第376話 共闘イベントの報酬


 レナさんとダイクさんをアルのクジラの背に乗せて、森林深部へと移動を開始していく。うーむ、思った以上に、立て続けにボス戦が終わったからちょっとこのタイミングは予想外だったかな。


「ふっふっふ! このアングルからのスクショは少ないよー!」

「ハーレ、わたしがいた事を忘れてないかい?」

「忘れてはないよー!? でも少ないのは間違いないじゃん!?」

「ま、そだね。後でラック達とスクショの交換をしようか」

「賛成ー! 灰のサファリ同盟のみんなが群集拠点種の現地のは撮ってるだろうしね!」

「それを見越してこっちを撮りに来たからね、わたしは!」

「……まぁ俺が乗り物代わりに使われただけだけどな」

「何しょぼくれてんのさ、ダイク! 何だかんだ乗り気だったじゃん」

「あれは諦めたって言うんだよ!?」


 レナさんは多く集まるだろうエンのスクショは他の人に任せて、ミズキの方のスクショを撮りに来ていた訳か。そしてダイクさんは、水のカーペットを便利な乗り物として活用されたんだろう。

 まぁ地形を無視して飛べるあれは移動には便利だしね。昇華が必要だから、操作精度も速度も申し分ない水準だしさ。


「お、空中浮遊がLv5になったぞ」

「アル、マジか!?」

「おう、マジだ。これで2メートルの高さは浮けるな」

「あー、そういやシアンさんとそんな話してたな」


 空中浮遊Lv4で1メートル、Lv5で2メートルとか話してたっけ。時間切れで何度か再発動してたりはするけど、基本的に浮きっぱなしだし育つのも早いか。

 早く俺の水のカーペット補佐なしでも上空を浮ける様になるといいんだけどね。それでも森以外なら2メートルの高さまで浮ければ相当違うだろう。


<『ミズキの森林』から『始まりの森林深部:灰の群集エリア2』に移動しました>


 そんな雑談をしている内に森林深部へと移動終了。……あれ、今思ったらそういや群集拠点種……ここならエンか。エンも復活して転移が正常化したとかあった気がするぞ……?


「……今更なんだけど、転移で良かったんじゃ……?」

「……え? あっ!? そういえば転移は正常化ってなってた気がするかな!?」

「あはは……。そういえばそうだった気もするね……」

「報酬の方に意識が行っちまって、つい忘れてたぞ」

「あははー! ダイク、何やってんのさー!」

「ちょ!? 俺のせいなのか!?」


 アル、サヤ、ヨッシさんの反応的には3人は俺と同じでうっかりスルーしてたようで、レナさんは露骨にダイクさんにちょっかいをかけて勢いで誤魔化そうとしてるし、レナさんとダイクさんも俺らと同じか。

 まぁ報酬の事が気になったのは俺も同じだし、この辺は仕方ないとは思う。だけど、なんでハーレさんは首を傾げているんだ?


「みんな忘れてたの!?」

「……ハーレさん、気付いてたのか?」

「てっきり変化を見たくて飛んでいってるのかと思ってました!」

「あー、なるほど」

「そうそう、その通り! いやー、瘴気の影も形も無くなったよねー!」

「……レナさん、そこは素直に忘れてたって言おうぜ?」

「うぐっ!? あーもう、そうですよー! うっかり忘れてましたよー!」

「あーあ、ダイクさん。言い過ぎだぞー」

「えー!? 俺が悪いのか、これ!?」


 ダイクさんの言葉でレナさんが地味に拗ね始めてしまった。まぁレナさんは思いっきりわざとらしい感じなので問題はないと思う。

 さて、そんな風に騒いでいる間にもう少しでエンの場所へと到着しそうだ。共闘イベントの報酬にどんなものがあるか、非常に気になるね。




 そしてエンの場所の目前の陥没エリアの崖上の上空へと辿り着いた。辿り着いたけども、これは凄い人数だな……。

 とりあえず陥没エリア自体は焼け野原のままだけど、エンの禍々しい色合いは元に戻っていた。いや、それ以上に地面から溢れてくるように浄化の光がエンの幹を通り葉っぱから光を放っている。おぉ、これはこれで神秘的な風景だ。

 まぁ焼け野原の中に光り輝く木というのにギャップはあるけども……。その光景が少し痛ましいけど、しばらくしたら元通りの森に復活するかな?


 エンの周りには大小様々な種族の人が群れをなしていて、とてもじゃないが後から来た状態では辿り着く事が出来そうな気がしない。

 あ、でも妙に小さなクマやオオカミや木が上手く隙間を縫って前に進んでいるね。なるほど、こういう時に小型化を使うってのもありなのか。


「凄い混雑してるな」

「確かにそうだね。これは下手に転移しなくて正解だったのかな?」

「ふっふっふ! ダイク、これこそ先見の明ってやつさー!」

「いや、レナさん、それ確実に後付……」

「ダイク、余計な事は言わないー!」

「まぁ私達、忘れてただけだけどね」

「ヨッシさんが言っちゃったー!?」


 いつもの事ではあるけど、特にテンション高いな、レナさん。まぁボス戦も終わった事だし、折角の報酬なんだからテンションも上がるか。

 まぁ後付だったとしても、実際この状態のほうがやりやすいから結果オーライって事で。空中に誰も居ないわけじゃないけど、空を飛んでいる人数は圧倒的に少ないからね。


「まぁいいや。このまま上空からアイテムの交換申請していこう」

「いやっほー! どんなのがあるかなー!? サヤ、ヨッシ、良いのがあればいいね!」

「そだね。どんなのがあるんだろ」

「それは見れば分かるんじゃないかな」


 ふむ、ちょっと前のハーレさんなら間違いなく1人で突っ走っていただろうけど完全に足並みは揃えているか。……まぁ違いを気にし過ぎるのもあれだし、その辺は程々に様子を見る程度にしておくか。


「アルはどんなのが欲しい?」

「どうだろな? スキルLvを上げるようなのがあれば、空中浮遊に使いたいとこではあるが……」

「あー、もしあったら俺もそれは欲しいな。つっても、流石にそれは多分ないだろ」

「まぁ、単なる要望だよ」


 あれば嬉しいけど、熟練度を稼ぐ手段は今のところ使い込む以外の手段はないしね。さてと報酬一覧を見ていこうっと。クエストの詳細欄からで行けるかな? お、報酬アイテム一覧って項目があったね。


【共闘イベント『瘴気との邂逅』の報酬一覧】

 譲渡ポイント数:10429P

 交換可能数:8個(使用済み:2)


 ここは順当に俺が譲渡したポイント数と、残り何個交換できるかと、既に何個交換したかの表示のようだ。改めて見るととんでもないポイント数だな。さて、交換候補はいくつかありそうだし順番に見ていくか。まず一番上のやつから!



『スキル強化の種』 1個:5000P(1個限り)

 スキルLvを確実に1上げる事が出来る。使い捨て。


 ちょっと待って。さっき、冗談で言ったつもりがマジであった!? うっわ、これは間違いなく欲しい。1個限りで5000P……うん、かなりのポイント数ではあるけど充分手に入れられる範囲だ。

 これは第一候補で間違いなし。よし、次も見てみようじゃないか。初手からこれは期待できるぞ!



『転移の種』 1個:3000P(1個限り)

 事前に登録した任意の場所への転移が可能になる。

 使用は1日1回までで、日付が変われば再使用可能。


『転移の実×10』 1個:300P

 事前に登録した任意の場所への転移が可能になる。

 転移の種の使い捨て版、10個セット。


 この2つはセットというか、同系統の上位と下位っぽい。これはこれで相当便利なんじゃないか……? 1日に1回か使い捨てとはいえ、登録した任意の場所に転移可能とはね。

 あ、もしかして移動範囲がこれから広がってくるからその為のアイテムかな? うん、これはこれで欲しい。転移の種の方が永続利用が可能だし、これも有力候補。使い捨ては使い捨てでも持っていたいところだけど、こっちは候補を挙げた後の残りポイント数と応相談かな。さて次!



『空白の称号』 1個:1500P

 任意の取得済みの称号の1つを未取得状態にする。ただし、スキルを取得する称号は対象外。

 ログイン場面にて使用可能。


 おーい、ちょっと運営さん! 今回、大盤振る舞い過ぎません!? えーと、これは取得済みの称号を未取得状態にするって事は『未成体・暴走種の討伐』とか『森を荒らすモノ』とかの称号を未取得の状態に出来るのか。

 そして『水流に昇華させたモノ』とかの称号そのものにスキルの取得が入っているやつは無理っぽい感じかな。うん、これは思いっきり欲しい。個数制限はないみたいだから、出来れば複数個! ……既に欲しいやつでポイント数がぎりぎりになってきてない……? 

 よし、深く考えるのは全部見てからにしよう。次行くぞ、次!



『部位合成の種』 1個:6000P(1個まで)

 任意の身体部位を合成させる事が出来る。合成出来る部位は1ヶ所のみ。

 ログイン場面にて使用可能。


 これって2枠目使って合成進化で部位増やせるやつじゃね!? アイテムでそういう代用も出来るのか。……2枠目を活用して翼を手に入れた紅焔さんとか、これって前々にあれば絶対欲しがったやつだろ。

 っていうかこんなのアイテム化したら合成進化が無駄になったとか言う人も……あ、でも6000Pって必要量が多いな。ふむ、他のアイテムとの兼ね合いを考えればそう悪くもないか……?

 とりあえず俺にはこれは要らない。特に追加したい部位もないからね。さー次だ!



『特性付与の水』 1個:2000P(3個まで)

 任意の特性を取得する事が可能。ただし、既に取得済みのものと特定部位が必要なものは不可。

 ログイン場面にて使用可能。


『属性付与の水』 1個:1000P(2個まで)

 任意の属性を取得する事が可能。ただし、既に取得済みのものは不可。

 ログイン場面にて使用可能。


 あ、これは場合によっては地味に良さそう。ロブスターに斬撃の特性を付与すれば、斬撃系の応用スキルが取得出来るかも。あー、でも2000Pはきっついなー。後で整理して考えてはみるけど、これはちょっと厳しそう。

 属性は俺には不要かな。ロブスターは無属性の方が扱いやすいし、コケは無理に属性を増やす必要もない。あ、でも地味に光属性とかは付与してみたい気もする。……特性の方に比べると必要量は少ないとはいえ、ポイント的に厳しいか。

 欲しいもの全てをあっさりと取らせてはくれなさそうだな、この報酬! でもこの感じなら、また同じような報酬がありそうな気もするね。……まぁそれは今考えても仕方ないので次!



『回復アイテムの詰め合わせ・果物』 1個:100P

 上質な果物系統の回復アイテムの詰め合わせ。

 

『回復アイテムの詰め合わせ・肉』 1個:100P

 上質な肉系統の回復アイテムの詰め合わせ。


『回復アイテムの詰め合わせ・魚介』 1個:100P

 上質な魚介系統の回復アイテムの詰め合わせ。


『合成アイテムの詰め合わせ』 1個:100P

 他のアイテムと合わせて使う事で効果を強化するアイテムの詰め合わせ。


 おっと、これらで最後か。ふむふむ、ここら辺は一気にリーズナブルになったね。回復アイテムの詰め合わせは何となく分かるけど、合成アイテムの詰め合わせは内容が気になる。癒水草とか各種毒草とかそんな感じかな?

 この辺はポイントの端数が出た時に使い切る為に貰うのでも良いのかもね。そういう用途で用意されている気がする。



 さてと、思ってた以上に良いものが多くて悩みどころだな。とりあえず最優先候補の5000Pの『スキル強化の種』、3000Pの『転移の種』は確定。この時点で残りポイントは2429か。2つだけだっていうのに思いっきり減ったな。

 とりあえず1500Pの『空白の称号』を行っとくか。これで残りポイントは929か。交換上限数は3個分だし後5個は細々としたものを選ぶか、それともまだ期間はあるからポイント稼いで追加譲渡して『特性付与の水』かもう1個『空白の称号』を狙う……?


 まだイベント期間はあるんだし、迷う余地のない『スキル強化の種』と『転移の種』と『空白の称号』は指定しておこうっと。一応ぎりぎりまでは変更も可能みたいだし、もし気が変われば変えても大丈夫だね。


<選択された『スキル強化の種』『転移の種』『空白の称号』を報酬として指定しました。受け渡しはイベント終了後になります>


 よし、これでこの3つの指定は完了! 他のは残ってるイベント期間中に考えようっと。さてみんなはどうしたのかな?


「みんな、何を選んだ?」

「無いと思ってた『スキル強化の種』は問答無用で選んだぞ」

「はい! それは私もです!」

「うん、私も同じかな」

「同じく私も」

「考える事はみんな一緒か」


 使い込みでしかスキルの熟練度が稼げないこのゲームでは破格のアイテムだもんな。使い時を間違えればただの無駄遣いにしかならないけど、あとLv1で昇華というタイミングとかであれば物凄く使いたい。

 俺はあとLv1で土の昇華だからそこに使いたいんだよね。アルは間違いなく空中浮遊だろう。サヤとヨッシさんとハーレさんはすぐに使う事が無くても、これは持っていて損はないからね。


「そういうケイはどうなんだ?」

「俺はとりあえず『スキル強化の種』と『転移の種』と『空白の称号』の3つだな。それ以上はイベント期間終了までに考える予定」

「あー、考える事は同じか。俺もその組み合わせだ」

「私も同じさー!」


 ふむふむ、アルとハーレさんは俺と同じか。まぁ何となくそんな気はしてた。ヨッシさんとサヤはどうなんだろう?


「サヤとヨッシはどうしたのー!?」

「私は『転移の種』は選んだけど他で悩み中だね。『属性付与』で雷属性を追加するのもありかなって思ってるんだ」

「ヨッシさんは更に状態異常の凶悪化が進むのか」

「うん、そういう方向の強化もありかなってね」

「良いんじゃね? ヨッシさんの状態異常は役立つしな」

「そだよー! それでいこー!」

「それじゃそうするね」


 よしよし、これでヨッシさんは毒、氷、雷の3属性になるんだな。これはかなりの強化になりそうだ。さてとサヤはどうなんだろうか?


「サヤはー!?」

「私も『転移の種』は決めたよ。でも他は悩み中かな」

「なるほどな。まぁ期間はまだあるしその間に決めれば良いだろ」

「うん、そうするつもり。でも2つはみんな一緒だったんだね」

「まぁポイント数が足りてるなら『スキル強化の種』と『転移の種』は迷う余地なしだろ」

「そうともさー! これからは遠出が増えそうだし、『転移の種』は多分必須だよ!」

「そうだろうね。性能を考えるならもっとポイントが必要でも良さそうだしさ」


 先に転移の種についてはみんなで話し合った方が良かった気もするけど、結果的にみんな報酬に選んだみたいだし問題ないかな。

 それにしても結構いい品揃えでしたなー。レナさんとダイクさんは唸りまくって悩んでいるみたいだし、陥没エリアに集まっているみんなも悩んでいるみたいだね。確かに俺もポイントに余裕があれば選びたいのもあるからね。


 ポイント数は人によって違うだろうし、足りなくて悩んでる人もいるんだろう。逆に灰のサファリ同盟の人とかだと、『転移の種』は必須だとしても各種回復アイテムとかを選んでそうだしね。ま、報酬に悩むのもこういうイベントの醍醐味だよな!

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