと同じような検証を行っている集団は間違いなくいる。無駄を省く為にもその辺の情報共有は必須だよね。


「私達はどうしたらいいかな?」

「そうだね、どうしよう?」

「……そうだな。サヤは俺とフレンドコールを繋いでおいてくれ。ヨッシは検証への協力者への対応を頼む」

「分かったかな!」

「もし検証用の瘴気石を持ってきた人がいれば、その対応をすればいいんだね?」

「あぁ、それでいい。ただ、瘴気石の提供に無理難題をふっかけて来るやつは無視でいい」

「了解。あくまで実験段階での任意協力者って事だね」

「あぁ、そうなる。対価を出したいとこではあるが、効果のほどが未知数だからな。だが、上手く行けばそれだけの価値はあるはずだ」

「まぁフィールドボスの任意での出現方法だもんな。場合によっては瘴気石の価値も跳ね上がるか」


 だからこそふっかけて来るやつもいるんだろうけど、それに対応すると酷い事になりそうだし、相手にしないのが一番か。戦いやすい環境で、任意のフィールドボスの誕生の方法にはそれだけの価値はあるはず。……まぁ、上手く行けばの話にはなるけどさ。


「とにかく俺は協力者を募ってくる。ケイ、こっちの指揮は任せたぞ」

「おう、任せとけ!」


 そうしてベスタは樹洞の中から飛び出していった。あ、そういやさっきから雷鳴も雨音も聞こえなくなったから、雨は止んだっぽい? 少なくとも土砂降りではなくなったようだね。


「よし、それじゃ桜花さん、+2の瘴気石が作れるか試してみるか!」

「おうよ! とりあえず俺の在庫から使っていくか」

「さっき作ったのはベスタが持っていったから、+1から作り直しだな」

「ま、効果の検証も必須だしな。手早くさっさと作ろうぜ」


 そういう事なので、もう1度+1の瘴気石を作り出していく。同じ事を2度目なので、失敗する事なく同じものが出来上がった。

 検証を続けて行くために再度桜花さんが作り出した瘴気石+1と、通常の瘴気石をそれぞれ1個ずつ並べて置いていく。さて、これで+2が作れるのかどうかが非常に重要になってくるんだよな。


「それじゃ実験開始!」

「おうよ! 『瘴気収束』!」


 そして2個の瘴気石の間に、不可視の引力が生み出されていく。流石に瘴気収束がLv1という事もあって今回もそれなりに時間はかかっているけども、2個の瘴気石が吸い寄せられ分解されて溢れた瘴気に包まれていった。

 1回目よりも溢れた瘴気が多い気もするけど、成功か失敗かどっちだ……? さっきはベスタが風魔法で瘴気を吹き飛ばしたけども、そのままだとどういう風になるのか気になるから少し様子を見よう。


 少しして溢れた瘴気が薄れていき、瘴気に隠れていた瘴気石が樹洞の床部分に落下していく。……またちょっと大きくなったか?


「あ、放っておくと瘴気は霧散するんだね」

「みたいだな。それで桜花さん、どうなった?」

「よし、これも成功だ! 『瘴気石+2』になってるぞ!」

「おっし!」


 とりあえず1個ずつ重ねていけば瘴気石の強化は可能なようである。こうなってきたら、どんどん重ねていきたくなってくるね。あと+1同士で重ねられるかも確かめておきたい。


「他の検証チームからの質問が来てるよー!」

「質問ってどんな内容?」

「えっとね、同じように不動種で纏瘴を使って瘴気収束を使っても出来ないってー!」

「……え、マジで?」


 俺らの方ではうまく行ってるけど、他の検証チームでは失敗……? という事はまだ気付いていない他の条件もある……? ふむ、他のチームの状態が正確に分からないと判別が難しいね。

 不動種でも種族によって不可な場合があるというのは……これは却下だな。不動種だからこそ、これは成功している可能性が高い。木の種類はおそらく無関係だ。……不動種であっても、収束させる条件が違うとか? あ、もしかして……? 


「ハーレさん、1つ他の検証チームに確認を取ってくれ」

「何を確認すればいいー!?」

「瘴気収束をしてる場所。具体的には樹洞の外か、中か、どっちかを確認してくれ」

「了解です!」


 とりあえず思いついた可能性としてはこんなところだな。些細な事でも差異を洗い出して、条件を確定させていく必要がある。さて、この推測は当たりかどうかが問題だな。


「ケイさん、当たりだよ! 普通に外でやってたってー!」

「やっぱりか! ……ちなみに外でやってるって、雨はどしたの?」

「森林エリアみたいだから、雨は降ってないと思うよー! これから樹洞の中でやってみるって!」

「あ、なるほどね。引き続き、情報共有は頼むぞー!」

「はーい!」


 別の初期エリアでの検証だったのか。勝手に森林深部での検証チームかと思い込んでたよ。でもまぁ、大雨のおかげで違う条件で試す事になったんだろうし、これは結果オーライだな。

 

「へぇ、樹洞の中ってのも条件なんだな」

「みたいだな。それじゃ+3の生成に行ってみるか?」

「おう、とことんやってやろうじゃねぇか!」


 思った以上に上手くいっているので、段々と桜花さんのテンションが上がっているね。まぁ、その気持ちはよく分かる。さぁ、次々行ってみようー!


「あ、ちょっと待ったかな!」

「ん? サヤ、ベスタからの連絡か?」

「うん。ヒノノコに+1の瘴気石を食べさせて、瘴オオヒノノコに進化させた時に変化があったみたいかな」

「お、マジで!? どんな風に変化したって?」

「瘴オオヒノノコのLvが1上がった状態になったんだって。+1の効果は食べさせた後の進化の時のLvが増加するみたい」

「……それって、フィールドボスにも該当しそうだな?」

「むしろフィールドボス用の仕様じゃない?」


 ただ進化させただけならばLv1からスタートになるフィールドボス候補の成長体Lv20の敵だけど、Lvを上げる手段はやはり存在する可能性は高そうだね。……これは、フィールドボスを実際に生み出してみないと推測の域は出ないけど。


「ベスタさんはもう少し呼び掛けてから戻ってくるって。それと既に何人かが協力しにこっちに向かってるって」

「お、マジか。ヨッシさん、対応任せるぞー!」

「うん、了解」


 サヤはちょっと人見知りなとこもあるから、ここはそういうのは平気なヨッシさんが適任だろうね。まぁ人数次第では俺もフォローに回るけど、そこまで極端に人数が増えるって事もないはず。

 さて、どこまで重ねられるかを試していかないとね。夜に向けて、量産していこう!


「さてと桜花さん、+3をやってくか。あ、それとも+1同士でどうなるか試してみる?」

「あー、そうだな。+1同士でどうなるかやってみるか。使った瘴気石を合計数にはなりそうな気はするな。この場合だと元になるのが1個で追加分が3個だから、+3か?」

「なるほど。それじゃそれを確かめる為にも+1同士でやってみよう!」

「だな! とりあえず必要な+1を2個作っていくか」


 そんな風に組み合わせを試しながら、いくつか強化を重ねていく。その結果としては予想通り使用した瘴気石の合計数になるようで、+1同士では+3の瘴気石になっていた。


「ふむふむ、+3まではちょっとずつ必要な時間は増えているけど、特に問題はねぇな。これ、フィールドボスへの合成進化や融合進化で2個食わせるんだよな? 2個分の+の値の分だけ、Lvが上がるのか?」

「それについては夜に試してくる事になるな。それにしても+3を2個でその分だけLvが上がるなら、進化直後でLv7か。……まだ推測でしかないけど」


 ちょっとフィールドボスのLvとしては低い気もするけど、これについては実際に試してみないと何とも言えないからね。よし、いくつか試せるパターンを用意する為にももう何個か作っていこうか。少なくとも+5を2個くらいは用意しておきたいところだね。


「とりあえず+4を作ってみようぜ、桜花さん!」

「それは良いんだが、もう俺の在庫はそんなにねぇぞ?」

「あ、それなら俺らの持ってる分も使おう。サヤ、ハーレさん、ヨッシさん、瘴気石をくれー!」

「うん、確かに必要だもんね」

「これで良いかな?」

「はーい! あ、樹洞の中でやれば成功したってー!」

「みんな、サンキュ。あー、やっぱり樹洞の中が条件か」

「なるほどなー。そりゃ中々この手段が見つからない訳だ」


 纏瘴を使った不動種の樹洞の中で初めて成功するって、結構複雑な条件が設定されてるよね、この瘴気石の強化方法。簡単にフィールドボスの任意での再出現はさせないようにしてるって印象がある。

 まぁ流石に簡単に再出現させられるようなのがフィールドボスじゃ駄目って事なんだろう。……これは放っておけばフィールドボスは自動で再出現するけど、狩り逃しも発生しそうだからその対応策って感じかな?


「おっす、ケイさん達! 面白い検証をやってるんだって?」

「僕達も混ぜてほしいところだね」

「あ、紅焔さん、ソラさん、おっす!」


 そこにやってきたのは夕方に良く遭遇する紅焔さんとソラさんであった。そしてこの2人だけでなく、他にも数名集まっている。おー、流石に検証ともなればみんな集まってくるね。


「……これを使ってくれ」

「え? あ!?」


 その大勢の隙間を素早く駆け抜けて、ヨッシさんに瘴気石を押し付けるように手渡してからあっという間に姿を消していったヤドカリの人……十六夜さんがいた。っていうか、置いていった瘴気石が20個くらいありそうなんだけど十六夜さん、とんでもねぇな……。


「……あはは、やっぱり人付き合いは苦手そうだね、十六夜さん」

「みたいだな」

「……さっきのヤドカリの人って、誰だ? とんでもない動きしてたぞ? ケイさん達、知り合いか?」

「まぁそんなとこだな。悪い人じゃないから、心配はいらないぞ」

「……ケイさんがそう言うなら、大丈夫なんだろうな」

「ま、只者じゃなさそうだけどね。紅焔、苦手な人と重ねて見たら駄目だよ?」

「分かってるって、ソラ!」


 あ、紅焔さんからは逃げるように素早く立ち去っていった十六夜さんの行動が、例のキツネの人と重なって見えたのか。……まぁソラさんが注意をしてくれてるし、十六夜さんの場合は秘密主義って訳じゃないから心配は要らないんだけどね。

 十六夜さんについては大々的に説明も可能ではあるけど、多分それを望まなさそうなんだよな。……ここは十六夜さんの気持ちを尊重しておこう。確実に協力してくれる為にわざわざ渡しに来てくれたみたいだしね。


 さてと、それなりの人数はいるけどこのくらいなら俺のフォローまでは必要なさそうだね。


「ヨッシさん、対応任せた」

「了解。検証の協力の方は私が対応しますから、順番にお願いします!」


 そうヨッシさんが呼び掛けていけば、集まってきていたみんなが順番に並び始めている。みんな、完全に検証慣れしてるな。まぁこの様子なら吹っかけてくるようなふざけた奴もいなさそうだ。

 さて、検証を再開していこう。今度はどういう組み合わせでいこうかな。順当に+4に強化するか、+2と+3があるからそれを重ねてみるか……。


「桜花さん、次は順当に+4にしてみるか」

「それも良いけど、折角なら+2と+3でやってみないか? 気になってる事もあるからな」

「……気になってる事って?」

「ケイさん、纏瘴だけに意味があると思うか?」

「思わない。纏浄が必要な何かがありそうだもんな」

「だろ? だから、そっちを先に確かめようぜ。順当に強化していくのはその後でも良いだろ」

「……だな。桜花さんのその案に賛成だ」


 纏浄にも何かあるんじゃないかというのは俺も考えていた内容ではある。そして瘴気石を強化していく際に溢れ出す瘴気があるというのも気にはなってるからな。

 今やっていることは単純に考えると瘴気石の瘴気の密度を上げているんだ。何かあると考えておいた方がいい。その辺を念頭に入れて、次の段階にいってみよう!


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