第384話 竹を手に入れて
その後に三回ほど同じ事を繰り返して、合計で四本の竹が採れた。パンダはどうやらタケノコを抑え込むと出現してくるみたいだったけど、大して強くはなかった。でもまぁ、対処出来る手段が揃っていたから割とあっさりどうにかなったけど、この竹林の殺意が高過ぎるのは間違いないね。
比較的簡単に器に出来そうな竹を誰でもあっさりと取らせてくれる気は無いような印象だった。これは地味に面倒とか、死亡率が高いというのは頷けるものである。
まぁそれは別として、何とか結構な量の竹は確保して竹林の外に持ち出す事は出来た。さてとこの竹をインベントリに入れれるように大きさを変えていきますか。
このままじゃインベントリに入らないみたいだし、枝や葉っぱも要らないから除去していこう。と、その前に問題はないと思うけどちゃんと切れるかな?
「サヤ、竹を半分くらいで切っていってくれ!」
「うん、分かったかな。でも半分でも結構長いよ?」
「そこからどんどん半分にしていくからな。インベントリに入れられるくらいになるまででよろしく!」
「そっか、そういうやり方だね。うーん、スキル無しでも行けるかな? えい!」
「おー!? スキルなくてもいけるんだー!?」
サヤの外骨格と化している巨大な爪で、スキル無しでもあっさりと竹を分断出来ていた。流石、物理攻撃特化型のサヤのクマだな。一般生物の竹相手には耐えきれるものではない威力のようだ。……ただ爪は一本ではないから無駄な輪切り部分が発生してるけど、多少は仕方ないね。
「さて、俺もやるだけやってみるか」
俺のハサミは打撃向きにはなってはいるけど、これでも切断系スキルはある。問題はハサミを広げても竹の方が太い事くらいかな。……挟めないのに何とかなるのか、これ? まぁチャレンジあるのみ!
<行動値を1消費して『鋏鋭断Lv1』を発動します> 行動値 56/57(上限値使用:3)
とりあえず竹の端の方で試しにやってみる。お、挟みきれてはいないけど、切断は出来ていってる。……竹の三分の一くらいくらいだけだけど。うん、何回かに分けてやれば問題なし! それでも切り口が歪だなぁ……。
これだと俺は枝とか葉っぱを切り落としていく方が良さそうだ。
「ケイさんの今の大きさだとそうなるよね。さてとそれじゃ私もやろうかな」
「あれ、ヨッシさんの針ってウニが邪魔なんじゃ……?」
「ケイさん、動かせるからね、このウニ。ほら、こういう風に」
「そういやそうだった」
いつも針にしがみついているウニのイメージが強くて、つい動かせる事を忘れてたよ。ヨッシさんの小型化しているウニがハチの頭の上まで移動していった。うん、これはこれで随分とインパクトのある光景だね。
「それにこういう事も出来るからね。『大型化』『斬針』!」
「あ、俺と同じくらいのサイズか」
ヨッシさんが大型化を使えば、結構デカい針が刃物化したハチになったね。強そうではあるけど、大型化や小型化は上限値の使用量が多いんだもんな。
「はっ!? 私だけする事がない!?」
「ハーレさんは斬撃系のスキルはないもんな。切った残骸の整理、頼めるか?」
「切るのは出来ないからそうなるよね!? 頑張ります!」
流石に斬撃系のスキルを持っていないハーレさんに竹を切れというのは無茶な話だしね。ここは邪魔になってくる切断済みの枝とかの整理をしてもらおう。
その間にもヨッシさんとサヤが木の切断を続けていく。でも、ヨッシさんは少し苦戦気味だね。流石にヨッシさんにはサヤの爪ほどの鋭利さはないか。
「あれ、これって地味に切るの難しいね」
「えい! あ、インベントリに仕舞えるようになったかな!」
「……これって切るのはサヤに任せた方が早くない?」
「……そんな気がしてきた。よし、ヨッシさんと俺は邪魔な枝の撤去で!」
「その方がよさそうだね」
「メインは任せてかな!」
俺もヨッシさんも一発で切れる訳じゃない。無駄な輪切りが出るとはいえ一発であっさり切っているサヤに頼むのが一番効率が良さそうなので、そういう事に決定である。竹の長さが1メートルちょいくらいになればインベントリに入れられるのか。
結構分割しまくったけど、元は10メートル以上はあったな。よし、とりあえず入れれるようになったのはインベントリに入れていこう。
<ケイが規定条件を満たしましたので、称号『採集ビギナー』を取得しました>
<スキル『容量拡張Ⅰ』を取得しました>
<既に『容量拡張Ⅰ』を取得していますので統合し、スキル『容量拡張Ⅱ』に変化しました>
<スキル統合により、スキル『容量拡張Ⅰ』は失われます>
<ケイ2ndが規定条件を満たしましたので、称号『採集ビギナー』を取得しました>
<スキル『容量拡張Ⅰ』を取得しました>
<既に『容量拡張Ⅰ』を取得していますので統合し、スキル『容量拡張Ⅱ』に変化しました>
<スキル統合により、スキル『容量拡張Ⅰ』は失われます>
あ、コケとロブスターの両方で採取ビギナーの取得になった。ふむふむ、移動中に適度にアイテムは拾ってはいたけど、ここで条件を満たしたのか。
そういやロブスターって水流の操作の取得の時に淡水漁ビギナーを取ってたんだった。そして地味にコケは採集ビギナーには種類は足りてても個数が足りてなかった気がする。まぁ詳細に数えてなかったし別にいいか。
「コケとロブスターで『容量拡張Ⅱ』をゲット!」
「えー!? ケイさんってまだそうだったの!?」
「ハーレさん、どういう事だ?」
「私はリスで『容量拡張Ⅰ』と『容量拡張Ⅱ』の2つだよー!」
「いつの間に!?」
「えっと、いつだっけ? 忘れたけど、多分ケイさんがログインしてない時間ー! ちなみに『採集ビギナー』と『狩猟ビギナー』と『淡水漁ビギナー』です!」
「ハーレってあちこちで色んなもの拾ってるもんね」
「地味にハーレが一番容量多いのかな?」
「えっと、どうなんだろ!?」
ふむ、確かに気になるところではあるね。というかその前に『容量拡張Ⅱ』ってインベントリ枠いくつ増加だ? あー、250枠も増えるのか。これだけ増加すりゃそれほど容量には困らないんじゃないかな。
「えーと、俺のコケもロブスターも初期の100枠と『容量拡張Ⅱ』で追加の250枠でそれが2つで700か」
「私はリスで初期の100と追加の350で合計450枠だねー! クラゲは採集ビギナーがあるから追加100で合計200だよー!」
「って事は、地味に枠数は俺の方が多くなったのか」
「そうなるね! クラゲでも採集しないとだー!」
ふむふむ、今のスキル統合で一気に増えたのでハーレさんよりも多くなったのか。まぁこれだけあれば早々使い切る事もないだろう。
「えい! えい! それは良いんだけど、切り終わったから回収してもらってもいいかな!?」
「はーい!」
「あ、サヤ、すまん!」
スキル取得で気が逸れて、インベントリに入れていくのを忘れていた。ふむふむ、誰かの所持ではないアイテムをインベントリに入れたら採集って事になるのかな?
肉や皮などはPTメンバーが倒した時にあまり離れていなければ自動分配されてインベントリに入ってくるし、狩猟や漁については倒してアイテム化した時点でカウントなんだろう。
まぁこれで充分な容量はあるから、無駄に溜め込まない限りは心配はいらないな。ささっと短くした竹をインベントリに入れて、桜花さんと灰のサファリ同盟にまで届けに行こうっと。
「それにしてもちょっと多かった気もするね」
「あー、まぁ不足してたみたいだから別にいいだろ!」
「それもそうさー!」
「そう思うようにしておこうかな」
うん、10メートル超えはあるだろう竹を四本も切り倒して更にそれを1メートルくらいまで分割したので、地味に結構な量ではある。まぁ多くて困る事もないだろう。俺らが使う器としてはもう少し分解する必要があるから2メートル分くらいあれば充分っぽいけどね!
そうして切った竹を手分けしてインベントリに仕舞って、邪魔になって切り落とした枝や葉っぱは燃やせそうではあるので一応確保。そこまでやって竹林での用事は完了である。時間は6時も近付いてきたし、切り上げ時だな。
「よし、用事も終わったし森林深部まで戻るか」
「あ、ちょっと待って」
「ん? ヨッシさん、どうした?」
「あっちの川の方、何か騒がしくない?」
そういや気にしてなかったけど、ここから東の川の方から少し前から声が聞こえていたな。多分ボス戦でもしてるんだろうけど、どういう状況かくらいは軽く見てみようかな。……ちょっと遠いけど。
「……ん? あれってもしかしてフラム達か?」
「あ、水月さんも居るかな」
「アーサー君もいるね。あ、ガストさんとルストさんもいるみたい」
「羽の生えたヘビもいるねー! あの人が赤のサファリ同盟の毒使いの人!?」
どうやら瘴気石を使って、ティラノとの再戦中のようである。そしてメインで戦っているのは、アーサー、フラム、水月さんの赤のサファリ同盟のメンバーみたいだね。あとルストさんが地味に魔法を使ってるようだ。
ふむふむ、この感じだと新入りメンバーとの交流も兼ねた実戦訓練っぽい。距離があるから分かりにくいけど、アーサーやフラムの動きが前よりも洗練されている気もする。
そしてその周辺に集まって騒いでいるのは、普通の赤の群集のプレイヤーか。どうやら赤のサファリ同盟は共闘イベントでの色々な事を通じて、赤の群集との関係性は強まったようである。これは今後の赤の群集には要注意だね。
さて、ここで思いっきり観察していっても良いんだけどどうしようかな? 堂々と探り合いをするのは良いんだけど、こうやって一方的に覗き見るってのはあんまり好きじゃないんだけど……。
「ケイ、ヨッシ、ハーレ、もう戻らない? あの人達と戦う事があったら正々堂々と戦いたいから、ここで見てるのはあんまり……」
「俺もサヤに同感。戻って、竹を渡してこようぜ」
「はーい! 多分何も言われないとは思うけど、その方針には賛成です!」
「うん、みんながそう言うならそうしよっか」
ヨッシさんはその辺の拘りは特にないみたいだけど、サヤとハーレさんは俺と同じ感覚みたいだね。特にサヤは水月さんとライバル関係だし、その辺が特に気になるのかもしれないね。
とにかくみんなの意見は一致したので、ここは気付かれない内に撤退しよう。頑張れよ、アーサー。それと一応フラムも応援しといてやるか。
◇ ◇ ◇
そうして一度ミズキの森林に戻り、あまり時間もなかったので水のカーペットに乗って大急ぎで森林深部まで戻ってきた。目的地はとりあえず灰のサファリ同盟の本拠地だ!
まぁ今の森林深部の中はそう移動に時間はかからないので、すぐに到着した。お、ちょうどラックさんも居るね。
「やっほー! ラック、竹を採ってきたよー!」
「え、ハーレにみんな!? えっ!? 竹の調達って頼んでたっけ!?」
「あ、そういや直接引き受けた訳じゃなかったか」
桜花さんから灰のサファリ同盟で竹を器にしているとか、竹の供給量は少なめとか聞いていただけで直接依頼された訳じゃなかったな。依頼したのは桜花さんの方だった。
「ラック! 竹を一本分あげるから、はちみつレモン頂戴ー!」
「あ、そっか。ハーレにははちみつレモンの事、話してたんだった。竹については桜花さんからかな?」
「おう、そうなるな。あって困るもんでもないだろ?」
「ま、そうだね。まだ数に余裕はあるけど、どこかで追加補充を誰かに頼みたかったから丁度いいかも。それに試作品のはちみつレモンなら、丁度完成したしね」
「おー! 完成したんだー!」
ほうほう、それは朗報だね。元がレモンという事だし、回復するのは魔力値かな?
「試作品だからまだ数はないけど、それで良ければ竹と交換でいいよ。でも竹一本分だとこっちが貰いすぎだから、少しおまけしておくね」
「おー! ラック、太っ腹だねー!」
「あはは。えっと、おまけは何がいいかな?」
「はい! 果汁を下さい!」
「果汁……? まぁあるにはあるけど、使いにくいだけで回復量は変わらない失敗作だよ?」
あ、果汁もあったりはするんだ。まぁ確かに果物をそのまま食べるよりは使い勝手は悪そうだよな。多分だけど器は手に入れてきた竹なんだろうし、そのままインベントリに入れれても俺のロブスターとかだと飲みにくそう。
サヤとかハーレさんとかちゃんと掴める手がある種族で、戦闘後に使うならありなんだろうけどね。戦闘中は普通の果物でさえ食べる時に隙が出来るんだから、まぁ失敗作って事になるんだろう。
「ふっふっふ、ラック! 私は今日の夜にカキ氷を作るのさー! 正確にはヨッシに作ってもらう!」
「あー、なるほど。果汁はシロップ代わりって事ね。え、でもカキ氷って氷はちゃんと削れるの?」
「……氷柱の表面を刃物化した針で削ってみるつもりだけど、やってみないとなんともね?」
「まぁそうだよね? ハーレ、あんまり無茶言ったら駄目だよ?」
「あはは、ラックさん大丈夫。私は慣れてるからね」
「あーそっか。ヨッシさんってそういやそうだったっけ。ハーレからヨッシさんの事は色々聞いたよ」
「言ってるとは思ってたけど、やっぱりね。結構寂しがり屋だから、ハーレの事お願いね」
「任せといて!」
現在のリアルでの身近な友人のラックさんと、離れてしまった友人のヨッシさんの間に何か絆が生まれたような気がした。まぁ何だかんだでハーレさんは良い友人に出会えたみたいで良かったね。
「それで交換するのは果汁で良いんだよね?」
「うん! 何の果汁があるー!?」
「今、在庫であるのは蜜柑とイチゴとレモンくらいかな。でもレモンは流石にシロップにはオススメしないよ?」
「それならはちみつレモンのはちみつをかけるよー!」
「あ、それならいけるかもね。それじゃ蜜柑とイチゴの果汁と、試作品のはちみつレモンね」
「ありがとね! それじゃ対価の竹です!」
「はい、確かに受け取ったよ。あ、カキ氷が上手く行ったら教えてね」
「了解です!」
そうして灰のサファリ同盟とのトレードは完了である。手に入ったのはカキ氷用のシロップ代わりの果汁と試作品のはちみつレモンだな。どっちも竹の器に入っている状態でアイテムとして判別されていた。ほう、はちみつレモンはレモンでの魔力値の回復量が増えてるっぽいね。これはいい。
さてそろそろ6時だし、サヤとヨッシさんは一度ログアウトだね。桜花さんへの竹の受け渡しは俺とハーレさんで行けば良いか。
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