第364話 スキルの登録


 さーて、支配進化のその先への進化は完了した。とりあえず進化した事でスキルの発動が解除されているので、夜目だけでも発動しとこう。


<行動値上限を1使用して『夜目』を発動します>  行動値 60/60 → 59/59(上限値使用:1)


 よし、これで視界は良好。支配進化のその先について……うーん、変異進化だから進化としての正確な名称はないみたいだけど、同調化とでも勝手に呼んでおこうかな。同調化ではスキルの発動はどうなってるんだろうか。とりあえずロブスターの殴打でも発動して試してみよう。


<同調相手のスキルを使用する場合は『同調共有』の共有スキルに登録をして下さい>


 うん、思いっきり警告メッセージが出て発動出来ないね。なるほど、同調化でログインしてない側のスキルを発動する為には『同調共有』で共有スキルに登録が必須なんだな。


「俺はちょっとスキルの登録してるから、しばらくよろしく!」

「あぁ、分かった。今のうちに夜の予定を詰めていくが構わないな?」

「そこら辺はベスタ達に任せる!」

「そうか。後での文句は受け付けんからな」

「分かってるって」


 時間帯は夜で7時頃みたいな事も言ってたけど、流石にそこの時間を俺の都合に合わせてくれとも言えないしね。もし駄目な時間帯に被ってしまった場合は素直に諦めよう。実際、ヒノノコの討伐も都合が合わなくて断念した人もいたんだしね。


<ワールドクエスト《この地で共に》のボスが1体撃破されました> 青の群集 2/5


 お、青の群集でボスが倒されたんだね。状況を見る事は出来ないけど、他の場所でもボス戦は進んでいってるんだろう。


「おー! 青の群集のどこだろ!?」

「海エリアぐらいじゃないか? 少し共闘戦略板を見てくるか」

「アルさん、任せたー! さー、みんなで時間を決めていこー!」

「おう、任せとけ」


「ハーレ、少し様子が変わったかな……?」

「……弥生さんのおかげでなんかスッキリしたみたい。少し寂しい気もするけど……あれ、弥生さん?」

「今度はヨッシさんが落ち込み出してどうするの?」


 スキルを登録していこうと思ってたら、ヨッシさんを前足で挟んでいる弥生さんの姿があった。ネコで二足で立つとは弥生さんも器用な真似をするね。

 よく考えなくてもハーレさんと長年の付き合いがあったのはヨッシさんも同じなんだよな。ヨッシさんはヨッシさんでハーレさんと違う形で寂しがっててもおかしくはないのか……。あれかな、手のかかる相手が独り立ちしていこうとする寂しさ的なもの?


「あはは、それもそうだね。ハーレが頑張るって言ってるのに、私がそれを寂しがってちゃ駄目だよね」

「弥生さん!? ヨッシは私のだよー!?」

「おっと、それは失礼しました」

「いや、ハーレ。それは何か違うからね?」


 ヨッシさんは挟んでいた弥生さんから解放され、今度はハーレさんとじゃれ合っていてワイワイと賑やかだ。あ、今度はヨッシさんとハーレさんが仲良くしてたらサヤが寂しそうにしてる。まぁ、サヤはサヤで結構な寂しがり屋だもんな。


「今度はサヤさんが何で寂しそうにしてるのさー!? なに、ここは寂しがり屋集団なの!?」

「……あはは、あんまり否定できる気がしないかな?」

「寂しいからこそ、今を全力で楽しむのさー! ね、ヨッシ、サヤ!」

「うん、その為にこのゲームに誘ったんだし、楽しまないとね」

「そうだね。その為にも今は次のボス戦の時間調整かな」

「……話し合いに加わる気が無いなら放置するぞ、お前ら」

「わー!? ベスタさん、わたし達も話し合いに入るから話し合い開始は待ってー!?」

「それならそれでいいが、目の前で脱線しすぎだからな」

「……何やってんだ? あ、さっきの青の群集は海エリアだとよ」

「なるほど、海エリアか」


 脱線していたハーレさん達を待っているのも面倒になったのか、ベスタやルアー達は話し合いを始めようとしていた。まぁ、明確に脱線しすぎだよな。とはいえ、脱線するのもよくある事ではあるけどね。……っていうか、俺自身がよそ見して脱線中……。

 

 いつまでもよそ見してないで時間の調整の話し合いは任せて、俺はとりあえず同調共有で呼び出すスキルを登録していこう。基本的には今まで通りコケ側でログインする事が多い気もするけど、一応ロブスターからコケのスキルを呼び出せるようにしておこうっと。どっちでも使えるようにしておいて損はないはず!


<ケイの『同調共有』による共有スキルの登録を開始しますか?>


 はい、開始っと。おぉ、持ってるスキルの一覧が出てきたね。ふむ、『遠隔同調』ってのもあるからまずはコケの固有スキルは登録しておくか。


<ケイの共有スキルに登録しました。 3/30>

『群体化Lv3』『群体内移動Lv3』『群体化解除Lv3』


 これでとりあえず3つ。さて次は魔法と操作は全部放り込んでおこう。あ、でも海水の操作はロブスターの方が高いな。……まぁいいや、足らなければ除外ってことで。


<ケイの共有スキルに登録しました。 17/30>

『火の操作Lv3』『火魔法Lv3』『水の操作Lv6』『水魔法Lv5』

『土の操作Lv5』『土魔法Lv3』『風の操作Lv3』『風魔法Lv3』

『海水の操作Lv2』『海水魔法Lv2』『岩の操作Lv3』

『水流の操作Lv4』『炎の操作Lv1』『光の操作Lv3』


 応用スキルも含めて、魔法と操作は登録完了。それにしても既に17個か。今の登録上限数は30個あるとはいえ、意外と結構スキル数があったもんだね。

 意外と30個って余裕ない……? いや、とりあえず可能な限りは登録していこう。


<ケイの共有スキルに登録しました。 28/30>

『水分吸収Lv3』『スリップLv3』『光合成Lv1』『増殖Lv4』

『養分吸収Lv1』『魔法吸収Lv1』

『識別Lv4』『看破Lv1』『毒生成Lv1』『発光Lv4』『閃光Lv3』


 あ、地味にヤバい。これ、登録数30個でも余裕がないぞ!? あんまり育成出来てないスキルは除外しておくべき……? いや、まだ行けるはず!

 魔力集中や自己強化はロブスター側にもあるし、普段はそっちを使ってるから登録しないでおこう。夜目や暴発もロブスターでも持ってるからとりあえず除外。夜目はレベルがないから特にいらん。……水中浮遊はこの状況で使う事があるか怪しいから今回は見送りで。よし、残るスキルはこれらだ!


<ケイの共有スキルに登録しました。 30/30>

『移動操作制御Ⅰ』『暗視』


 ぐっ!? 魔法砲撃を入れたかったけど、ぎりぎり足りなかった!? 他のを何かを削って……いや、魔法砲撃はロブスターでも取れてるし、そっちでいくか。

 他のはステータスの補助系のスキルだからそもそも登録出来ないか。まぁずっと効果を発動してるから意味もないよね。とりあえずこれでロブスターでログインした時でもコケのスキルを使う為の準備は何とかなった。


「はぁ……」

「……どうした、ケイ?」

「スキルの登録枠、足りないかと思って焦った……」

「はぁ!? え、今で30個まで登録出来るんだろ? そんな足りない事ってあんのか?」

「……まぁ死蔵してるスキルを含めてではあるけど」

「それでも多いよな?」

「まぁな! 特に魔法と操作が多い」

「あー、そういやそうなるか」


 アルもびっくりしていたけど、俺もびっくりしたよ。そんなにないと思っていたけど、改めて数えてみたら結構な量があった。

 まぁ各種属性をかなり取り揃えてるからなー。普通に取れるやつでコケで足りない魔法と操作って氷と雷と毒くらいか? 雷はロブスターで持ってるけど、毒についてヨッシさんがいれば俺のは特に必要ないんだよな。


「さて、ロブスターの方も登録していくか」


 とにかくこれでロブスターでログインしても何とかぎりぎりコケの全スキルが使える状態にはなった。次はロブスターの方を登録していこう。こっちはそれほどぎりぎりではないはず。……多分。


<ケイ2ndの『同調共有』による共有スキルの登録を開始しますか?>


 勿論ですとも。ロブスターもスキル登録開始! さてとまずはロブスターの固有スキルから行こう。


<ケイ2ndの共有スキルに登録しました。 3/30>

『脱皮Lv1』『威嚇Lv2』『獲物察知Lv3』


 あんまり使う事は多くはないけど脱皮は万が一の時に必要だろう。防御が下がりまくって紙装甲化するから、よっぽど追い詰められない限りは使いたくはないけど……。

 獲物察知は状況次第だけど索敵に便利である。威嚇は……まぁ一応ね。意外とロブスターもスキルが多そうだな。さて次々いくぞー。


<ケイ2ndの共有スキルに登録しました。 14/30>

『はさむLv3』『殴打Lv3』『体当たりLv2』

『鋏強打Lv3』『鋏衝打Lv1』『鋏切断Lv3』『鋏鋭断Lv1』

『殴打重衝撃Lv1』『魔力集中Lv2』『自己強化Lv1』『操作属性付与Lv1』


 よし、近接用の物理攻撃はこれでいい。まだまだ育成は足りてないけど、数はそれなりに増えてきてるね。土の昇華まで土の操作が育ったら、その次は凝縮破壊Ⅰを取って殴打重衝撃の強化かな。よし、次は魔法と操作の登録にいくぞー!


<ケイ2ndの共有スキルに登録しました。 16/30>

『電気の操作Lv3』『電気魔法Lv3』


 応用スキルの操作系は全部重複して持ってたけど、コケの方しか育ってないし使わないだろうから登録なしでいいや。ロブスターは物理メインだし、ここら辺はこれで問題ないはず。


<ケイ2ndの共有スキルに登録しました。 18/30>

『治癒活性Lv1』『魔法砲撃Lv1』


 よし、これでロブスターの方は登録完了っと。被っている魔法と操作を省けばかなり余裕が出たね。まぁ同じスキルを別々に鍛えても今の状態じゃ基本的に意味ないからなー。個別に育成したり、ロブスターも魔法型にしたいなら別だけど、今の俺には無意味どころか時間の無駄ですらあるね。


「よし、登録完了!」

「ケイ、お疲れさん。その進化はどんな感じだ?」

「んー、まだいまいち不明。ちょっと試してみないと正直分からない」


 まだスキルも登録したばっかで全然扱ってないからね。多分スキルを登録さえしてしまえば今までの支配進化と同じ感覚で使えるとは思うけど、実際に使ってみないとなんとも……。


「よし! んじゃ、ケイさん、同調種同士で手合わせでもやってみるか?」

「え、良いのか、ガストさん?」

「前回のは周囲への配慮もあったからな。あれを俺の全力と思ってもらっちゃ困る」

「あー、そういやそうだっけ」


 前にガストさんと戦った時は途中でガストさんが降参って事になって終わりになったんだったね。周囲に見物人が沢山いたし、そこを巻き込まないように回避してたけど回避し切れずに直撃したんだったっけ。


「……ガストさんってもしかしてだけど、赤のサファリ同盟にいるから対人戦してないだけで意外と興味がないって訳じゃない?」

「……俺は基本的に面倒くさいの嫌いなんだよ。どう考えてもあの赤の群集の状況で競争クエストに参戦したら悪目立ちしてただろ?」

「ですよねー」


 うん、ガストさんが参戦していれば間違いなく目立つ事は確定だろう。そうか、赤のサファリ同盟は対人戦に参戦しない集団といってもその理由は個人でバラバラなんだね。赤の群集の状況が改善してきた今は参戦してくる人も出てくるのかも……。


「そう言って赤のサファリ同盟に入ってきたのがガストだもんねー」

「ですが、あの一件以降に一番に手助けしようって言い出したのもガストさんではありませんでしたっけ?」

「そうそう、そうだった! 面倒な事が嫌いって言った割にはいざとなると面倒見が良いんだよね、ガスト」

「弥生さん、ルスト、それ内緒って言ったよなー!?」

「ガスト、そうだったのか……」

「あーもう、そうだよ! 何か文句あるか、ルアー!?」

「いや、文句なんてないさ。……ガスト、ありがとうな」

「だー!? これだから調子が狂う!」


 なんだ、ガストさんが単純に素直じゃないだけか。まぁ実際に今のガストさんを見たら、間違いなく面倒見は良いもんな。ガストさんに窓口役を押し付けたみたいな事を言ってた気もするけど、実際はガストさんが自分の意思で引き受けてるのかもしれないね。


「……ふー、それはもう良いとしてだ。ケイさん、手合わせはどうする?」

「折角だし、お願いしようかな」

「おー! ケイさんとガストさんの勝負だね!」

「それじゃ決定だねー。ルールはどうしよっか? PT組まずにHPを少しでも削ったら勝ちか、実際に倒したら勝ちか、PT組んで有効打を与えたら勝ちのどれがいい?」


 弥生さんが対戦のルール設定を提案してくれている。こういう形で試すのであれば実戦形式の方がいいね。倒すまででも良いけどもボス戦もある事だし……って、普通に対戦の話になってるけど時間調整はどうなった!?


「ベスタ、そういや夜の時間調整はどうなった?」

「そういや言ってなかったな。19時から準備開始、20時から戦闘開始だ」

「……なるほどね」

「ケイ達が地味に来れない可能性のある時間帯に準備開始になったが、ヒノノコ討伐の前に19時頃と言ったから大きくは動かせん。悪いな」

「いやそれは別に問題ないって。別に前倒しで用意しておいて、途中参戦でも良いんだろ?」

「あぁ、その場合は周辺の支援に回ってもらう事になるだろうがな」

「それならそうするよ」

「そういう事もあるさー! ケイさん、支援頑張ろうねー!」


 別に主力でしか動きたくないって訳じゃないし、そもそも周囲の瘴気除去とかも重要だからね。今回は俺は纏瘴を使って瘴気収束を使っていれば良いだろう。


「あ、アル達は別に俺やハーレさんに合わせなくても良いぞ?」

「ケイ、今更何言ってんだ? ケイとハーレさんが揃わないなら、無理には行かねぇぞ?」

「そだね。ボス戦だって楽しむだけなら必須じゃないし、バラバラは無しだよ」

「そうそう。2人がログインするまでは待ってるからね」

「みんな、ありがとねー!」

「そっか、なら早めに戻ってこないとな」


 今は17時前なのでまだ晩飯の時間は先だけど、みんなは俺やハーレさんに合わせてくれるっぽい。ハーレさんは良い友達を持ったもんだね。いや、それは俺にとっても言える事なのか。ゲームの中だけとはいえ、良い友達が出来たものだ。


「ごほん! それで対決はどうするのかな?」

「そうだった。んー、それならPT組まずにHPを先に減らした方の勝ちで!」

「オーケー。ガストもそれでいい?」

「おう、問題ないぜ」

「それじゃ今は人は少ないけど、流石にここじゃなんだから少し移動してからやろうかー!」

「ほいよ」


 流石にミズキの目の前では出来ないもんな。今はボスの方に人が流れているから殆ど近場には人はいないけれど、全くいない訳でもないしね。巻き添えにしない為にも少し外れた位置に移動するのは賛成だ。

 そういやハーレさんは実況したいとは言ってこなかったね? あれって、もしかして元気だという自己主張の代表的なものだったのか……? 少し気になるので後で聞いてみるとして、とりあえず移動開始!

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