第392話 雪山を探索
元々氷属性を持っているヨッシさんを除いて、他のみんなは纏氷も出来た。天気も快晴だし、いざ雪山へレッツゴー!
「アル、出発!」
「おうよ!」
雪の上を直接歩いて行っても良いけども、ここはアルに乗っていくのが無難だろうね。この地形だと滑って転がり落ちて分断とかもありえそう。……あ、でも纏氷の状態だとどうなんだろ? それに関しては後で試してみるか。
「わくわく! 氷柱はどこだろー!?」
「まずは洞窟を探さないとかな?」
「この感じだと氷柱は洞窟の中っぽいよね」
「それじゃまずは洞窟探しだー!」
「「おー!」」
そして女性陣は既にハイテンションになってるみたいだね。ハーレさんはよく分かるけど、思ってた以上にサヤとヨッシさんも楽しみにしてたっぽい?
「随分盛り上がってるな、ハーレさん達」
「あはは、なんだかんだでちょっとカキ氷が楽しみだったりするかな」
「うん、私も興味がない訳ではないしね」
「そうなのさー!」
「なるほどな。こりゃ頑張って見つけるしかないぞ、ケイ」
「そうっぽいな。ま、とにかく雪山エリアに移動しようぜ」
「「「「おー!」」」」
どっちにしても現地に行かなければどうにもならないしな。俺もカキ氷については確かに気になっているし、折角夕方のうちに竹も調達したからね。失敗して駄目ならまだしも、材料が見つかりませんでしたではここまで来た意味がない。
まぁ赤のサファリ同盟の人とかレナさんやダイクさんが氷柱を持ち帰って来ていたって事は、ある事だけは間違いない。レナさんから洞窟があるという情報は貰ってるしね。いざ、雪山へ踏み込もう!
<『ハイルング高原』から『名も無き雪山』に移動しました>
とうとうやってきました、雪山エリア! ここはまだ名無しのエリアのようである。それにしても見渡す限りの雪で、空気は澄んでいる気がするね。
雪山は対策無しで普通に来たら状態異常になって死ぬとか聞いた気もするけど纏氷のお陰でそれもない。事前準備は大事だね! あ、ハーレさんが何か震えている……?
「うー、我慢できないー! いやっほー!」
「あ、ハーレ!?」
そして積もった雪にハーレさんが飛び込んでいった。まぁ俺らの住んでる地域じゃ雪なんて山の方ならまだしも、平地のほうじゃ年に1回積もれば良い方だもんな。俺は積もった日の登校中に思いっきり滑って転けた事があるから、あんまりはしゃぐ気は起きないけど……。
「ケイ、雪って珍しいのかな?」
「あー、サヤは雪が降る地域だもんな。俺らの方じゃそれなりに珍しいぞ」
「私にとっては降るって言うより日常だけどね。確かにヨッシから聞いてる限りじゃそう……わっ!?」
「あっ!? サヤ、ごめん!?」
「ハーレ、いきなり何をするのかな!?」
ハーレさんは飛び込んでいった後に、ヨッシさんと雪合戦のような事をし始めていたみたいだけどその流れ弾がサヤの後頭部に直撃していた。……いきなり何を始めてるのさ、ハーレさん。ちょっとテンション上がり過ぎじゃない?
あ、サヤが雪の上に飛び降りて、ハーレさんに向かって雪玉を作って投げていた。そういやヨッシさんってさっきはどうやって雪玉投げてたんだろ? 雪に対しても氷の操作が有効だったりするのかな?
「あ、サヤが怒ったー!? 逃げろー!?」
「ハーレ、待ちなさい! ヨッシ、捕まえるの手伝って!」
「あはは、了解。そういう事だからアルさん、ケイさん、少し任せてもいい?」
「ま、ちょっとくらいならいいだろ。ケイ、それでいいか?」
「そだな。とりあえず俺とアルで洞窟を探しとくよ」
「2人とも、ありがとね。ハーレ、待ちなさいー!」
そうして雪玉を作っては空中へと飛んで投擲をしているハーレさんと、それを竜に乗って追いかけていくサヤと、そこにヨッシさんが加わってはしゃぎまわっている。まぁ、そもそも遊びに来たんだしこれくらいなら別にいいか。
流石に長時間になりそうなら止めるけど、みんな楽しそうだしね。……まぁ、一つだけ釘は刺しておこうか。
「3人とも、あんまり遠くまでは行くなよー! 後、最大でも1個目の軌跡の時間切れまでだぞ!」
「「「はーい!」」」
ハーレさんの若干の暴走から始まった雪合戦だけど、ただ始めるきっかけが欲しかっただけみたいだな。ふむ、やっぱりヨッシさんが使う雪玉は氷の操作でやってるみたいだ。
そしてサヤの竜の動きはスノーボードっぽい感じである。スノーボードはやった事無いから、何となくのイメージでしかないけども。竜で滑りながら近くの雪を掴んでそれを投げているんだな。
特にこれといったルールも決めていないただの雪玉の投げ合いだけど、投げている姿はどう見てもこれは現実ではあり得ない光景だね。そして誰一人として雪の上を歩いていないというのも、ある意味凄い。
「思いっきり満喫してるな」
「ま、いいんじゃねぇの? さて、俺らは俺らで洞窟を探すか」
「そだな。アル、どこから探す?」
「見渡せる範囲に入り口っぽい場所はないから、とりあえずここから見えない場所だな」
「ほいよ。手分けするか?」
「……そうだな。流石にあのクジラみたいな即死級の敵が頻繁に出るとは思えんから、少し手分けしてみるか」
「よし、それじゃアルは東の方を任せた。俺は西の方を見てくる」
「おうよ」
流石にさっき見たばかりの成熟体がそんなに沢山いるとは思えないし、強い敵がいたとしても同格の未成体なら即死という事もないだろう。サヤ達は真正面になる南の方で遊んでいるし、左右は俺とアルで分担して探索だな。
折角だし、水のカーペットを利用して滑ってみる……? それとも雪山を歩いてみるというのも一興かな。とりあえず、どんなものかちょっと歩いてみるか。
「それじゃ何か見つけたらPT会話で!」
「おう」
「はーい!」
「分かったかな」
「了解!」
「纏氷の効果時間が切れるまでに何も見つからなければ、ここに集合って事で!」
「「「「おー!」」」」
いつもは一緒に行動してるけど、たまにはこういうのも良いだろう。時間を区切ってではあるけども、少しの間は各自の自由探索時間って事で!
そうしてアルの背の上にから降りて、雪の上に着地する。お、滑るかと思ったけど案外そうでもない? ちょっと歩いてみよう。
なるほど、どうもロブスターの脚が地味にスパイクみたいな役割を果たしているっぽいな。これなら特に問題なく歩けそうだし、折角の雪だから歩いてみるか。寒く感じない雪道を歩くというのも新鮮なものだろう。まぁオフライン版でもやったし、寒い雪道とか住んでる地域的に縁はないんだけどね。
「……ん? 何だ、この雪の盛り上がり」
西に向けて少し歩いて山を登って、周囲より少し高い場所に辿り着く。そこで何やら妙に雪が盛り上がっているのに気付いた。
これは雪の下の地形が少し高いのかな? でも、それにしては不自然な気もする。まるで地面の下から押し上げたように盛り上がっているような……。ちょっとハサミで雪を掘ってみようか?
「……これはもしかすると何かいる?」
「ケイ、何か見つけたのか?」
「お、アルか。いや、妙な感じに雪が盛り上がっててな。途中で見たユキマジロの件もあるから、ちょっと確認してみる」
「あー、なるほどな。確かに何かいてもおかしくはーー」
「なんで雪山にクモがいるのかなー!? あっ……」
「サヤ!? 間に合って! 『アイスプリズン』!」
なるほど、サヤ達はクモと遭遇したっぽいな。そして、その『あっ』てなんだ、『あっ』て……。ヨッシさんがアイスプリズンを使ってるみたいだし、何かあったのか?
「あ、危なかったかな……」
「何があったんだ、サヤ?」
「……あはは、何でもないかなー?」
「えっとね、クモに慌てたサヤがバランスを崩して転がり落ちかけてました!」
「ハーレ、それは言わなくてもいいよ!?」
「サヤ、慌てるのは分かるけど落ち着こうな」
「以後気を付けます……。ヨッシ、ありがとね」
「いえいえ、どういたしまして。まぁ、さっきのクモは仕方ないと思うよ」
「だねー! それじゃサヤの敵討ちにクモを倒すぞー!」
「ハーレ、私は死んでないからね!?」
まぁ俺もこんな雪山でクモが出るとは思ってなかったから、クモが苦手なサヤが驚いて転がり落ちていくのも仕方ないか。
それにしても雪山と関係なさそうな種族が普通に出てくるとなると、これは何がどう出てくるかが全く予想出来なくなってきたな。
「お、こっちは割と順当だな」
「アルも何か発見したのか?」
「おう。一般生物だがトナカイがいるぜ」
「ほう、トナカイか」
「おー!? トナカイだー!」
「群れてはいないから逸れた個体っぽいな? この感じだと見に行ってみないとわからねぇが、山の反対側は針葉樹の森なんじゃねぇか?」
「それは確かにありそうかな」
逸れているっぽい一般生物のトナカイか。こっちの方は草食のトナカイが食べれそうなものもないし、あまり雪が解ける雰囲気のある場所でもないのでアルの推測が当たっている可能性はありそうだね。
でも今回は回り込んで反対側に行くのが目的ではないから、それはまた今度かな。ふむ、こうなってくるとやっぱり共闘イベントの報酬の転移の種が早く欲しくなってくる。
「とりあえず無理に倒す必要もないからトナカイはスルーして、洞窟の探索に戻るぜ」
「ほいよ。俺はこの盛り上がってる雪のチェックをしていくか」
「ケイ、ヘビかもしれないから気をつけてね」
「……流石に雪の中にはいないだろ」
「……ケイさん、それはさっきのサヤの失敗の原因と同じだよ?」
「……確かに。流石に滑り落ちたくはないな」
「ケイ! ヨッシ!」
「おっと、からかい過ぎたか」
「そうみたい。ケイさん、後で何がいたか教えてね」
「ほいよ」
その後からPT会話を通じてヨッシさんを追いかけるサヤの声が聞こえていた。まぁ本気で怒ってる様子はなく、楽しそうな声に聞こえるのでじゃれ合いの範疇だね。……流石にふざけ過ぎて本気で怒らせるような真似だけはしないようにしないといけないけども。親しき仲にも礼儀ありってね。
さて、俺は俺で目の前のものに集中しようか。……さっき見た時から、盛り上がっている部分が少し増えている気がするのは気のせいかな? あ、また目に見えて増えているっていうか、これは確実に雪の中に何かいて移動してるよな。
冗談抜きでヘビが出てきてもおかしくないし、さっきは掘ろうかと思ったけど予定変更。とりあえず獲物察知を使って黒暴走種系統か一般生物かの確認をしてから火魔法で雪を解かしてやろう。
<行動値を3消費して『獲物察知Lv3』を発動します> 行動値 57/60
お、黒い矢印が雪の中に向かっている。他には……特になさそうって事は近場の敵はこの雪の中にいる正体不明の敵だけか。
よし、予定通り雪を解かしてその正体を確認しようっと。矢印が指し示す場所の真上まで歩いてきたけど、ここは火力を上げて一気にいくか。
<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します> 行動値 57/60 → 57/59(上限値使用:1)
<行動値2と魔力値8消費して『火魔法Lv2:ファイアボール』を発動します> 行動値 55/59(上限値使用:1): 魔力値 186/194
魔法砲撃で砲撃化をして火力を増幅させていこうっと。部位指定は右のハサミに指定して、3連射に設定。雪を解かすのにどの程度の火力がいるのかは分からないけど、流石にこれだけやれば大丈夫だろ。氷属性の時に使う魔法でもない気はするけど、とりあえず火弾発射!
お、一発毎にどんどんと雪が解けていく。よしよし、一発じゃ足らなかったみたいだけどなんとか中にいた何かに到達はしたようだ。そして俺の攻撃を受けた謎の敵が雪を掻き分けて出てきた。
「……白いモグラ?」
「え!? モグラがいたのー!?」
「ハーレさん、食い付きいいな!?」
「どこかにいるとは思ってたけど、まだ見つけられてなかったんだもん! まさか雪山にいるとは思わなかったよ!」
「まぁ、そりゃそうだ」
普通に考えて、モグラって雪山で出てくる種族ではないよな。草原エリアとか森林エリアにいそうではあるけど、意外と会ってない気がする。あれ、でもどっかでモグラの名前は見たような気もするけど、いつだっけ……?
あ、そんな事を考えてたらモグラがまた雪の中に潜っていった。ちっ、逃した……いや違う!? あ、脚を置いている雪が崩れて地味にバランスが保てない!?
「下からの攻撃かよ!」
<行動値5と魔力値15消費して『水魔法Lv5:アクアウォール』を発動します> 行動値 50/59(上限値使用:1): 魔力値 171/194
咄嗟の防御と姿勢の立て直しの為に、雪と脚の間に強引に割り込むように水の防壁を生成した。魔法砲撃にするとすぐ真下に展開するには角度が悪そうなので通常発動である。あ、これって衝撃を吸収する為か脚が軽く沈んで動きにくいけど、地味に足場にはなるんだな。
そしてその下の雪の中からは、鋭い爪を突き刺してきている白いモグラの姿があった。なるほど、モグラはそういう戦法か。こりゃハーレさんがいた方が戦いやすそうな相手ではあるね。とはいえ、モグラ一体に苦戦する気はない!
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