第420話 作戦会議
ナマズの集団も全て撃退が終わったし、とりあえず一息だね。それにしても弥生さんやシュウさんはデンキナマズの対処方法は分かってたみたいだけど、この辺は昨日調査したのかな?
そんな事を考えているとナマズと戦う為に突っ込んでいたメンバーがアルの近くに集まってきた。とりあえず色々と気になる点はあるし、まずは情報の整理だな。
「うん、よし、決めた。ケイさん、ちょっと良いー?」
「ん? どうかしたのか、弥生さん?」
「今日の行動方針の指揮はわたし、戦闘の指揮はケイさんに任せたいんだけどいい?」
「別にそれは良いけど、何でまた?」
何やら考えていた弥生さんがそういう提案をしてきた。まぁ確かにさっきの戦闘は途中から俺が引き受けていたり、その後に指揮権が混在してた気もするもんな。決して弥生さんの指揮に問題があった訳ではないけども、ややこしい状態になっていたのは間違いない。
俺としてはデンキナマズに関する情報は持っていなかったから、全部俺がやっても微妙だっただろうしね。いつも一緒ではない上に群集が違うから仕方ない側面もあるとは思うけども。
「いやー、まさかあのデンキナマズとこんなに早くに遭遇するとは思ってなくってさ。思い出すね、まだ成長体だった時にみんなでデンキナマズに感電死させられたの……」
「あぁ、そういう事もあったね」
「あれは集まっていたメンバーが全滅しましたしね」
「……もしかして弥生さん達、結構前にここに来てた?」
「うん、結構前にね。まぁ潜った位置は今回とは別の方向なんだけど、潜った場所にもデンキナマズがいて、電気魔法でみんなして麻痺になって虐殺されてねー」
「それでシュウさんが電気魔法を取って、性質を確認したんですよ」
「へぇ、赤のサファリ同盟って色々やってるんだな」
どうやら赤のサファリ同盟にはデンキナマズに対して全滅させられたという因縁があったようである。だから弥生さんはデンキナマズを完封する様に動いてたんだな。まぁ俺らがヒノノコ相手に因縁を感じていたのと同じようなものか?
それにしてもシュウさんは電気魔法を使っているみたいな事は言ってたけども、性質を分析する為に取得したのか。そしてその結果としての対応策がさっきの風の操作か。
「さっきの戦法的に、電気魔法を水中で防御するための方法って隔離して遮断?」
「うん、そうなるね。水中で電気魔法を防ぐには先程シュウさんがやったように水中内に空気の層を作って隔離するか、岩の生成で閉じ込めるかが無難だよ。まぁどっちも昇華が必要だから簡単ではないけどね」
「……だから速攻で倒そうとしてたんだな」
「そうそう、そうなのさ! 削りきれなかったのが痛かったねー! それでなんだけど、わたしは近接だからああいう即座に仕留めないと危ないのを相手にしてると周囲の把握とその後の指示までは手が回らないからさ」
「基本的に遠距離の俺に任せたいって事か。そういう事なら問題ないぞ」
「うん、それじゃお願いね」
「ほいよ」
確かに弥生さんは行動値が足らずに倒しきれなかったみたいだけど、あの状況では周囲の把握は難しいか。そういう意味では後衛から全体を見渡しつつ、遠距離攻撃がメインな俺の方が適任なんだろうね。
俺の中に足りていない情報はその都度知ってる人から聞いて対応するとしよう。今回は戦闘指揮だけだけど、引き受けたからにはしっかりやるぜ!
「お、移動操作制御が復活した。懐中電灯モドキは必要?」
「それは便利だから、お願いするよ」
「ほいよ」
そんな風にしている内に移動操作制御の再発動が可能になっていた。とはいえ、ちょっと使用量が多いから魔法砲撃やら暗視は解除しておいた方がいいね。
<『暗視』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 50/52 → 50/55(上限値使用:6)
<『魔法砲撃Lv1』の発動を解除したため、行動値上限が元に戻ります> 行動値 50/55 → 50/56(上限値使用:5)
<行動値上限を6使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 50/56 → 50/50(上限値使用:11)
よし、懐中電灯モドキの再発動完了っと。今度は首長竜に対してダメージ判定にならないように、収束は前回より甘くして、より広域に光を拡散させていこう。分散させるから光量は弱くはなるけど、まぁこのくらいなら何とかなるはず。
「で、マムシさんの方は情報どうだったんだ?」
「お、アルマースさんはしっかり覚えてたか。忘れられてるのかとも思ったけど、そうじゃなかったんだな!」
「……話の順番の問題?」
「まぁ、そういう事になるのかな?」
「そりゃ確かにそうだよな! とりあえず報告するぜ。一番初めのスクショが上がった時の状況はな、発光を使った状態で深いとこに居たらしい。おそらく発光のおかげで食われなかったみたいだな」
「そっか、そっか。昼の湖面付近の可能性も考えてたけど、発光だったんだね。これで裏付けは取れたかな」
「……ここにいる首長竜は光が弱点という事ですね」
「ルスト、わたしの総括を持っていくんじゃない!」
「ぐふっ!?」
いつものように弥生さんにふっ飛ばされているルストさんであった。まぁ、あのタイミングで結論を持っていかれた時の気持ちは分からないでもないけども……。
まぁそれはともかくとして、俺らが直接見た首長竜の様子も、色々な人の目撃情報も、マムシさんが確認してくれたスクショの件も、首長竜は光が苦手だというのを指し示しているよな。
「さてと、それじゃ首長竜の捕縛作戦を考えようかー!」
「おー!? 捕まえるんだー!?」
「確かに逃げるのは速かったよね……。あれなら動きを止めて捕まえる方が安全かな?」
「……でも大き過ぎるよ? ……ヨッシの状態異常の出番?」
「やってはみるけど、どのくらい効果があるんだろ? ……溶解毒と神経毒を取っておいた方がいい?」
「あー、場合によっては必要かもしれないか。……ポイント取得になるけど、ヨッシさんはそれで良いか?」
「うん、それは問題ないよ。それじゃ両方取っておくね」
確かにアルのクジラ並みのサイズで、動きも速いとなれば動きを封じる手段が間違いなく必要になる。そういう意味では応用スキルに分類される上位の毒は、切り札になり得るね。
「おいおい、毒なら俺も持ってるぜ? 忘れてもらっちゃ困るな」
「あ、そういやそうだった」
「……いや、毒でかなり追い詰めたんだから忘れてくれるなよな、ケイさん……」
「いやー、どうにかなったっていう印象が残ってたもんで、ついね?」
「……よし、今度戦う時こそ確実に仕留めてやる!」
あ、思わず思ったままの事を言ったら、マムシさんの俺への敵対心が上がってしまった気もする。まぁだからといって、総力戦の時みたいに大人しく捕まる気もないけどね。良いですとも、次もまた打ち破ってやろうじゃないか!
「おーい、ケイもマムシさんもこのタイミングで火花散らしてんじゃねぇよ。そういうのは後にしてくれな?」
「ちっ、まぁそれはアルマースさんの言う通りか。……次に敵として遭った時は覚悟しろよ、ケイさん」
「ふっふっふ、返り討ちにするまでだ!」
「俺はコケのアニキを応援してるからね!」
「おう、ありがとよ、アーサー!」
「そろそろ冗談抜きでストップかな?」
「……はい」
「……おう」
そして俺とマムシさんはサヤに爪を突きつけられて、黙る事になった。……うん、ちょっと脱線し過ぎたのでこれは反省だね。
「とりあえず話を戻すよー! ヨッシさんとマムシさんの毒の案は検討の価値はありとして、他に何か案はない?」
「はい!」
「ハーレさん、どうぞ!」
「今こそ、実況では忌々しかった閃光の出番だと思います!」
「忌々しかったって、そんなに不満だったんかい! いや、文句言ってたけどさ!」
「勿論だよ! 本当に勿論だよ! 大事な事だから二回言うのさー!」
「あ、そうなんだ……」
予想以上にあの閃光は不評だったっぽいね。でもあれこそ、1対1では相当有効な戦法なんだぞ! ……まぁ不評なのも分からなくはないけどさ。
「閃光は確かにありだね。ケイさんとルストが持ってるのは知ってるけど、他に持ってる人は?」
「……弥生、あれについてはどうするんだい?」
「あ、シュウさん。それはまだ内緒でお願い」
「そうかい、分かったよ」
「……何の話か気になるかな?」
「サヤさん、すみません。これは赤の群集での機密扱いの情報になりますので……」
「そういう事なら、これ以上は聞かない方がいいかな。水月さん達も色々あるんだね」
「それは灰の群集の皆様も同じでしょう?」
「……さぁ、何の事やら?」
色々と隠している事はあるとはいえ、それはお互い様って事なんだろうね。ふむ、そろそろ共闘イベントの期間も終わりに近付いてきているから、徐々に情報に関しては慎重になってるんだな。
「ちっ、今日に限って何で情報戦の得意なジェイがいねぇんだよ……」
「あ、ジェイさんは今日はいないのか。……マムシさん、ジェイさんに弥生さんの戦法を見破ったと言っておいてくれ」
「あー、ちょっと前にやってたあれか。良いぜ、ジェイは悔しがるだろうがその後のやる気に繋がるからな」
まぁジェイさんの性格からしたらそうだろうね。マムシさんには移動操作制御に並列制御が組み込める事は見られているし、隠す必要もないだろう。
そこから奮起したジェイさんが見つけた何かを分析して、発展させる余地を作っておこうっと。自分以外の発想っていうのも重要にはなるもんね。ふっふっふ、俺は偽情報を掴ませる事はしないけど、以前に偽情報を掴まされた反撃の仕込みをしていくぜ!
そんな事を企んでいたら、みんなの纏水の効果が切れたようである。あー、湖に入ってから30分が経ったのか。湖の中への出発時が9時ちょっと過ぎでくらいだったから、今は9時半過ぎくらいだな。あと1時間半から2時間がタイムリミットか。
「あ、時間切れが近いねー。纏水が切れた人はすぐに使ってね!」
その弥生さんの指示を受けて、みんなが再度纏水を行っていく。あ、そういや翡翠さんは水の小結晶は大丈夫だろうか?
「ちょっといいか、翡翠さん?」
「……水の小結晶なら、さっきのナマズから手に入ったから大丈夫。……心配してくれてありがと」
「そっか、それなら良かった」
どうやら翡翠さんの纏水の為の水の小結晶はしっかりと確保出来ていたらしい。無意味な心配だったようである。
「あ、そうだ!? ごめん、みんな! 一番初めに確認しておく事を忘れてたよ!」
「弥生さん、確認しておく事ってなんだ?」
「みんな、今日は何時までログイン出来る?」
あ、そういやそれについては確認されてなかったな。時間切れでの途中離脱は問題ないとは聞いていたけども、このメンバーで行動中ならログインをしていられる限界時間は確認をしておいた方がいいよな。
「俺とハーレさんは基本的に11時までだな」
「ちょっと不満はあるけど、そうなります!」
「寝坊が酷いんだから、不満って言うなよ……。まぁ状況によって延長は可能だな。最長で日付変わるまで」
「そうなります!」
「私も基本的には同じようなものかな? 私も普段は11時までだけど……」
「私は日によって少し変わるけど、今日は大丈夫」
「俺は日付変わって、最大で1時までだな」
「……私も日付が変わるまでが限界」
翡翠さんについては初耳だとは思うけども、いつものメンバーはいつも通りだね。アルは俺らよりも遅いけど、基本的には俺らのPTは11時までで、区切りが悪ければ最大で12時までってところだね。
「ふむふむ、了解したよ。水月さんとアーサー君は11時までだったよね?」
「えぇ、それで間違いありません」
「もっとやりたいけど、やり過ぎると水月に怒られる!」
「まぁそれは仕方ないね。弥生、そういう事なら基本的に11時で一区切りのつもりにしておこうか」
「うん、そのつもりで確認したよ。ルストもそれでいいね?」
「えぇ、問題ありません」
聞くのを忘れていたとはいえ、弥生さんやシュウさんはみんなの都合に合わせて時間調整をしてくれるつもりだったようである。
とりあえず11時までという事なら、あと1時間といったところだね。うーん、この広さの湖の調査をあと1時間では無理じゃね? 先に潜っていったPTは先に進んでいってるだろうけど、それでも明確に時間は足りないな。
「……これ、調査しきれるのか?」
「あはは、多分無理だろうねー! 共闘イベントが終わった後に何があるかにもよるけど、週末にもっと時間をかけてやりたいね」
「あー、やっぱりそうなるよな。……なるほど、時間が足りないのは分かってるが共闘イベントの期間中にやっておきたかったって事か」
「マムシさん、大正解ー! 次が対戦型なら、どうしてもね?」
「まぁ対戦に興味がない奴も多いとはいえ、流石にやりにくいか」
「そういう事だね。まぁその辺は次のイベント次第だから今考えても仕方ないし、時間もそんなにないから探索を続けていくよー!」
その弥生さんの言葉にみんなは頷いていく。次のイベントの内容がまだ分かっていない以上は、今分かっている範囲で予定を立てるしかないもんな。
今日の残り時間は延長しなければあと1時間ちょっとくらいだ。途中で何人かの離脱があっても継続するとしても、そんなに長時間ではない。さて、今日の残り時間でまた首長竜を発見出来るか、他の何かを見つける事があるか、それとも何も成果なしか、やってみるしかないね。何はともかく、頑張って行こうじゃないか!
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