第15章 あちこちを探索しよう:砂漠編

第436話 天気が悪い日


 今日の授業も終わったので、さっさと家に帰ろうかな。母さんからの買い出しの話もないし……あ、そういえば今日はアイスを買って帰るんだった。今日は晴れている事もあって、妙に蒸し暑いから普通に冷たい物が食べたい気分である。


「あー、くっそ暑い……」

「自転車通学、頑張れよ! 俺はアイスを買って帰る!」

「なんだと!? 俺にも寄越せ!」

「……いやそこは自分で買えよ」

「……金欠なんだよ……」

「なら諦めろよ……」

「うぐっ!? くそ、覚えてろよー!」


 アイス一個でそんな捨て台詞を残して行かれてもな……。安いのなら50円くらいのもあるのに、それすら買えないって慎也はどんだけ金欠なんだよ。

 まぁ慎也の懐具合とかはどうでもいいや。コンビニよりスーパーの方が近いから、スーパーでアイス2つ買って帰るか。




 そうして安めのカップアイスを2つ買って帰宅。晴香はまだ帰ってないから、晴香の分のアイスを冷凍庫に放り込んでおいてっと。一応メッセージを送っておくか。『アイスは冷凍庫の中に入れたから、好きなタイミングで食ってくれ』っと。

 さてと、ゲームを始める前にアイスを食ってしまおう。そういやアイスを選んでいる途中にラムレーズンを見て思ったけど、ゲーム内でドライフルーツって作れるのかな? 俺はドライフルーツは苦手だからどうでもいいや。もし作れても食べる気しないし……。


 そんな事を思いつつ、アイスを食べていると晴香から返事が来ていた。えーと、『やったー!』って、ものすごく簡潔だな。まぁ普段は買ってやる事はないけど、晴香も色々あったみたいだしそのご褒美って事で良いだろう。


 さて、アイスも食べ終わったしゲームを開始といこうじゃないか!



 ◇ ◇ ◇



 そしていつものようにログインすれば、いったんの場所へとやってきた。今日の胴体部分は『あー、暑い日のアイスって良いものだね!』となっている。いや、同意はするけども、運営が今アイスを食ってんの!? 休憩時間とかの話かな?


「なぁ、いったん。運営の人、アイスを食ってんの?」

「あー、それ〜? プロデューサーの人が気紛れで買ったスクラッチくじで5000円が当たったらしくて、運営の人達に差し入れで買ってきてたやつだね〜」

「……聞いた俺も俺だけど、それは暴露して良い情報なのか?」

「別にこれについては問題ないね〜」


 あ、そうなんだ。それにしてもスクラッチくじで5000円か。何枚買ったのかは知らないけど、臨時収入5000円は嬉しいだろうね。……まぁそういう運営の裏事情はどっちでもいいや。


「いったん、スクショの承諾をするから一覧をくれ」

「はいはい〜。こちらをどうぞ〜」

「サンキュ」


 とりあえずいったんからスクショの承諾待ちの一覧を見てみる。お、流石に3つのサファリ同盟主催の探索だったね。スクショの承諾が山ほど来てるよ。えーと、ざっと見た感じではアルをメインに撮ったのに俺が写り込んでいるのが多い感じだね。

 ん? 荒れ狂う雷を帯びた大渦が消えかけて、俺と紫雲さんでデブリスフロウを放った瞬間を写したスクショがあるな……。これ、誰が……? って、弥生さんかい!

 いや、もう、あの状況でも平然と撮ってるんだね……。とりあえずこれは迫力があるから貰っとくけどさ。……後はそこまで心を惹かれるのはないから別にいいや。


「いったん、この1枚をくれ。後は全部、承諾でよろしく」

「はい〜。そのように処理しておくね〜」


 さてと大雑把ではあるけど、スクショの処理はこれでよし。集合のスクショはまだ全員分の承諾は来てないっぽいね。まぁゲーム内で見る分にはそのままでも問題ないし、それはもう渡したからな。


「それじゃ今日のログインボーナスを渡すね〜」

「ほいよ」


 そうして今日の分のログインボーナスをいったんから受け取って、ここでするべき事は終了である。ログインするキャラはいつも通りのコケである。あ、そういやLvが上がって同調共有によるスキルの登録上限数が上がったのか。……まぁ、コケでログインしたらあんまり意味もないか。


「それじゃ行ってくる」

「今日も楽しんで行ってね〜」


 いったんに見送られながら、ゲーム内へと移動していく。さて、今日は速攻でレベル上げに良さそうな場所の情報収集をしていこうっと。



 ◇ ◇ ◇



 そしてゲームの中にやってきた。今日は昼の日だし、昨日のうちに帰還の実でエンの所まで戻ってきている。……でも、かなり薄暗く豪雨と雷鳴が轟いていた。滅茶苦茶天気が荒れてますがな!?

 あ、でもエンの周囲の木や草花がそこそこ復活してきているね。ヒノノコの魔法の火で焼け落ちたものだし、この辺の瘴気も惑星浄化機構によって消滅したから復活も早いのかな。ちょっと降り過ぎ感もあるけど、これでこの辺りの植物達の回復も早まるかもしれないね。


 さてととりあえず雨は俺には悪影響はないから、忘れないうちにログインボーナスを貰っておこう。


<ケイが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>

<ケイ2ndが『進化ポイントの実:灰の群集』を使用します>

<アイテム使用により、増強進化ポイント4、融合進化ポイント4、生存進化ポイント7獲得しました>


 よし、ログインボーナスについてはこれで問題ない。サヤ達がログインしてくるまでに少し時間があるだろうから、ちょっとまとめを見るか、情報共有板に顔を出してこようかな。


「お、ケイさんじゃねぇか!」

「お、桜花さん。それに灰のサファリ同盟の人達か。慌ててどうしたんだ?」


 これからの行動を考えていると、何かを抱えるようにしてエンの葉の下に走ってくる集団が見えた。その先頭に桜花さんのメジロがいた。これは一体、何事かな?


「いやな、果物を凍らせる事が出来るなら、干してドライフルーツも出来るんじゃないかって事になっててな?」

「あー、そこにこの雨か。それで避難してきたって事か。え、でもなんで桜花さんまで?」

「俺はあれだ、たまたま別件で居合わせて、ノリでそのまま着いてきた」

「ノリで着いて来ただけかい!」


 桜花さんは干してた果物の避難を手伝った訳じゃないんだね。まぁメジロの大きさじゃ流石に運ぶのは無理か。

 それにしてもちょっと前に思ったけど、実際にドライフルーツも作成が始まってるんだね。そして作る上での最大の欠点は時々雨が降ることか。


「うーん、とりあえず岩の生成で運んできたけど、この天気は厄介だね」

「こうなってくると、雨避けの出来る場所が欲しいとこだな」

「木を伐採して、小屋でも建ててみる?」

「いやいや、流石にそれは難易度が高いだろ」

「……それなら、崖に穴を掘って人工洞窟でも作る?」

「ありといえばありだが、崩れたりしねぇか?」

「そうなったらそうなった時に考えない? まずは試してみようよ」

「……それもそうだな。雪山での氷結草の栽培にも人工洞窟は必要そうだもんな」

「そうそう、実験あるのみだよ!」


 灰のサファリ同盟のメンバーの会話を聞いていると、洞窟を作る気でいるらしい。まぁエンのとこまで避難してくるよりはそれが確実な手段なのかもしれないね。

 それにしても雪山については進展があったみたいだね。そういや昨日レナさんが確認に行ってたっぽい感じだったけど、具体的にどうなったんだろ?


「ケイさん、雪山が気になるのー?」

「おわ!? あ、なんだ、レナさんか」


 レナさん、背後から近寄ってくるのはやめてください。聞き覚えのある声だったから寸前で止めたけど、一瞬スキルの発動を考えかけたよ。


「あはは、ついやりたくなってねー!」

「まぁちょっとくらいなら良いけどさ。で、雪山がどうしたって?」

「そうそう、ケイさん達には直接報告しておきたかったんだよね。他のみんなは?」

「アルはこの時間には確実にいないし、サヤ達もまだログインしてないはず……」


 フレンドリストを確認してログイン状態を見てみても、まだログインはしてないようである。


「んー、みんなまだだったかー! ちょっと今日は夜が都合悪いんだけど、夕方にみんな揃ったりしない? 出来れば6時前後くらい」

「あー、アルが確実に無理。晩飯の時間のズレもあるから、その時間帯はタイミングによっては結構微妙かも……」

「そっかー。それ以降はわたしの都合が悪いし、仕方ないかなー。今なら少し時間あるからケイさんに報告して、みんなに伝えて貰っていい? まだまとめには上がってない情報なんだよね」

「そういう事なら構わないぞ。で、どんな情報?」

「んーと、ちょっとここは人が多いから少し離れよっか。桜花さん、樹洞借りれない?」

「おう、まだ開店してないから少しくらいなら別に良いぜ」

「それじゃ、桜花さんのとこでね!」

「ほいよ」


 とりあえずエンのすぐ側は人が多い場所だから、内緒話には不適切って事だね。ちょうどいいタイミングで桜花さんもいたし、そこは頼りにさせてもらおう。


<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します>  行動値 62/62 → 60/60(上限値使用:2)


 よし、水のカーペットの生成完了っと。桜花さんのメジロは飛べるから良いとして、レナさんは乗せていこうかな。


「さて、それじゃ飛んでいきますか」

「あ、ケイさん。今はそれは止めといたほうが良いよ?」

「え、何で?」

「今の天気だと、雷が落ちてくるぜ」

「……マジで?」

「うん、ホントだよー!」

「おう、俺がこの身で体験したからな! さっき落雷で死にかけた!」


 どうやらこの雷雨の中を飛ぶというのは自殺行為のようである。……今は死ぬとややこしいからここは大人しくしておこうっと。




 そして普通に陸地を移動して、桜花さんの桜のところまでやってきた。桜花さんは時間の短縮という事で、エンのところでメジロからログアウトして、桜でログインして待機していてくれた。こうやって対応してくれるのはありがたいね。

 移動中は落雷注意という事だったので、水のカーペットには乗らずに徒歩での移動にした。俺はどっちでも問題なかったけど、レナさんの傘代わりに使用しましたよっと。


「さて、ケイさんもレナさんも入ってくれ」

「お邪魔しまーす!」

「お邪魔します」


 何度か来た桜花さんの樹洞の中ではあるけども、桜花さんにお世話になる事も増えてきたもんだ。まぁ他にそれ程親しい不動種の知り合いもいないし、知り合った時の妙な縁もあったからね。

 そしてレナさんは椅子代わりに置かれている岩の上に乗っている。特に必然性もないけど、気分的な問題で俺も向かい側の岩に乗っておこうっと。


「さてケイさん、まずはわたしが見つけられなかった場所を見つけてくれてありがとね」

「あー、あそこか。あれはレナさんが登るのに悪戦苦闘して諦めたって認識でいい?」

「あはは、そうなるねー。ダイクを連れて行ってどうにかしたけど、自力で登りたかったなー」


 あ、やっぱりダイクさんが連行されてあの上に登ったのか。大きな湖……今はネス湖か。あそこでレナさんが無所属のタコの人に乗って登場した時にダイクさんのログインは確認したけど、あのタイミングではログインしてなかっただけか。

 それにしてもレナさんが自力で空中の移動が出来れば、戦力アップになりそうではあるよね。……あ、後でまとめに上げるつもりだった弥生さんのあの戦法が役立つかも?


「レナさん、空中移動に関して良い戦法があるぞ?」

「ほほう、それは是非とも聞きたいね?」

「俺も試した事はあったし、あの弥生さんの戦法を分析した結果でね。後でまとめに上げる予定だけど、土の操作で足場を作る方法がある。ただ、結構プレイヤースキルが必要だと思うけど、レナさんならいけるんじゃないか?」

「へぇ、弥生が頑なに隠してたあれを見破ったんだ? どういうカラクリだったの?」

「移動操作制御と並列制御の合わせ技。闇の操作と土の操作の同時使用だな」

「ほほう? へぇ、そういうカラクリなんだ。わたしは移動操作制御は持ってないから見落としてたね。うん、大体分かったよ」

「いえいえ、どういたしまして。後でまとめの情報提供に上げとくから、確認しておいて」

「うん、了解。確認しておくよー! って、わたしが報告しに来たのに立場が逆ー!?」


 あ、そういえば雪山の件がメインの話だった。まぁこれはこれで重要な内容だし別にいいんじゃないかな。というか、弥生さんはレナさん相手には隠し通してたんだな。

 まぁレナさんなら小石を足場にして移動するのはお手の物な気もするから、その辺を警戒してかな? レナさんと弥生さんとの関係性がよく分からないから何とも言えないけどね。


 おっと、また思考が脱線しそうになっている。ちゃんとレナさんからの雪山の調査報告は聞いておかないとね。氷結草の群生地については気になってるしね。

 

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