第375話 新たな生命
流石に魔法砲撃と半自動制御のコンボではサヤ達の攻撃の回数稼ぎには不適格だったので、普通に土の操作に切り替えて控えめの攻撃にしておいた。
あのコンボの使い道は間違いなくあるけど、何だかんだで結構な魔力値を使ったからね。後で別魔法版で登録しとこうかな。あ、そんな事を考えている内にサヤ達の纏属進化が時間切れみたいである。
「あ、効果時間切れかな」
「私も切れたね」
「うー!? 200回は地味に疲れたよー!?」
「あはは、確かにそうだね。でも何とか回数自体はみんなクリア出来たね」
「これで今度はもう片方を200回使わないといけないかな」
「ヨッシが色々食べてるのに、私が何も食べられないのが悔しいです!」
「ハーレさんは纏瘴なんだから、食べたらダメージ食らうぞ? 逆にヨッシさんは食べなきゃHP減っていくだけだしな」
「そうそう、ハーレ。これは流石にね?」
「まさか纏浄のデメリットではHP1以下にはならないけど、HP1まで減るとスキルが使えなくなるとは思わなかったしな」
「自分じゃ死ねない仕様を考えたら、当然といえば当然だけどね」
まだまとめ情報に上がってはいなかった内容だけど、纏浄のデメリットであっても直接は死ねないようになってたんだよな。まぁそれでもHP1までは簡単に削れるから、転生進化する時には使えそう。
<ワールドクエスト《この地で共に》のボスを1体撃破されました> 灰の群集 5/5
「おー!? 灰の群集の分が終わったよー!?」
「お、マジだ」
「ねぇ、みんな。これってボス戦が全部終わったら演出があるのかな?」
「……ありそうだな」
「はっ!? 今のうちにエンの場所で待機しておいた方がいい!?」
「それはありそうかな!? すぐに移動する?」
「ちょい待った!」
「……どうした、ケイ?」
「ケイさん、どうしたのさー!?」
確かに【惑星浄化機構】の進化に伴い、エンを初めとする群集拠点種の復活の演出はありそうだよな。でもそれだけじゃなくて今回は臨時拠点となっている、今いるミズキ森林のミズキが窓口になっているからな。……もしかしたら、この場所でも何か演出がある可能性も……。
「推測でしかないんだけど、ミズキのとこでも特殊演出があるんじゃないか?」
「はっ!? 確かに!?」
「あ、そうかもね。ここを含めて、各地の臨時拠点が進化の為の起点になるんだし……」
「この人の少なさからすると、意外と盲点か? だが、確実とは言えないぞ?」
「それは分かってるって。でも、割とありだと思うけどどうする? エンのとこに行くのなら俺はそれでもいいぞ」
多分、追憶の実に演出自体は追加されると思うから後からでも演出は見れるだろうしね。あえてみんながボス戦に夢中になってる間に、人の少ない場所の演出を見るのも悪くはない気もする。
<ワールドクエスト《この地で共に》のボスを1体撃破されました> 青の群集 5/5
「あー!? もう残り1ヶ所だー!?」
「……タイミングが分からないから、下手に今から移動すると何も見れない可能性もあるね」
「それはやだー!? それなら近場のミズキのとこに行こうよ!」
「ハーレが良いなら私はそれでいいかな」
「うん、私もそれでいいよ」
「ま、何もかもを見逃すのが一番損だからな」
「そんじゃ決定って事で! ミズキのとこに行くぞ」
「「「「おー!」」」」
そういう風に意気揚々と決めたはいいけど、これでミズキの所に演出が無かったら大損だね。まぁあるとも無いとも絶対とは言えないからね。無かった時は無かった時だ!
そして少し移動して、ミズキの目の前までやってきた。多くはないけど、全く人がいないって事もないか。あ、ダイクさんとレナさんを発見。レナさんがいるって事は狙いは同じか。
「およ? ケイさん達じゃん! こっちを見に来たの?」
「おっす。ケイさん達もミズキの方の演出狙いか?」
「ま、そうなるな。そういう言い方するって事はダイクさんとレナさんもか」
「……俺はレナさんに連行されただけだ」
「……なるほど」
何だかんだでダイクさんはレナさんに引っ張り回されているっぽいね。でも、それほど本気で嫌がってる風でもないね。流石に本気で嫌なら運営に報告とかでそれなりに対処はしてくれるはず。その様子はなさそうだし、意外とダイクさんもそれなりに楽しんでるのかもしれない。
<ワールドクエスト《この地で共に》のボスを1体撃破されました> 赤の群集 5/5
<ワールドクエスト《この地で共に》の全てのボスの排除が完了しました>
<規定条件を満たしましたので、ワールドクエスト《この地で共に》が次の段階へ移行します>
「よし、来たか!」
「わくわく!」
「さーて、こっちの演出に期待してきたけどどうかなー?」
遂にボス戦の全てが終了である。遂にとは言ったけど、案外早かったね。あ、グレイとセキとサイアンの姿が表示されてきた。
『暴走した群集拠点種の沈静化と、共に暴れていた瘴気強化種の排除が完了したと報告が入った。力を貸してくれた者たちに礼を言う』
『あー、なんか勝手に結晶化した瘴気で再強化するって情報もあるが、そっちはこれからの作戦に支障はねぇからな!』
『……セキ、もう少し言い方というものをですね?』
『良いだろこのくらいはよ!』
『……はぁ、今回はまぁいいでしょう』
相変わらずセキは乱暴な感じではあるね。サイアンが地味に苦労症っぽいよな。それにしても勝手に結晶化した瘴気ってのは瘴気石の事で、再強化がボスとの再戦の事かな? ふむ、用途の明確な説明が無かったのは、ここでヒントが出るようになってたからか。
『ともかくだ、これで【惑星浄化機構】の進化の為の準備は整いつつある。サイアン、同胞達に提供してもらった進化情報で足りるか?』
『……そうですね。精神生命体化には進化情報は必要ないので問題ありませんが、おそらく進化は二回に分けた方が良いでしょうね』
『ん? どういうこった?』
[……何か問題があるのか?]
進化を二回に分けるって、それはどういう事なんだろうか? あれだけの進化ポイントがあってもまだ足りないって事なのかな。
『いえ、問題というよりは安定性ですね。まずは【惑星浄化機構】には一度浄化の制御に特化した形で進化してもらいたいのです。その後、安定化させる為の進化へと切り替えて安定化を図るのがよろしいかと』
[……どういう事だ?]
『なるほどな。本来は段階を経て馴染ませて行く手段だが、特化させる事で負荷を減らすのだな』
『あー、そういやそうなんのか。段階を踏んでいくと時間がかかるんだったな』
[……つまり、一度そなたらの同胞の正常化を成す為に浄化に特化した進化した後に、安定して馴染む為の進化を再度行うという認識でいいのか?]
『えぇ、その理解で正しいです。【惑星浄化機構】、そういう手順で行おうと思いますが宜しいですか?』
[……元は我の思い込みが招いた事だ。その提案で問題はないし、その後の進化で共に進めるのであろう?]
『それについては保証しよう』
『だな。そんな不義理な真似はしねぇ』
『えぇ、約束しましょう』
[ならば、その進化をお願いしたい]
『あぁ、了解した』
なるほどね。いきなりの通常の進化だと浄化の力の制御を安定化させるのに段階的な進化が必要になるから、浄化に特化した進化をしてから段階的な進化へと戻そうって事か。
というかよく考えたら、【惑星浄化機構】って進化の為の経験値稼ぎとかしてないからその辺が時間がかかる理由なのかもね。
『では、まずは【惑星浄化機構】の精神生命体化からだな』
『ま、そこからだよな』
『えぇ、そうですね。始めましょうか』
[我はどうすればいい?]
『これから行う事で起きる変化を拒む事はするな』
『下手すりゃ精神崩壊すっからな?』
『まぁ受け入れている以上は大丈夫だとは思いますけれど……』
[……変化を受け入れればいいのだな?]
へぇ、精神生命体になる時に変化を拒むと精神崩壊を起こすのか。地味に恐ろしい内容ではあるね。……語られてないだけで、おそらくそうなった人が沢山居たんだろうね。
『では始めるぞ』
『おう!』
『えぇ』
そしてグレイとセキとサイアンから、眩い光の線が無数に伸びていく。あ、目の前に出てきている映像だけではなく上空から光の線が無数に伸びていき、至る所の地面に突き刺さっていく。
そっか、【惑星浄化機構】はこの星の地下にいるんだから地下に向かって行くのは当たり前といえば当たり前か。
「おー!? これはすごい光景だね!?」
「神秘的かな」
「これは凄いね」
「ははっ、こりゃすげぇ」
サヤ達の思わず出たという感じの感想には俺も同意である。無数の光の線が包み込むようにして、大地の中から巨大な半透明でありながら光を放つ球体が現れて、上空に浮かんでいる。
これが精神生命体になった【惑星浄化機構】か……。ははっ、プレイヤーとは個体としての規模が全然違うじゃねぇか。そりゃあれだけ大量の進化ポイントが必要になるはずだ。
[……これが我なのか? この溢れ出んばかりの力は一体……]
『おい、間違ってもその力は今はまだ使うなよ? 全部台無しになるからな?』
[分かった。気を付けよう]
『それでは進化を始めます。グレイ、あなたの灰の群集の者が一番多いので主導は任せますよ』
『分かっている。進化情報を預かっている同胞達よ、頼むぞ』
なるほどね。競争クエストでの勝利エリアが今の臨時拠点かつ進化ポイントの集積場所だから、一番多い灰の群集のグレイが号令をかける訳か。
そしてその1人であるミズキを見てみると、思いっきり光り輝いていた。っていうか、近くの地面まで光ってません!? もしかして、これって浄化の力も同時に与えて浄化属性で進化させようとしてるのか!?
『私達の出番だな。【惑星浄化機構】……いや、我らの新たな仲間よ。進化の為に受け取るがいい』
そのミズキの言葉と共に温かな光が、【惑星浄化機構】へと注がれていく。他の方向からも同様の光が注がれて、【惑星浄化機構】の表面を覆うように膜が形成されていく。これは、進化の兆候だ!
『地上では意味がない。元の場所へ戻すぞ』
[あぁ、我の身体はこの星そのものだ。そのように頼む]
そしてその状態から再び地面の中へと沈み込んでいき、その間にもミズキ達の放つ光はどんどんと強くなっていく。しばらくして完全にその姿は地下へと戻っていった。
だがまだ終わっていないようで、ミズキは地下へと向けて光を放ち続けている。そしてその光が収まった頃に次の段階が始まった。
[うぉおおおお! これが、我の進化か!]
大地が温かな光を脈打つように放ち出し、大きな振動が発生する。そしてそれと同時に何かが砕け散るような音も聞こえていた。
「うおっと!?」
「え、今の揺れは何かな!?」
「進化が終わった……?」
「びっくりしたー!?」
「さっきの砕け散ったような音は進化の膜が砕けた音か?」
流石にみんな驚いてるね。あの規模のものの進化ともなればプレイヤーと規模が違うんだな。それにしても、ミズキのとこでも演出があるっていうのは正解だったね。直接、光を放つ光景を見るのは近くにいないと無理だしね。
『【惑星浄化機構】、どうなりましたか?』
[問題なく進化出来たようだ。今の我ならば、汚染されたそなたらの同胞の浄化は問題はない。……欲を言えば、惑星全てを浄化したいが浄化の総量的には無理そうだが……]
『そっちは時間かけて馴染ませつつやればいいんだよ!』
[……そうだな。今まで長い時間をかけてきたのだ。共に歩む者達がいるのに焦る必要もないか]
『そういう事だ。だが、群集拠点種の正常化は頼んだぞ』
[あぁ、それが我が初めに行う事だな。行くぞ!]
そしてその言葉と同時に、2つの方向から光の柱が立ち上がるのが見えた。方向的に赤の群集の森林と灰の群集の森林深部の方だ。この光の柱によって群集拠点種が正常化するんだろうね。
[おそらくこれでうまく行ったはず……くっ!?]
『どうした!?』
[……少し力の加減を誤ったようだ。そんな事より、うまくいったのか!?]
『えぇ、私の所の群集拠点種の正常化は確認出来ました』
『赤の群集も確認出来たぜ』
『灰の群集もだ。【惑星浄化機構】、感謝するぞ』
[我がやるべき事をやったまでだ。それに感謝をすべきなのは我の……ぐっ!?]
ふむ、これは群集拠点種の正常化には成功したけども【惑星浄化機構】に負担がかかり過ぎた? まぁプレイヤーでも浄化魔法を使ったらデメリットが相当あったもんな。そこまで何もかも上手く行くわけじゃないか。
『サイアン、これは大丈夫なのか?』
『特化させたとはいえ、流石に負荷が大きかったようですね。ですが、即座の再進化には色々と足りていませんので少し時間をいただけますか?』
『具体的にはどうすんだ、サイアン?』
[……我ならば大丈夫だ]
『大丈夫ではないでしょう! 少し間を開けて、もう少しの進化情報と経験の蓄積で予定通り再度の進化を行います。そうなれば浄化の制御能力は下がりますが、長い目で瘴気の撤去をするには確実ですからね』
『つまり、しばらくの間は継続して進化情報の提供を求めればいいのだな』
『なるほどな。それならそう通達しとくぜ』
『あぁ、そうしておこう』
『セキ、グレイ、よろしくお願いしますよ』
[……済まぬな、我の為に]
『私達の新たな故郷にするのです。あなたにも存分に手伝っていだたきますからね?』
[……心しておこう]
<規定条件を満たしましたので、ワールドクエスト《この地で共に》が最終段階に移行します。なお、このクエストの終了は共闘イベント『瘴気との邂逅』の期間終了時になります>
<各群集の群集拠点種を介した転移が正常化しました>
<復活した群集拠点種にて【惑星浄化機構】の再びの進化の為の各種進化ポイントの譲渡が継続して可能となっています>
<復活した群集拠点種にて、報酬アイテムの一覧表示と報酬アイテムの交換申請が可能になりました。アイテムの受け渡しは共闘イベント『瘴気との邂逅』の期間終了時になります>
<最終段階はイベントの報酬アイテム獲得の為の猶予期間となります。欲しいアイテムがあれば狙っていきましょう>
おっと、ここまででイベント演出は終わりか。ふむふむ、ここからは要するに報酬アイテムの内容が開示されて、欲しいものがあればそれ狙ってポイントやボス戦の回数を稼いでいけってことか。
なるほど、こういう内容なのであればボス戦をさっさと終わらせるのが得策だったって事なんだな。常闇の洞窟に出てきた青の群集の迷惑連中のしようとしてた事は、この内容なら邪魔以外の何物でもなかったって事になりそう。
「報酬気になるねー!?」
「手に入るのはイベント期間が終わってからみたいだが、何が手に入るのかが今の段階で分かるのはいいな」
「早く見てみたいかな!」
「そだね。どんなのがあるんだろ」
「ま、行ってみれば分かるだろ」
演出も大掛かりだったけど、それ以上にみんなは報酬に夢中か。まぁ俺もそこは無茶苦茶気になってるからね。エンも復活したって事みたいだし、早速見に行きますか! ふっふっふ、空飛ぶクジラは地味に混雑とは縁遠いからね。
「アルさん、わたしらも乗せてもらっていいー?」
「別に良いぜ。レナさんもダイクさんも一緒にいくか」
「お、俺もいいのか?」
「ま、よっぽどの大型でなきゃ大して変わらないしな」
「そっか。ありがとよ、アルマースさん」
そういう事でたまたま一緒に演出を見る事になったレナさんとダイクさんとエンの場所まで行く事に決定! さーて、どんな報酬アイテムがあるのかが楽しみだね。
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