第404話 灰のサファリ同盟の本拠地へ
今は夕方なのでアルはまだログインしていない。ハーレさんはバイトの面接で夕方のログインはなし。アルがこの時間帯にいないのはいつもの事だけど、ハーレさんはいないのは珍しいね。
その代わりという訳ではないけど、サヤと一緒にボス戦をしていた紅焔さんとソラさんとラーサさんが一緒に来そうである。まぁたまにはこういう事もいいか。
とりあえずエンのすぐ近くで陣取っていても他の人達の邪魔になるので、少し離れたところに移動してから状況整理だ。その辺はみんな異論はないようで、連れ立って少し位置を移動していく。
さて、少し離れたしこんなところで良いか。とりあえず軽く事情の説明をしてからだな。
「とりあえず灰のサファリ同盟のラックさんと、不動種の桜花さんに用事があるんだけど……」
「あー、あの青の群集からの移籍の人か。そういや直接会った事はないな」
「あれ? 会ったことありそうな気もしたけど、紅焔さんって桜花さんに会った事ないんだな?」
これはちょっと意外だった。桜花さんは移籍組の中でも相当に馴染んでる方だから、てっきり接点でもありそうな気もしてたんだけどな。
「あはは、まぁそうだろうねー」
「ん? ソラさん、何か理由があったりするのか?」
「そりゃ紅焔は群集の移籍が始まってからは基本的に青の群集と隣接してるエリアばっかり行ってたからねー」
「ソラ、それは内緒のやつ!?」
「へぇ? 最近、紅焔さんは森林深部で見かけないと思ったらそういう事だったんだね」
ラーサさんの言う通り、最近は紅焔さんを森林深部で見かける事は少なかったけどそういう理由か。え、でもその割には今日は普通にいるんだね。
「あはは、ケイさん、なんで今日はいるんだとか思ってるよね?」
「……まぁそりゃね」
まさしくソラさんの言う通り。紅焔さんは元PTメンバーで赤の群集に移籍したというキツネの人を避けていたはず。その辺はどうなったんだろうか?
「紅焔が嫌がるけど、簡単に説明はしとこうかな?」
「ソラ!?」
「いやいや、紅焔。詳細までは別としても、これくらいは心配させてるみたいだし言っておいた方が良いんじゃない?」
「ぐっ、確かにそれもそうか……。まぁちょっと色々事情が重なって、一応あいつからは悪かったって謝罪は受けたんだよ。苦手意識はまだあるけど、一応無理に避けるのはやめにした」
「いやー、あれは大変だったね」
「ソラ、詳細を言うのは無しだからな!」
「それは分かってるよ」
「へぇ、紅焔さんも色々あったんだな」
正直に言えば色々と詳細を聞いてみたい気もするけど、紅焔さんがそれは嫌みたいだし無理に聞くのは止めておこう。流石にしつこく言いたくない事を聞くのはマナー違反だしね。
「何かトラブルがあったけど解決したっていうことなんだね? それならその話は良いとして、カキ氷の話が聞きたいね」
「ラーサはカキ氷に興味があるのかな? えっと、それに関してはケイはもう情報を上げてる?」
「ん? いや、ヨッシさんが直接伝えるって言ってたから上げてない。ヨッシさんに説明してもらって、氷柱も渡した後で灰のサファリ同盟から情報を上げて貰おうかと思ってるけど」
「あ、そういえばそんな事も言ってたかな?」
「うん、言ったよ。ちょっとコツがある感じだしね」
「なんだ、それなら後から情報公開されてから見るよ。ちょっとこの後、用事があるからさ」
「そっか。それじゃラーサ、またね」
「サヤも、みんなもね。それじゃまた!」
ラーサさんはここでお別れか。どうやらラーサさんが急ぐように駆けていった様子を見る感じだと、リアルの用事とかではなくゲーム内での待ち合わせかな?
まぁカキ氷については材料が色々と必要なので、予め情報が揃っていないとすぐに作れるようなものではない。後から情報公開があるなら焦らなくてもいいという判断なのだろう。多分だけど、灰のサファリ同盟で生産になりそうな気もするしね。
「ケイさん、それは僕らも付いて行っていいかい?」
「可能なら俺からも頼むぜ、ケイさん!」
「まぁ別に後で公開する情報だから問題ないぞ」
それで紅焔さんとソラさんは同行希望だな。さて、氷結草の群生地についての話だけは慎重に扱わないといけないか。まぁ紅焔さんもソラさんもその辺を乱雑に扱うとは思えないので、あまり心配はしてないけども……。
とりあえずフレンドリスト確認して……ラックさんはログイン済みで灰のサファリ同盟の本拠地にいるみたいだけど、桜花さんはまだログインしてないか。それならまずは灰のサファリ同盟に行きますか。
「とりあえず先に灰のサファリ同盟の方に行くけどそれでいい?」
「問題ねぇぜ!」
「うん、僕らはそれで構わないよ」
「あ、桜花さんはまだログインしてないのかな」
「まだ桜花さんがログインしてないならそうなるよね」
「ま、そういう事」
サヤとヨッシさんもログイン状態を確認していたようである。2ヶ所に用事があればログインしてない相手より、ログインしている方を優先だよな。出来れば纏めて話をしたかったとこではあるけど、そこら辺は仕方ない。
とりあえず今は灰のサファリ同盟を訪ねに行こう。いつものように水のカーペットを用意して……あれ、そういえばこのメンバーって。
「えーと、そういや全員飛べるメンバーか?」
「それはそうだけど、一番飛べておかしいのはケイだと思うかな?」
「「「それは確かに……」」」
「うっ!? 確かにそれは俺も思う……」
種類は違うけどサヤの竜と、紅焔さんの龍、それに元々飛べるソラさんのタカと、ヨッシさんのハチだもんな。元々飛べる要素を欠片も持ってない俺のコケとロブスターが飛べる方が異質なのは間違いない。
だけど、仕様として飛べる手段が用意されているんだから気にする事はない! それを言い出せばアルの木とクジラの方がもっとおかしいしね!
「それはともかく、灰のサファリ同盟の本拠地にいくぞー!」
「「「「おー!」」」」
よし、細かい追求はなし! そしてサヤとヨッシさんはいつもの事だけど、紅焔さんとソラさんもノリが良いね。さて、移動の準備をしていくか。
<行動値上限を2使用して『移動操作制御Ⅰ』を発動します> 行動値 59/59 → 57/57(上限値使用:3)
水のカーペットの生成をして、その上に飛び乗って移動準備完了である。サヤはクマで竜に腰掛けて飛び、他の3人は普通に飛んでいる。うーん、スキル不要で飛べるのはちょっと羨ましい気もするね。
そんな風に大した距離ではないけど、みんなで空を飛んでいく。今日は雲ひとつない快晴で、綺麗な星空が浮かんでいた。
そんなに時間もかからずに、元俺らの特訓拠点であり、今は灰のサファリ同盟の本拠地になっている場所に辿り着いた。どうやら崖上の方に人が集まっていたようなので、そっちに降りるかな。
それにしても昨日竹を届けに来た時は崖上のほうはまともに見ていなかったけど、何だか開拓範囲が増えてない……? 何か畑が増えている気もする。
「お、ケイさん達が来たね! あ、紅焔さんにソラさんも!」
「おっす、ラックさん」
「色々あったけど、とりあえず森林深部に戻ってきたね」
「ま、そうなるな」
「お、紅焔さんはトラブル解決?」
「……まぁ形の上ではな」
「あんまり聞かれたくはなさそうだし、深くは聞かないでおくよー!」
ラックさんも紅焔さんのキツネの人に対する苦手意識に関しては知っていたようである。色々やってるからこそ、情報は色々集まってくるんだろうね。
さてと目的の用事をやっていきますか。カキ氷は後にするとして、まずは氷結草だな。
<インベントリから『氷結草』を取り出します>
インベントリから採集した氷結草を取り出して、ハサミで掴んでおく。さて、これだけなら良いけど、問題は群生地の方なんだよな。
「お、ケイさん! やっぱり氷結草があったんだね!?」
「まぁな。てか、ハーレさんから聞いてたりしてない?」
「聞いたけど『驚く事があるから楽しみにね!』って教えてくれなかったんだよねー。そっか、やっぱりあったんだねー! ハーレは今日の夕方はログイン出来ないって言ってたけど、これでスッキリしたー!」
「あ、それは多分違うかな?」
「まぁ、ハーレが言いたかったのは違うだろうね」
「え? カキ氷については成功したって聞いたけど、まだ他に何かあるの?」
なんだ、カキ氷については既に聞いているんだね。でも氷結草の群生地についてはまだ教えていないという訳か。まぁ、あれについては言葉で説明するよりもスクショを見せる方が良いだろう。
っていうか、ハーレさんは俺らが夕方の間にアイテムの受け渡しとかしに行くの分かってたな? 氷柱を採集した後にみんなに分配しておいて良かった。
「それに関してなんだけど、ちょっとこのスクショを見てほしいんだけど……」
「え、スクショ? どんなの……って、これって!?」
「なんだ!? ケイさん、どんなスクショだよ!?」
「ラックさんのその反応は非常に気になるね……?」
おぉう!? ラックさんに氷結草のスクショを共有化して見せたら思いっきり食いついていた。そしてそのラックさんの反応を見た紅焔さんとソラさんもである。
まぁそういう反応になるよね。という事で、紅焔さんとソラさんにもスクショを共有化していく。
「ちょ!? これってケイさんが今持ってる見知らぬ草の群生地か!?」
「……これは見事だね。ケイさん、このスクショの場所ってどこだい?」
「場所はまだ言えない。それに関して灰のサファリ同盟に相談がある」
「……何となく内容に察しはついたよ。でも一応聞いておくね」
「よし、そうこなくっちゃな!」
流石はサファリ系プレイヤーってところか。サファリ系プレイヤーって訳じゃない俺でも相当気に入った場所なんだから、サファリ系プレイヤーの集まりの一員であるラックさんが食いつかない筈がない。
それから見つけた場所の情報だけは伏せつつ、この氷結草の群生地を荒らす事がなく利用出来ないかを相談していった。まぁもし駄目なら駄目で仕方ないけど……。
「うーん、確かにこの光景は残して見に行きたいねー!」
「でもケイさん、気持ちは分からんでもないけど独占にするのは無理じゃないか?」
「あー、やっぱり厳しいか……?」
「いや、紅焔、その結論を出すのはまだ早いよ」
「ん? 何でだ、ソラ?」
「話を聞く限りじゃ氷結草そのものの効果がまだ分かってないよね、ラックさん?」
「あ、うん。氷結草は灰のサファリ同盟では初めて見るよ」
そういえばまだ存在自体が未確認だったからこそ、探してきてくれって話だったっけ。ふむ、そうなると効果次第にはなるけど、需要が高過ぎない程度のアイテムなら普通に残る可能性もありか。
「そうなると氷結草の効果次第かな?」
「そだね。後は栽培が可能かどうかにもよるけど、その辺の情報って何か無さそう? 例えば咲いてる方角に偏りがあるとか、咲いてる地面に特徴があるとか、そんな感じ」
「偏りとか地面とかの特徴か……」
見つけたのは雪山の南側ばっかだったし、どこも地面は雪の被らないような崖の途中や洞窟の中で、ついでに標高が高い場所か……? 特徴があるといえばあるけど、これが役に立つのかな?
「その群生地の他には崖の途中とか、南側とか、標高が高いとことかそんな感じだな。これ、何かのヒントになるか?」
「オーケー、オーケー、少しでも特徴があるなら後は試行錯誤の問題だね。うん、氷結草がそういう事なら……ヨッシさん、カキ氷とか果物の冷凍とかはどうだった?」
「あ、うん。どっちも成功だったけど、細かい説明したほうがいい?」
「うん、出来ればお願い」
「了解。それじゃカキ氷の説明からしていくね」
氷結草についての話から唐突にカキ氷と冷凍蜜柑の話に変わっていったけど、駄目そうだから誤魔化すためとかそういう雰囲気ではないな。なんというか、何かを実行に移す為に必要な情報を集めているような雰囲気すらある。
そうしてしばらくヨッシさんがカキ氷や冷凍蜜柑についての説明をしていった。その説明を聞きながらラックさんは時折頷きながら、考え事をしている様子である。そしてヨッシさんの説明が全て終わった。
「うん、分かった。ヨッシさん、かなり有用な情報をありがとね」
「え、あ、うん。そんなに有用だった……?」
「まぁねー。少なくとも行動に移すだけの価値はあるよ。あ、ケイさんさっきのスクショは貰うね」
「お、おう」
何やら満足げなラックさんは、崖上と崖下を繋ぐような通路代わりになっている不動種の杉の人によじ登っていく。そしてさっきからちょっと気になってたみたいな崖上の畑の面倒を見ていた人が注目していた。
そしてラックさんは不動種の杉の人の一番上まで登っていって、周辺を見渡していく。あれ、どういう流れだ、これ?
「はーい、気になってる人もいるみたいだけど、みんな注目ー!」
そしてラックさんが灰のサファリ同盟のみんなに号令をかけていた。その声に反応してざわめきながらも崖上からも崖下からもラックさんが見えそうな位置に集まっていく。
あ、ここの杉の人って崖上と崖下の行き来以外にもこうやって集合して話す時の場所にもなってるんだ。
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