第419話 ナマズの集団

 

 大きな湖の湖底で対峙するのは5体のナマズである。1体は敵としては初めて見る異常付与の特性持ちのデンキナマズだから要注意していかないとね。


「識別完了したよー! 残り2体はどっちもLv10の泥ナマズの残滓です!」

「ハーレさん、ありがとねー! それじゃ、各自、戦闘開始!」


 まだ少し距離があるうちにハーレさんが残り2体のナマズの識別を完了させていた。さてと左端のアーサーとルストさんの相手が黒の暴走種の泥ナマズで、右端のヨッシさんと翡翠さんの相手が黒の瘴気強化種の泥ナマズ、弥生さんとシュウさんの相手が黒の暴走種の魔デンキナマズか。

 俺やハーレさんとかで牽制するのはただの残滓だな。位置的には真ん中の弥生さんが残滓の相手をする可能性が高そうだし、その辺の牽制はやっておかないとね。


「では行きますよ、アーサー君! 『根棍棒』『薙ぎ払い』!」

「うん、ルストさん! 『魔力集中』『弾丸突撃』!」


 そしてルストさんが少しジャンプして湖底から浮いたアーサーをバットか何かで打つように、根で薙ぎ払って吹き飛ばしていく。飛ばされたアーサーも当たり前のように、そのまま突進していった。へぇ、連携も結構出来るようになってるじゃん。


「翡翠さん、行くよ! 『魔力集中』『複合毒生成:麻痺毒・腐食毒』『斬針』!」

「……うん! 『コイルウィンド』!」


 アーサーとルストさんが攻撃に突っ込んでいくと同時に、ヨッシさんと翡翠さんも突っ込んでいた。ふむふむ、翡翠さんが風魔法で拘束しつつ毒を使う様子で、ヨッシさんは魔法ではない複合毒を作る場合はそういう指定手順なのか。

 それぞれの戦闘の詳細も気になるけど、これ以上の余所見は無理だな。俺は俺の相手に集中していこう。


「シュウさん、デンキナマズは一気に仕留めるよ! 『魔力集中』!」

「分かってるよ、弥生。『並列制御』『風の操作』『ウィンドボム』!」

「さっすが! 『強斬爪撃』!」


 ネコ夫婦のシュウさんが爆発する風の指向性を制御して、それを弥生さんが足場にして一気にデンキナマズへと距離を詰めていく。おぉ、水中だけど凄い勢いになって、ナマズに一撃を入れたね。……下手にやれば勢いがあり過ぎて何も出来ないような勢いである。


「まだまだー! 『移動操作制御』『爪刃乱舞』!」


 そして周囲の暗闇の密度が増して、弥生さんの周辺の視認が難しくなっていく。近場は背中のコケが光ってるからまだ分かりやすいけど、闇の操作で目隠しを入れられたらフォロー出来ないじゃん!?

 そもそも必要なのかという疑問もあるけども、一応対応しておこうっと。弥生さんめ、対応出来るのを承知の上でやってるな。


<行動値上限を3使用して『暗視』を発動します>  行動値 51/55 → 51/52(上限値使用:8)


 よし、これで暗闇での視界の確保は問題なし。……うん、水中を縦横無尽に動き回る3つの小石とそれを足場に上下左右から攻撃を繰り広げている弥生さんの姿が見えた。

 弥生さんの姿を隠す暗闇の中で、ナマズがどんどんと斬り刻まれていく。あ、この状況でも弥生さんは他のみんなの部分には闇の操作の影響を及ぼさないようにはしてるのか。


 反撃の隙も与えずにデンキナマズを翻弄している弥生さんだけど、その様子に残滓のナマズが増援のように動き始めていた。地味に連携するのか、このナマズども!


「ケイさん、左の方をお願いするよ。僕は右側を。『魔法砲撃』『ウィンドボール』!」


 ふむふむ、シュウさんは平然と3発の風の弾を使ってナマズの進行方向の周囲の水を乱す事で妨害をしている。やはり赤のサファリ同盟という事もあるから、シュウさんもプレイヤースキルは相当高そうだね。


「おうよ! ハーレさん、俺らで牽制するから、その後に高威力をぶち込め!」

「了解です! 『魔力集中』『ウィンドクリエイト』『操作属性付与』『アースクリエイト』『貫通狙撃・風』!」

「おや、貫通狙撃かい。それなら僕も合わせた方が良さそうだね」

「シュウさん、いけるか? 駄目なら俺の方でやるけど」

「いや、大丈夫だよ。弥生、少しの間、1人でも大丈夫かい?」

「行動値がある内は何もさせないから、その間なら大丈夫だね! ケイさん、ちょっと集中したいから指揮は任せたよー!」

「おう、指揮は任せとけ! シュウさん、ハーレさん、まず邪魔な残滓を仕留めるぞ!」

「分かったよ。『ウィンドボール』!」

「はーい!」


 なんだか一時的に指揮を任されたので、銀光を放ち始めるハーレさんの手を見ながら戦略を組み立てていく。人数はいるからここは応用スキルを使ってでも数を減らす方向が良さそうだな。

 それにシュウさんとハーレさんとの連携なら、一気に2体の残滓を片付けられるかもしれない。とりあえずはハーレさんのチャージの完了待ちだから、時間稼ぎに徹しよう。


<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します>  行動値 51/52 → 51/51(上限値使用:9)

<行動値2と魔力値6消費して『土魔法Lv2:アースバレット』を発動します> 行動値 49/51(上限値使用:9): 魔力値 188/194


 俺もシュウさんには負けてられないな。魔法砲撃にして右のハサミに始点を設定。シュウさんの風の弾とは性質が違うから、俺は的確に当てていくぞ。アースバレット3連、発射! 頭を狙って、連続攻撃だ!

 1発は当たったけど、後の2発は流石に避けられたか。周囲を乱してバランスを崩させた訳じゃないから仕方ないけど、牽制としては充分! それに本命はここからだ。


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値を3消費して『土の操作Lv5』は並列発動の待機になります>  行動値 46/51(上限値使用:9)

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値6と魔力値9消費して『土魔法Lv3:アースプリズン』は並列発動の待機になります> 行動値 40/51(上限値使用:9): 魔力値 179/194

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 これで残滓のナマズは1体捕まえた! ハーレさんのチャージももう少しで完了しそうだし、シュウさんもうまい具合に弥生さんの戦闘エリアから残滓のナマズを誘導している。シュウさんの風の弾は絶妙な水の乱し具合だな。

 俺もハーレさんが狙いやすいように、拘束したナマズを移動させていく。よし、これならなんとか行けそうだな。


「シュウさん、今!」

「良い頃合いだね。『並列制御』『風の操作』『ウィンドボム』!」


 そしてハーレさんのチャージが終わった様子を確認して、俺の捕まえているナマズとハーレさんの間にちょうど収まる力加減でナマズを吹き飛ばしてきた。……うん、シュウさんも思った以上にプレイヤースキルがヤバいかもしれない。

 ガストさんがシュウさんの全力を見た事が無いって言ってたけど、これはまだまだ序の口なのか? それともこれが全力……? うーん、よく分からんけど、それは後回し!


「ハーレさん、ぶっ放せ!」

「了解です!」


 そしてハーレさんの現在持っている最大火力により、2体のナマズを貫通する攻撃が投げ放たれた。巣のボーナスもあるから、とんでもない威力だな。1発の攻撃で2体のナマズの殆ど減ってなかったHPの8割くらいを削ったぞ。


「うー!? 仕留めきれなかったー!?」

「いやいや、ハーレさん、これだけ削れば充分だって。『爪刃乱舞』!」


 その言葉と共にデンキナマズの相手をしていた弥生さんが、縦横無尽に動き回る3つの小石を足場にして残滓のナマズ2体へと連撃を繰り広げていた。応用スキルを使わないところを見ると行動値切れかな。あ、2体の残滓のナマズのHPが全て無くなってポリゴンとなって砕け散っていった。


「はい、これで残滓の始末は終わりっと。こっちは解除かな」


 そう言いながら、弥生さんは視界を妨害する状態と小石を解除していった。デンキナマズを見てみれば満身創痍になりつつもまだHPは2割ほど残っていて生きている。あー、やっぱり黒の暴走種だと残滓よりは耐久性はあるんだね。ん? 何かデンキナマズが震えているような気もするけど、これは何だ?


「あ、これはまずいかも? シュウさん、お願い」

「……少し周りに影響は出るけど、これは仕方ないね。『ウィンドクリエイト』『風の操作』!」

「え、どういう事だ?」


 急に震え出したデンキナマズもだけど、デンキナマズを水中から隔離するように大量の風を生み出していく。それと同時にデンキナマズから電気魔法……多分エレクトロクリエイトが放たれた。うん、言ったら悪いけどしょぼい電気である。

 そしてその左右で戦っていた他のみんなが生成された風によって押された水に流されるように影響を受けていた。えーと、これはどういう状況? あ、もしかして水中での電気魔法ってヤバいのか……?


「うっわ、ビックリした!?」

「……今のは仕方ありませんか。水中での電気魔法は影響範囲がかなり広く変わりますし、特性に異常付与もありますからね。このメンバーなら流石に全滅はないでしょうが、半数以上が麻痺になる可能性もありますし……」

「え、そうなんだ? 知らなかったよ」

「……私も知らなかった。でも、ヨッシには良い情報じゃない?」

「あ、そうかもね」


 とりあえず少し流されてしまった他のナマズと戦っていたメンバーは無事なようである。それにしても水中では電気魔法は危険……って、直接は見てないけど青の群集との競争クエストの総力戦で俺ら灰の群集がやってた作戦じゃん。

 あ、でもあの時は海水だったっけ。ダイクさんが水流の操作も使ってたはずだからそっちもか? まぁとにかく普通の水においても電気は危険という事は変わりないんだね。


「おっしゃ、こっちの要件は完了だ! サヤさん、水月さん、もう護衛はいらないから行ってこい!」

「水月さん、今のうちに仕留めるかな! 『魔力集中』!」

「えぇ、そうですね! 『魔力集中』!」


 そしてどうやらマムシさんが情報収集を終えたようで、護衛の必要がなくなったサヤと水月さんが攻勢に移っていく。サヤはヨッシさんと翡翠さんが戦っていた黒の瘴気強化種の泥ナマズへ、水月さんはルストさんとアーサーが戦っていた黒の暴走種の泥ナマズへと向かっていっている。

 どうやらどちらもHPは半分も切っているようで、劣勢になった事で逃亡に移りかけていたようだ。


「逃しませんよ。『根縛』!」

「同じく逃さないよ! 『アイスプリズン』!」


 その事に気付いたルストさんとヨッシさんが、逃さないようにそれぞれに相手をしていたナマズを拘束していっている。おー、みんなお見事だね。

 弥生さんが戦っていたデンキナマズもシュウさんの作り出した大量の風で拘束……というよりは、水中に行きそうになった瞬間に局所的に風を強くして吹き飛ばしまくってるから、逃げれそうにはないね。


 そしてサヤも水月さんも共に攻撃圏内へと移動が完了している。まぁ、ナマズはこれで終わったかな。


「ルストさん、離さないで下さいね。『爪刃双閃舞』!」

「ヨッシはナマズを解放してかな!」

「了解!」

「ヨッシ、ありがと! 『爪刃双閃舞』!」


 ルストさんは根で絡みついているだけだから、水月さんの連続攻撃に支障はないのでそのままの状態でナマズは斬り刻まれていく。逆にヨッシさんは氷の檻なので、連撃には邪魔になるようで解除した上でサヤもまたナマズを斬り刻んでいった。


「これはちょっと削りきれそうにないかな!?」

「こちらもですね。折角ですし、ここは情報の確認をしてくれていたマムシさんにトドメを譲りましょうか。ルストさん、ナマズをシュウさんの風の方へお願いします」

「えぇ、分かりました」

「サヤさん、良いですか?」

「分かったかな!」

「へっ、面白いじゃねぇか! チャージが間に合うかはわからんが、折角だからやらしてもらうぜ。『魔力集中』『殴打重衝撃』!」

「おー! 応用スキルの連発だねー!」


 ほぼ戦闘に参加が出来ていなかったマムシさんも、少しくらいは戦いたいようでチャージを開始している。殴打重衝撃って事は俺と同じスキルだな。マムシさんの姿は苦手生物フィルタで分かりにくいけど、多分尻尾だと思われる所が銀光を放ち出していた。

 そしてサヤと水月さんは連撃を加えながら、最後の一撃で少し角度を調整しつつ吹き飛ばしてシュウさんの風の中へと2体のナマズを放り込んでいく。おー、3体のナマズが風の中で揉みくちゃになってるな。


「それは良いんだけど、これは狙いにくくないかい?」

「ルスト、ケイさん、複合魔法はいけるかな?」

「いえ、問題ありませんよ」

「あぁ、そういう手段があったね。それならこれでいいかな?」


 意図を察したシュウさんは風の中でバラバラに飛ばされまくっているナマズを、1ヶ所に固まるように風を操作して吹き飛ばしていた。……今は味方で動いているからいいけど、シュウさんの操作系スキルの精度、かなりとんでもないぞ!? いや、今はそれはいい!


「シュウさん、助かる! やるぞ、ルストさん!」

「えぇ、やりましょう! 『コイルルート』!」


<行動値1と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 50/51(上限値使用:9): 魔力値 191/194


 いつの間にか行動値も魔力値も全快してたけど、それはいいや。俺の水の生成は水中でやっても仕方ないので、シュウさんの風の中に生成した。……生成できるか少し不安だったけど、シュウさんがタイミングを見計らって風の操作を解除してくれていた。

 それと同時に生成された風に押し退けられていた水が元に戻っていく。まぁそれ程無茶苦茶な水量じゃないからこれは大丈夫だろう。


<『複合魔法:ルートレストレイント』が発動しました>


 そしてルストさんのコイルルートに重なった事で複合魔法へと変化して、1ヶ所に纏まったナマズ3体を根でギリギリと締め上げていく。そうしている間に、マムシさんのチャージが終わったようである。

 どのナマズももうHPは1割ちょっと。これで終わりだな。いっけー、マムシさん!


「くたばれ、ナマズ共!」


 マムシさんの銀光を放つ尾だと思う部分が叩きつけられ、3体のナマズのHPを同時に削り切ってポリゴンとなって砕け散っていった。


<ケイがLv11に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


<ケイ2ndがLv11に上がりました。各種ステータスが上昇します>

<Lvアップにより、増強進化ポイント2、融合進化ポイント2、生存進化ポイント2獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・暴走種を討伐しました>

<未成体・暴走種の初回撃破報酬として、増強進化ポイント6、融合進化ポイント6、生存進化ポイント6獲得しました>

<ケイ2ndが未成体・瘴気強化種を討伐しました>

<未成体・瘴気強化種の撃破報酬として、増強進化ポイント3、融合進化ポイント3、生存進化ポイント3獲得しました>


<『水の小結晶』を1個獲得しました>


 おっと、同時に3体倒したから一気に情報が来たね。そしてLvも上がったね。とりあえず、ナマズの群れは撃破完了である! ついでに水の小結晶も手に入ったから、色々成果ありだったね。




【ステータス】


 名前:ケイ

 種族:同調強魔ゴケ

 所属:灰の群集


 レベル 10 → 11

 進化階位:未成体・同調強魔種

 属性:水、土

 特性:複合適応、同調、魔力強化


 群体数 350/5400 → 350/5550

 魔力値 191/194 → 191/196

 行動値 51/60 → 51/61


 攻撃 69 → 70

 防御 96 → 99

 俊敏 73 → 75

 知識 139 → 144

 器用 149 → 155

 魔力 195 → 203



 名前:ケイ2nd

 種族:同調打撃ロブスター

 所属:灰の群集

 

 レベル 10 → 11

 進化階位:未成体・同調打撃種

 属性:なし

 特性:打撃、堅牢、同調


 HP 5880/6050 → 5880/6250

 魔力値 90/90 → 90/91

 行動値 53/53 → 53/54


 攻撃 192 → 200

 防御 181 → 188

 俊敏 148 → 154

 知識 64 → 65

 器用 68 → 70

 魔力 36 → 37

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