第374話 ボス戦を終えて


 さてとこれでとりあえず俺らの近場で戦えるボス戦は終わりである。たまにはこうしてのんびり支援でのボス戦もありかな。

 そういやガストさんが浄化魔法で締めるってのはどうなったんだろう? 最後の強風の操作で流しての連撃で終わったから、あれはあれでありなのかな?


「ボス戦の周回したい奴は順番を決めて好きにやってくれ! これにてこの場所での共闘は終了する!」


 ルアーのボス戦の終了宣言を受けて、赤の群集も灰の群集も歓声を上げている。ふむ、特に問題もなさそうだし、締めの話はいいか。みんなでの連続攻撃も派手だったしね。

 ともかくこれでボス戦での共闘は終わって、現時刻は9時前くらいか。さてこれからどうしようかな。


「みんな、これからどうする?」

「ケイがその状態だと纏瘴が解除になるまで戦闘は無理だろ」

「そだねー! ミズキの森林まで戻って休憩で良いと思います!」

「私もそれで賛成かな」

「私も賛成。今から他のエリアに行って終わってないボス戦は無理だろうしね」

「それもそうだな。それじゃ一旦戻るか」


 転移が使えない今の状態では他のエリアに行くのは厳しいだろう。他のエリアにいるっぽい紅焔さん、シンさん、シアンさんやソウさんに頼んでイベント期間限定に制限版の仲間の呼び声を使ってもらうという手段もあるにはあるけど、戦力自体は足りてるだろうし少々厚かましい頼みになるからね。流石にそれはやめておこう。

 ボス戦参加回数については10回、使用分が2回としても8回あれば多分充分だろ。まぁイベント仕様にもよるけど、流石に欲しいものが10個以上とかはないと思う。


「それだとこの辺りで今回はお別れかな。少しの間だったけど、楽しかったよ」

「シュウさん? 別にまだ一緒にいてもいいのではないでしょうか?」

「いやいや、ルスト。多分それは無理だよ?」

「だろうねー。シュウさん、大人数になると思うけど平気?」

「弥生がいるなら問題ないよ。それにまとめ役は弥生に任せちゃってるから、少しくらいは僕も動かないとね」

「……なるほど、そういう事ですか」


 弥生さん達がそんな風に話し始めていた。そして今回の主戦力であったガストさんとルアーのPTがもみくちゃにされながらもこちらにやってこようとしている。

 あ、ガストさんのキノコとタカが分離してキノコで飛び跳ねながらやってきた。自分の姿を確認するのに遠隔同調を使った俺が言うのもなんだけど、それって遠隔同調の無駄遣いじゃない?


「おーい、弥生さん、シュウさん、ルスト! 赤のサファリ同盟と交流したいとか戦闘が見たいって要望が多いんだけど!?」

「やっぱりそうなったね。弥生、ルスト、行こうか」

「しばらくは赤の群集からは離れないと決めたからには仕方ありませんか」

「さて、さっきは暴れてなかったから再戦で大暴れしてこようかなー!」

「そういう事だから僕らは行くよ。ケイさん達、また何処かで会うことがあればよろしく」

「分かったよ、シュウさん。ルストさんも弥生さんもまたな!」


 今回……少なくとも今日はここまでって事なんだろうね。まぁ基本的に隣のエリアが拠点なんだし、また会う事もあるだろう。

 交流していく中で赤のサファリ同盟の対人戦進出の可能性がかなり高まった気もするけど、まぁそうなった時はそうなった時だね。その時は全力で戦うまで!


 そしてみんなで挨拶をして、シュウさん達とは別れていった。そういやフラム達は見かけてない気もするけど、どこかにいたりするのかな? うーん、多分いたんだろうけど人数が多過ぎて分からなかった。

 まぁフラム達ともまた会う事はあるだろうし、それに赤のサファリ同盟メンバーになっているんだから今は多分無理だよな。そもそもフラムに限れば明日学校で顔を合わせるのは確定だ。あいつが休まなければだけど……。


「それじゃミズキの森林まで行きますか!」

「「「「おー!」」」」


 ベスタやオオカミ組は何か忙しそうに動き回ってるから邪魔しても仕方ないし、ミズキの森林まで戻ってちょっとまったりしようっと。のんびりボス戦だったとはいえ、通常時に比べれば神経を使ったのは間違いない。

 まだまだやる気が一杯な人も多いけど、明日は月曜で学校もあるし1時間くらいのんびりしててもいいよね。無茶して疲れて寝坊は嫌だし……。



 ◇ ◇ ◇



 そしてアルの空飛ぶクジラに乗って、ミズキの森林まで移動してきた。なんとなくのんびりしたいので、場所は湖の畔である。周囲を見回してみればチラホラとまったり状態になってる人もいるね。


<ワールドクエスト《この地で共に》のボスを1体撃破されました> 青の群集 4/5


「あ、青の群集でもまた1体倒されたかな」

「もう大方終盤じゃねぇか?」

「アル、そうなのか?」

「あー、そういやケイとハーレさんはさっきのボス戦の開始で余裕が無かったから、その間の進捗具合は知らないのか」

「おー!? もしかして思った以上に進んでるの!?」

「まぁな。確認してみるといいぜ」


 ふむふむ、この感じだと晩飯の為のログアウト前よりも結構進んでそうだな。アルの言う通りに確認してみよう。クエストの詳細を表示してっと。


【共闘イベント『瘴気との邂逅』】

 ワールドクエスト《この地で共に》の進行状況


 【赤の群集】

  ボス撃破 4/5


 【青の群集】

  ボス撃破 4/5


 【灰の群集】

  ボス撃破 4/5


 【惑星浄化機構への進化情報】

  累計譲渡進化ポイント 35,625,682


  ボス戦への参加回数:10(使用済み:2)



 あ、もうそれぞれの群集であと1体ずつなのか。今が9時前だから、これならよっぽどの事がない限り今日中に終わるんじゃないか? 流石は休日の日曜日だし、参加人数が多かったんだろうね。

 次の演出も気になるし、今日中に終わってほしいとこだね。まぁこればっかりは待ちしかないか。


<纏属進化を解除しました>

<『同調強魔ゴケ・纏瘴』から『同調強魔ゴケ』へと戻りました>

<『同調打撃ロブスター・纏瘴』から『同調打撃ロブスター』へと戻りました>

<『瘴気制御』『瘴気収束』が使用不可になりました>


 あ、纏瘴の効果時間が切れたね。それと同時に瘴気汚染・重度も治っていった。よし、これでまともに行動値や魔力値が回復する。思った以上に悪影響が強くて、ほぼ回復してなかったんだよな……。


「ケイ、元に戻ったな?」

「ようやく元に戻った。いやー、瘴気魔法も浄化魔法も威力は良いけど、気軽に使うもんじゃないね」

「あれって進化が進めば扱いやすくなるのかな?」

「あー、どうなんだろ?」


 可能性としては充分あるとは思うけど、流石に現段階では何とも言えないな。あ、そういや確認しとくべき事があったんだった。


「そうそう、言い忘れてたけど瘴気魔法を使った時に称号とスキルが手に入ったぞ」

「あ、やっぱりそういうとこにも称号とかあるんだね」

「ケイさん、どんな内容ー!?」

「称号は『力に蝕まれるモノ』ってので、スキルは『異常回復Ⅰ』だな。効果確認するからちょっと待ってくれ」

「了解です!」

「名前とタイミング的に、条件は浄化魔法と瘴気魔法を使った場合か」

「これって魔法だけなのかな?」

「……そういやどうなんだ? 流石に魔法のみの称号だと不公平感はありそうだが……」


 確かにそれは気になるところだね。もしかするとまだ未発見なだけで、浄化魔法や瘴気魔法に相当する物理での強制的な力の引き出し方があるのかもしれない。

 気にはなるけど、まずは『異常回復Ⅰ』の詳細確認が先だな。


『異常回復Ⅰ』

 状態異常を受けている状態において、自然回復までの時間が少し短縮される。


 お、シンプルだけど地味に良い効果だね。状態異常にならないのが一番ではあるけど、避けられない場合だってもちろんある。それが少しでも早く回復するならこれは良い効果だな。


「結構良い内容だったぞ。状態異常になった時の自然回復までの時間が少し短くなるってさ」

「お、そりゃいいな」

「あー! みんな、それに関係する情報発見だよ!」

「ハーレさん、もしかしてまとめ情報にあったりした?」

「うん! 提供者不明の未確定情報だけどね!」

「……また提供者不明の未確定情報か」


 同調共有の時にもあったけど、再現が出来ていない未確定情報はそのまま鵜呑みにも出来ないんだよな。でも間違いなく事実も含まれていたりもしたので、これは再現を狙ってみるべきか?


「具体的にはどんな内容なのかな?」

「えっとね、称号とスキルは同じ! でも取得条件が違うよ!?」

「……ハーレ、どんな風に違うの?」

「瘴気属性の攻撃と浄化属性の攻撃を両方200回以上発動だって!」

「……それって地味に大変じゃないかな?」


 それはサヤの意見に同意。でも魔法は昇華になっている属性がなければ無理なことを考えればそうでもないのか? てか、その人よくその条件を調べたな。

 あ、そういや俺の方の取得条件も上げとこ……。浄化魔法や瘴気魔法自体は既にまとめられてて、編集者はやっぱベスタだね。いつもご苦労さまです。さて最新情報の提供終了っと!


「明日になったら試してみる?」

「ふっふっふ、私はまだ今日は纏瘴を使っていません!」

「あ、そういやそうだね。私も纏浄は使ってないや」

「私も纏瘴は使ってないかな?」


 そっか、全員が使っている必要も無かったから俺とアル以外はまだ今日の使用分が残ってるのか。1日に使える回数に限度もあるし、折角ならやっておく……?


「サヤ、ヨッシ、再現検証をしながら取得を狙いませんか!?」

「『異常回復Ⅰ』はあったら便利そうだし、それも良さそうかな」

「そだね。そうしよっか」

「そういう事なら今日はこれから特訓でいいか。どっちにしても出来る事は特にないしな」

「アル。それは良いけど、どういう形でやる?」

「……そうだな。俺とケイの2人とサヤ、ヨッシさん、ハーレさんの3人組でのチーム戦でどうだ?」


 ほう、そう来たか。確かにたまにはそういうチーム戦も面白いかもしれないね。


「それは面白そうかな」

「うん、私は良いよ」

「それで決定だー!」

「なら、それでいくか。俺とケイで攻撃を叩き込みまくるから、それを迎撃って形で良いか」

「うん、問題ないかな」

「了解」

「頑張るぞー!」

「よし、容赦なく撃ち込んでやる。あ、でも全快までは待って」

「あ、それもそうだね」


 ようやく回復し始めたとこだから、まだ全快はしてないんだよね。そこだけは待ってもらいたいところ。

 さてと、俺だって色々試したいんだよな。魔法砲撃が連射になるって事で試してみたい事もあるんだよね。支配進化になってからこれは使ってなかったけども、実験を兼ねてやってみよう!


『半自動制御Lv1:登録枠1』

 登録内容:『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』『土魔法Lv2』

 再使用時間:90秒 消費魔力値:90


 コケ側の半自動制御に15連の土魔法Lv2を登録してみた。コケでログイン中だから、コケ側のなら同調共有にはスキル登録は出来てないけど問題なしだね。これで魔法砲撃で砲撃化すればそれぞれに3連射が出来て、それが15連だから合計45発の連続攻撃が可能のはず!

 支配進化になってから全然気にしてなかったけど、共生指示から呼び出さなくても半自動制御って発動可能なんだよね。ふっふっふ、これならば行動値10の消費だけで済む。魔力値は普通に使うけども!


「……ケイが悪巧みしてる気がするかな?」

「うん、確かにあの感じはそうだね」

「ああいう時のケイさんには色々と要注意さー!」

「あー、とりあえず始めるって事でいいか?」

「俺は良いぞ」

「サヤ、ヨッシ、準備しよー!」


 何かサヤ達に勘付かれてるっぽいけど、そこは知らん! とりあえずやるだけの事をやるだけだ。


「考えてても内容は分からないから仕方ないかな。『纏属進化・纏瘴』!」

「それもそだね。実際のものを見て対処しようっと。『纏属進化・纏浄』!」

「頑張るぞー! 『纏属進化・纏瘴』!」


 そしてサヤとハーレさんが纏瘴で瘴気を纏って禍々しい瘴気を纏っていき、ヨッシさんは温かい光を放つ毒の紋様が入った氷のハチへと変わっていく。全員に共通するのは共生進化相手も同様に見た目が変わってる事だね。


「それじゃ開始だ! 『並列制御』『水の操作』『アクアボール』!」

「アルさんが水魔法は珍しいね!? 『瘴気制御』『散弾投擲・瘴』!」

「ケイが土の昇華を目指してるからな。俺も水の昇華を取って2人でのウォーターフォールとデブリスフロウ狙いだ」

「おー!? 確かにそれはありだね!」


 ほうほう、アルはそんな事を考えててくれたのか。確かにそれはそれでありがたいかも。うん、そういう事なら俺も土の昇華も頑張らないとね。……今からやるのは別物だけど。

 さてとここまで移動してくる間に夜目以外は切っておいたけど、魔法砲撃が必要だね。


<行動値上限を1使用して『魔法砲撃Lv1』を発動します>  行動値 59/59 → 58/58(上限値使用:2)


 よし、いきなり全力で行くか。さてとうまくいくかな?


<『並列制御Lv1』を発動します。1つ目のスキルを指定してください>

<行動値10と魔力値90消費して『半自動制御Lv1:登録枠1』は並列発動の待機になります>  行動値 48/58(上限値使用:2): 魔力値 104/194 使用時間 90秒

<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<半自動制御は再使用時間の制限により、並列制御は出来ません。別のスキルを指定してください>


 あれ!? 半自動制御の並列制御で両方のハサミから連射しようと思ったのに無理だった!? うーん、この組み合わせは試してなかったから盲点だったね。よし、ここは無難に大量の放水にしておこう。


<2つ目のスキルを指定してください。消費行動値×2>

<行動値2と魔力値3消費して『水魔法Lv1:アクアクリエイト』を発動します> 行動値 46/58(上限値使用:2): 魔力値 101/194

<指定を完了しました。並列発動を開始します>


 よし、これで指定完了。右のハサミに半自動制御のアースバレットの連射を砲撃化、左のハサミに放水を設定。実験も兼ねてるけど、連続攻撃の発動開始!


「ケイ!? いくらなんでもそれはないかな!? 『瘴気制御』『爪刃双閃舞・瘴』!」

「ケイさん、容赦がなさ過ぎるよー!? 『散弾投擲・瘴』『散弾投擲・瘴』!」

「これは厳しいね? 『浄化制御』『乱れ針・浄』!」


 ふははははは! 次々と撃ち出されていくアースバレットが地味に楽しい! 1回のアースバレットの発動後、次のアースバレットは毎回砲撃化の指定が必要にはなるけど位置は決まりきっているから指定なんてすぐ終わる。

 あ、アースバレットと放水が重なったけど、特に変化はなしか。これは複合魔法にはならない組み合わせなんだな。


「とんでもねぇ組み合わせを思いつくもんだな」

「ま、魔力値の消費は多いけどな!」


 そうしている間にアースバレットは全弾撃ち尽くした。まだ放水の方は続いているって……地味に昇華での水の生成量が多いんだな。

 うん、何だかんだでみんなも上手く避けまくって、連続攻撃で俺の攻撃の大半は撃ち落としていたね。やっぱり連射が出来るとはいえ、狙いがバレバレだと対処もされやすいか。


「……ケイ、特訓ではそれはなしでお願い出来るかな?」

「……流石にそれを凌ぎ切るにはしんどいね」

「ケイさん、ちょっとは手加減してー!?」

「……流石にちょっとやり過ぎた?」

「今回は間違いなくな。俺まで攻撃してたらサヤ達は対処不可能だっただろ」

「それは失礼しましたー!」


 特訓でやるにはこれはやり過ぎだった。半自動制御は共生進化の時に共生指示から呼び出すと魔力値は消費しないけど、ログインしてる方から半自動制御を使うと普通に魔力値消費するもんね。でも魔力値の消費は大きいけどもこれはこれで充分実用性ありだな。

 連射になる魔法砲撃との相性は良いし、良い使い方を見つけたね。とはいえ、みんなからはかなり不評だったので特訓中では封印だな。さて普通に特訓をやりますか。目指せ、土の昇華!

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