第427話 劣オオプレシオ討伐戦 上


 首長竜がフィールドボスであるという事は確定し、Lv17であった。さっき与えたダメージからしてもう少しLvは低いかと思ったけど、あれは奇襲というか強襲がうまく決まっただけか。……ヨッシさんの毒が不発、マムシさんの毒は成功だったのはLv差の影響もあるのかな?


 とにかく今はシュウさんが首長竜の攻撃を引きつけてくれているので、今のうちに戦略を手早く考えよう。

 こちらのメンバーはLvの高い順にLv18が弥生さん、シュウさん、ルストさん。Lv17がマムシさん、Lv15が甘口辛子さんとワニの人。Lv13が水月さん。Lv12がサヤとヨッシさん。Lv11が俺、アル、ハーレさん。Lv7がアーサーと翡翠さんだな。

 単体で進化させている人と、複合進化をしている人でやっぱりLv差はあるね。まぁこれは分かってた事だから良いとしよう。


 フィールドボスでLv差があっても、進化階位さえ違わなければちゃんとダメージや状態異常が入るのは確定だな。一発目のアーサーの攻撃で短時間とはいえ朦朧が入ったのが良い証拠である。……これは勢いをつけてのものなんだろうけど、それでもダメージが与えられるのなら問題ない。

 ただこちらの被ダメージも大きくなるだろうから、その辺を考慮すると主戦力はLv15以上の人で組み立てるのが良さそうだね。……よし、とりあえず自己強化が切れるまでは温存しつつ持久戦といくか。


「で、ケイ、どうする?」

「……向こうの手の内が殆ど分かってないから基本的に臨機応変だな。まずアルは俺と一緒に撹乱だ。俺が嫌がらせ的に光で挑発するから、アルは回避に専念してくれ」

「……なるほど、それで自己強化の時間切れ待ちか」

「そういう事。それでヨッシさんとマムシさんは、タイミングが被らないように神経毒をよろしく」

「了解」

「おう、任せとけ!」


 とりあえず俺らはダメージよりも動きを封じる方向性で動くとして、主力が弥生さんやルストさんに任せよう。えーと、連結PTでもPT会話って出来たよな……? うん、出来るね。


「そろそろ限界だね……。弥生、任せるよ」

「シュウさん、任せて! 『大型化』『アースクリエイト』『操作属性付与』!」


 シュウさん達の方を見てみればそろそろ風の防御が時間切れのようで、そのタイミングに合わせて大型化した弥生さんが首長竜と同じように石の鎧を纏って、体当たりを行っていた。

 ふむ、互いに自己強化に土属性の付与だし、Lvも近いので威力的には互角といった感じか。でも弥生さんを攻撃の相殺に回すのはどう考えても得策じゃないね。


「弥生さん、聞こえるか?」

「もちろん聞こえてるよー! アルマースさんと撹乱に回るのは聞こえてたから、それまではわたしとシュウさんで凌いでおくね。だから、その間に準備をお願い」

「ほいよ。サヤ、水月さん、アーサー、翡翠さんは弥生さんとシュウさんの支援を頼む。ハーレさんとルストさんは回復支援に回ってくれ。ただし、全員無茶はせずに回避を優先する事!」

「分かったかな!」

「えぇ、分かりました!」

「コケのアニキ、俺も頑張るよ!」

「頑張りましょうか、アーサー」

「……私も頑張る!」


 よし、各自が基本的に距離を保ちつつ、弥生さんが攻撃に移るタイミングに合わせて別方向から攻撃を仕掛けていってる。これで標的が分散して弥生さんの負担も減るだろう。行動値に上限がある以上、1人だけに任せておくわけにもいかないからな。

 現状では首長竜が特に異常な反応を示すのは光くらいだし、極端に誰かが狙われる事はないはず。こうしている間にシュウさんも行動値と魔力値を回復させているだろうから、自己強化の間を凌ぐのは問題ないか。


「辛子さんと、ワニの人……えーと紫雲さんか。悪いんだけど、首長竜の基本攻撃パターンを教えてくれ。あともし分かれば使う応用スキルの種類もだ」

「おうよ。首長竜は俺らが受けた攻撃の種類だと、噛みつき、首での薙ぎ払い、尻尾での薙ぎ払い、体当たりってところだな。応用スキルに関しては、薙ぎ払いの連撃系だ」

「……ふむふむ、チャージ系かと思ったら連撃系か……」


 首長竜の攻撃が連撃系というのは予想外の内容だったな。いや、でもさっきまでシュウさんに向けて何度も首を打ち付けていたから、そうでもないのか。……ただ連撃系だけとも限らないから、その辺は要注意しておかないと……。

 とりあえず得られる情報はこれ以上はなさそうだな。となれば、ここからは行動に移すのみ!


「辛子さんと紫雲さんはHPが全快したら、他のみんなに加わってくれ。それとみんなに伝達。首長竜の自己強化が切れたら、懐中電灯モドキで隙を作るから攻撃準備をよろしく!」

「……ケイ、その後も何か考えてるよね?」

「おう。それは直前に指示を出すけど、シュウさんは風の防壁の複合魔法が発動出来る余裕を残しておいてくれ」

「そういう事なら分かったかな!」

「何か考えがあるんだね? 分かった、余裕を持たせておくよ」


 シュウさんの複合魔法が首長竜の逃亡防止に重要になってくるからな。他のみんなからも了承の返事が聞こえてきている。

 さてと、これからやる事の仕込みは時間との勝負だ。俺とアルで撹乱はするけども、俺は他にもする事があるからな。


「アル、自己強化が切れたタイミングが重要だ。アルの防御を担当しながら遠隔同調で湖底に仕込みをする」

「……ケイ、出来るのか?」

「まぁ、ロブスターの方は基本的に移動させないから大丈夫だろ」

「……ならいいか。まぁ明らかに格上のボスだから、手抜きという訳にもいかないか」

「そういう事」


 一応作戦は考えたけど、どこまで効果があるかはやってみないと分からない。準備の時間が足りなければ中途半端にはなるだろうけど、それで実行するしかないな。

 その為にも一度アルの背中から降りて、近場の地面にハサミを接触させる。さてとまずは下拵えをしておかないとね。


<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 45/49(上限値使用:12)


 よし、これで湖底に少しのコケを生成完了。この後の作戦ではここを起点にしていくから、最重要なんだよね。


「おっ、極端にスキルLvが違わなければそろそろだぜ」


 そう言った瞬間にマムシさんの自己強化の効果が切れていた。それほど変わらないタイミングで首長竜も使ったはずだから、自己強化のLv次第にはなるけどもうすぐ切れるか、ちょっと猶予があるかのどっちかである。とりあえずもうすぐ切れる場合に即座に動けるようにアルの背中の上に戻ってっと。


 それにしてもサヤ達が入れ替わりながら首長竜へと微々たるダメージではあるけど、着実にダメージを与えているね。時々被弾もしているけど、そこはすぐにハーレさんとルストさんがフォローに回っている。よしよし、良い感じだね。お、様子が変わって、表面の石が消えたな。


「ケイさん! 首長竜の自己強化は切れたよ!」

「よし、作戦開始! アル、首長竜の上に回り込め!」

「俺も便乗させてもらうぜ。良いよな?」

「……マムシさん。そうだな、いざって時は拘束や毒を任せるよ」

「おう、任せとけや!」

「それじゃ、行くぜ! 落ちんなよ、ケイ、マムシさん!」


 俺とマムシさんがアルの背の上に乗った状態で、アルが首長竜の上部へと回り込む。その俺らの動きに警戒したのか、首長竜がこちらを向いてきた。ふふふ、首長竜め、そんなにこっちを見てて良いのか?

 光が大嫌いな首長竜には、眩しい眩しい懐中電灯モドキを浴びせてやる。という事で、しれっと首長竜に光が向かわないような方向に光を収束させた状態で、アルの巨体に隠していた懐中電灯モドキを移動させていく。


 照準はこちらを睨んでいる首長竜の顔面! 拡散させていた光を前に嫌がった時よりもかなり収束させて照射してやった。おぉ、思いっきり嫌がって暴れているね。


<ダメージ判定が発生した為、『移動操作制御Ⅰ』は解除され、10分間再使用が不可になります>

<『移動操作制御Ⅰ』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 45/49 → 45/55(上限値使用:6)


 移動操作制御が解除になるのは想定済み。ふむ、暴れながらも逃げ出そうとしているということは、眩しい光を見ると逃亡するのが行動パターンとして確定だ! まぁそう簡単には逃さないけどね!


「アル、湖底に叩きつけろ!」

「おうよ! 『魔力集中』『旋回』!」



 どうやら盲目に対する耐性は非常に低かったようで、首長竜は盲目の状態異常が入ったみたいだ。そんな隙を逃す意味もないし、アルが縦に旋回をしながら尻尾で湖底へと叩きつけていく。

 おっと、アルの旋回でバランスを崩しかけたね。ちゃんと木にしがみついておかないと落ちてしまうから気をつけないと。


「行くよ、みんなー! 『並列制御』『ウィンドクリエイト』『風の操作』! そんでもって『魔力集中』『アースクリエイト』『操作属性付与』『爪刃双閃舞・土』!」

「頑張るぞ! 『自己強化』『重突撃』!」

「……支援する! 『並列制御』『ウィンドボム』『風の操作』!」


 暴れている首長竜が叩きつけられて行くのに合わせて、弥生さんは一気に跳び上がって連続の爪での斬撃を首長竜の腹に向けて繰り広げていき、落下する勢いが少し押し戻されていった。

 そこに翡翠さんの指向性を変えた風の爆発を推進力に変えたアーサーが首長竜の腹に追撃を与えていく。さて、俺は俺のやるべき事をやっていこう。


<行動値上限を15使用して『遠隔同調Lv1』を発動します>  行動値 45/55 → 40/40(上限値使用:21):効果時間 5分


 魔法砲撃が無駄に発動しっぱなしになってるけど別に良いか。さて、準備をやってくぞ!


<行動値を3消費して『群体内移動Lv3』を発動します>  行動値 37/40(上限値使用:21)

<『遠隔同調』の効果により、視界を分割表示します>


 さっき増殖で生成したコケへと移動していく。さてここからは時間の勝負だ!


<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 33/40(上限値使用:21)

<行動値を3消費して『群体内移動Lv3』を発動します>  行動値 30/40(上限値使用:21)

<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 26/40(上限値使用:21)

<行動値を3消費して『群体内移動Lv3』を発動します>  行動値 23/40(上限値使用:21)

<行動値を4消費して『増殖Lv4』を発動します>  行動値 19/40(上限値使用:21)

<行動値を3消費して『群体内移動Lv3』を発動します>  行動値 16/40(上限値使用:21)

<熟練度が規定値に到達したため、スキル『群体内移動Lv3』が『群体内移動Lv4』になりました>


 群体内移動のLvが上がったけど、今はそれはいいや。とにかく湖底にある程度コケを増殖させて、端っこに移動して、そこから更に増殖させてコケエリアを作り出した。

 そして発光も発動したままだからこれで灯りは確保。そして何より、俺の光の操作の光源を用意できたから、これでいつでも狙い撃てる。ふふふ、遠隔同調は使えるじゃないか。


「ちっ!? しくじったか!?」

「アル!? マムシさん、迎撃を!」

「おら! 『連刺突』! って、あぁん!?」


 俺が湖底にコケを増殖させている間に首長竜が体勢を立て直したのか、アルを襲おうと迫っている首長竜の姿があった。ちっ、少し目を離しただけでもう体勢を立て直せるのか、この首長竜!? 予想以上に体勢を崩し続けるのが難しいっぽいな。


 そしてアルを狙いだした首長竜に向けてマムシさんが連続の刺突を放つと、首長竜はそれを受け流すように回避しつつ連続で噛み付いてきていた。今のはカウンター技か!? しかも銀光を放ち出してるし!?

 ヤバい、マムシさんは回避された事とアルの回避の為の挙動でバランスを崩したみたいで、これは対処しきれそうにない。ちっ、行動値の余裕はないけどアルの木にしがみついているロブスターの視点に切り替えだ。


<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』を発動します> 行動値 11/40(上限値使用:21): 魔力値 181/196


 ははっ、魔法砲撃を発動したままにしといて良かったかもな。方向的にしがみつくのは右のハサミだけでどうにかなる。左のハサミを始点に設定して、砲撃化した防壁魔法を撃ち出していく。

 そして首長竜の顔面に向けて撃ち出した水弾も受け流して回避しようとしたが、少しでも触れていたようで水の防壁が展開して首長竜の前進を妨害だ!


 あー、水中で水を生成した事になるから首長竜の泳ぐ状態も乱したっぽいけど、連続の噛みつき攻撃によってあっという間に水の防壁の耐久値が無くなってしまった。この威力は受けるとヤバイな。


「今度は躱させねぇ! 『溶解毒生成』『毒牙』! ついでにまた巻き付いてやる! 『強束縛』!」


 そしてその隙を逃すことなく、躱された事へのリベンジも込めたようにマムシさんが首長竜の首に巻き付いていく。毒は残念ながら効かなかったみたいだけど、この辺はフィールドボスって事を考えれば仕方ないのか。

 まぁとにかく、今はマムシさんが首を締め付けて首長竜は暴れてはいるけど身動きは鈍くなっている。これは絶好の攻撃チャンス!


「アルマースさん、俺ごとでいいからこいつを吹き飛ばせ!」

「……いいんだな? 行くぜ! 『旋回』!」

「みんな、今がチャンスだ! 一気にHPを削れー!」


 マムシさんが巻き付いている状態で、再びアルの縦方向の旋回によって首長竜が湖底の俺が生み出したコケエリアへと叩きつけられていく。今の首長竜は自己強化も魔力集中も発動していない状態だし、大ダメージが狙えるだろう。


「連撃系応用スキルを一気にいくよ! 『魔力集中』『連閃・土』!」

「えぇ、行きましょう! 『魔力集中』『根槍連衝』!」

「削るチャンスかな! 『自己強化』『連閃』!」

「そのようですね! 『自己強化』『連閃』!」

「……私も行く! 『魔力集中』『鋭針連衝』!」


 そして弥生さん、ルストさん、水月さん、サヤ、翡翠さんの5人が連撃系応用スキルを同時に発動していった。みんな、一番初めに使った強化系のスキルの効果は切れたみたいで別のものに切り替えていた。そして5つの次々と強くなっていく銀光を纏った攻撃が首長竜のHPをどんどん削っていく。

 これでも残りHPは3割半くらいか。結構大技を叩き込みまくったとは思うんだけど、流石にフィールドボスともなれば甘くもないか。

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